おまけが本編ですが初投稿です。
――9:00――
「カーマ、朝ご飯作ったけど起きる?」
「んっ……はいはい、すぐ行きますよー……」
立香に起こされたカーマは寝惚け眼を擦りつつ、半眼で答えながら彼女の1日は始まる。ちなみに今日は平日でなく、特に何も用事のない日曜日だ。
また、カーマの姿はいつもしている小さな少女の姿ではなく、立香と同じ程に見える年齢の姿をしており、豊満な体つきの美少女というのが正しいであろう。
カーマは枝豆の中身のような色合いで上下セットの寝間着姿のまま、立香の後ろを着いていき、途中で洗面台に向かうために別れ、整容を済ませてから居間へと向かった。
――9:10――
「――んっ」
箸で卵焼きに手を付けたカーマは少しだけ目を開いて止まる。それを見た立香は微笑ましげな笑みを浮かべて口を開いた。
「カーマが好きだから卵焼きは少し甘くしてみたよ。もう少し甘くした方がいい?」
「………………もっと甘くしてください」
何故か少しだけ間が空いてからカーマはそう言った。言うまでもなく彼女は甘党である。
ちなみに平日の場合は立香の学校に合わせた朝食の時間になるため、2時間ほど早まり、休日に関しても立香が先に起きて朝食を用意した上で、起きて食べるかどうか聞くのが日常化しているため、襲撃でもされない限りは基本的にカーマが立香より先に起きることはまずない。
――10:00――
『――――――』
「………………」
「………………」
そして、朝食後。歯磨きと着替えを終え、Quickと書かれたいつものTシャツにホットパンツという寝間着よりもラフな格好になったカーマは、立香と共にテレビにゲーム機を繋いでテレビゲームをしていた。
ちなみにカーマは小さな少女の姿になっており、立香の膝の上に座る形でテレビゲームをし、プレイしているのは仏頂面なカーマで、それを面白そうに眺めているのが立香という構図になっている。
「カーマ、これ今何してるの?」
「今日はナットレイと、ドヒドイデと、ヌオーと、マホイップの厳選です」
「へー、そうなんだ」
「他にもエルフーンと、オニゴーリと、トゲキッスもそのうち作りますよ」
「たくさん育てるんだね」
「ええ、私ポケモン大好きなので……」
そう語るカーマの表情は人を喰ったような笑みに染まっており、どこからどう見ても好きなモノを語る者の様子には見えなかった。しかし、立香からはカーマの頭しか見えないため、"純粋に好きなんだな"程度に感じていた。
「エルフーンとかトゲキッスは可愛くてカーマっぽいね」
「………………そうですか」
そう言われたカーマは満更でもなさそうであり、彼から表情が見えないためか、少し顔を赤くしているように見える。
「マホイップは……よつばのミルキィまっちゃに進化させましょう」
「なんか美味しそうだね」
ちなみに昼食を挟み、夕方までカーマは立香の膝に乗ってプレイしていたが、その間にトイレに立ったり、カーマのおやつを取りに行ったり、家事をしに離れる等のときに彼女は膝から降りるが、彼が戻ってくると彼女は直ぐに膝の上に乗りなおしていた。
――19:00――
「――――――(もっもっ)」
「カーマ、ご飯のお代わりいる? よそってくるよ?」
「いります」
(よく食べるのだわ……)
(リスみたいよねぇ)
ちなみに今の藤丸家で一番エンゲル係数を上げている者はカーマである。
――20:00――
かぽーん
「………………」
「………………」
夕飯の後。立香は檜の浴槽に同年代の美少女形態のカーマと並んで入浴していた。互いにバスタオルを体に巻いており、一応最低限の慎みは保たれていると思われる。
「………………なんでエレシュキガルが来てから風呂に入ってくるようになったんだカーマ?」
「うるさいです……あなたを堕落させる私の勝手でしょう? マスターは欲望丸出しで、葛藤でもしていればいいんです」
そう吐き捨てるとカーマは不機嫌そうに湯槽に顔を半分まで沈め、ブクブクと泡を立て始めた。
「というか、カーマは女の子なんだからあんまりこういうことは――」
「私は体があった頃は男神なので、男湯にも入れるので問題ないんですよーだ」
「いや、そのりくつはおかしい」
別の世界線では
――24:00――
「………………(もぞもぞ)」
寝付く時間になった頃。立香が横になっているベッドに小さな少女の姿になったカーマが入り込んできた。決して広くはないベッドに滑り込むように入り、彼と並ぶと動きを止める。
「お休みカーマ」
「はいはい、おやすみなさい」
さも当然のようにその会話が行われている辺り、風呂とは違い、いつも一緒に眠っているのは日常的な事らしい。
まあ、セイクリッド・ギアは体内にあり、保有者の臓器の一部のようなモノのため、何も間違ってはいないのだが、1日を通して他者から見れば完全に関係の近過ぎる兄妹のような何かだった。
「Zzz……」
そして、1分と立たず、立香は寝息を立て始めた。疲れていたからというわけでもなく、どこでもいつでもすぐに寝れるということが、彼の全く他者に誇れない特技のひとつと言える。
その上、誰が言ったか、"また、レムレムしている……"等と例えられるほど1度寝付くと中々起きない上、たまに妙な夢を見る事もあるのだから不思議なものだ。
「…………はぁ」
気持ち良さそうに眠る立香に溜め息を吐くと、カーマは体を彼と同じ程の年齢へと変える。そして、そっと彼の手を取ると自身の胸に置き、少しだけ強く握り締める。
「いつもおぞましいものばかり引き込んで……面倒で醜く、複雑で、ドロドロした与える者の私にさえずっとずっと与えて……本当に馬鹿で愚かな人……」
しかし、誰に聞こえるわけでもなく小さく呟かれた言葉の内容とは裏腹に、その声色は嬉しさに震えるようで、実際に彼女の体は少しだけ震えていた。
「まあ、どのみち絶対にあなたは私から逃げられない……逃がしませんからね?」
カーマは年相応の少女のように笑うと、眠る立香の頬にキスを落とす。
「おやすみなさい……私のマスターさん」
その後、赤らんだ頬を隠すように布団の中に潜ると、身を立香へと寄せ、嬉しげな様子でカーマも眠りについたのであった。
◆◇◆◇◆◇
「ふはぁ……」
神話に名高い狩人であるアルテミスとオリオンによるグレモリー眷属への修行からはや4日が経った頃。イッセーは露天風呂に入りつつ、なんだかんだ慣れてきたことを感じていた。
どうも1日目と2日目の最初は、グレモリー眷属ら全体のライザー・フェニックスになんとなく勝てるのではないかと考えていた自信をへし折ることが主な目的だったらしく、その後は非常にキチンとした修行であった。
2日目からの修行はグレモリー眷属全体が協力して連携を取れば、辛うじて時々反撃を交えて戦えるほどの難易度になっており、最上級悪魔の中堅クラスで立ち回るアルテミスと戦いになっていた。戦えるレベルで、自身たちよりも格上の相手と交戦できるということはこれ以上ないほどのプラスになるであろう。
また、グレモリー眷属がひとりでも脱落するとあっという間に瓦解するため、難易度の見極めについても非常に妥当だったと言え、その辺りの精査も1日目にしていたのかもしれない。
まあ、難易度を落とす度に多少難色を示すアルテミスを見ていると、オリオンがブレーキ兼舵取りをしていなければとんでもないことになっていたということは想像に難しくなく肝の冷える話であろう。
今は熊のゆるキャラなオリオンであるが、教示と他人の使い方の確かな手腕は、かつてギリシャ神話の大英雄のひとりであったことを感じさせた。
そんなオリオンがアルテミス共々、今回のレーティングゲームについて少しだけ不服そうな様子で愚痴を溢していたことがある。それは"グレモリー眷属とライザー眷属の戦力比が釣り合っていない"ことだ。
ちなみに王を含めず、女王9、戦車5×2、僧侶3×2、騎士3×2 、兵士1×8が悪魔の駒の価値であり、ライザー・フェニックスの駒の数は全て揃っているため、合計の最大値である39点ということになる。
それに比べてリアス・グレモリーの駒は片方の僧侶は確実に出てこないことも勘定に入れると、女王、戦車、僧侶、騎士、兵士8個で合わせて、28点ということになる。点数上で11点グレモリー眷属は負けており、はっきりいってライザー有利のハンデキャップマッチもいいところだ。公式戦ではよくある話であるが、これは互いの家同士の非公式戦だ。ハンデの付け方など幾らでもあるであろう。
まして、ライザー・フェニックスは公式戦で多数の経験があるにも関わらず、10日の猶予期間というそれだけでレーティングゲームが覆せたら世話はないと他の上級悪魔に鼻で嗤われそうなハンデだけ付け、故に他に何も自らにハンデを課さなかったライザーに対して"客観的なら大人げねぇし、主観なら男らしくねぇ"とオリオンはぼやいていた。
蛇足だが、逆にアルテミスは"酷いわ! 恋する乙女の敵ね!"等と主にライザーの態度などについてぷんすか怒っていたりする。
そもそもチェスに準えるのならば、グレモリー眷属は最初から僧侶・戦車・騎士が一体ずつ参加に足りない。その辺りの事情はライザーも知っている筈のため、今回のレーティングゲームは非公式で行うため――むしろ非公式なのだから本来ならばむしろ、自主的に自身の眷属をそれぞれ足りないだけ貸し与えてハンデにし、将棋でいうところの駒落ちで女王を抜く程度の
ついでに言えばフェニックス家は"フェニックスの涙"というRPGでいうところのエリクサーのようなものを精製出来る唯一の存在であり、レーティングゲームでの所持も数量限定で認められているため、十中八九女王辺りに持たせていると思われる。
まあ、要するにレーティングゲームでライザーがリアスに敗北をすれば、公式戦に参加すらしていない新米の悪魔相手に、ハンデを与えるどころか何故か貰っているような状態で、公式戦に参加している筈の悪魔があり得ない敗北をした上、婚約破棄までされるというこれ以上無いほど恥辱的で、フェニックス家に泥を塗るどころか、家紋に排泄物を投げ付けるレベルでの失態になることは想像に難しくない。
むしろ、現状で絶対に負けられないのはライザー自身なのである。そもそもが、勝って当たり前の試合なのだ。
「よう、イッセー!」
「あっ、どうもオリオンさん!」
そんなことをイッセーは考えてすらおらず、ただ主であるリアス・グレモリーのためにもっと頑張らなければならないと気持ちを引き締めているとオリオンが入ってきた。
見ればこれまで肩に着ていた袈裟のような衣から、白いタオルを腰に巻くごく普通の入浴のための装いに変わっている。
「よっと……」
すると露天風呂に入るなり、オリオンは風呂用の桶を
「えっ……? 何してるんですかオリオンさん?」
「そんなの決まってるだろイッセー……覗くんだ」
そう言われてイッセーはオリオンが2日目の朝に持ち掛けて来たことを思い出す。
そして、修行という名のシゴキを前に衝立の向こうにグレモリー眷属の女性陣とアルテミスが使っている女湯があることに今更ながら気付き、彼女らの声が微かに聞こえることから入浴しているということも理解できた。
「えっ!? でもオリオンさん、アルテミスさんにお仕置きされたばかりじゃ……」
オリオンは持ち掛けた直後にアルテミスから握り潰され掛けただけに留まらず、それからも毎日のように何かしらセクハラ染みたことをしようとして、その度にどう見てもキツい折檻をアルテミスから受けている。まあ、誤解やアルテミスの思い込みで折檻されることも時々あったが、6割強はオリオンの自主的な行動によるものだ。
「バカ野郎。それとこれとは話が別だい。いいかイッセー? この薄っぺらい衝立の向こうには、可愛い子ちゃん達の桃源郷が広がっているんだ。男として……いや、男なら! 覗かない選択肢があるかってんだ!? それが女性として魅力的な彼女達に対する礼儀ってもんよ!!」
「――――!!!? オリオンさん……! 俺……間違ってました……! 部長や姫島先輩や小猫ちゃんの生おっぱいを覗きたいですっ……!」
「よし、そうと決まれば決行だ!」
そう言うわけで、オリオンに乗せられつつ、イッセーはオリオンを頭に乗せて、桶の踏み台を登る。同じ男性である木場裕斗は、既に風呂から上がった後のため、最早、彼らを止める存在は居なかった。
「よーし……よーし……もうちょい……もうちょいだ」
そして、高い衝立を超えるまで、後数cmというところになり、オリオンとイッセーの表情が嬉々としたものへと変わる。
「ああ、遂に――」
衝立をオリオンの頭が超えようとした直前、バリッと破砕する音が響き、白くほっそりとした女神像のような腕が衝立を貫通してオリオンを掴んだ。
「ダーリン」
そして、底冷えするほど抑揚のない声でアルテミスがそう呟いた声が聞こえる。
頭が真っ白になりつつ、思考が冴えたイッセーは"あれ? そう言えば神話でアルテミスさんの沐浴を覗いた奴ってとんでもない目に合ってなかったっけ?"と自身の行動が、パンドラの箱を開けるようなものだったのではないかと既に手遅れのことを自覚した。
「あっ、アルテミス……まっ――」
「あはは! ダーリン、ここね!」
衝立に空いた穴からイッセーは、目を細めて笑うアルテミスの屈託のない笑みと、いつもと変わらない調子に戻った言葉を聞き――。
「――――声筒抜けだよ……?」
次に吐かれた声が、イッセーがこれまでのアルテミスから聞いたことがないほど、ドスが聞いており、まるで別人のように思え、目を細めた笑顔だと思っていた表情は、よく見れば薄目を開けており、笑顔でも何でもなかったということに気づいた瞬間、明確な恐怖を味わった。
つまりこういうことである。アルテミスはオリオンが露天風呂に入ってきた時点で、衝立の前におり、聞き耳を立てていたのだ。流石のアルテミスの愛の重さと、オリオンへの女性関連の信用の無さと言える。
「う、うわぁぁぁぁ!!!?」
恐怖に駆られたイッセーは、衝立から逃げ出し、露天風呂の洗い場に敷かれた石の床を走り、脱衣場へと逃げる。しかし、その行動は余りに手遅れであり、足取りは酷く緩慢であった。
「あはは、どうしようかなダーリン……? あっ、そうだっ! 天照ちゃんから教わった
「――――――ヒイッ!!!? 頼むアルテミス……! 後生だからそれだけは止め――」
そう言うとバスタオルを体に巻いているアルテミスは、オリオンを掴んだまま空高く飛び上がり、弓を構えるとイッセーへと狙いを定めた。
それは、オリオン自体を矢に番えることで可能とした、不可避の折檻である。
「
どこかで聞いたような響きの掛け声と共に射出されたオリオンは、これまでグレモリー眷属らに放ったアルテミスの矢の中で、最大の威力と追尾性能を持ち、凄まじい速度でイッセーへと迫り――。
「――――――――――」
「――――――――――」
――イッセーの股間にオリオンが直撃した。
これこそ、お仕置き兼男性特攻宝具。マスコットであるオリオンを矢の代わりに番え、男性の股間めがけて射出する特殊攻撃。
さる良妻狐な傾国ミニスカ和服巫女兼隠れ太陽神はこう言った――。
"ウワキ必ず殺すべし"と……。
すこしだけですが、やっとこの小説で初めての戦闘描写を出せましたね!(迫真)
イッセーくんもオリオンも生きているので次回は流石にレーティングゲームまで飛ぶと思います。
~QAコーナー~
Q:
A:公式の宝具です(公式が最大手)。後、この作品の天照さんは仮に出すならば本体の頭の中身がみこーん!だと思います。