仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー 作:ジュンチェ
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「やれやれ、本当に勝っちゃうなんてね。」
観客席に残っていた虎月は驚いたと頭に手を当てた…。
いくらイレギュラーな展開とはいえ、ベルリン華撃団を破るだけではなく星児まで救ってみせるとは。持ち直してきたまだおちこぼれの華撃団…そんな認識を改めるべきかもしれない。奇跡に均しくとも、その結果は彼・彼女らが己の力で勝ち取ったもの……そう、次の時代を担うあの子たちなら…
「血塗られた運命だって……断ち切れるかもしれない。」
淡い希望が胸に灯る。今は…信じてみたい。
「さて、あとはあの子たちを苦しめた分、プレジデントGにお灸を据えるだけだ。」
残るは散々息子や友人であるすみれと彼女の華撃団へ散々、煮え湯を飲ましてきた悪の親玉に鉄槌を下してやろう。別にこの十年余りを会社を立ち上げ、大人しく船乗りをしてきたわけじゃない。
旧華撃団勢力への冷遇に不信感を持った日からずっと、あの男の周囲を洗ってきた。そして、集めた…『不正取引』『パワハラ』『不当人事』『資金横領』『特定の企業との癒着』『自分に不利な証拠隠滅』などなど……その大半が最近になってのことばかりなのが気になったが、何にせよ首根を掴み締め上げるには充分過ぎるだろう。
「あとは渡した証拠でロンドンと上海が彼を抑えてくれれば…」
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華撃団大戦会場VIPルーム…
ロンドン華撃団と上海華撃団が踏み込み、プレジデントGが取り押さえられる…… はずだった…。
「どうなってるんだこれは!?」
驚くランスロット…部屋は滅茶苦茶に斬り刻まれ、おびただしい血痕までついている様子は平和の祭典に全くをもって不相応だろう。この部屋にいたであろうプレジデントGの気配は既に無く、まさかとは思いたくないが…最悪の事態が頭を過る。
「勘付かれて逃げた…ってかんじじゃねえよな、こりゃ。外には普通に見張りがいたし、こんだけ派手にやってたら気がつかねぇわけが…」
シャオロンは落ち着いて現場を観察…ユイは惨状に若干ながら冷静さを失いかけ、アーサーも当初の予定から崩れどうするべきか悩む…。そんな中、矢車が壁の刀傷に興味を示していることに気がついたウォズ。手をあててみたりと随分と気にしているようだが…?
「矢車想、君は何かわかったのかい?」
「…夜叉だ。奴の刀だ。この刀傷からは奴の地獄を感じる。」
…地獄? そこは意味不明だが、夜叉の仕業と断念する矢車は部屋を歩いてこの部屋で起きた事件を推察する。
「最初、外を観ていた奴の背中に一撃…」
窓には血の手形…不意に受けた背中の傷に触りながら触れてしまったのだろうか。ベタベタとつく紋様は生々しい…
「そして、逃げる奴の急所を外しながら一太刀… 更に這いずり回る奴にまた一太刀…」
今度は床の血の跡を追う矢車。真っ赤な鉄臭い絨毯の先…壁には丁度、刀の幅ほどの穴が空いているが…不自然にそこで血の跡が途切れていた。トドメを刺されるところを間一髪逃げた…?なら、見張りのエージェントが黙っているはずが無い。ならば…
「…連れ去られたか。」
導き出される結論に皆が震える…されど、アーサーのみは疑問を唱えた。
「待ってくれ。何故、夜叉と断定できる?」
「わからないか?アイツは俺と同じ光から叩き落とされ『地獄』を見た人間の目をしていた…仮面越しでも判るくらいにな。」
地獄…その意味は蔑まれ、嘲笑われ、真っ暗な暗闇の地べたを這いずり回った者にしか解らない。でも確かに…矢車は感じとってた。
あの女は自分と『同類』だと。
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…何処で歯車が狂ったのか?
「はぁ…はぁ…!ひぃぃ、ひぃぃ!」
痛みと怒りでグチャグチャになる頭で思考しながら、プレジデントGは華撃団大戦会場近くの薄暗い裏道を息をきらし走っていた…。身体にはおびただしい数の刀傷、トレードマークのサングラスは無惨にひしゃげてヒビ割れている始末…
見よ、この情けない様を。組織の頂点に立ちながら、人を嘲り策謀を巡らし、踏み躙ってきた男の末路を…!猫から逃げる瀕死のドブ鼠のようじゃないか!
「何故だァ、何故ダァ!! 私が…こんな!」
「しぶといことですね。まあ、もう少し苦しんでもらいたいところですが…」
笑みを浮かべて追うのは仮面ライダー夜叉…マスクだけ解除して、真宮寺さくらの顔にべったりと返り血をつけている。サッと刀をはらいながら払いながら、切先へと妖力を這わせていく…さあ、トドメを…
が、その前にアナザーゼロワン…レクスが立ちはだかった。
『やめなさい、夜叉! 彼には滅亡迅雷を担ってもらう必要があるわ!今、彼に死なれたら…』
「退きなさい。私には我が子と友を傷つけられた分と、10年分の怨みを晴らす権利がある!」
制止を振り切り、プレジデントGの前に躍り出る夜叉。既にろくな力など残っていない哀れな男はべちゃべちゃと水溜りに腰をつけ、後退りするくらいしか出来ない…あとは精々睨むくらいが限界だ。そんな眉間に刃を突きつけると彼女は静かに問う。
「最後に言い遺すことはありますか…プレジデントG? いいえ、『幻庵葬轍』!」
「おのれ… おのれ…! 洗脳が解けたのか、真宮寺さくらァ…! あの時、貴様を殺していれば…」
増悪、後悔、持ちうる全てを吐き出すプレジデントG…
しかし、
「ああ、あなた…結局、気が付かなかったんですね?10年も手駒としておきながら…。ははははははははは…!!」
な、なに…?
戸惑うプレジデントGに夜叉はアイマスクと共に『真宮寺さくらという仮面』を外す。露わになったのは素顔…異形のそれでもない確かな人の顔。プレジデントGとて見覚えがあるその顔は…
「! …馬鹿な、貴様は!?
天宮… さくら…!?」
涙線に傷痕があれど、間違いなく天宮さくらだ。
だが、おかしい。夜叉と天宮さくらは同じタイミングで華撃団大戦会場にいたはず!? 同一人物なはずがない!? なら、この女は…10年以上『真宮寺さくら』と信じて疑わず手駒としてきたこの女は一体…!?
「貴様、お前は…誰だ!!」
「私は…さくらですよ。」
直後、刃は振り下ろされてプレジデントGの姿は両断され霞となって消え去った…。呆気ないものだと刀を鞘におさめる夜叉。溜まり重なった積年の怨みの結末がこうも味気なく終わるなんて…虚しさを隠すように天宮さくらの顔のままアイマスクをつけ直すと、呆れ声のアナザーゼロワンが嗜める。
『夜叉…』
「問題ありません。滅亡迅雷の代わりのアテならありますよ。」
アテ…? 彼女の真意を察することは出来ないが、今はいざこざをこれ以上起こすべきではないだろう…頭を抱えながら、人目につかないうちにこの場を去ることにした。
取り敢えず、プレジデントGがいなくなった以上は特別に気をつかう必要もないことだけはプラスだ。
『それじゃあ、ゆっくり代替案はきかせてもらおうかしら…
――カナタちゃん。』
次・回・予・告・!
あざみ「劇場にさくらのお父さんとお母さんがやってきた。何でも、支配人と星児のお父さんに大事な話があるみたい…。良いなあ、さくらには家族がいて。わたしには…
次回【乱舞!嵐を呼ぶあざみ忍法帖!】…太正浪漫を駆け抜けろ、令和の風!
え? 忍者の…仮面ライダー…?」
次回からはあざみ編! 感想お待ちしてます!