ああっ女神さまっ(黒)   作:ちゅーに菌

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 作者は壊れそうなものばかり集めてしまうガラスの十代なので初投稿です。

 アニメのエレちゃんが可愛過ぎるんだよなぁ……(クソノンケ)











冥界の女主人

 

 

 

「うーん……この問題わからないなぁ」

 

 彼――藤丸立香は普通の青年である。

 

 容姿に関して言えば、クラス内で上から数えた方が早い程度には整っているが、学年のテストの点数は常に中の上。別段、何が優れているというわけでもないが、全体的にそこはかとなくこなせることが彼の特徴と言える。小学校の通信簿などを見てみればオール4の数字が並んでおり、逆に常人には取れない非凡な普通さが滲み出ている。

 

 そして、性格の特徴としては責任感と正義感があり、人当たりがよく柔軟な思考をしている。要するに概ね絵に書いたような善人だということだ。仕事場にひとり居るとついつい頼ってしまうようなタイプの人種であろう。

 

 そんな立香は現在、高校生であり、机に向かって学業に勤しみつつ、数学の問題で頭を悩ませていた。どちらかと言えば、彼は理数系よりも世界史などが好きな文系の人間だということも理由のひとつになるかもしれない。

 

「聞くか……」

 

 そう言いつつ、立香は携帯電話を取り出して電話帳を開くと、クラスメイトのひとりを見つけ、通話ボタンを押す。それは彼よりも理数系が得意な友人であり、こういったことで気楽に電話を掛けようとする行動力も彼の特徴の一端と言えよう。

 

 そして、数回のコールの後、特有のプツリとした音と共に電話が繋がり――。

 

 

『は、はいっ、"お助け女神事務所"なのだ……じゃない――ですっ!』

 

「えっ……?」

 

 

 全く想像もしていないところに繋がってしまった。

 

(あれ……? 電話帳から掛けたんだけど間違えたかな?)

 

 友人に電話を繋げた筈にも関わらず、明らかに女性かつ"お助け女神事務所"という聞いたこともない事務所に繋がったことに困惑しつつ、間違い電話をしてしまったことを謝ろうとしたが、その前に電話口の女性が声を掛ける。

 

『ご希望はそちらで伺うわ』

 

「そちら……?」

 

 立香はそちらという意味がわからずにいると、自室に立て掛けてある姿鏡に自分以外の姿が映った。

 

 黒いインナーとパンツに、外側が赤く内側が黒いマントを羽織り、左腕と右足にだけそれぞれ黒い袖と靴下を履き、金の靴を履き、全体的に金の装飾が施された服装をした長い金髪をツーサイドアップにまとめた女性である。

 

 また、頭には黒いティアラ、胸元には髑髏を象った装飾がなされており、年代物の赤ワインをグラスに入れて陽にかざしたように淡い赤の瞳と、黄金をそのまま髪の毛にしたかのようなきらびやかで艶やかな金髪に映えていた。

 

 立香は唐突に姿鏡に映った女性に唖然とした様子で見ていると、鏡の中にいる女性と目が合ったかと思えば――。

 

 

「よいしょっと……」

 

 

 ――女性は鏡の縁を跨いで立香の部屋へとさも当たり前のように入ってきた。

 

「こんばんは、何をお望みかしら?」

 

 想像を越える事態に口を開けたまま停止している立香の目の前に、女性は堂々とした足取りでやって来ると、余裕げな笑みを浮かべている。

 

 このとき、よく見ると女性の片手が小刻みに震えている様子が見られたが、生まれて初めての異常事態に直面している立香は全く気づいていない。

 

「――っとその前に自己紹介ね」

 

 すると女性は髪を掻き上げてから腰に手を当ててポーズを取り、朗らかな笑みを浮かべる。そして、恭しいまでに感じる動作で礼をしつつ、彼女は口を開く。

 

「冥界の女主人、"エレシュキガル"。契約に応じ参上したわ。一個人に力を貸すのは不本意だけど、呼ばれた以上は助けてあげる。感謝なさい」

 

 自己紹介を終えた女性――エレシュキガルは、決まったとでも言いたげな表情へと変わり、立香が言葉を返す事を待ち始める。

 

………………………………。

…………………………。

……………………。

………………。

…………。

……。

 

 そんなエレシュキガルの余りに唐突な言葉に立香は呆けてしまっていると、それまで余裕そうだった彼女の表情は徐々に不安げな様子になり、遂には彼女の方から口を開いた。

 

「――って、なんで黙っているのかしら!? 私、立派な女神なんですけど!」

 

「え? あ、はい。ごめんなさい」

 

 直ぐに反射的に立香が謝ると、エレシュキガルはやってしまったと言わんばかりの表情になりつつも、再び表情を引き締めて咳払いをする。

 

「コホン――ま、まあ、何も知らないのだから当然だったわね。私たちはあなたのように困りごとのある人間を救済するのが目的で、その要求が電話という形で届いたのよ」

 

「は、はぁ……救済?」

 

 既にとんでもなく胡散臭い話であるが、鏡の中から彼女が出てくるという奇跡的なものを目にしているため、立香は半信半疑ながらもそう聞き返した。

 

 するとこちらが興味を持ったと思ったのか、エレシュキガルはとても弾んだ声色で言葉を返す。

 

「あなたの願いを叶えます。ただし、ひとつだけに限ります」

 

「え、それって……何でも?」

 

「もちろん、どんなことでもよ。貴方が大金持ちになりたいのならそれもよし、また世界の破滅を望むのならそれも可能だわ。ただし、それを望むような人間のところには女神は来ないけれどね」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 エレシュキガル――メソポタミア神話に登場する冥界の女神であり、名前はアッカド語で"冥界の女王"を意味し、"日没するところの女王"とも称される。一般的にはシュメール名であるエレシュキガルと呼ばれるが、他のシュメール名では"ニンキガル"、またアッカド名では"アルラトゥ"と読まれることもある一方で、神話によっては"イルカルラ"や"ベリリ"であるなど、名前の表記が様々。

 

 また、逸話の他には冥界という暗い世界で抑圧された生活を送っていたために、その性格は短気でねじ曲がっているという伝承を立香は記憶しており、仮にエレシュキガルだとすれば"素直で優しそうな性格に思えるけどなぁ"等と考えていた。

 

「す、素直で優しそうなんてそんな……私なんか全然……」

 

「えっ? 何か言いました?」

 

「な、何でもないのだわ! それより願いは決めたかしら?」

 

 エレシュキガルは顔を赤くしながら聞き取れない声で何かを言っていたため、立香が聞き返したが、そう返事を返されたため、彼は願いを考える。

 

 しかし、今の環境に満ち足りており、これと言ったものは思い浮かばず、それよりも客人のエレシュキガルを特にもてなしていないことに気づいた。

 

「とりあえず、お茶淹れてきますね」

 

「えっ? あっ、はい……」

 

 立香はそう言ってエレシュキガルを残して立ち上がると、"女神に出せるようなお茶菓子なんて家にあるかな?"等と思いながらキッチンへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「美味しい……」

 

 キッチンから戻ってきた立香は、比較的高級な緑茶を淹れ、彼の住む街では有名な和菓子屋のカステラと、緑茶に合うかは謎であったが1番高そうだったのでマカロンをお茶請けにして、部屋の中央にある卓袱台に座るように促したエレシュキガルに出している。

 

 口にするなり、ポツリと呟いて目を輝かせたエレシュキガルの反応から"口に合ったかな?"と立香は考え、その様子に嬉しく思っていた。

 

「冥府にこんなものはないのだわ……」

 

 しかし、お菓子を食べていると何故かそんな言葉を溢しながら、酷く煤けたように背中に影が差すエレシュキガル。そんな様子の彼女にどうしたものかと立香が考えていると、彼女は自分でそれを振り払うと、彼に声を掛ける。

 

「も、もてなしありがとう……じゃなくて、それで願いは決まったのかしら?」

 

「願い……」

 

 立香は思い返してみるが、やはりこれと言って願いという願いは特にない。それを伝えて帰って貰おうかと考えていると、彼の友人が日頃から"彼女が欲しい"とよくぼやいていることを思い出した。

 

 まあ、その友人はそう言いながらもセクハラ、覗き、R-18指定の物を平然と学校に持ち込み人の目につくところでやり取りをする、といったことをしているため、彼女が出来ない理由は火を見るよりも明らかなのだが、今は関係のないことだ。

 

「君のような女神に――」

 

 しかし、立香とて聖人ではないので、そういったことに関心がないかと問われれば嘘になる。よって、小さな願望としてはこれ以上ないほど上等なものであったと言えよう。

 

「ずっとそばにいてほしい……っていうのはやっぱりダメですよね?」

 

「――――――――――へ?」

 

 たっぷりと時間を空け、口を開いたまま、呆けた様子のエレシュキガルは間の抜けた声を上げ――その直後、彼女の体が激しく光り輝く。

 

 それに立香が驚いていると、直ぐに光は止み、その場に尚も呆けた様子のエレシュキガルだけがポツリと残されていた。

 

「た……大変なのだわ!?」

 

 すると、ハッとした様子でなぜか青い顔に変わったエレシュキガルは、"電話お借りします!"と言いながら立香の携帯電話を借りて部屋の隅に移動すると、こちらに背をむけつつどこかへと電話を掛ける。

 

 

「もしもし、エレシュキガルですが――はい」

 

「いえ、先ほどの願いは流石に……え? アレもあり……? そんな!?」

 

「ま、待ってください!? 私には冥界での仕事がまだまだ沢山あって――え?」

 

「折角だから君は生まれてからずっと働き過ぎだし、たまには休め? 他の神話体系の神々も協力するから1世紀ぐらい余裕? そんな殺生なのだわ!?」

 

 

 暫くして電話を終えたエレシュキガルはその場にへたり込む。心なしか彼女のツーサイドアップがしなしなになったように見えた。

 

「――もう、先ほどの願いは受理されてしまって変更できないのだわ……」

 

「えっと……それって……」

 

「私は貴方が死ぬまで側に居なきゃらならないってこと……強制力も働くだろうし……」

 

 エレシュキガルはわなわなと震え出し、立香の方へと振り返る。その顔は真っ赤に染まっており、少しだけ目の端に涙が浮かんでいるようにも見える。

 

「な、なな、な……なんてことしてくれたのだわー!!!?」

 

 エレシュキガルは立香に詰め寄ると、ガクガクと彼を揺すり、そんなことを叫んだ――そんな矢先である。

 

「さっきから、うるさいわね。立香、一体何をやって――」

 

「あっ、母さん……」

 

「えっ……貴方のお母様?」

 

 すると立香の部屋の扉が開き、立香と似た顔の女性が現れる。女性――立香の母親は言葉を途中で止め、唖然とした表情で眺めていた。

 

 現在、エレシュキガルが立香に詰め寄る形になり、図らずも身体を密着させる構図になっているため、ここだけ切り取って見れば、これから男女が致す前のように見えなくもない。しかも、エレシュキガルの服装は控え目に言っても露出度が高く扇情的である。これを勘違いするなと言う方が無理があるだろう。

 

「オホホホ――試験勉強に励むみたいなこと言ってたから感心したら随分なご身分ね」

 

 立香の母親は、笑みを浮かべつつも額に青筋を立てており、片手の拳がわなわなと震えている辺りから、明らかに怒ってますといった様子である。

 

 無論、立香の母親が思っていることは完全な誤解であり、立香とエレシュキガルの間に、そのような事実は一切ないため、彼は弁解しようとした。

 

「母さん、これは誤解で――」

 

「違うもヘチマもあるか! 家の家訓を言いなさい!」

 

 突然だが、藤丸家は魔術家である。

 

 とは言え、この世界においては魔術家というものはさして珍しいものでもなく、神々や天使や悪魔や妖怪といった伝承上の存在が実際に存在することを知っており、魔術が使える人間程度の認識で間違いはない。

 

 その強さも家によってピンキリであるが、概ね聖書に載るような天使や悪魔を超えることはまずない。所詮はその程度のものである。

 

 立香の藤丸家もいわゆる普通の魔術家であった。要するに世界の裏側について知っているだけの一般人なのである。それに何か問題があるのかと言えば、魔術家には個々で独特な仕来たりや風習があることがある。藤丸家にも例に漏れず、それがあるのだ。

 

「えっと……"常に優雅たれ"?」

 

「それは私の家の方でしょうが! いや、それもあるけど違う! "男女7歳にして席を同じゅうせず"よ!」

 

 要するに7歳にもなれば、男女の別を明らかにし、みだりに交際してはならないということである。まあ、この場合は単純にセッ○スに及ぶんじゃねーよと言っているようなものであろう。立香からすれば酷い濡れ衣である。

 

「血は争えないって奴ね……」

 

 やや遠い目をしながらそう言った立香の母親は良い笑顔になると、親指を立てて部屋の外を指差した。

 

「ゴー! 暫く帰ってくんな」

 

「アッハイ」

 

 こうして、立香は屋外で頭を冷やすことになった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 快晴の星空の下。立香はエレシュキガルを連れて公園に来ていた。

 

 ベンチに二人は並んで座っているが、いつもと特に変わらない様子の立香に比べ、エレシュキガルはこの世の終わりのような表情で青い顔色を浮かべている。

 

「あ……ああ……私なんかを抱えたばっかりに貴方が帰る家を失ってしまったのだわ……」

 

「いや、2~3時間もしたら帰れると思うから大丈夫だよ」

 

 立香からすると、母親の行動は珍しくないということなのであろう。しかし、それだけではエレシュキガルを安心させれないと思ったのか、彼は更に言葉を続けた。

 

「エレシュキガルさんのこともちゃんと話すからさ。誤解だって分かってくれるよ。それに元は無茶苦茶なことを言った俺が悪いんだから……本当にごめんなさい」

 

「そ、そう……エレシュキガルでいいわ。申し訳ないけど、長い付き合いになると思うし……」

 

 あまりに自然体かつ朗らかな様子の立香に、今にも胃の中身を吐き出しそうな様子のエレシュキガルも安堵を浮かべる。

 

 立香としては"なぜここまでこの女神様は腰が低いんだろうか?"と疑問に思いつつ、公園に自動販売機があることに気付く。

 

「ちょっと待ってて」

 

「えっ? ええ……?」

 

 エレシュキガルに声を掛けてから立香は立ち上がって暖かい飲み物を購入した。まだ、夜は冷え込む季節のため、彼女を思ってのことである。

 

「どうぞ」

 

「あ、ありがとう……美味しい……」

 

 立香から渡されたミルクティーに口をつけたエレシュキガルは、味に頬を綻ばせて笑う。その動作と様子を見た立香は自分も嬉しくなり、小さく笑みを浮かべた。

 

「えっと……その……」

 

「はい?」

 

 そして、立香は頭を掻きつつ、やや歯切れの悪い様子でエレシュキガルに声を掛ける。両手を添えて飲み物を持ちながら彼女が小首を傾げて彼の言葉を待つと、彼は少し恥ずかしそうな様子で口を開いた。

 

「これからよろしくお願いします。女神さま」

 

「――ええ……! そうね……こうなった以上は、女神として確りとお勤めするのだわ!」

 

 エレシュキガルも今の今まで沈んでいたが、自身の新たな役割に意を決した様子で今までの彼女の中では一番力強い声で答える。

 

 こうして、特に取り柄のない一般人と、冥界の女主人との奇妙な生活が始まったのであった。

 

 

 

 







 展開がクッソ強引? 安心してください。女神を彼女にした日常系漫画――と思いきや、4割ぐらいモータースポーツ(ほぼバイク)漫画の原作(ああっ 女神さまっ)再現です。


~用語~

・お助け女神事務所
 様々な神話体系の神々が、現代風になった悪魔の契約を見て"おー、ええやん"ぐらいのノリで数多の神話体系の主神格がわざわざ協力して大々的に作った事務所。罰ゲームに、出会いに、 女神の新人研修に等々、女神たちにそれなりの人気を博している。

女神と人間と契約には――。

①その人間と最も相性の良い事務所にいる女神のもとへつながる。

②呼び出しを受けた女神が地上界に降臨。

③女神が契約者の願い事(ただしあからさまに悪意のある願いは拒否される、またはそういう願いを言いそうな人の電話はつながらない)を聞き入れ事務所へ送信。

④その女神の属する神話体系の主神に受理される(内容や事情によって受理されないこともある)。

⑤契約成立。

 ――と言った非常に見覚えのある経過で契約がなされる。



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