年末はやはり忙しいですね。まったく書く時間がありませんでした。
楽しみに待っていただいた皆様に謝罪と感謝を。
……というわけで第15話です。
今回はすいません。戦闘に入りませんでした。
というのも軽く書いているんですけど戦闘シーンのみで1万字を余裕で超えているんですよ。
更に裏側で動いていることも書いていたら到底1話で収まりませんでした。
なので今回は戦闘前とその頃のプレシアサイドの話のみとなります。
それではごゆっくりどうぞ
……あとがきにてちょっとした設定を掲載しました。
次話投稿後にまとめて設定集に追加させます。
今だ僕は目の前のモンスターマスターがテリーだと信じられなかった。
僕の知っているテリーは、一見クールに見えるけど実はかなり熱い性格で、モンスターのことになると真剣でいつも楽しそうだった。でも目の前のテリーは何処か違う。一体何があったのか聞こうとしたが、その前にテリーは口を開いた。
「キミは誰かな? 僕のことを知っているみたいだけど」
「え? 何言ってるのさテリー。ほら、カレキの国のモンスターマスターのマコトだよ。星降りの大会で戦ったし、星降りの大会・レジェンドではルギウスさんたち魔戦士に勝つために一緒に戦ったじゃないか」
「……マコト君、か。悪いけど本当にキミのことは知らないなぁ。それに星降りの大会・レジェンド? 何だいそれは?」
テリーは本当に分からないという表情をしている。だけどその目は僕のモンスターたちを興味深げに見ている。
新種として見つかったジッカーや、珍しいトーポはともかく、スカル、デック、トリーズ、シャインはそう珍しいモンスターじゃない。一体どういうこと? いや、その前に何で僕のことも星降りの大会・レジェンドのことも知らないんだ?
……もしかして、かくれんぼうが言っていた極めて低い可能性で起きるという並行世界に飛んだ? 確証はないけどテリーの様子からしてその可能性は高い。それにこの異世界が僕の知っている異世界じゃないならば、この世界の異常に納得がいく。それじゃあ何で僕はこの世界に来たんだ?
…………そういえば、旅の扉で移動中に聞こえた声。それが原因なのだろうか?
……うーん、駄目だね。まだ判断材料が少ない。今は少しでも情報を聞き出したほうがよさそうだ。
そういえば、妙にフェイトが静かなような……
ちらりとフェイトの方に視線を移すと、この異常な雰囲気に呑まれたのか顔を青くさせていた。
……とりあえずフェイトに意識が向かわないようにした方がいいか。
【フェイト、絶対に前に出ないで僕の後ろにいて】
フェイトに前に出ないように念話で指示を出しておく。
返事がなかったのが気になったが、すうっと自分の背に移動したような気配を感じたので、多分大丈夫だろうと判断して、今はテリーとの会話に集中しようとした。
「テリ――「あはははははっ、そうか。そういうことか!」――っ!?」
テリーは何かに気付いたのか、唐突にお腹を抱えて笑い始める。その表情と無邪気な笑い声に何故か寒気を感じずにはいられなかった。
「て、テリー?」
「ふふっ、偶然この世界に来ただけだと思っていたけど。成程、わたぼうの差し金か……戻ったら念入りに封印しないとね」
――なっ!?
わたぼうを封印!? 自分の国の精霊のはずなのに、一体どうして!?
「わたぼうに一体何をしたんだ!?」
「キミの世界には何も関係がないんだ。別にいいじゃないかな、そんなことは」
自分の国の精霊のはずなのにテリーは何故かどうでもよさげで、それよりもと見せてきたのはゲモンと大魔王ゾーマを子供にしたかのような存在。その名は――ゾーマズデビル
メルルが言っていた魔王のような存在はこいつか。だけどあのゾーマズデビル何処か変なような……? 何が変なのかわからないけれど、テリーのつれているモンスターたちは全員何処か嫌な感じがする。
「マコト君はこの魔物たちを知っているかい?」
「……ゲモンとゾーマズデビル」
「ああ、やっぱりマコト君は
僕の返答に心底嬉しそうに笑みを浮かべるテリー。
その笑顔は僕の知っているテリーの笑顔と変わらなかった。
「この世界は見たことがない魔物たちでいっぱいだ。まあ、キミが連れている青い鎧のナイトリッチや銀色のさそりアーマーたちに比べると弱かったけどね。特に首なしの騎士やその鼠なんかすごく強そうだ。マコト君、キミは一体何処で見つけてきたんだい?」
僕の仲間たちの姿を見て、楽しそうに笑うテリー。その姿を見て、ようやく僕のモンスターたちを観察していた理由が分かった。目の前のテリーのいた世界は、発見されているモンスターが限りなく少ないんだ。
「……配合を重ねただけだよ。それよりも聞きたいことがある。この世界の主――グランバズズはどうしたの?」
「ふぅ……マコト君の言葉を借りるなら配合しただけだよ。そして生まれたのがこの魔物だ」
ニヤリと凶悪な笑みを浮かべるゲモンに僕は更に混乱する。は? 主を配合? 意味が分からない。世界にはその場で配合を行う方法が存在すると聞いたことがあるけど、主を配合させるなんて聞いたことがない。
「わからない? ここの主はジャミラス――いや、ゲモンの糧になっただけだよ」
テリーは一体何を言っているんだ。配合は新たな命を誕生させるためのものだ。
思いつくのは転生の杖による同固体を生み出す配合。それだって記憶の一部を引き継いだ同じ固体が生まれるだけ。それなのにゲモンの糧? どういうこと? そもそも目の前にいるのはゲモンだ。ジャミラスなんかじゃない。
「ヒッヒッヒッ、テリー様。どうやら旧世代のモンスターマスターには理解できないご様子です」
「我らの邪の秘法の力を見せるべきかと。奴らの中に我が糧もいますので」
「それは好都合だね。マコト君、見たことがない魔物たちを見せてくれたお礼だ。実演してあげるよ。僕が見つけた究極の配合――邪配合を!」
一つ目ピエロたちの言葉にテリーは頷くと、パチンと指を鳴らした。すると一歩前に出たゾーマズデビルの全身から禍々しいオーラを放ちはじめる。
それを見た瞬間、僕は感じた。あれはやばい、と。ゾーマズデビルはそのオーラを片腕に収束させると、デックに向けて腕を振るう。咄嗟にデックに防御の指示を出すが――
「~~~!?!?!???!!!?」
「デック!?」
何も攻撃が当たっていないはずなのにデックの体から黒い瘴気のようなものが溢れだし、苦しそうに膝をつく。僕の声も届いていないのか、デックは何かに抵抗するようにその場で暴れ始めた。
「デック、しっかりして! ……テリー、一体何をした!!」
「フフフ、すぐに分かるよ」
「さあ来い我が糧よ!!」
ゾーマズデビルが両手を掲げると、デックは見えない糸で引っ張られるようにゾーマズデビルの元へ歩いていく。まさかスカウトアタック!? いや、違う。スカウトアタックなら自らの意志でテリーの元へと向かうはずだ。
でもこれはそうじゃない、多分デックの体から出ているあの黒い瘴気に侵食されているんだ。抵抗しようともがいているデックだけど、一歩また一歩とその足が止まることはない。
「行かせないよ! シャナク! キアリク!」
「無駄だ!」
デックの意思に反して動いていることから呪いか混乱の状態異常と思い、回復呪文を唱えるが効果はない。
――それなら魔法の筒の中に戻すしかない。対象がいなくなれば効果も解けるはすだ。
「これならどう――イルイル!!」
だけどそれすらも無駄だった。対象がいないときと同じように魔法の筒は反応しない。
ならばとスカルたちに取り押さえてもらおうとするが、一足遅くグチャリと耳障りな音を立て、デックはゾーマズデビルに少しずつ飲み込まれ、一体化していく。その予想外な光景に言葉が出なかった。スカルたちも駆け出そうとした足を止め、呆然と見ている。
そしてゾーマズデビルはその姿を変えていく。ぐにゃぐにゃとその体が大きく成長し、身の毛もよだつ様な禍々しい魔力があふれ出す。やがてその姿は一つの魔王の形となった。
その名は大魔王――ゾーマ
ありえない。悪い夢なのではないかと、これまでのことも僕たちを驚かすための嘘なのではないかとそう願わずにはいられなかった。だけど、それはテリーの邪悪な笑みを見て真実だと思い知らされてしまった。それでも僕は問いかけずにはいられない。
「これは……なに……?」
「邪配合。欲しい力のみを集め、欲しい個体を生み出す新たな配合方法だよ。まだ完全には至ってないけどね。でも僕の知っている魔物になったのはちょっと残念かな?」
「テリー様、ご安心ください。我をベースにすることで更なる力を持った王を生み出すことができます」
「それはよかった」
その答えが全てを物語っていた。テリーたちはこの吐き気がする配合を肯定している。純粋にただ力だけを求めた配合なんて何の価値もないはずなのに。それにテリーはやってはいけないことをした。モンスターの意志を無視してのスカウト――いや、略奪を。
「お前……なんてことを……!!」
テリーが行った行為はこれまでの配合という概念に真っ向から反する行為。
両者の合意により次世代に思いを託し、絆を紡ぐのではなく、ただ強くなるための一方的な搾取。こんなのは配合なんて絶対に言わない。これが本当にテリーの求めた究極なの?
そうテリーに問いかけたかったが、スカルたちがまだこの場にいることを思い出した僕はみんなを魔法の筒に戻す。目の前に敵がいるが、これ以上奪われるわけにはいかない。そんな僕の様子にテリーは笑みを浮かべながら、もう奪う気はないと告げてきた。
「……信用できないよ」
「まあいいけどね。……マコト君、僕は全ての魔物を糧に究極の魔物を作り上げたいんだよ。マコト君だって究極のモンスターマスターを目指しているんだろ? なら、僕がやっていることも理解できるんじゃないかな?」
「…………」
「その沈黙は肯定と受け取るよ」
くすくすと笑うテリーを睨み付けるが、僕は何も言えなかった。
――否定できないから。僕もテリーと同じく究極を求めるモンスターマスターだ。
未知なるモンスターを見つけたときはすごくわくわくするし、誰にも負けないモンスターを仲間にしたいという思いもある。だからこそテリーの言葉は僕に重くのしかかる。だけど――
「……確かに僕も究極を求めている。だけどテリー、キミのやり方は絶対に間違っている」
「…………そう、残念だよ。クリオ君と違ってキミならわかってくれるんじゃないかと思ったんだけど。ゾーマ、適当に相手をしてあげて。……ああ、それと安心していいよ。他人の魔物ってね、まだ完全には奪えないんだ。モン爺のしんりゅうも戻ったみたいだからね」
「あの人のモンスターまで奪ったの!?」
「残念ながらりゅうおうは本物に倒されたけどね。だからゾーマを倒せばキミの魔物は取り返せるよ。信じるかどうかはマコト君次第だけどね。……フフ、キミとはまた会える気がするよ。それじゃあ、また会えたらモンスターバトルでもしよう。その時まで楽しみにしているよ」
僕の答えに心底残念そうに首を振ると、まるで初めからいなかったかのようにテリーは消え去った。その後に続くように一つ目ピエロとゲモンは消えていき、ゾーマだけがその場に残った。
「小僧、テリー様の命により我が貴様たちの相手をしてやろう」
「…………」
「どうした、怖気づいたのか?」
……あのテリーに何があったかはわからない、
だけど今は目の前にいるゾーマを倒さないといけない。そうじゃなかったらここまで来た意味がないし、デックも助けられない。
……そうだよ。こいつに僕の大事な仲間を奪われたんだからこいつを倒さないと。
「……デルパ」
全員を呼び出す。呼び出したスカルたちもデックを奪われた怒りで、今にも飛び出そうとしている。僕も自身の内から沸々と沸きあがる怒りに身を任せ、スカルたちに号令をかけようとした。
だけどその瞬間、嫌な考えが頭を過った。
それはスカルたち全員が邪配合の糧にされること。さっきはテリーが手を貸してデックを奪ったように見えたけど、もしかしたらゾーマ単体でも邪配合が可能かもしれない。もし僕の予想が当たっていたなら――仲間が全員奪われる。
「――っ!」
怒りでいっぱいだった頭が急激に冷め、その最悪の予想でぶるりと身を震わせる。
……何をやっているんだ。
怒りに身を任せるのも、恐怖に支配されるのも駄目だ。感情的になってしまったら、それだけスカルたちを危険に晒すことになる。心を落ち着かせろ。怒りを、恐怖を持つなというわけじゃないんだ。それらを内に秘めて、冷静に指示を出すんだ。
「――みんな、落ち着いて」
自己暗示をするように何度も頭の中で言い聞かせ、僕は出来る限り冷静な声でスカルたちに指示を出す。僕が突撃の指示を出すと思っていたのだろう。スカルとトーポを除いた面々はその指示にギョッと僕の方を見た。
特にジッカーはそれが顕著で、仲間を奪われたのにどうして怒らないんだという感情がありありと見て取れる。その気持ちは分かるよ。だけど僕が感情的に指示を出したら駄目なんだ。
「ほう。怒り狂うと思っていたが、存外冷静なのだな」
「まさか。今でも内心ではお前をどうにかしてやりたい気持ちでいっぱいだよ」
そう返し、ゾーマに立ち向かうための編成を考える。スカルは確定として、サポートにトリーズと…………シャインだね。
比較的冷静なトーポと今にも爆発しそうなジッカーはフェイトの護衛に下がるように指示を出す。フェイトは完全に恐慌状態になっているから。こんな状態で一人にさせるわけには行かない。
ジッカーは不満げだったが、フェイトの様子からただ事ではないと感じ取ったのか、フェイトを引き摺るようにして後方に下がってくれた。そして僕は杖を構え、スカルたちを前面に出してゾーマと対峙する。
「――宣言するよ」
僕が求める究極とあのテリーの求める究極はまったく別のものだ。そんな僕自身の誓いを込めて、目の前の敵を見据え、答える。
「僕が求める究極は……仲間たちとともに戦って得られる勝利の果てにあるものだ! それが僕の求める究極のモンスターマスターという証だ!!」
ゾーマは僕の答えを聞くと小馬鹿にしたように笑う。それを無視し、スカルたちを前面に出して静かに僕たちは構える。奴は視認出来るほどの禍々しい魔力を溢れ出すと、腕を大きく広げ宣言した。
「滅びこそ我が喜び。死にゆく者こそ美しい。さあ、我が腕の中で息絶えるがよい!!」
上等だよ。この先に進むためにも、デックを助けるためにも、この
大魔王ゾーマ≒が現れた▼
◆ ◇ ◆
――時はほんの少しだけ撒き戻る。
誠たちが最下層に到達する少し前、目を覚ましたプレシアはアルフに自身の犯した罪の全てを話していた。というのも、アルフがよく見えのお守りを着けたことでアリシアを見つけてしまい、話さざるを得なくなったのだが。
プレシアが目覚めるまでにアリシアからある程度掻い摘んで話を聞いたアルフであったが、プレシアの口から直接真実を聞いたことによって怒りが爆発した。その怒りは凄まじく、アリシアが止めなければそのままプレシアを殺してしまうほどの勢いであった。
「悪いわね、アルフ」
「……ふん、アタシはフェイトのためにやってるんだ。あんたのためなんかじゃないよ」
「そうね。でも礼を言っておくわ。……ありがとう」
礼を言われ思わずギョッとするアルフは、調子が狂うと呟きながらもプレシアに肩を貸して歩き続ける。プレシアたちは玉座の裏に隠されたアリシアの体がある研究室へと向かっていた。
眠りから覚めたプレシアは、誠たちがいたときには思い出せなかった自分が倒れる直前に聞いた声を思い出していた。その声はプレシアにとっては忘れられない声であり、一歩、また一歩と体に力を入れるたびに走る激痛に顔を顰めながらもプレシアは歩みを止めない。
(……あの声、もうすぐって……言っていたわね……それに、器が手に入ったって……まさか)
器が何かはわからなかったが、胸騒ぎがしたプレシアは、それを確かめるためにアルフたちを説得して研究室へと向かった。そして研究室に入ったプレシアは目を見開くと、肩を貸していたアルフを振り払い、一目散に何かを調べ始めた。
いきなりの行動にポカンとするアルフだったが、すぐに我に返ると研究室内を見渡す。壊れた機械や引き千切られたコードらしき残骸。かつて此処が研究室であったと分かるのはそれら残骸があったからだ。中でも異様なのは、中央に設置されたポットらしき物。ガラスは砕け散り、中から溢れ出た液体は床一面に広がっている。
『……この残骸。私の体が入っていたポットの……』
「え……それじゃあ、あんたの体は何処にあるのさ?」
ポツリと呟いたアリシアの言葉に反応したアルフはキョロキョロと辺りを見渡すが、アリシアの体は見つからない。一体何処に消えたのだろうかと二人は首を傾げる。そうこうしている間にプレシアはふらふらと覚束ない足取りで戻ってくると、壁に寄りかかり、ずるずると膝を付くようにその場に崩れ落ちた。
「……どうなってるのよ。何でアリシアが……」
『母さん!?』
「おい、プレシア。一体何があったんだい」
「…………奪われたのよ。アリシアが、あの子の体が――ナニかに奪われたの! フェイトが集めてくれた6個のジュエルシードも、全て!!」
頭を抱え、取り乱したように叫ぶプレシア。その尋常じゃない様子にアルフたちは必死に呼びかける。
何故ここまでプレシアが錯乱したのか。それはプレシアが見た映像にあった。
研究室に入った時は一時取り乱しかけたが、この惨状を作り上げた元凶を判明させるべく、入り口の監視映像のバックアップをはじめた。破壊されていたとはいえプレシア自ら手がけたものだ。そう時間をかけずに映像を復元させると、それを確認したプレシアは言葉を失った。
映像に映っていたのは研究室を出てくる
見慣れぬ黒い衣装を身に纏い、先に丸い宝石が装飾されている小さな木で出来た杖を持っている。その周囲には6個のジュエルシードが宙に浮いていた。アリシアは入り口を監視していたサーチャーに向かって笑みを浮かべ――そこで映像は途切れた。
ここだけを見るとアリシアが蘇ったのではないかと思うだろう。だが、よく見えのお守りを装備しているプレシアにはその映像の真実が見えていた。
アリシアの周囲に漂う無数の人魂。人魂から発生する黒い霧のような何かによって、ジュエルシードの輝きは黒く変わっていき、人魂に力を与えていく。力を得た人魂はまるで体を作り変えるように何度もアリシアの体に入り込んでいく。やがてアリシアの横に控えるように二体の傀儡兵が現れるとサーチャーを叩ききったのであった。
そんな信じられない映像を見てしまったプレシアは大いに混乱し、自分を心配するアリシアたちを見て爆発してしまった。一体この時の庭園で何が起きているのか。あの姿が見えなかった傀儡兵は何か。あの声の正体は、もしかして――
「プレシア!!」
「――っ」
『母さん! 大丈夫!?』
「……え、ええ。大丈夫……よ。…………二人とも大広間の方に戻るわよ。そこで何を見たのか話すわ」
そこでアルフたちに正気に戻されたプレシアは、頭を抑えながらゆっくりと立ち上がる。ここに居てはいけない。あの映像を見てしまった今では、何処に行っても無駄ではないかと思うプレシアだったが、戦うことが出来そうな大広間に戻ろうと研究室を後にしようとした。
「えっ――?」
その時、突如背中に重みを感じた。
そこまで重くはなく、場違いにも昔アリシアが悪戯で背中に飛び乗った時のようなどこか懐かしさが感じられた。
プレシアは自分を元気付けようとアリシアが何かをしたのかと思い、嬉しく思いつつもアリシアを窘めようとして気付く。アリシアは人に触れることが出来ないということに、そしてアリシアはプレシアの目の前にいるということに。
(……じゃあ、私の背におぶさっているのは一体誰?)
自分の背に得体の知れないものが者が乗っているという事実に、プレシアは言いようのない恐怖に襲われる。それでも確認しようと首を動かそうとしたのだが、肩を貸そうとしていたアルフが驚愕の表情を浮かべているのが目に入った。
それはアリシアも同じで、プレシアの背にいる何者かを凍りついたような表情で見つめている。意を決して振り返ろうとしたプレシアだったが、その前に耳元で囁くように声が聞こえてきた。
――逃げちゃだめだよ、母さん。私たちは待ってるから。
「あ……あなたたちは……」
囁くように聞こえた声は、頭に残るようなどろりと粘つくようなもので、これが娘たちと同じ声だと認めたくなかった。その存在が何なのか理解してしまったプレシアは震える声で呟く。
「……私が作った…………クローン……」
「――――。――――一緒だよ」
振り返ったプレシアが見たのは、自分の愛しい娘と同じ顔をしたナニかの身の毛もよだつような笑みだった。そこからのことをプレシアは覚えていない。気付いたときにはアルフに引き摺るように運ばれていた。
顔を青くさせたアルフは一体何を見たのか一言も語ろうとせず、ただ黙々とプレシアを安全な大広間へと運ぶ。
「な、何なんだいこれは――!?」
プレシアを何とか引き摺って安全な大広間に戻ってきたアルフたちが見たのは、破壊尽くされた大広間。柱は砕かれ、壁の至る所に何か重い物がめり込んだような痕や切り刻まれた扉。光線でも撃たれたのか、焼け爛れた円形状の痕まであった。
無事だったのは誠が残していった一部の回復アイテム。それも態々目立つように中心にポツンと置いてあった。
「アタシらがいない間に一体何があったんだい!?」
恐怖を隠すように叫んだアルフを誰が責めるだろうか。
少しずつ、確実に追い込まれているが何も打つ術がない一同は、誠たちの帰りをただ待つしかなかった。
いかがでしたでしょうか?
今回はテリーによってデックが奪われるも冷静さを取り戻した誠と、プレシアサイドでのホラー回でした。
いやあ、両者で温度がまったく違いますね。どうしてこうなったのか……
それにフェイトが現状戦意喪失状態。しかもその護衛のためにトーポたちは戦線離脱。
ゾーマ相手に3体で挑むことになりそうですね。
さて、軽い裏話を。
この作品のテリーですがDQM+の2巻から3巻にかけての空白期のテリーです。
なので邪配合は3巻以降よりも完全ではありません。
なおこの作品では邪配合に関して幾つかオリジナル設定をつけました。
一つはマスターがいるモンスターは完全には奪えない。
もう一つが、邪配合モンスターは自分が強くなる配合を分かっているということです。
これらは+でりゅうおうがしんりゅうを狙ってタイジュの国を襲ったところやしんりゅうがもどってきたところから参考にしています。
それに伴ってもう二つほど設定を追加しましたが、これに関しては次話のネタばれになりますので次話をお待ちください。
一つ言えるのは、誠が落ち着きを取り戻したときの邪配合に関しての考察は半分正解であるとだけ。
時の庭園の方の設定は……もはや完全にリリカルから離れてますね、はい。
でもおかしいな何でジュエルシードまで奪われてるんだろう。というか時の庭園のダンジョンの難易度が更にやばくなりましたね。
さて、次回はVSゾーマ戦となります。
丸々1話使うと思います。フェイトが覚醒するかどうかで難易度が思いっきり変わりますね。
それでは次回またお会いしましょう。
…………フェイトを覚醒させて因縁でもつけようかな