現在、グレモリー家長女のリアス・グレモリーと、フェニックス家三男のライザー・フェニックスとの非公式のレーティングゲームが行われる会場の観客席。
多数かつ多様な悪魔家の貴族悪魔たちが、今回のイベントを観戦するためにところ狭しと集まっていた。主にライザー・フェニックスが、自身の勝利を見せつけるためにあえて流した噂を聞き付けた貴族悪魔たちが多数を占めているだろう。
しかし、そんな中でグレモリー家側の来賓用の観客席に座る者で、数名の悪魔ではない者たちが存在することにより、悪魔らは等しく畏怖に近い感覚を抱いていた。
何せ、その数名が揃いも揃って魔王クラスを遥かに超え、あらゆる神話に名だたる神々なのである。
「あっ、立香だぁ! やっほー!」
「おう、立香じゃねぇか」
「こんばんはアルテミス、オリオン。引き受けてくれてどうもありがとう。これ、せめてものお礼にどうぞ」
「やったぁ! 立香のお菓子だ! ダーリン一緒に食べよっ?」
「わかったわかった。しっかし、相変わらず、物騒なメンツ連れてんな……。前会った時より、ひとり増えてるし……今に星座になっちまうぜ?」
「あはは、その時はその時かな。あの3人になら殺されても文句は言えないよ」
「お前、ホントそういうところだぞ……モガッ!?」
「ダーリン、あーん♪」
まずは狩猟と貞淑を司る月の女神"アルテミス"及びギリシャ神話最高の狩人"オリオン"。
如何なる者でも名を知らぬ者のないほど著名なカップルであり、2人の数奇な半生と悲恋は余りにも多くの者が知るところだ。それ故に信奉者も多く、見たこともなく憧れられる存在であろう。
「ほらカーマ、売店でキャラメルポップコーン買ってきたよ」
「…………頼んでないですよ。この姿はTPOに合わせているだけで、子供扱いされるのは心外ですよ!」
「あはは、そっか。じゃあ、買い間違えちゃったか」
「いや、ちょっと待ってください。別にそのポップコーンが要らないとは言っていません」
そして、インド神話に置ける愛の神"カーマ"。
現在はセイクリッド・ギアとなっているが、史上最悪のセイクリッド・ギアとも謳われる"
しかもカーマに関しては、ある意味自称が付く悪魔らの魔王とは異なり、仏教において正しい教えを害し、知恵や善い性質を失わせる天魔の王――すなわち"本物の魔王"の一柱である。
「悪魔が一杯なのだわ……それにスゴいスタジアム……」
「エレシュキガルはレーティングゲームを見るのは初めて?」
「ええ! だから今日は楽しませて――あっ……! ち、違うのだわ!? 別に立香のお友達をオモチャのように思うとかじゃなくて……」
「あはは、いや。グレモリーさんたちも観客席には楽しんで見てくれた方が喜ぶと思うよ。事情はあるけど、レーティングゲームは悪魔のスポーツだからね」
「そ、そうね……なら今日は楽しませてもらうことにするわ」
次に冥界の女主人"エレシュキガル"。
メソポタミア神話の冥府に当たる死後の世界を統括し、数多の死に連なる権能を持つ死の腐敗の女神。
また、暗い世界で抑圧された生活を送っていたために、その性格は短気でねじ曲がっているといわれ、美しいものを妬み、醜いものを笑い、欲しいものは他人の手に渡らないよう殺してしまうと言われている。
「どうかしら?」
「ニュクスさんは体つきが素敵だからスゴく似合ってると思うけど、背中が寒そうかな。俺の上着いる?」
「くっ……また、夜なべして作った"童貞を殺すニット"も通じないのね!? ――折角だから上着は掛けて欲しいわ」
最後に夜の女神"ニュクス"。
ギリシャ神話において主神のゼウスさえ畏怖を抱く、原初の女神であり、ギリシャ神話に連なる神々や英雄ならば、名前を出すだけで表情が変わるほどの女傑だ。
闇に属する者の中でも至高かつ、滅多に表舞台には上がらない謎に満ちた存在であるが、その全身から溢れる神性と色香は、ときに大淫婦のようにあらゆる者を狂わせることであろう。
「こ、こんばんは! 私、エレシュキガルっていい――」
「あっ、エレちゃんだぁ! 知ってるわよー、いつも宴会のときに隅っこにいるものね!」
「うっ――!?」
「それだけじゃないわアルテミス。誰にも話し掛けないでじっとして居て。近くにいる他の神々が笑うと、それに合わせて空気を読んで愛想笑いしたりもしているわね」
「ううっ……!?」
「へー、ひょっとしてあなたって友達とか少ないんですかー? そんな気してましたけど、かわいそー」
「虐めないで欲しいのだわ……」
計4柱の神話に名だたる女神がいるのだから、観戦に来た悪魔たちからすれば、これから始まるレーティングゲームよりも気が気でないと言える。これが女神の悪戯だというのなら神罰とは如何なるものだろうか?
しかし、女神が観戦すること以外は全く問題なく、定刻とおりにレーティングゲームは進む。
司会がグレモリー眷属と、フェニックス眷属の紹介をし終えると、今回のレーティングゲームのバトルフィールドを映した立体映像が投影され、それは駒王学園をそのまま模した場所であった。
そして、ゲームの開始の合図と共にグレモリー眷属が旧校舎のオカルト研究部室へ、フェニックス眷属が新校舎の生徒会室に転移する映像が映る。
「始まったみたいだね。ところでオリオンは今回のレーティングゲームでグレモリーさん達が勝てると思う?」
「おう、当たり前だ。何せ俺もアルテミスも戦いに関しちゃちょっとしたものだからな。今やれることは全部やったつもりだ」
立香から問われたオリオンはそう言うと、"それに"と言って言葉を区切り、少しだけ肩を竦めると運のない相手を見るような表情を浮かべる。
「女神に比べりゃ、不死鳥ぐらい敵じゃねぇよ」
[ライザー・フェニックス様の"兵士"3名、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"騎士"、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"兵士"3名、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"騎士"、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"兵士"2名、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"戦車"、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"僧侶"、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"戦車"、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"僧侶"、戦闘不能!]
[ライザー・フェニックス様の"女王"、戦闘不能!]
そして、オリオンの宣言通り、僅か数分後には会場に次々とフェニックス眷属の脱落を告げるアナウンスが響き渡り、戦局は大きく動いていた。
◇◆◇◆◇◆
"自分達は強くなったのだろうか?"
それはレーティングゲームが開始される数分前ですらグレモリー眷属のほぼ全員が抱えている不安事であった。
『だいじょーぶ! フェニックスぐらいなんとでもなるわ! 私が保証しちゃう! がんばって!』
そう言って送り出したのは修行の先生を務めていたアルテミスだったが、アルテミスがあのような性格なだけにイマイチ信用に欠け、不安の種は拭えない。
そもそも修行では結局、終止遊ぶような様子で最上級悪魔程に手加減をしているアルテミスに翻弄されっぱなしであり、彼女の緊張感に欠ける風体と強者の余裕とでも言うべき態度が相まって、まるで自分達が彼女を相手に成長出来ているという実感がなかったのだ。
しかも修行の後半ではアルテミスが大きさも実力もグレモリー眷属と戦っているときのままで数体に分裂し、集団戦の修行が行われたため、更なる実力の開きを実感する他なかったという理由も拍車を掛ける。
しかし、グレモリー眷属らは2つほど誤解をしていた。
まずはアルテミスは終止最上級悪魔程の実力に留めていたのではなく、グレモリー眷属の急激な成長に合わせて実力を幾らか引き上げており、彼女らが気づかないうちに最終的には魔王クラスに手を掛ける程度の実力を出して修行を行っていたのだ。
もうひとつはグレモリー眷属の構成員のポテンシャルの高さ。彼女らはアルテミスとオリオンも純粋に関心する程の才能を持っていたのだ。そんな彼女らを死力を尽くさせてアルテミスとオリオンが1週間みっちり鍛えたのである。
そんな彼女らが、これまで討伐して来たはぐれ悪魔よりは強いが、最上級悪魔に届いている筈もない程度のライザー眷属を相手にした場合――。
「オラァァァ!!」
『
「ぐぅぅぅ!? そ、そんな馬鹿な……これがあのときの男――」
「まだまだぁ!!」
「がぁぁぁっ!!?」
開始から僅か5分足らず。"
「イッセーくんの方も片付いたみたいだね」
イッセーよりも先にフェニックス眷属の兵士――シュリヤー、マリオン、ビュレントと、騎士のカーラマインを倒したグレモリー眷属の騎士――木場佑斗は彼と合流する。流石は速さに長ける騎士の駒の転生悪魔と言ったところであろう。
「私が最後ですか……」
最後に2人に合流したのはグレモリー眷属の戦車――塔城小猫である。彼女はフェニックス眷属の兵士――ミィ、リィと、戦車の
これにより、既にライザー・フェニックスの眷属は、王を除けば僧侶2体と騎士1体と女王の駒しか残っていない。
[ライザー・フェニックス様の"僧侶"、戦闘不能!]
そして、たった今、フェニックス眷属の僧侶――
3人は自分達がいる校庭とは逆の場所で、聳え立つ柱のような"雷光"の輝きが起きているところを目にし、グレモリー眷属の女王――姫島朱乃が行ったことだと全員が理解する。
「い……一体なにが……起こっていますの……?」
そんな光景を3人が目にしていると、新校舎から唖然とした様子のフェニックス眷属の僧侶で、ライザー・フェニックスの妹であるレイヴェル・フェニックスが現れ――それを認識した瞬間、木場が弾丸のように飛び込む。
「お下がりくださいレイヴェルさ――」
それに対応するため、レイヴェルの後ろに控えていたフェニックス眷属の顔の半分に仮面を着けたもう片方の戦車――イザベラが彼女の前に出ると――。
「遅いよ」
「――――――!!!?」
「は――?」
直後にレイヴェルが認識するよりも先に殺到した木場が、片手に持つ"ナイフのように小さな魔剣"でシーリスの喉元を斬り裂く。
当然、フェニックスでもなければ、それをされて無事で済む訳もなく、戦闘不能と判断されたシーリスは転送されて消えていった。
[ライザー・フェニックス様の"戦車"、戦闘不能!]
「ぐぅ――!?」
「余所見はいけないね」
そして、間髪入れずに木場はレイヴェルにナイフを振るい、一文字に両目を斬り裂いた。当然、再生能力を持つフェニックスにとっては大した損害にはならないが、半分に割られた眼球が残っているため、一時的に視力を奪われる。全て消されていれば即座に再生出来るが、部分だけ残されているため、僅かに再生に時間が掛かった。
「せいっ!」
「――――!?」
そのうちに到着した小猫にレイヴェルは殴られて怯みつつ吹き飛ばされ、眼球を再生することで視界が戻ると――目の前で既にナイフを振った様子の木場が映った。
「またですのッ!?」
再び、ナイフの一閃と共に眼球が裂かれたことで、レイヴェルの視界が奪われる。
それに戸惑っている最中――ペタリと手で体に触れられたことに感触で気づく。
「"
「えっ……?」
"ビリッ"と、自身から何かが破ける音が響くと共に、全身をあってはならない解放感と、肌を風が撫でる感覚を覚える。
それに疑問を覚えているとレイヴェルの眼球が再生し、視力が回復してしまった。
まず、目の前には鼻の下を伸ばした様子のイッセー、非常に申し訳なさそうな様子の木場、イッセーをゴミを見るような目で眺める小猫が映る。
そして、違和感の正体を探すために自分を見ると――一糸纏わぬ姿であった。
「なっ……な、なな……」
数秒間が空き、沸騰するヤカンのように耳まで真っ赤になったレイヴェルは体を隠しつつ、倒れるように崩れ落ちると涙を浮かべながら叫ぶ。
「り、リタイア……リタイアですわぁ!?」
その言葉により、レイヴェルは戦闘不能とみなされ、転送された。
[ライザー・フェニックス様の"僧侶"、戦闘不能!]
◇◇◇
一方その頃。
「うっひょー! やったぜイッセー!
「だぁりん……?」
「あら見た目によらず着痩せするタイプね彼女」
「まあ、マスターのタイプではないですねー(もっもっ)」
「は、は、は、ハレンチなのだわ……!?」
「イッセーらしいなぁ……」
グレモリー眷属の来賓用の観客席ではそんな思い思いの言葉が呟かれていた。
◇◇◇
「うふ……ふふふ……うふふふふふ!! あなた弱過ぎて話になりませんわ……」
「くっ……こ、こんな筈が……!?」
「あらあら? "フェニックスの涙"は使いませんの? ああ、ごめんなさい。もう全部使い切ってしまわれましたわね?」
校舎の近くの森で、朱乃の戦っているのは、炎の魔力を得意とし、
しかし、巫女服を着た姿で服にヨレすらない朱乃に比べると、ユーベルーナは所々焼け焦げており、肩で息をしている姿は明らかに満身創痍である。
「ふざけるな……クソぉぉぉ!!!?」
半ばヤケクソ気味にユーベルーナは朱乃へ魔法を放つ。
そして、魔法は朱乃へと殺到し――当たる直前で少しだけ斜めに体と首を傾けることで魔法は素通りし、空で花火のように爆発した。
「はぁ……直線にしか動かない魔法って本当に避けやすいのですわぁ……。私に当てたければ、避けても4~5回は再度向かってくるぐらいの魔法にしてくださいまし」
「馬鹿にして……!」
そう言って溜め息を漏らす朱乃は、どこか遠い目をしていた。
実際、朱乃はユーベルーナとの戦闘が始まってから一度たりとも攻撃を受けておらず、逆にカウンターを狙って放たれる朱乃の雷光は、全てユーベルーナに命中している。
ユーベルーナがまだ倒されていないのは、彼女にとっては屈辱なことに朱乃があえてそこまで威力のある攻撃はせずに遊んでいるからに他ならない。
ちなみに何故、朱乃の様子が明らかに可笑しく、雷光なるものを使っているかと言えば修行期間中に――。
『ねー、ねー! なんで朱乃は半堕天使なのに光力を使わないの?』
『――――そ、それは……』
『待ってアルテミス! それはこちらの問題で――』
『えー? なんでもいいけど、出し惜しみなんかしてると――間違えて殺しちゃうわよ……?』
――という低いトーンの鶴も泣く一声により、勝手にイッセーにも半堕天使ということがバラされた上に、無理矢理使用することを強要されたためである。
今回のレーティングゲームに臨むに当たり、グレモリー眷属で内心が一番荒れていたのは他でもない朱乃であった。その怒りとストレスをユーベルーナにぶつけており、要はただの八つ当たりだ。
[ライザー・フェニックス様の"僧侶"、戦闘不能!]
そんな状態でいると、2体目の僧侶が戦闘不能なったというアナウンスが響き、ユーベルーナはあり得ないと言った表情になる。
「なッ……!? レイヴェル様が――」
「まあまあ……これであなた1人ですわね」
「――がぁぁぁ!!!?」
ユーベルーナは言い切る前に朱乃は彼女に、これまでとは明らかに威力が上の雷光を落とす。
更に間髪入れずに数回雷光を当てると、全身から煙を上げたユーベルーナは遂に動かなくなり、強制転移によって回収されていった。
[ライザー・フェニックス様の"女王"、戦闘不能!]
そんなアナウンスを聞きつつ、朱乃は溜め息を吐き、ポツリと呟く。
「あんなに強い者を知ってしまうと……弱い者虐めって存外面白くありませんわね……」
これにより、開始7分でフェニックス眷属は、王のライザー・フェニックスを除き全滅したのであった。
\今回の話の修行の結果/
・リップヴァーン・ウィンクルの魔弾みたいなアルテミスの矢をそこそこ避けれるようになった!(全員)
・(後がないので)覚悟完了!(全員)
・もっと……もっと速く!(木場)
・雷光使わなきゃ……!(朱乃)
・オリオンとのゆゆうじょうパパワー!!
・目のハイライトを消せるようになった(全員)
多対多ならライザーさんも普通に勝ち目あったんですけど、原作でも何故か最初から自分が動かない上、1対多に持ち込まれたらなぁ……(しんみり)
~QAコーナー~
Q:(グレモリー眷属の戦闘力の上がり方が)どういうことなの……。
A:RPGで例えれば2面のボス(ライザー)倒すために、クリア後に解放される裏ボスの1体(衛星兵器アルテミスさん)から師事をあおいでいるような状態ですから多少はね?
Q:えっ……? レーティングゲームでライザー負けるの?
A:アルテミスさんよりライザーさんが強ければ勝てると思います。