お後がいいので短めですが初投稿です。
[ライザー・フェニックス様の"女王"、戦闘不能!]
「な……何が起きた……?」
フェニックス眷属の王――ライザー・フェニックスは怒濤と言えてしまえる程の回数流された、自身の眷属が脱落するアナウンスにより、唖然とした様子で口につけていた紅茶を床に溢す。
何せライザーは公式戦でここまでこっぴどくやられたことはない。というより、既に野球で言うところのコールド負けにも等しい状況である。
「マズい……!」
公式戦に参加している上級悪魔が、ルーキーですらない上級悪魔に実質的なハンデマッチにも関わらず、たった数分で眷属を壊滅させられた。この事実だけでゴシップ記事が出来上がる程度には失笑モノの状況であり、既に勝っても負けても家名に泥を塗ることはほぼ間違いなかった。
ライザーがその事実に対して、何処へ向けられる訳でもない怒りを覚えていると、窓から差し込んでいた月の光が遮られて影になったことでそちらを見る。
そこにはドラゴンを模したデザインだという事のわかる"赤い鎧"を纏った人型の何かが窓の外に浮いており、ライザーを見下ろしていた。
「屋上に上がって来いライザー。一騎討ちだ」
「な――!?」
ライザーが驚いたのはその容姿ではない。投げ掛けられた言葉が、豚に真珠だと足蹴にしたあの青年そのものであったからだ。
それはたった10日で、"
(そ、そんな馬鹿な……つい先日まで、ミラにいいようにされていたんだぞ!?)
内心ではそう驚愕しつつも、眷属を全滅させられた状態で向こうからの一騎討ちに応じないことは、流石のライザーと言えども貴族悪魔として出来るわけがなく、重い腰を上げて屋上へと向かった。
◇◇◇
「来たなライザー!」
屋上には全身を覆う龍を模した赤いプレートアーマーを纏う"
ライザーが屋上を見渡してみるが、そこには他のグレモリー眷属は1人も見当たらない。回復神器を宿した僧侶すらいないのだから、つまりは本当にイッセーはライザーとタイマンで戦う気なのであろう。
「リアスたちはいないのか……本当に一騎討ちを所望されるなど舐められたものだな……!」
「舐める? 冗談じゃない――まだ、俺が加減が出来ないから危ないだけだ」
ライザーの言葉にそう切り返すイッセー。実際、"
「………………」
「………………」
そして、1拍の間があった後、どちらからともなく動くと、ライザーは炎の翼を展開し、イッセーは背中から魔力をブースターのように用いて互いに空へと飛び上がった。
「なにィ!?」
飛び出してから数秒後、驚くことになったのは他でもないライザーである。
何せ、フェニックスは風と炎をも司るため、鳥のように空中戦に慣れた悪魔家だが、イッセーの飛行技能は、それとそう変わらない程に達しており、如何にライザーが縦横無地に飛ぼうとも容易に並走してきたのだ。
「くっ!?」
「――ッ!」
その上、ライザーは撃ち落とすために数多の炎弾や、風の刃を放つが、イッセーはまるで始めからそれを予知しているかの如く、最小限の動作かつ当たる直前の紙一重のところで躱し続けることで、並走を維持しており、粗削りながら生え抜きの技量を感じさせる。
(まてまてまて可笑しいだろ!? 一体、何をしたら……いや、何と戦ったらここまでの飛行能力がたった10日で身に付く!?)
通常の悪魔ならば一生掛かってようやくの身に付くかもわからない飛行技能を、それだけの期間で身に付けたことに驚くと共に全く当てられないことに僅かずつ焦りが生じ、ライザーは幾らか欲張った攻撃を放つ。
「消し飛べぇ!!」
それは小さな太陽のような炎弾であり、これまでとは異なり、イッセーの目の前に届いた瞬間に大爆発を起こし、爆炎がイッセーを包み込む。
「ふははは! 馬鹿め! 何度も同じ手は――」
「ああ、同じ手過ぎて欠伸が出るかと思ったぜ!」
強い攻撃を放った後であり、イッセーが爆炎で姿が見えなかったことで、空中で動きを止めていたライザーの目の前に爆炎の中からイッセーが現れる。更に片腕を振りかぶっており、既に避けることは叶わないであろう。
少しだけ鎧に煤や焦げ跡が見えるが、全く行動に支障はない程度であり、それにライザーは驚くが、如何に力が強まろうと、不死身の再生能力を持つフェニックスにとっては何をされても無意味だと考え、逆に攻撃後に反撃に出る手段を考え始める。
「喰らえライザー!!」
「何を馬鹿な――」
イッセーは指を2本立て、ライザーの胴体に突き刺す。その指はライザーの赤熱する体に深く突き立ち、貫かんばかりの衝撃を与えるが、再生能力のあるライザーは意に介さず――。
ここでオリオンがグレモリー眷属に与えた秘策についての話をしよう。
例えば天使や堕天使は光力を発生させる器官を体内に持ち、悪魔は魔力が発生する器官を体内に持つ。それらは大小あれど全て等しくそうであり、普遍的かつ常識的な事だ。
故に魔法とは、奇跡とは、実際に言葉のような意味合いはなく、科学的に証明出来てしまう。そのため、悪魔の貴族家にそれぞれにある能力というものも決して魔法のような代物ものではない。
例えばバアル家にある"滅びの力"には魔力を発生する器官を通し、他の悪魔にはない特殊な器官や構造による発生機序を辿り、力の行使に至る。故に幾ら能力が逸脱しているからと言って、その生物学的な枠組みから外れることもほとんどない。まあ、"超越者"等と呼ばれる程の特異性があれば話は別だが、フェニックス家から輩出されたという話がない以上は関係のないことであろう。
故にフェニックスにもまた不死身足り得る再生力を発現に至る器官と構造を体内に有している。そして、それは"神話のフェニックスでも悪魔のフェニックスでも大差ない"のだ。
「――――!?」
そのため、最高の狩人であるオリオンは知っていたのだ。不死身の体内の深くにある再生器官において、破壊や消滅ではなく損傷させることにより、一時的に著しく再生能力を減退させる唯一の場所を。
「余所見すんな!!」
「がはぁ……!!!?」
だが、実際のところこのような神業染みた外法は、最初の1回でしか使えないようなものであろう。しかし、オリオンからすればフェニックスをその1回、続けざまに放たれた2本目の矢で穿ち殺してしまえばいいだけの話。
そして、今この瞬間において、再生能力が減退するほんの数秒の時間は、2人にとっては余りにも長かった。
突然の再生能力の著しい鈍りに困惑するライザーの顔面に真っ正面から叩き込まれたイッセーの赤い拳は、岩石さえも軽く砕くような威力を持っており、ライザーの鼻の骨と前歯を容易くへし折り、顎の骨にヒビを入れる。
「うおおおぉぉぉぉおぉぉ!!!!」
「――――――――!!!?」
更に間髪入れず、イッセーはライザーの全身を殴り続ける。当然、語るのも億劫なほどブーステッド・ギアによって倍加されているイッセーは、力だけならば既に軽く最上級悪魔に達しており、その一撃一撃が肉を断ち、骨を砕き、五体を擂り潰す。
それによる物理的な痛みと苦しみ、そして自身の体内から直接響く体を内外から破壊される音は圧倒的な恐怖を与え、フェニックス家故に痛みに慣れていないライザーの心をへし折ることは余りにも容易かった。
「――オラァッ!!」
最後の一撃が腹に突き刺さったライザーは、空から真っ逆さまに叩き落とされ、丁度真下にあった新校舎の屋上を突き破って倒壊させつつ、全く勢いは衰えずに1階の床まで衝突する。
その余波だけでライザーが突き破った場所から左右に数mに渡って新校舎が崩壊しており、その凄まじい威力の高さが伺えよう。
「がっ……は……あ……ひ、ひぃ……!?」
土煙が晴れた先には再生能力は既に戻っているにも関わらず、恐慌状態に陥っているため、満足に再生されていないライザーが現れる。
そして、瞳に明らかなイッセーへの恐怖を浮かべたライザーの視界に映ったものは――明らかに魔王クラスまで高められた魔力によって練られた魔弾をこちらに向けられた光景であった。
赤龍帝の名に相応しく、煌々と紅蓮に輝くそれは、仮に万全の状態であろうとも命中すれは跡形もなく消し飛ぶことはほぼ間違いない。まさにライザーにとって絶望の2文字以外の何者でもない様子であった。
「ま、まま……待て――」
「なあ、ライザー。もしお前が俺だったらさ」
何かを言おうとしたライザーの言葉をイッセーが遮り、更に言葉を続ける。
「撃たない理由があると思うか?」
「――ぁ」
ライザーはイッセーに対してオカルト研究部の部室で行った事や、罵倒を思い出し、単純な私怨でこの場にいるのなら既にどうやっても取り返しのつかない状況だということを自覚した。
しかし、ライザーの様子を見てか、イッセーは赤い鎧の中で尚も鋭い眼光を向けながら、それを否定するように更に口を開く。
「俺は部長の兵士。だからこれは部長のための一撃だライザー――喰らえ!! ドラゴンショット!!!」
「ヒィィィィィィィイィィ――!!!?」
そして、その言葉と共にドラゴンショットを宿す腕が掲げられ、強く輝くと共に、遂に精神的に限界に達したライザーが恐怖によって泡を吹いて気絶した。
それによってライザーは戦闘不能とみなされ、ゲームセットを告げるアナウンスが鳴り響く。
「……………………」
撃つタイミングはあったが、そうはせずに強制的に転移されて消えるライザーを見つつ、イッセーは無言で構えを解き、ドラゴンショットを霧散させる。
今回のレーティングゲームに臨むための修行の結果、既に魔王クラスの攻撃を容易にライザーに叩き込めるだけの実力までイッセーは引き上がっていたのだろう。
しかし、それを最後までせずにオリオンの秘策を使ったのは、師に対する敬意か、単純に自身の実力を過小評価していたのか、はたまたライザーを過大評価していたのかはイッセー自身しかわからないところだ。
「イッセー! よくやっ――」
「きゃー☆ やったわねリアス!」
「――たわっ!?」
他のグレモリー眷属と共に、やや離れて見守っていたリアスが誰よりも速くイッセーの近くまで駆け寄って来たところ、どうやってかこの空間内に瞬間移動してきてリアスの目の前に現れたアルテミスが抱き着き、リアスの顔がアルテミスの胸に沈んでいる。
そんな姿を見て、イッセーは"アルテミスさんだから仕方ない"と考えている辺り、既に適応しつつあるだろう。
「おめでとうみんな! ご褒美に私の女神像を建てることを許可しちゃうわ!」
「えっ……」
「ええ……」
イッセーは、ひとまずリアス・グレモリーとライザー・フェニックスの婚約を破談にしたことを実感し、修行は無駄ではなかったと噛み締めるのであった。
ライザーさんに原作よりもドラゴンへのトラウマを刻み込み、悪魔の社会的にも叩き落とした気がしますが、カーマちゃんとエレちゃんが可愛いことが真実なので気のせいです。
\今回の話の修行の結果/
・禁手を覚えざるおえなかった!(イッセー)
・唯一、マトモにアルテミスと空中戦が出来るようになった!(イッセー)
・魔王クラスぐらいの攻撃なら頑張れば出せるようになった!(イッセー)
・無理は嘘つきの言葉!(全員)
・アルテミスの女神像を建てる権利をやろう(グレモリー眷属)
~宝具~
女神像(アルテミス)
実際に女神アルテミスの加護が得れるありがた迷惑な石像。駒王学園の庭園に(リアスが自費で)建設した。頭にオリオンがしっかり乗っている点がキュート(アルテミス談)。加護が掛かっているので、
また、下手に加護がついているせいで女神像を蹴ったりすると、問答無用で多種多様な神罰が振り掛かるため、生徒には貴重なシンボルなので絶対に雑に扱わないようにとの呼び掛け及び、やんわりと柵で囲われ、トドメに侵入しないように微弱な人払いの結界が張られるという、石像にあるまじき管理体制で置かれている。たまに動く。多分、オブジェクトクラスはEuclid。
ちなみに藤丸家の庭にも建っている。