アバン流と申します。
この作品は以前掲載していたものをリメイクしたものです。かなり捏造、オリ設定を混ぜ込んでいますのでご注意してください。
注意点としましては、
カレキの国に精霊がいる。
魔法の筒を各国が使用している。
本来なら覚えていないはずの特性をモンスターが覚えている
作者の更新速度は遅いなど
それでもよろしければどうぞお楽しみください。
とある特別な満月の夜、今にも降ってきそうなほどの無数の星々が空を明るく照らす。
キラキラと輝き続ける星が照らすのは一際大きな大樹。そこでは、数多くの人が魔物たちとともに共存し、精霊に守られ暮らしていた。その国をタイジュの国といった。
そんなタイジュの国にある控え室の一室。茶髪の少年はただじっと次の試合が来るのを待ち続けていた。
(既に1敗している現状、次の試合は絶対に勝たなくてはいけない。勝ってはやての足を治す)
そう改めて気合を入れなおした少年――
『キミにボクたちの国を救うモンスターマスターになってほしい』
ある日、夜中に誰かに起こされ目を覚ました誠は、目の前にいた奇妙な生物にそう言われた。その生物――カレキの国の精霊から、誠はモンスターマスターの才能があると、そしてその才能でカレキの国を救ってほしいと頼み込まれた。
突然の出来事に夢ではないかと思った誠だったが、頬をつねり夢じゃないと実感すると混乱しつつも精霊にたずねた。
「えっと……いきなりそんなことを言われても……それにモンスターマスターって何?」
「うーん、本当はあんまり時間がないんだけど……」
誠の言葉に少し困った表情を浮かべる精霊だったが、協力してもらうためと自身が守護する国の現状を説明した。元々カレキの国はタイジュの国同様、大樹を国としたものであり、活力に満ち溢れ本来の国の名も別のものであった。だが、何が原因か、過去に国を守護していた精霊を失ってしまった。その結果大樹は枯れ果ててしまい、国からは人が、活力が失われてしまった。
それから時が経ち――現代
このまま緩やかに滅びるかと思われたカレキの国に、存在を忘れられかけた一体の精霊が迷い込んだ。その精霊はカレキの国の王と交渉の末、カレキの国を守護する精霊になった。国の住民たちは安堵した。これでこの国が滅びることはないと。
だが、存在を忘れかけられた精霊では力が足りない。精霊の力を強めるためには人々の活気が必要だ。そのためにも国自体を有名にしなければならない。国を有名にするには他の国に負けない強いモンスターマスターの存在が重要だ。しかし今のカレキの国のモンスターマスターたちでは、とてもそのような大役を任せることなど出来ない。次世代を待つ時間もない。ならば違う世界から強い才能を持ったモンスターマスターを招こう。そしてカレキの国の精霊は世界を超え、誠の元にやって来た。
その説明を聞いた誠は顔を伏せ、考える。精霊の話を完全に理解できていなかったが、自分が行かないとその国がどうなるかだけは想像することが出来た。
最初は守るべき存在である弟と妹のこともあり、断ろうと思ったが、自分の力で困った人を助けることが出来ることや、本で読んだような冒険が出来ること。向こうの世界に行っても、精霊の加護によって年も取らないし、こっちの世界ではほとんど時間を消費せず帰ってこれるというのが、誠にとって魅力的だった。
そして誠の心を一番に動かしたのは星降りの大会だった。
――星降りの大会
それは一定の周期の満月の夜、通称『星降りの夜』に行われる総当りの大会。タイジュ、マルタ、カレキ、タイボクの4つの国から選ばれたモンスターマスターたちが戦い、優勝した国は精霊石とよばれる赤い宝石のような石が前優勝国より渡される。そして次の星降りの大会まで保有することになる。それだけではない。この大会に優勝すれば、星々に願い事をすれば一つだけ願いが叶うという。
この大会で優勝すればどのような願いも叶う。それで原因不明の妹の足を治せるのではないかと希望を抱いた。誠にとってまさに千載一遇の話に行くべきだと決意し、行くことを告げようと精霊の方に顔を向けると、精霊の姿がぶれ始めていた。
「もう時間がない……ごめんね。これを逃したらもう次はないんだ。それじゃあ向こうで待ってるからね」
「えっ、ちょっとまっ――うわあああああっ!?」
準備ぐらいさせてと抗議の声を上げようとした誠だったが、箪笥の引き出しから発生した旅の扉に吸い込まれる。何で箪笥!? と内心思いながらも、突然目の前がぐにゃぐにゃと歪んでゆく光景に誠は気を失いそうになった。そして完全に気を失う前に誠は自身の名を告げる、精霊の声を聞いた。
「あっ、ボクの名前を教えてなかったね。ボクはかくれんぼう。カレキの国の新しい精霊だよ」
◆ ◆ ◆
「思えば色々なことがあったなぁ……」
様々な世界を出逢いと別れを繰り返しながら旅してきた。時に死に掛けたことも、文字通り死んだこともあった。今までのことを思い返し、よくここまでこれたものだと誠は苦笑する。
その時、控え室にまで届くような歓声が聞こえてきた。
――わあああああああああああああぁっ!!!
――勝者!! タイジュの国!!
「勝ったのはタイジュの国、負けたら後はないか……。よし! いくよ皆!!」
椅子から立ち上がった誠は、魔物が入っている魔法の筒にそう声をかける。すると任せろと言わんばかりに筒は一度大きく震えた。それを見た誠は、笑みを浮かべ頷くと、カレキの王から貰った衣装を身に纏い、控え室を出て行った。
◆ ◆ ◆
誠が控え室から移動している頃、今だ興奮冷めやらぬ闘技場内では司会がこれまでの各国の闘いを振り返っていた。
戦績 タイジュの国 1勝0敗
マルタの国 2勝0敗
カレキの国 1勝1敗
タイボクの国 0勝3敗
この時点で誠が代表としているカレキの国が優勝するにはタイジュの国に勝利し、なおかつタイジュの国がマルタの国に勝利することで勝率を同じにし、三国で再び行われる総当りに勝利しなければならなかった。
カレキの国の勝利のためにも、これから行われる試合には、絶対に負けるわけにはいかないのであった。
「――これにより、タイボクの国の4位が決定しました。現在マルタの国が2勝と優勝に大手がかかっております。では前置きはこれくらいにして登場してもらいましょう!!」
その司会の声に闘技場の歓声はまた一段と大きくなる。そしてそれぞれの入場口から二人の選手が入場する。
「異世界から彗星のごとく現れ、様々な魔物たちとともに並居る強豪を突破してきたモンスターマスター。先ほどの闘いでは見事な腕前を見せてくれました。今回もその力を見せてくれるか!? タイジュの国代表、テリー!!」
青い民族衣装を纏い、肩から鞄を下げた白い髪の少年――テリーは楽しげな笑みを浮かべながらも、歓声に応えるように手を振りながら現れる。その姿に開催国であるタイジュの観客たちのボルテージは更に上がる。
「対するは!! 忠義の騎士たちを従えたカレキの新たな風。マルタの国を後一歩まで追い詰めた末恐ろしい底力。この試合に勝利し、三つ巴というミラクルを起こせるか!? カレキの国代表、マコト!!」
青いラインが入った白のローブを身に纏い、元の世界で住んでいた場所と同じ名をもった杖――うみなりの杖をその手に持った誠は、カレキの国民からの歓声にぺこりと一礼すると舞台に立ち、テリーと対峙する。
「悪いけど、勝たせてもらうよ!!」
「こっちこそ!! 負けるつもりはない!!」
言葉少なく少年たちは笑みを浮かべると、同時に魔法の筒を取り出し天に掲げた。
「「デルパ!!」」
その言葉とともに二人の魔法の筒から三つの光が飛び出すと両者の前にこの日のために鍛えられ、選ばれた魔物たちが姿を現す。
誠の前には鼠のような小さな動物と赤黒い鎧の騎士。斧と盾を持ち、マントに鎧を身に纏った王のような風格をもった骸。
テリーの前には紫色の大猿に剣と盾を持った青き竜人。青い体と頬まで避けた赤い口、死んだ魚のような目をしたスライム。
魔物たちは自らのマスターに勝利を与えるべく、目の前の敵を睨み付ける。そして――
「試合開始――ッ!!」
――戦いの幕が上がった。
◆ ◇ ◆
「――ぃちゃん。誠兄ちゃん!!」
「――ん? ……はやて?」
体を揺さぶられ、何事かと思い目を開けると、僕を覗き込むように2つ下の妹――はやてがいた。むくりと起き上がりキョロキョロと辺りを見渡すとここが自室であることがわかる。
……あれ?
「決着は……?」
「決着? 兄ちゃんまだ寝ぼけとるん? 起こそうとした時も帰るとか何とか言っとったけど。休日やからっていつまでも寝とったらあかんよ」
思わず口から出ていた言葉に反応したはやてはそう呆れながら言うと、朝食出来とるからはよ来てなと、だけ告げ、器用に車椅子を動かし、部屋を出て行こうとする。その後姿を見て、あっ、と思い出した僕は声をかけた。
「おはよう、はやて」
「おはよう、誠兄ちゃん」
こちらに顔を向けたはやてに挨拶をすると、はやてはにこりと笑ってそう言い、今度こそ部屋から出て行った。
一人部屋に残された僕は机の方に顔を向ける。そこに置いてある二つの魔法の筒とトーポのストラップが付いた携帯電話を見て、そういえば帰ってきたんだったなと思い出す。
「結局勝てなかったな……」
もう戻ってきて数ヶ月が経つのに、まだ実感がわかない。目を閉じるとあの日の戦いを思い出す。
テリーとの最後の攻防を――
◆ ◆ ◆
試合が始まってからどれだけの時間が過ぎただろうか。そう感じるほどテリーとの戦いは苛烈を極めた。舞台は強力な呪文や特技によってボロボロになっており、その余波を受けた僕やテリーも荒く息を吐いている。
「さあっ! 試合もいよいよ大詰め!! どちらも残りモンスターは2体! だがっ、マコト選手のモンスターはどちらも疲弊しており、ややテリー選手が有利か!?」
実況する声が五月蝿い。そう感じるほど僕は追い詰められていた。テリーのモンスターはスライム、キラーエイプ、リザードマン。このうちキラーエイプは落とし、残す二体にもそれなりのダメージを与えた。だけどこっちの被害の方が酷い。スカラで守備力を底上げしていたのに運悪く痛恨の一撃でトーポが落とされたことで回復の要がいなくなった。
そしてナイトキングのスカルはおそらくあと一撃。キラーアーマーのサイモンは何度も耐えられないだろう。一応スカルもベホマが使えるが、今回の僕のメンバーはトーポを除いてすばやさが低い。つまり――
「ここで決着をつけられなければ僕の負け。だったら、スカル!! サイモン!!」
「みんな!! あと少しだっ、押し切れ!!」
テリーの合図で突進してくる二体。それに対しサイモンがスカルを守るように仁王立ちし、敵の一撃に備える。現状考えられる中で取れる手は一つ。敵にサイモンを切らせ、バイキルトで強化されているスカルで押し切る!!
「うおっりゃああああああああああああっ!!」
「ぬおっ!!?」
「サイモンっ!!」
スライムの強烈なスラ・ストライクに身構えていたサイモンが仰け反り、そこにリザードマンの一撃が決まる。そのままサイモンは崩れ落ちるが、守られていたスカルは無事だ。これでリザードマンは止まってスカルの一撃で僕の勝ちだ――っ!?
「まだだっ!!」
リザードマンはそう叫ぶと、切り伏せたサイモンを押しのけ、そのままスカルに突撃する。その行動力に2回行動を一瞬疑うが、これまでのリザードマンの行動から考えてそれはないとすぐに悟る。
ならば何? ……止まらない攻撃――まさかにおう斬り!? まずい、スカルの体力じゃ、耐え切れない。このままじゃ――負けるっ!
負けたくない。僕の仲間たちに負けてほしくない。その一心で僕は叫んでいた。
「負けるなああぁっ!! スカルーーーーっ!!」
声が届いたのか、スカルはリザードマンの一撃を喰らってもなお威風堂々と立ち続ける。その雰囲気に観客はどよめき、スライムやリザードマンは後ずさる。そしてスカルは一歩踏みしめ、吼えた。
「うおおおっ!! 我を信ずるマコトのため、倒れた仲間のためにここで負けるわけにはいかん!! 喰らうがいい、ギガ――ブレイク!!!」
スカルの放った斬撃から眩い閃光が走り、舞台を光が覆いつくす。その眩しさに思わず顔を覆い隠す。やがて光が収まり、恐る恐る顔を上げると、リザードマンは倒れており、スカル以外に立ち上がっているものはいない。つまり、僕の勝ちだ!!
その事実に喜びの声を上げようとしたが、どこか違和感があった。やけにあっさりしすぎている。おかしいと思ったその瞬間、倒れたリザードマンがもぞもぞと動き、その下からスライムが這い出てきた!?
「ふぃ~、危なかったぜ」
「スラお!!」
「うっ「なっ、なんと!! テリー選手のスライム耐え抜いたあああっ!!」――嘘っ!?」
倒しきれなかった悔しさに、杖を握る力が強くなる。だけどまだスカルがいる。しっぷう突きならば確実にスライムより速く動ける。だけど、スカルに指示を出そうとして気が付いた。スカルが微動だにしていないことに。その姿に嫌な予感がした。そして思い出す。本来の種族なら持っていない、スカルだけが持っている特性を……外れていてほしいと願いながらも、震える声でスカルに呼びかけた。
「スカル……?」
「…………すまぬ」
掠れた声でそう呟くと、持っていた斧と盾を取り落とし、スカルは倒れた。ガシャンと倒れたスカル。それまで様々な声を上げていた観客や実況が嘘のように無くなり、場が静まりかえる。その中で熱が冷めたかのように一気に冷静になった僕は、この状況を動かす一言を発した。
「……負けた」
「決ーー着っ!!! 勝者! タイジュの国代表!! テリー!! 決勝に進出だーー!!」
『わあああああああああああっ!!!』
決着、僕の負けだ。
◆ ◆ ◆
あの後、テリーに決勝でも頑張る様に激励し、控え室に戻った僕は悔しくて声を上げて泣いた。
スカルが亡者の執念を発動させて、後一歩のところまで追い詰めたのに負けてしまった。負けた原因も分かっている。自分の戦術ミスだ。テリーのモンスターたちの強さに防戦一方になってしまったこと、トーポにリザオラルを唱えさせなかったことなど、挙げればきりがない。そんな自身の犯した戦術ミスに情けなくなって、ここまで付いてきてくれた仲間に申し訳なくて更に泣いた。
ようやく冷静さを取り戻した時には既に決勝の決着が付いたところで、そのまま表彰式が行われた。その後カレキ王に連れられ、タイジュの牧場から雨のように降り注ぐ流れ星を眺めた。そこで聞かされたのはテリーたちの願いが姉と元の世界へ帰ることだった。
そしてもう一つ言われたことは、僕が優勝したテリーに善戦したことや僕自身の名が売れたことによってカレキの国の知名度も高まった。なので僕も帰りたいのなら元の世界に帰ってもいいというものだった。
それを聞いた僕は迷った。かくれんぼうやカレキ王の願いは達成できたが、僕自身の願いは叶えられていない。何よりまだまだ行っていない世界もあるのだ。その中にははやての足を治す方法が存在している可能性もある。だけど……長い間はやてたちの顔を見ていない。だからこそ帰れると聞いたときに寂しさが一気にこみ上げてきて迷った。
散々迷ったが結局僕は帰ることにした。だけどいざ帰るときになった時、もうこの世界には来ることが出来ないかもしれないという不安が出てきた。本当はこれまでのことが全て夢で、御伽噺みたいに目を覚ましたら何も覚えていないんじゃないかって。
この世界で過ごすうちに僕はこの世界が好きになっていた。そしてはやてたちとこの世界に来たいという思いもあった。そのことを正直にカレキ王たちに告げると、カッカッと笑って言った。
「――僕が望めばいつだって会える……か」
その言葉通り、帰ってきてからもはやての足を治す方法を探すために何回もカレキの国に冒険に行っている。そしてつい先日ようやく目的のものが手に入った。これで……はやてを助けられる。
「よし、今日も頑張るか」
着替え終えるといつものように魔法の筒と携帯を鞄に入れ、部屋を出た。
「冬至ーー!! はよ起きいーーーー!!」
「――痛っ!!? おい!! お前何で起こした!?」
「はりせんや。こう顔面をスパーンっと」
部屋を出ると同時に隣の部屋から聞こえてくる喧騒に思わず笑みを浮かべる。両親が他界して一時は暗くなった家も、弟の冬至が率先して明るくしようとしてくれたおかげで、はやても元気になった。まあその分二人とも口喧嘩が多くなったけど……。
それにこっちに戻ってきた時に本当に一日も経ってないことに驚いたけど、数日程は向こうとの違いに戸惑って迷惑かけたしなぁ。
思わず感傷に浸っていると二人の声はどんどんと大きくなっていた。いつもの事とはいえ、ご近所に迷惑だしそろそろ止めに行くとするか。
この世界に戻ってきてからそろそろ三ヶ月、まだはやてたちにあの世界の事を話してはいない。
いかがでしたでしょうか?
今回は主人公についてとDQMの世界の仕組みの一部などが明かされました。
あと、ナイトキングは本来なら亡者の執念は持っておりません。
サブタイトルはDQM+を参考にしております。
では、またお会いしましょう。