仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー 作:ジュンチェ
太正29年…… それは、第二次世界大戦が起こらなかった世界線。昭和がはじまらないということは、この時代の先に平成も令和も産まれないだろう。
……しかし、文明の発展は凄まじく一部の技術は平成のそれと近いところまで来ており、近代化と大正浪漫の雰囲気が融合した風景は利便性を追及してシンプルさを追及した平成・令和には失われてしまったモダンさが息をしている。
そんな太正世界の日本の首都は『帝都・東京』。その中心街の一角にある古く厳かに建つのは『大帝国劇場』である……年月による傷みはあるがその威厳は尚も存在感を放つ。
「……くそっ! くそっ! 何処だ、さくらぁぁぁぁぁ!!!!!」
その劇場の前で声をあげる青年。上着を脱いだベストのスーツ姿に二刀流の帯刀とかなり変わった格好をしている黒髪の男…。彼は喉が裂けんばかりに声を張り上げていた彼の名は『神山 誠十郎』、この帝都の住人である。そして、行方知れずになった幼なじみの行方を捜しているのだ…。
そこへ、赤と緑の色違いの三式光武が現れる。
「駄目だ隊長さん、こっちにはいねぇ!!」
「こちらも同じくです。やはり、さくらさんは降魔に……」
搭乗しているのはどちらも女性。赤い方に乗る巫女服の気の強そうな彼女は『東雲 初穂』…赤毛の左サイドで束ねた髪は焦りのためか乱れている。もう片方の緑の光武に乗る金髪に緑の眼をした彼女は『クラリッサ・スノーフレイク』…愛称はクラリス。こちらはかなり落ち込んでいる様子で、心無しか機体も俯いているように見える…
「俺…だ……俺のせいだ! 俺がちゃんと指示をしなかったから…!!」
「違います、さくらさんは私を庇って…!私のせいで…!!」
「責任の背負いあいしてる場合かよ!? まだ諦めんじゃねえ…まだ、決まったわけじゃない。アイツが夢半ばにすらならねえで死ぬかよ…。」
先刻、現れた『飛蝗の怪人』とでも言うべき降魔。何処からともなく現れるや、帝都に現れた魔操機兵の相手をしていたクラリスを急襲しそれを庇ったのはさくら。直後、降魔もろとも何処かへ彼女の光武ごと閃光に包まれ消えてしまったのである。
降魔は文字通りの何処から降臨し人々を襲う異形の化け物、時には人間を喰らう時もある。そんな降魔に連れ去られたのだとしたら……最悪の結果が皆の頭を過るのは必然だろう。
クラリスは自責で潰れそうな勢いで、初穂もコックピットの中で認めようとはしないものの…悔しさに歯軋りをしていた。ついには神山も完全に折れそうになり、膝をつこうとした……その時
ーードオオオッ!!!!!
「「「!」」」
突然、目の前に現れた光の柱。劇場まで呑みこみかねないほどの大きさのそれは、先まで無かった空に見える見慣れない街並みから伸びており、明らかに空の向こうの世界と繋ぐものであった。人の為す霊術か、降魔の妖術かは判別はつかないが、3人は突然の事態にたじろくばかりであった。
「初穂…! こ、これは一体……!?」
「知らねぇよ!? くそっ、次から次へと…!!」
「待って下さい、何かが空から……」
上を見上げていた中でクラリスは、柱の光に動くシルエットを確認していた。……それは…こちらに真っ直ぐ…!?
ーードォォォォォォォォン!!!!!
【 ALTERNATIVE SHINING ASSAULT 】
「かはっ……」
「「「…!?」」」
最初は隕石かと思った…しかし、煙が晴れるにつれて明らかになる光景は全く違うもの。
シャイニングアサルトホッパーへと進化したアナザーゼロワンが同じ形態のオリジナルを踏みつけ、クレーターを作っていたのだ。辛うじて、ゼロワンは動けるみたいだが、あちこちにプラズマが走り強制変身解除まで残り数秒といったところだろう。
そして、神山は気がついた…
「コイツはさっきの降魔!?」
アナザーゼロワン…そう、厳密には降魔ではないが、さくらを連れ去ったとおぼしき犯人。すぐに身構えるが、当のアナザーゼロワンはフンッと鼻を鳴らすと、ゼロワンを彼等側に蹴り転がして背を向ける。
『…あげるわ、ソイツ。これからいないと困るでしょうから。フフ…』
「待て、さくらは何処だ!?」
『…ああ、あの小娘ね。会いたければ、この柱を辿って『令和』の世界へ行きなさい。取り敢えず、今は生きてるわよ…今はね。』
最後にそう言い残すと、蝗の竜巻になって消え失せた。『待て!』と追おうとした神山だったが、転移する相手を追う術などあるはずも無く地団駄を踏んで終わる。それよりも……
「神山隊長!」
クラリスの声、見れば彼女は三式光武を降りて変身解除されたゼロワン……もとい、或人を抱きかかえていた。或人は気を失っている様子で反応は無い。初穂も機体のハッチを開けて確認する。
「取り敢えず、降魔ではないみたいだな。どうする隊長…?」
「…何か事情を知っているかもしれない…こちらで保護しよう。よし、一旦撤収だ。もうここは俺達だけじゃ手に負えない。 …それにここら一帯も封鎖しないとな。」
こうして、本人が知らないうちに太正世界とエンカウントした令和の1号。ふたつの時代の交錯、それはまだあるべき物語の流れを大きく捩らせ破壊するものだとは知ることはない。
……まだこれは、小さな歪み。されど、確実に運命を変える幕開けである。
★ ★ ★ ★
「ライダージャンプ。」
【 RIDER JUMP 】
「ライダーキック…!」
【 RIDER KICK 】
帝都の路地裏…そこで行われていた戦いを表通りを歩く人間たちは気がつかない。皆、突然に現れた光の柱に釘付けだからだ…まあ、都合は良いが。そんなことを考えながら緑の戦士は隠れていた異形を粉砕すると、変身を解いて表通りに。ベルトについていた飛蝗のようなアイテムは何処かへピョンピョンと跳んでいき、男は道行く人々と同じ方向を見据える…
彼の格好は黒をベースとしたいかにもやさぐれた危険そうな雰囲気を出す…それは、太正だろうが令和だろうがあまりにも浮く様はさながら世紀末だろうか。
「……蟲の入店はお断りだ。」
そう呟くと、近くの中華料理屋に入っていく男。その店の名前は看板に大きく『神龍軒』……
……ここにひとつ、仮面の影
★ ★ ★ ★ ★
…とある海上。
水面ギリギリを飛ぶ巨大な空中戦艦。しかし、そのデザインと色合いには鉄の近代文明産物特有の無骨さより、古い欧州の匂いを感じさせる気品がある。
古き良き時代の残り香を感じながら、明らかに不釣り合いなマフラーに灰色の昔の詩人や旅人を彷彿させつつも、穴が空いた服装に身を包む青年。怪しい雰囲気全開だが、当の本人は呑気にパラソルをひろげたまま椅子でくつろいでいる。しかも、サングラスまでつけて完全に気分はバカンス……
「…おっと。」
…すると、何かに気がついたかのようにテーブルから歯車が無数に刻まれた本を持ち語り出す。
「………この本によれば、普通の高校生である常盤ソウゴには時の王者・オーマジオウになる未来が待っていた。しかし、その未来から運命そのものを力として継承したことで、可能性は未知数となった。…さて、言うまでもないと思うが私は預言者『ウォズ』。時の王者に仕える者で、祝福する者。そんな私が何故、『太正』の世界にいるかと言うと…」
「……ねえ、あんた何独り言喋ってるの??」
そんな彼…ウォズを痛々しいものを見る眼を向ける亜麻色の髪をポニーテールにした少女。齢は天宮さくらと変わらないくらいだが、格好は和を基調とした彼女とは対照的に可憐なる少女騎士だ。その美しさと凛々しさにスレ違えば誰もが振り向くほどだが…彼女の表情は、今は目の前の奇行に走る自称・預言者のせいで酷く曇ってる。
「ランスロットくん、今は大事なところだから邪魔しないでくれるかな?」
「構わないけど、あたしの視界と耳に届かないところでやってくれたいかな? 鍛錬に集中出来ないんだけど…?? 折角の清々しい青空に海の風も台無し。」
『ランスロット』…本名ではないがそれが今の少女騎士の名。多少、好戦的でこそあれど彼女がここまでに露骨に嫌悪感を示すのは珍しい。そりゃあ、そうだ…突然、やってきた昔の先輩が何を思ったのかこの怪しさと胡散臭さを混ぜて全開にしたような男を押し付けてきたのだから。
「はぁ…ガヴェイン卿は何を考えて…。というより、なんでアーサーはOKしたのか…。」
「そんな邪険にしないでくれないかな? 少なくとも、華撃団大戦が終わるまでは、私たちは仲間だ。さあ、気楽に行こうじゃないかお互いに……?」
「…ぐぬぬ(許されるなら、今すぐに三枚に卸して魚の餌にしてやりたい…!)」
大事な晴れ舞台の前、万全のコンディションで挑みたいのは山々だったが…残念ながら、ランスロットのストレスは溜まる一方であった。
そんな彼女を全く気にしないウォズは遥か海の先を見据えて物思いに耽る……
(さて、太正の1号……恐らく、この世界に侵入しているネオ・タイムジャッカーとやらもそれが狙いか。何としても、奴等よりはやく見つけなくては…)
★ ★ ★ ★
……何処かの廃墟 それは、先日の降魔襲撃によって壊された帝都の外れ。
デイブレイクタウンを襲撃した降魔『夜叉』は1枚の写真をずっと見ていた。俗に言うプロマイドというやつだ……しかも、バイザーを外した自分にそっくりの人間の女が映っているものを。
「……真宮寺さくら…」
……それが、彼女の名前らしい。
何故、自分にそっくりなのか…。もしかしたら、自分のベースにされた人間なのか…。瓜二つのこの顔にはきっと意味があるはずなのに思考がうまくまわらない。考えても仕方ないと割りきろうとしても異常に気になる…生きてるのか? 死んでいるのか? 何者なのか?
…自分は何を為すべきなのか?
『あら、こんなとこにいたのね。お待たせ…』
「烈喰…」
そこへ、フラりと現れたアナザーゼロワン。その手にはトランクが握られており、嬉しそう握られてふらふらと揺らしていた…。あれが、『令和』の世界から持ち出した目的のものなのだろうが、中身については夜叉の知るところではない。
そんな彼女にクスクスと笑いながら、鍵を破壊してアナザーゼロワンは中からドライバーとおぼしき物体を取り出す。
「……それは?」
『滅亡迅雷フォースライザー… 私が欲しかった物のひとつ。人を滅ぼすために、命ですらない鉄屑畜生が作りだした道具が産み出した道具…兵器よ。』
「兵器? …そんなものが?」
思わず疑問符が浮かぶ。夜叉は降魔だ…されど、上級に分類されるのでそれなりに人間社会などの知識・人間と遜色無い知能がある故、『兵器』なんて言われれば思いつくのは銃や爆弾…あとは霊子戦闘機くらいなものだ。前者は超自然的存在と言っても過言ではない自分たちには火力で圧しきらない限りは効果は薄いが、後者はある意味で自分らと同じ次元の攻撃になるのでダメージは等倍かそれ以上になりうる。
…では、このフォースライザーとはなんなのか? 血肉を裂く刃も、命を抉る弾丸を発射する銃身も無い。ましてや、防具にもならない小ささ…こんなもので何をしろと? まさか、殴る鈍器とは言うまい。
怪訝な顔をする彼女にアナザーゼロワンはフフフ…と微笑みながら、フォースライザーを差し出す。
『1つあげるわ。腹に当てて、キーを入れるだけで良いわ。それで、令和のテクノロジーが貴女も使えるようになる…。』
「…」
令和のテクノロジー…少しだけ興味が沸いた。
まあ、そう簡単に上級降魔の自分に何があっても大したことになるわけがない…と、思いフォースライザーを腹にあてる。すると…
ーーバチチチチ!!!!
「!?」
フォースライザーが百足のような帯を伸ばしてベルトの形態をとると、脚のような突起が彼女の中に侵入して肉体を抉りながら紫電を走らせる。その激痛たるや、今まで感じたことがない上級降魔の自分ですら悲鳴をあげてしまうもの… そして、自分の頭の中に手を延ばして精神をグチャグチャにしていく。
「…がっ!? レクスぅ…貴様!?」
『さ、私と一緒に来て夜叉。共に世界を創りあげましょう?』
「駄目…だ……!! わだしは…降魔皇の…だ…めに…! それが、私の…運命……」
『違うわ。あなたの運命は……
……この太正の世界で『仮面ライダー』になることよ。』
アナザーゼロワンを舐めていたと気がついた時にはもう遅い…… 夜叉のバイザーが外れ、紅く光る瞳が浮かび上がる。フォースライザーが馴染んだのだ…そして、令和で悲劇の幕開けを告げてきたあの言葉が彼女の口から流れる…。
「……滅亡迅雷netに接続。」
世界の揺らぎはまだ小さい。しかし、小さな虫食いが大樹を腐らせるように… 太正の物語は未知なる脅威にさらされていた。
令和と太正… 乙女たちと仮面の英雄… 悪と魔…
それらが向かう先はまだ誰も知るよしは無い。
次・回・予・告
さくら「交わってしまったふたつの時代、令和の世界に取り残されてしまった私…。どうしよう、華撃団大戦どころか光武もボロボロだし『えいむず』とかいうよくわからない人たちに捕まっちゃったし…。それにさっきのは、伝説の仮面ライダー…?
次回・仮面ライダーゼロワン×新サクラ大戦 ー新たなる始まりー…『交わる新時代』!!
太正浪漫を駆け抜けろ、令和の風ッ!
……って、不破さん!? 私の光武に何してるんですかぁぁぁ!?!?」
次回、光武を不破さんがゴリライズします。(さくら、解せぬ。)さて、今回はドイツ側の紹介がありませんでしたが、そちら側の仮面ライダーを出したら間違いなくコイツが大戦犯当確になってしまうので今は伏せます。
さて、我が魔王を差し置いてやってきたウォズ。我が魔王は何してるかというと、令和ジェネとOQを経て大学受験をスルーし王様になろうとしたところ、ツクヨミがマジギレして浪人コースに。これにはオジサンも苦笑い。
……そして、気がついた。令和より平成が濃い。
感想お待ちしてます。