Dota2転生記~プグナちゃんの冒険~   作:つゆり3

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dotaあるあるその2。


決戦前のひと時

ゼウス先生とのやり取りを終えてしばらくしたのち、骸骨魔法使いであるプグナはある種の感謝を抱いていた。

 

☆拝啓、お父様、お母様

 僕をこの世に生み出してくれてありがとう。

 

 スタンもなく、ダメージもゼウス先生より低く、

 

 ミッドに行けば、

 

 「あいつ途中で失速するよね、BKBに無力だし」と言われ、

 

 サポとしてピックすれば、

 

 「スタンないし弱いよね、BKBに無力だし」と言われ。

 

 人から笑われ、軽く扱われ。

 

 そんな、恥の多い一生を送ってきました。

 

 それでも僕にはパルス(爆発魔法)がありました。

 

 先手必勝、後手でも必勝。

 

 タワーを割れば勝てるんです。

 

 タワーにもダメージが入るという僕のアイデンティティでもあるパルス。

 

 物真似師(ルービック)以外には、これをマネできる者はいません。

 

 このパルスを一生懸命タワーに当てて、今は第2までの敵のタワーは全て割れています。

 

 おかげさまで敵は警戒して、エンシェント周りで警戒しています。

 

 味方のキャリーはロシャンとかいう化け物と戯れています。

 

 すごい強そうですけど、多分勝つでしょう。

 

 僕とクリスタルメイデンちゃんはサポートなので川の辺りでご休憩。

 

 敵の接近を察知するワードもおいて、安心安全。

 

 気分はピクニック日和。

 

 僕は落ち着かずに今の今まで残していたタンゴで木を切ってパクパク草を食んでいますが、

 

 正直…。

 

 何かとってもいいことがありそうです。

 

 美少女とふたりきり、水辺でたわむれる僕。

 

 生きててよかった…。

 

 お父様お母様。

 

 ここまで僕を生み育ててくれて、本当にありがとう。

☆☆☆

 

 

 そんな心の手紙をご両親に向かってプグナが一生懸命書いていたところ、クリスタルメイデンの方から液体の入った透明の瓶、文字通り「ボトル」が手渡された。

 

「プグナちゃん、お疲れ様。大活躍だったね。私のマナ回復があるとはいえ、いっぱい戦ったから疲れてるでしょう? この水を飲んで、HPとマナをぐぐっと回復したら?」

 

「う、うん。ありがとうクリスタルメイデンちゃん」

 

「その呼び方長くない? 同じチームなんだからぁ、もっとフランクにいこうよ♪ メイデンちゃんでいいよ!」

 

「う、うんメイデンちゃん…」

 

なんということでしょう、お父様お母様。

 

下の名かどうか分かりませんがモデルのように美しい女性から、僕はチームとしてのフランクな呼び名を許可されたのです。

 

そのうえ、飲み物の入ったボトルを渡されて気づかってもらっている!

 

気になっている人からの気づかいというのは、こんなにも嬉しいものなのですね。

 

「ありがとうね、メイデンちゃん」

 

「いいっていいって。ささ、グーッとやっちゃってよ!」

 

「うん。あ、あれ? このボトル、なんだか少し減ってるみたいなんだけど」

 

「え? あーうん、実はね…飲みかけなの」

 

その時、僕の頭の中には、ゼウス先生以上の威力の稲妻が落ちたようでした。

 

「そ、そうなんだ…そうなんだ!」

 

「気になる?」

 

「ぜ、ゼンゼン? 全然気にならないよ?」

 

お父様お母様、僕はその時、ウソを吐きました。

 

ウソとは罪悪、泥棒の始まりである。

 

そう教えられ、善悪の意識を持ってきたのに…。

 

そのつもりだったのに。

 

気になる人を前にしてそのもっとも恥ずべき罪悪の一つであるウソを吐いているというのに、不思議ですね。

 

その時僕はなんの罪悪感もなかったのです。

 

メイデンちゃんの飲みかけのボトル…。

 

それすなわちメイデンちゃんと間接キスをするという事…。

 

それを彼女は「気になる?」と聞いてくれたのです。

 

 

【 恥をかかせてはいけない 】

 

僕の中の内なる自分がささやきました。

 

しかしそこは僕もさるもの。

 

だてに今まで一度も女性と関わったことがないわけではありませんでした。

 

メイデンちゃんとの間接キス…。

 

その前に、しっかりと飲み口付近の「 香り 」、もとい「 におい 」について確認しておこうと思ったのです。

 

そこにはメイデンちゃんの「一部」であったものが付着しているはずなのですから…。

 

「うっ…?!」

 

「どうかした?」

 

「い、いや、なんでも? なんでもないよ!」

 

骸骨の僕でも分かる強烈な悪臭。しかも気づいてしまうと鼻の辺りからボトルを離しても、なんだかにおいがこびりついているような気がします。

 

何かで知ったのですが、においというのは分子とかいう細かい粒が、鼻の粘膜に付着することによって感じる事ができるのだそうです。

 

そういう意味では僕はもうメイデンちゃんの一部を内側に取り込んだ、メイデンちゃんと一つになったとさえ言えるのですが、その悪臭は本当に、鼻にまで残るほど強烈でした。

 

「やっぱり飲みかけの飲み物じゃいや? それとも、私からのだったから飲みたくないとか?」

 

「い、いや、そんな事はないよ! ぜんぜん、飲みかけでも、メイデンちゃんからもらえたんだったら、本当にウレシイよ!」

 

僕はボトルに口を当てると、全力で体の内にその液体を流し込みました。

 

く、臭い…! 息を止めていても内側からあふれてくるムセ返るような悪臭ッ…!

 

で、でもメイデンちゃんから出た汚れだったら、許せる。なんでも許せる気がするッ…!!

 

グビグビと、僕は音を立ててボトルの中の水を飲み干しました。

 

「ご、ごちそう様ぁ…」

 

「だ、大丈夫? 死にそうな表情してるけど…」

 

「全然だいじょうぶぅ…」もし付き合う事ができたら、歯だけは磨いてもらおう…。

 

「なら良かった。さっきパッジにも飲んでもらったんだけど、すごくおいしそうに飲んでくれてたから。プグナちゃんにも喜んでもらえると思ったんだ!」

 

「え…? パッジ…? オフレーンコアの…? このボトル、メイデンちゃんが飲んだんじゃないの?」

 

「あはは、何言ってるの! 私はtranquilbootsでHPは回復できるし、マナは自分のArcane Auraで回復できるんだから、基本的に飲まないわよ。味方に回復を配るためにボトルを買ったのよ」

 

 パッジ…。あの死体が腐ることがないという世界で肉屋をやっているにも関わらず、相撲取りのような体形で、体からはすさまじい悪臭を放っている巨漢のパッジ。

 

 自分の悪臭を出したり出さなかったりコントロールできると自慢していたが、正直悪臭を放つ必要がないだろと思ったのは内緒。

 

「そっかあ…あのパッジの…飲みかけだったかあ…」

 

 メイデンちゃんからの飲みかけのボトルでしたが、飲んだのは巨漢のパッジだったのです。

 

 つまりそれはメイデンちゃんとの回し飲みではなく…。

 

 強烈な吐き気と体調不良。

 

 意識が薄くなっていくのを感じた。

 

 お父様お母様、過度な期待はしてはいけませんね。

 

 int(知性)のカタマリといわれる僕ですが、また一つ賢くなれた気がします。

 

 いつも新しい発見をさせてくれる、この世界に感謝です…。

 

「ちょ、ちょっとプグナちゃん、大丈夫?!」

 

「だ、だいじょうぶだけど、ちょっとまってね…」

 

 その時キャリー達がロシャンという怪物を倒し秘密のアイテムを入手したことで歓声が湧いたが、僕はその場でひざをつき、ノドに指を入れて、さっきのボトルの水を吐き出そうと必死になっていた。




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