リリカルクエスト   作:アバン流

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大変お待たせしました。
一ヶ月も更新できず誠に申し訳ございませんでした。
そしてもう一つ謝罪します。……書き終えて文字数確認したら2万字超えてました。
なので区切りいいところで一旦切ります。

今回でカレキ王との決着がつきます。
それではごゆっくりどうぞ。



第8話 『……ずるいなぁ』

 魔物たちが使う霧には、幾つかの種類がある。

 呪文を封じ込める黒い霧、体技を封じ込める白い霧、回復をダメージへと反転させる冥界の霧、技の限界を突破させる青天の霧。そして今舞台に立ち込める赤い霧は斬撃――剣技を封じ込める。

 それは強力な技のほとんどが剣技である誠の仲間たちにとっては最悪な技であった。

 

「(バギ系か逆風があれば霧を吹き飛ばせるけどないからなぁ……大体2、3分で晴れるかな?)とりあえず……みんな! 不意打ち喰らわないように警戒して!!」

 

 目の前に広がる赤い霧でカレキ王たちの姿を見失った誠はそう推測し、仲間たちに呼びかける。

 なお舞台に立つマスターは霧などで視界は塞がれるが、精霊によって観客や司会などには霧の中が見えるようになっている。

 それはさておき、霧の中からの奇襲に警戒する誠たちであったが、カレキ王からの攻撃は来なかった。

 

 しかし呪文による強化を図ろうとすると、何の前触れもなくいてつくはどうが襲い掛かり、妨害される。相手も呪文による強化を行っているのではないかと疑い、こちらもいてつくはどうを放ったり、マヒャデドスなどの広範囲攻撃を放つが何の反応もない。試合開始時と同じように不気味な沈黙が場を支配していた。

 

(態々赤い霧まで撒いたくせに何もしてこないなんて……。一体何が狙いなんだ?)

 

 このまま霧が晴れるまで何もしてこなければ、誠の仲間たちは再び剣技が使えるようになる。

 それなのに何もしてこないカレキ王は一体何を考えているのか。微かに鼻を擽る甘い香りに気付かず、その真意を読み取ろうと、やけに鈍る頭(・・・・・・)を働かせようとした時、とうとうカレキ王たちが動いた。

 

「シャアッ!!」

 

「―――くっ!?」

 

 霧の中から飛び出してきたのは、おたけびを上げながらシャディ目掛けて杖を振りかぶるマンドラゴラであった。シャディはその一撃に一瞬遅れて反応すると、剣で受け止め反撃を開始する。

 

「マンドラゴラだけで突撃してきた? それにシャディも反応が悪かったような……いや、これはチャンスだ。スカル、ガンガン行くんだ!」

 

 一体で突撃してきたことやシャディの突然の不調に疑問を抱くが、それもすぐにマンドラゴラが持つ杖がひかりの杖であることに気付いた誠は、いてつくはどうの原因はあれだろうと見当をつけ、スカルたちに集中して攻撃をするように指示を出した。しかし――

 

「ぬっ!?」

 

「……ぬおっ、離せ!!」

 

 突如霧の中からまるで生きているかのように動く鞭が二本飛び出してくると、反応できなかったサイモンとスカルの手首を絡めとる。そしてそのまま引き摺っていき、あっという間に二体の姿は霧の中へと消えさった。

 

「…………やられた。マンドラゴラもひかりの杖も囮で、分断することが狙いだったのか……。それにこの甘い匂い……どっちかが甘い息を吐いてたんだ」

 

 スカルたちが反応できなかったことや、普段ならもう少し考えるはずなのに目の前の餌に釣られたこと。この試合が始まってから翻弄されっぱなしなことに誠は自虐的な笑みを一瞬だけ浮かべる。

 

(やっぱり本気を出してきたカレキ王は強い。僕たちも強くなっていたからきっとカレキ王に苦戦しても勝てると思っていたけど……ここまで翻弄されるなんて。ここまである程度情報がそれえば、ごり押しでいけたから調子にのってた。反省しないと。……でも、これを超えられれば僕たちは更に強くなれる!!)

 

 カレキ王という強者を超えたい。そうすれば究極のモンスターマスターへと近づけるから。

 誠は熱くなってきた心を静かに落ち着かせ、目の前を見据える。そして気合を入れなおすように両手で頬を力いっぱい叩くと、霧の中に消えたスカルたちに聞こえるように叫んだ。

 

「スカル! サイモン! 合流するまで各自判断で行動して!! ……それじゃあ行くよ、シャディ!!」

 

「ええ!!」

 

 一刻も早く合流するべく、目の前のマンドラゴラを倒そうとシャディに指示を出し始めた。

 

 

 その一方でカレキ王の前まで引き摺られたスカルたちは、目の前の二本の鞭を持ったローズバトラーを睨み付ける。

 

「……戻れるか?」

 

「……無理だ。挟み撃ちにされている」

 

 気配を感じたサイモンは、ローズバトラーをスカルに任せ背後を振り向く。霧の中からゆっくりと甘い息を吐いていたマンイーターが現れた。

 

「お主らの強さは星降りの大会でよく知っておる。特にマコトが指示を出しているときはの……悪いが分断させてもらったわい」

 

 ここまでにカレキ王が誠に仕掛けた策は三つ。

 

――赤い霧を使用しての斬撃封じ

 

――甘い息で眠気を蓄積させての判断能力の低下

 

 そして霧を利用してマンイーターを中央へと移動させ、予め二本の鞭を持ったローズバトラーが二体を引っ張り出しての挟み撃ち。それらの策は全て成功した。

 今カレキ王の目の前にはマスターの指示を受けられない二体の魔物。それでもカレキ王は油断しない。いくら指示を受けられないとはいえ、この二体は誠の主力たち。分断されたときのための対策も立てている可能性があった。

 

「じゃが時として勢いも必要じゃ……行けえ、者共!! 二体を倒せ!」

 

 カレキ王の号令にローズバトラーは持っていた鞭の片方をマンイーターへと投げ渡す。

 それを受け取ったマンイーターはサイモンへと近づくと、鞭と触手を駆使して怒涛の攻撃を開始した。

 

「……ぬんっ!」

 

 背中合わせのスカルへと攻撃が行かないように、サイモンは二、三歩程踏み込むと攻撃を耐える。

 鞭による攻撃は痛いが、触手による攻撃はそれほどでもない。鞭は完全に盾で防ぎ、触手による攻撃を最小限のダメージで抑える。しかしマンイーターの攻撃は確実にサイモンを足止めしていた。スカルとローズバトラーの方も戦闘を始めていた。

 

「舐めるな!」

 

「……!!」

 

 技の大半を使えないスカルは自身の斧を振るい、襲いくる触手を切り落とす。しかし切り落としてもなお無数の触手が襲いかかり、現状唯一弱点をつける輝く息を吐く暇を与えさせない。

 防戦一方のスカルであったが、徐々に赤い霧が晴れていくのに気付いていた。このまま耐え切れれば反撃の機会がやってくるとそう思っていた矢先にローズバトラーが勢いよく何かの息を吐き出した。

 

「ぬぅっ、頭が……」

 

 もろにその息を浴びたスカルはくらくらと眩暈が起き、次いで頭痛が襲った。

 何もかも分からなくなりそうになったスカルであったが、辛うじて正気を保つ。しかしローズバトラーは再び同じ息――惑いの息を吐き出した。

 

「代われ!!」

 

 そこに割り込みを仕掛けたのはサイモンであった。

 同じように息を吸い込んだサイモンは痛む頭を堪え、マンイーターの攻撃を無視して素早くスカルと場所を交代すると惑いの息を一身に受ける。

 本来キラーアーマーは混乱とマヒに弱い。しかし誠のサイモンは既に配合で耐性を身に付けていた。それでも耐性が多少付いただけであって完全に克服したわけではない。連続して吐き出された惑いの息によって、サイモンは混乱する。

 

「ぐっっ……!!」

 

 混乱したサイモンは何度も頭を振り、その度にガチャガチャと鎧が擦れる音が響く。

 その音が混乱したサイモンの頭の中で反響し、その音を振り払おうとまた頭を振るという悪循環に陥る。

 

「があああああっ!!!?」

 

「サイモン! しっかりしろ!!」

 

 とうとう耐え切れなくなったサイモンは、手にしていた武器と盾を取り落とすと膝をつき、絶叫を上げた。その尋常ではない様子に、正気に戻そうとスカルは呼びかけるが――

 

「……ああっ…………五月蝿い……!!」

 

「おい、正気に戻―――ちいっ!!」

 

 もはや誰かも分かっていないのか、おたけびを上げ裏拳をかます。

 スカルは盾で防ぐと、物理的ダメージを与えてサイモンを正気に戻そうと攻撃しようとしたが、それを邪魔するように霧を吹き飛ばす勢いで幾つもの竜巻が襲い掛かった。

 

(逃げるか? ……いや、ここでサイモンが落ちるのは不味い)

 

 それに気付いたスカルであったが逃げることは出来なかった。本来なら見えぬそれは、霧のおかげで目視できたため直撃を回避することは問題ない。しかし今スカルの傍には、バギ系弱点を持つ混乱したサイモンがいる。混乱を治すためにあえてサイモンに受けさせる手もあったが、それを行った場合の被害は軽くない。

 

「すまぬ、サイモン……!!」

 

「ぐおっ!?」

 

判断は一瞬。スカルは竜巻の範囲から逃がすために、誠のいる方へと勢いよくサイモンを蹴り飛ばした。その数秒後、竜巻――バギムーチョがスカルを襲った。

 

 

 

「え、これって――うわっ!?」

 

 マンドラゴラに足止めされている誠たちにもバギムーチョの余波である突風が襲い掛かった。

 吹き飛ばされないように誠たちは必死で踏ん張る。そして突風が収まると同時に、傷ついたマンドラゴラは足元に転がっていたサイモンを無視して一目散に逃げ出した。

 

「サイモン!? って、逃げるな! シャディ!」

 

「わかっています!! 剣の舞!」

 

 踊りに分類されるこの特技は斬撃でありながら赤い霧の影響を受けない。

 シャディはくるりとその場で舞うように回転すると、四つの斬撃がマンドラゴラを切り刻む。更に追撃をかけようとしたシャディであったが、それを制するように誠の指示が飛んだ。

 

「シャディ、サイモンたちのサポート!」

 

「はい! 無事ですか、サイモン」

 

「……ああ。スカルのおかげでな」

 

 蹴り飛ばされた勢いで正気に戻ったのか、サイモンはしっかりとした口調で答え、今だふらつく頭を抑えながらもシャディに助け起こされる。シャディはサイモンを助け起こすと、舞台中央に立つスカルの元へと駆け出した。

 後退してきたスカルはボロボロであった。鎧は破損し、一部の骨には罅が入っていたが、無事であった。

 

「シャディか……サイモンは無事か?」

 

「ええ、スカルも無事のようですね。援護しますので、後退を」

 

 シャディは目の前に飛来する触手を切り裂きながら、スカルを庇うように立つ。

 霧が晴れたためその剣には再び冷気が宿っていたが、無闇に飛び込まず一度態勢を整えるためにマヒャデドスで氷壁を作り上げる。

 

「行ってください!」

 

「ああ……頼む!」

 

 既に罅が張り始めていた氷壁を背に、スカルは危なげなく後退する。その途中、飛ばされてきたサイモンの武器を回収することを忘れない。無事誠の元まで戻ると、呪文でシャディを強化していたサイモンへ武器を返した。

 

「二人とも、無事で何よりだよ」

 

「……大防御を切ってしまったがな。だが安心しろ。この失態はすぐに取り返す」

 

「そう。それじゃあ、みんな! 全力で行け!!」

 

 スカルとサイモンはシャディの援護へと駆け出し、氷壁を突き破ってきたカレキ王の魔物たちと再び激突した。戦況は今だカレキ王の有利で進んでいたが、誠たちを苦しめていた赤い霧が晴れ、少しずつ盛り返し始めていた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 はやてはその戦いを呆然と見つめていた。先ほどまでの試合も確かにハイレベルなものであったが、目の前で繰り広げられている試合には遠く及ばない。

 思いもよらぬ奇襲を仕掛け現状優勢なカレキ王と、それに機転を利かせ必死に食らいつく誠たち。試合は白熱したものであった。

 

「そこだ、いけっ!!」

 

「あ……」

 

 横で応援している冬至の声に、ふと我に返ったはやては、自身の手を強く握り締めていることに気付いた。そしてこれまで感じたことがないほどの強い羨望を抱いていることに戸惑う。

 何故兄の戦いを見ているとこんなにも気持ちが昂るのだろうか? 滞在中何度も戦っているマスターたちを見てきたのに、誠とカレキ王の戦いだけは別だった。

 

(……何でこんなにも胸が高鳴るんや? 私もあの舞台に立ちたいから? それとも苦戦しとるっちゅうのにあんなに楽しそうにしとる兄ちゃんが羨ましいから?)

 

 今だそれが何なのかはやて自身分からなかった。ただじっと誠の指揮する姿を自分だったらどうやろうと想像しながら見続ける。そんなはやてにヴィランは声をかけた。

 

「羨ましいですか? 自分もあんな風になれたらって」

 

「……え? そないなことは――」

 

 心の中を見透かされたような問いかけに否定しそうになるも、その言葉を寸前で飲み込んだ。

 誠と同じようにあの舞台に立ち、まだ見ぬ仲間たちとともに戦う自分の姿を想像すると、否定できなかった。膝の上のトーポを撫でながら、はやては自分の気持ちを正直に答えた。

 

「――ううん。正直言ってすごく兄ちゃんが羨ましい。……ずるいなぁと思っとる」

 

「そうですか」

 

 はやての言葉にヴィランは笑みを浮かべ、静かに頷いた。ヴィランはもしはやてが自身の気持ちを偽ったならばと思っていたが、その心配は不要であった。だからはやてが先へと進めるように、切欠となるようにと一つの助言をした。

 

「……もしハヤテ君がモンスターマスターを目指すのなら、頑張り次第ではもしかするとマコト君を超えるマスターになれるかもしれませんよ?」

 

「私が……兄ちゃんを超える……?」

 

 今まで家族で仲良く暮らせればそれでいいと思っていたはやてであったが、冬至から魔力があると言われた時や、誠からモンスターマスターの才能があると言われた時よりもその言葉が心に響いた。でも一体何故? そうはやては自問自答する。

 

(もし貴女が本当にモンスターマスターになるのでしたら、きっとマコト君と同じ問題に直面するでしょうね。だから今のうちにたくさん考えてください。それがきっとハヤテ君の糧になります)

 

 うーんと頭を捻るはやてを温かい目でヴィランは見つめると、そっと口にしようとしていた言葉を飲み込んだ。そして邪魔をしないように試合へと意識を向けるのだった。

 

(兄ちゃんを超える……か)

 

 二度、三度とその言葉を心の内で何度も反芻させる。争いごとをあまり好まないはやてであったが、不思議と悪い気持ちではなかった。だが誠に勝利して超えたいのか、誠よりも強いマスターになりたいのか。それとも誠が出来なかったことを成し遂げて超えたいのか。今だはやてにはそれが分からなかった。

 とりあえず後でモンスターマスターについてもっと詳しく兄に聞こうと一旦切り上げ、今は目標とする兄が負けないように精一杯応援するべく声を張り上げた。

 

「頑張れ!!」

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 試合は終幕へと向かっていた。

 何度も激突してきて仲間たちの限界が近いことを察した誠は、ここにきて初めてサイモンに攻撃の指示を出した。

 

「スカル! サイモン! バッチリ頑張れ!! シャディはサポートをお願い!」

 

「よく粘るのお。じゃが今更作戦を変えたところで……。者共! これで確実に決めるのじゃ!」

 

 スカルたちが攻撃する隙を作るために駆け出すシャディをマンイーターが迎え撃つ。一人戦うシャディを援護したい気持ちを抑え、スカルとサイモンは誠の合図をじっと待った。しかしそれよりも早くカレキ王が行動を起こす。

 

「今じゃ!」

 

 カレキ王の合図に、迎撃していたマンイーターは鞭と触手でシャディを拘束する。逃げようともがくシャディだが、ローズバトラーが吐き出した焼け付くような息が直撃した。

 

「……ぐ……うっ……」

 

 体が痺れるのを感じ、それでも何とか動こうともがいたが、その動きは徐々に鈍っていき、とうとうマヒで動かなくなった。マヒの耐性を持っていたマンイーターは動けなくなったシャディを解放すると、接近してきたマンドラゴラと共に一方的に殴り始める。

 そしてとうとうシャディは倒れた。これで三対二、誰が見てもカレキ王が有利であった。そんな絶体絶命の状況であるにも関わらず、誠は安堵した表情でポツリと呟いた。

 

「……よかったよ。毒や呪い系の攻撃をしてこなくて。もしされていたら僕が負けていた」

 

 その言葉が合図であったかのように、鞭を振るい攻撃に入ろうとしたローズバトラーが、その動きをピタリと止めた。そして仰け反るようにその巨体を大きく震わせると、シャディと同じようにピクリと動かなくなった。

 

「……ぬ、マヒじゃと!?」

 

 カレキ王がそれに気付いた時には既にマヒはローズバトラーの全身を駆け巡っていた。

 マヒをしたローズバトラーから伸びる影は倒れたシャディと繋がっており、その影を通じてシャディがローズバトラーに伝播させていたのだ。隣にいたマンイーターは持っていた鞭を振るい、繋がった影を断ち切るが意味がない。

 

「ローズバトラーがマヒをするなど……しっぺ返しか……!?」

 

「正解。誰もが持つ影。それをマヒさせたんだから、自分も同じようにならないと駄目だよね」

 

 シャディが持つ特性――しっぺ返し

 この特性は自身が受けた状態異常を、耐性無視で相手にも与えるという強力な特性である。ただし、与えることが出来るのはマヒ、毒、混乱、眠り、呪いだけである。またしっぺ返しは特技としても存在し、そちらの場合は受けた技をそっくりそのまま相手にぶつける。

 

 カレキ王はシャディの存在が眼中になかったわけではない。しかしスカルたちメインメンバーに比べると優先順位は確かに低かった。ローズバトラーのマヒというカレキ王たちにとって予想外の事態に動揺し、隙が出来る。そのチャンスを誠は逃がさない。これで決めるべくスカルたちに合図を出す。

 

「シャディが作った最後のチャンスだ! これで決めろ!」

 

「お前と共に剣を振るうのもこれで最後か……合わせるぞ……!!」

 

「…………ああ!」

 

 誠の合図の元、同時に駆け出したスカルの言葉に頷くサイモン。二体の持つ武器に雷光が宿り、大きく振りかぶる。素早さが低いスカルとサイモンだからこそ、連携が発動する。そして、連携特技を出すべく同時に同じ技を放った。

 

「喰らえっ! ギガスラッシュ!!」

 

「……ギガ…スラッシュ……!!」

 

 交差するように放たれた二つの斬撃が、眩い閃光と共に一つの技へと昇華される。

 魔物の中ではこの技は一人で放つことが出来る者もいる。しかしこの技はギガスラッシュを連携して放つことによっても発動することが出来る。その技の名を――

 

「「ギガクロスブレイク!!」」

 

 直後、二つの剣閃がローズバトラーたちを切り裂き、閃光とともに衝撃波が襲い掛かった。

 それはかつてスカルが放ったギガブレイクを思い起こさせるようで、そのあまりの威力に観客席にまでその余波が襲い掛かった。

 

「うおっ、リベリオン!!」

 

≪Panzerschild≫

 

 冬至は慌ててはやてたちの前に立つと、襲い掛かる衝撃波をベルカ式のシールドで防いだ。

 観客全員が吹き飛ばされそうになるのを必死に耐え、やがて光が収束すると格闘場内は静寂に包まれた。

 

「兄ちゃんらはどうなったん!?」

 

 はやては身を乗り出す勢いで舞台へと顔を向ける。静まり返った格闘場内に響き渡ったその声に、我に返った観客たちも一斉に舞台へ注目した。

 

「ゴホッ……むっ、これは………」

 

 カレキ王の場はそれは酷い惨状になっていた。十字に放たれた斬撃によって舞台が着弾箇所から大きく抉られたようになっている。耐性を持っていなかったマンドラゴラは倒れており、辛うじて生き残ったマンイーターとローズバトラーもほぼ虫の息だった。それに対して誠の場は、シャディが倒れていたが、スカルたちのMPも残っており、まだまだ戦える状態であった。

 

「……ここから逆転は無理じゃな。降参じゃ」

 

 場の状況を確認したカレキ王は、唯一動けるマンイーターの状態を見て軽く首を振ると、参ったとばかりに両手を挙げた。その言葉を聞いた司会は一呼吸置くと、高らかに誠の勝利を告げた。

 

「決着!! イベントバトルを制したのは数多の騎士を従えし若きマスター、マコト選手だ!!」

 

『わああああああああああっ!!』

 

 観客の拍手喝采を浴びた誠は、それに応えるように楽しそうに声を上げ、観客に向けて拳を突き上げた。それに続くようにスカルたちも持っていた武器を突き上げる。観客はそのパフォーマンスに益々盛り上がると、誠たちが退場するまで拍手は鳴り止むことはなかった。

 

「うんうん、イベントバトルをして正解だったね。……でもカレキ王のローズバトラーもだけど、やっぱり大きな魔物たちは今のルールじゃ本来の力が出せないのかな? それに技にもバリエーションがあんまりなかったし……わたぼうたちと相談でもしようかな?」

 

 じっと試合を眺めていたかくれんぼうはそう呟くと、誠とカレキ王が握手する姿を見た後に、ふよふよと歩くような速度で何処かへと飛んでいくのだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 表彰式も終わり、誠たちは酒場の一角で祝賀会を行っていた。

 ヴィランも是非にと誘ったのだが、急用が入ったためここにいるのは八神一家と誠の魔物たちであった。

 

「うん、ほんま兄ちゃんらすごかったわ」

 

「最後の協力技とか特にな」

 

「あはは、ありがとう。でも頑張ったのはスカルたちだからね」

 

 はやてたちの賞賛を誠は素直に受け取る。照れているのかその頬は少し赤い。

 なお今回の立役者であるスカルたちはというと、気にせずにガツガツと音を上げながら豪快に肉を喰らっていた。

 

(……前から気になっとったけど、食べたのって何処に消えとるんやろ)

 

(ツッコまない方がいいよな……)

 

 今もスカルが骨付き肉を食べているが、食べたそばから肉が消えている。一体何処に消えたのだろうかと聞きたいはやてたちであったが、下手に考えるよりも魔物だからと無理やり納得させると、食事に戻った。

 

「でもみんなが揃っとるのにシャインだけ外って何か悪いなぁ……」

 

「外で他のマスターのモンスターたちと酒盛りしてたから大丈夫だよ。それにさっきトリーズが様子を見に行ったみたいだから」

 

「何時の間に……」

 

 サイズが大きい魔物たちは酒場に入らないため、外の用意された一角で食事などを行っている。それを聞き、シャインだけ仲間外れにしているようで居心地が悪かったはやては安心すると、誠にモンスターマスターのことで色々と質問を始めるのだった。

 

「……さて、もうそろそろいい時間だね」

 

「兄ちゃん……?」

 

 食事を終え、話すこともなくなってきた誠はシャディとサイモンを見てポツリと呟いた。

 喧騒の中であるにも関わらずその言葉は、はやてたちの耳にはっきりと聞こえた。普段や大会のときとはまた違う誠の様子に、はやては言いようのない不安感を覚える。どうしたのだろうと誠に声をかけるが、聞こえていないのかしんみりとした口調でサイモンたちに問いかけた。

 

「二人とも、満足した?」

 

「……ええ、最後に相応しい心躍る闘いでした。これで思い残すことはありません」

 

「……感謝する」

 

 その言葉に寂しげながらも笑みを浮かべると、誠は席を立つ。続いてサイモン、シャディと次々に立ち上がった。珍しくトーポは誠の肩ではなく、サイモンに飛び乗る。

 それじゃあ行こうと歩き出そうとする誠を止めたのは、話についていけず置いてけぼりにされていたはやてと冬至であった。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

「……誠兄ちゃん、サイモンらを何処に連れていくきや?」

 

「……サイモンとシャディを配合させるために配合の間へ。これで二人とはお別れだね」

 

 その言葉を理解出来なかったはやては一瞬間の抜けた声を漏らす。そしてその意味を理解すると同時に、はやては目の前が暗くなるのを感じた。

 

 




いかがだったでしょうか?

今回も色々と判明しました。

シャディの最後の特性だったり、スカルたちの協力技だったり、またかくれんぼうが何かたくらんでいたりと……

協力特技については、GB版及びPS版のイルルカをやったことがある方々なら分かっていただけると思います。威力については一人で放つよりも高めになっております。分かりやすい例を挙げるとミナデインです。
また、この作品では最上級呪文や特技を覚えていてもその前の呪文や特技は使用可能となっております。

そしてはやてに(精神)強化フラグが立ちました。
次回でようやく旅行編完結です。それではまた直ぐにお会いしましょう。

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