リリカルクエスト   作:アバン流

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大変お待たせしました。
更新が遅れた理由は先日発売されたDQM2をやってました。
現在裏シナリオもクリアし、鍵交換に精を出す日々を送ってます。
感想を言うならスライム増えすぎといえばいいのか……

さて、今回は長い説明会の後編。1万字超えてます。

……おかしい、前回の話よりかなり長くなってしまっている……。
だけど二つに分けると途中グダるだろうからこの長さです。

いつものとおり捏造設定多数でお送りします。
また今回の呪文の話では、何故テリーが子供時代は覚えていたのに、大人になって忘れてしまっているのかを考えた結果こうなりました。

ではごゆっくりどうぞ。


第3話 『…………何やこれ?』

「さて、僕の話もひと段落したから、次は冬至の番だよ」

 

「わかってるって」

 

 夕食後、魔物たちを魔法の筒に戻した後、汲んできたお茶をはやてたちに渡しながら誠はそう告げると自分の席に着く。

 それを見計らって、冬至は身に着けていたリベリオンを取ると机の上に置いた。

 

「俺は魔導師と呼ばれる存在だな。魔導師ってのは魔法を使う者たちのことを指す。で、こいつが俺の相棒のリベリオンだ」

 

≪初めまして誠様、はやて様。アームドデバイスのリベリオンと申します。以後お見知りおきを≫

 

「わわっ、指輪が喋った!?」

 

「よろしくね」

 

 チカチカと黒い宝石部分が点滅し、言葉を発することに驚くはやて。

 一方の誠は先ほどリベリオンの声を聞いていたのもあったが、悪魔の書や踊る宝石などの魔物で耐性が付いていたためかそれほど驚かなかった。

 

「デバイスってのは分かりやすく言うと、アニメとかでよくある変身道具のようなもんだ。ちなみに俺が使っているリベリオンはガントレットの形になるな。あとデバイスにも色々種類がある」

 

 自らの判断で魔法を行使する一般的なストレージデバイス

 AIを持ち、術者の手助けを行い、自らも学習するインテリジェントデバイス

 補助能力は劣るが、武器としての性能を重視したアームドデバイス

 現存しているのか不明であり、所有者と融合することで力を与えるといわれるユニゾンデバイス

 

 冬至は分かりやすいように一つ一つの特徴を説明すると、喋りすぎて喉が渇いたのかお茶を一口のみ、ホッと息を吐いた。それを見計らってはやてはわくわくしながら矢継ぎ早に質問する。

 

「なあなあ、魔法ってどんなんあるん? 物語に出てくる魔法使いみたいに万能なん? それともゲームみたいな系統別? 私も使える?」

 

「色々あるな。イメージとしてはゲームに出てくるような魔法だな。俺に出来るのがリベリオンに記録されてるのしかできないが実演してやろうか? それからはやてもリンカーコアがあるらしいから使えると思うぞ」

 

「ホンマ!? あ、そういや誠兄ちゃんももしかして魔法使えるん?」

 

「魔法……というより呪文だけど一応使えるよ。簡単なのなら冬至の後にでも見せるね」

 

「よっしゃ! ほんならまずは冬至の魔法見して!」

 

 魔法という不思議な力に興味津々のはやてのお願いに快く了承する二人。冬至はまず見た目てきにも分かりやすいBJを実践してみせる。そしてBJの詳しい説明を行うと二人の反応は似たようなものであった。

 

「ほぉ……、魔力あれば生成できるんやったら着替え放題やな」

 

「それに服代も浮きそうだね」

 

「はやてはわかるけど兄貴もかよ……」

 

 庶民的な二人の発想に冬至は頬を引きつらせる。誠までもがBJに対してそのような反応を示したのには訳があった。

 そもそも誠の場合、BJの存在を知らなかったのもあるが、異世界に応じてそれに見合った防具を用意しなければならなかった。そのため魔力さえあれば、ある程度防寒や耐熱作用のあるBJを生成出来るという事実に羨ましくなってこのような反応をしたのであった。

 当然そのような事情を冬至は知るわけもなく、話を戻すべく一つ咳払いをすると魔法講義を再開した。

 

「で、俺の魔法の主軸になっているのがこの“凍結”の変換資質だ」

 

 冬至は目の前に魔力弾を生成する。

 その魔力弾は強力な冷気を発しており、触れれば間違いなく凍るだろうというのが見て取れた。

 

「俺はあらゆる術式に凍結の属性を付加することがが可能なんだ」

 

 魔力変換資質とは魔力変換を意識せずに行う資質のことである。この変換は他にも“炎”“電気”とあり、冬至の場合は凍結である。

 この資質を持つ冬至は凍結の変換が得意であるがその反面、純粋魔力の大量放出は苦手で、大抵の魔法に凍結属性が付与される。

 

「ついでに言うと術式とかさえあれば魔力変換は習得できるらしいけどな」

 

≪ですがマスターの凍結のような変換はその術式だけでなく、温度変化などの制御も学ばなければなりません≫

 

 リベリオンはさらに補足を加えるが、難しい専門用語にはやては頭から煙を上げていた。ちなみに誠の頭の中では吸収や無効持ちには辛そうだなとか、術式変換についてはアイスフォースみたいなエンチャントのようなものだろうと考えていた。

 そんな中、ふいに誠は冬至が浮かばせている魔力弾から発せられる冷気を見て、思ったことをそのまま口にした。

 

「あっ、この魔力弾浮かべてるだけで涼しいから冷房の代わりになるね」

 

「おお! 兄ちゃんナイスアイディアや! もう少し経ったら暑なってくるし、この夏は快適に過ごせるな~」

 

 はやてはポンと両手を合わせ、それに賛同する。

 どうにも自分たちは真面目な話しになると脱線しまくると内心思いながらも、自分の切り札を冷房代わりに使おうと考えている二人に頭を抱える冬至であった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 あれから何とか立ち直った冬至は、自身が使える魔法を次々と説明していった。

 サーチャーの説明の際、はやてがふざけたことを言って、冬至にチョップを喰らったことや、非殺傷設定の説明の際に、誠が二人をドン引きさせる発言をした以外は滞りなく話は進んだ。

 

「後は……飛行魔法で自由に空を飛べるくらいか」

 

「空飛べるってええなぁ……」

 

「へー、結構いろいろ出来るんだね」

 

 軽く宙に浮かびながら冬至はそう締めくくる。それにはやてと誠は羨ましそうな表情であった。その誠の表情を見て、疑問に思った冬至は尋ねた。

 

「兄貴は飛べないのか?」

 

「ううん、自由には飛べないだけだよ。一応飛べる子に騎乗したり道具を使えば飛べるけどね。僕が出来るのは一度行ったことがある場所に瞬間飛行する“ルーラ”だよ」

 

「「瞬間飛行?」」

 

≪……聞く限り転移魔法のように聞こえますが、瞬間飛行とはどのような魔法ですか?≫

 

 聞きなれない言葉に二人は首を傾げ、誠に尋ねようとしたが、先に質問したのは以外にもリベリオンだった。リベリオンが誠に尋ねたのには訳があった。どういった魔法かは今のところわからないが、デバイスも持たない誠が使えるのだから冬至も使える可能性があると思ったのだ。

 意外なところからの質問にやや驚いた様子の誠であったが、質問に答えるべく口を開いた。

 

「まず言っておくけど、僕もルーラを自力で習得したわけじゃない。精霊の加護によって使えるようになったんだ」

 

「ん? それやったらその精霊の加護っちゅうんがなくなってもうたら使えんようになるん?」

 

 尤もな疑問に誠は首を振って否定した。

 この疑問は以前誠も同じように抱いたものであり、かくれんぼうに直接尋ねたことがあった。その時返ってきた答えは、精霊の加護によって誠が本来使える魔法を先取りしているとのことであった。

 そのため誠が仮に精霊の加護を失ってしまったとしても、それまでに自力で使えるようになるか、学びなおせば再び使えるようになるのだ。

 なお、いくら精霊の加護があるからとしてもそうポンポンと魔法を先取り出来るわけではなく、“大空の盾”や“破壊の鏡”といった特別な力を持った道具や武器が必要である。それら特別な道具を媒体にし、精霊の加護の後押しによってルーラやリレミトといった新たな魔法が使えるようになる。

 

 現在誠が主に使える呪文は、“ルーラ”“リレミト”“トラマナ”“ニフラム”“ステルス”“レムオル”“レミラーマ”“インパス”“アバカム”や各種補助呪文。異世界限定で“ラナルータ”“ラナリオン”と数多く覚えていたが、攻撃呪文は一切覚えていなかった。

 何故なら誠は攻撃よりもサポートの適正の方が高く、モンスターマスターであることからも、サポートを優先した方が良いためこのような補助特化となっている。

 かくれんぼうから聞いたこれらの話を、自身の使える呪文も含めて誠はそのまま伝える。それを聞いた二人の反応は何ともいえないものであった。

 

「魔法の先取りってなんかずっこいな」

 

「そっちのほうが羨ましいんだが……」

 

「まあ気持ちはわかるけど、一応ルーラとか初級の呪文は加護なしでも使えるようになってるからね。それに特別な道具を探すのはかなり大変なんだよ。仮に見つけてもそれを守っている主とかいるし、武器だって魔物に装備させるか迷うし。他にも――」

 

≪誠様、話がそれてますので軌道修正お願いします≫

 

「あ……ごめんごめん。えっと、ルーラの話だったね。……こほん、それじゃあ説明するよ。まずルーラには幾つかの種類がある」

 

 そう言って指を立てて一つずつ誠は説明をはじめる。

 

――行ったことのある場所に一瞬で移動する“ルーラ”

――対象をどこかへと吹き飛ばす“バシルーラ”

――魔力を消費して自由自在に空を飛ぶ“トベルーラ”

――イメージすることでその場へと瞬間移動する“リリルーラ”

――指定した場所へと送り届ける“オクルーラ”

 

「大まかに分けてこの5種類だね。ルーラの派生で攻略したダンジョン型の異世界限定で最深部手前まで行く“誘いルーラ”ってのもあるけど、これも僕は使えないよ。あとは文献にだけ載ってた究極封印呪文の“オメガルーラ”っていうのもあるけど、これは詳しいことがわからないから置いておくね。で、さっき言ったルーラの中でリリルーラだけが瞬間移動、つまり転移魔法に該当するんだ。そして僕が使うルーラに言えることは……室内というか天井がある場合使用禁止かな」

 

「どういうことなん?」

 

「……天井に頭をぶつける」

 

「「は?」」

 

 思いもよらない回答に呆けた表情をする二人。

 それに対し誠はあははと乾いた笑いをすると、何故そうなるかを話した。

 

「僕が使うルーラは行きたい場所をイメージして、唱えたその場で発動する魔法なんだ。で、唱えると術者の体が軽く宙に浮く。そしてそのまま一気に上昇して、空間とかそういうのをぶち破って目的地へと瞬間飛行するんだ。で、何で天井にぶつかるかと言うと、ルーラは唱えたら必ず上昇する……上に何があっても……」

 

 最後の呟きと思い出したのか痛そうな表情を浮かべ、遠いところを見つめる誠を見て、二人は何回も頭ぶつけたんだなと察した。

 一方、黙って説明を聞いていたリベリオンは納得したように自身の推察を交えて、誠に尋ねた。

 

≪成る程。だから天井などの障害物がある場合、そのままぶつかり上昇が出来ず、魔法が発動しないのですね。ということは到達地点も必然的に室外になりますね≫

 

「そういうこと。でもそれはあくまでも僕が使うルーラの話だから、室内に直接移動出来るルーラもあるよ。かくれんぼうが使ってたしね。それにルーラは目的地さえ設定できれば違う世界でも移動することが出来るから、ある意味では転移魔法にも分類される……かな?」

 

 誠の言葉にリベリオンはこちらの知る転移魔法とまったく違うと判断する。そもそも転移魔法自体複雑な術式であり、誠の言ったような、ただ場所を覚えてイメージして移動するなど出来るわけがない。

 例えるなら、ベルカ式やミッド式は理数系、誠が言う呪文は文系のようなまったく毛色が違うものなのではないか。そのようにリベリオンが考察している中、冬至がそういえばと疑問に思ったことを口にした。

 

「そういや、なんで今日になって兄貴は自分のことを明かしたんだ?」

 

「あー、それはやな……。うーん、どない言えばええんやろか」

 

「代わりに説明するよ。実は今日冬至と別れた後にね――」

 

 あの時は本当に突然の出来事であったため、どう言えばいいか頭を悩ませるはやてに誠は助け舟を出す。そして誠は冬至に今日はやてとともに遭遇した一連の出来事を話した。

 

「――というわけだよ」

 

「ホンマにあん時は死ぬかと思たわ」

 

「だよねえ。冬至は何か……知っているみたいだね」

 

 明らかに顔色が悪い冬至は誠の言葉にビクりと体を震わせると、罰が悪そうに頷いた。

 

「ああ……これを見てくれ、リベリオン」

 

≪了解。記録映像を再生します≫

 

 リベリオンは空中にモニターを出現させると、映像を再生し始めた。

 そこに映されていたのは誠たちが見たあの巨木と、それに対峙する高町なのはの姿があった。予想外の人物に、呆気にとられる二人。その間にも映像は進み、なのはが砲撃魔法で巨木を消し去り、青い宝石のようなものが一瞬映って映像が終わった。

 そして冬至は話し始める。少し前にあった助けを求める念話の件と高町なのはが魔導師になったこと。その後は大丈夫だろうと放っておいたことや、今日になって事件に巻き込まれていると知ったことを話した。

 

「まさかなのはちゃんが魔法少女やったなんて……」

 

「なるほどね。事情は分かったよ。それで冬至はどうしたいの?」

 

 はやては今日友達になった子が冬至同様魔導師であったことにただただ驚いていた。一方の誠はそんな冬至の告白にどうしたいのかと返した。それに対し冬至はどう返すべきか迷う。

 本音を言うならば手伝いたい。しかし手伝うとしても自分に何が出来るというのだろうか? 封印する術もない状態では逆に足手まといになるかもしれない。しかし時間稼ぎくらいは出来るはずだと、散々迷った末、冬至は手伝うべきだと決めた。

 

「俺は……なのはたちを手伝いたい。封印出来なくてもやれることくらいはあるはずだ」

 

「そっか。じゃあそれでいいんじゃないかな?」

 

 誠はあっさりとそれを肯定した。

 それに面食らった冬至は本当にいいのか? と確認を取るも、誠の答えは変わらなかった。

 

「僕もモンスターマスターとしてこれまで無茶してきたからね。冬至のやりたい事を止める権利はないよ」

 

「そうか、悪いな兄貴。それで、はやてもいいのか……?」

 

 恐る恐るといった感じではやてに確認を取る。

 冬至は誠がモンスターマスターとして無茶したことを怒ったはやては、もしかするとダメだと言うかもしれないと考えていた。しかし黙って二人のやり取りを聞いていたはやては、困ったような顔をしながらも誠と同じように頷いた。

 

「私としては無理せんでほしいんやけど、言っても無駄やろうから怪我せんで帰ってきてな」

 

「そうだな、怪我しないように囮や盾にでもなればいいな。つーわけで頼むぞリベリオン」

 

≪やれやれ、仕方ないマスターですね≫

 

 そう決意を固めている冬至とリベリオンを見て、はやてもせめて怪我をしないようにと応援する。そんな中、ふと魔法の術式に関して疑問に思った誠は尋ねた。

 

「水を差すようで悪いんだけど、その封印魔法って高町さんの持っているデバイスからもらったり出来ないの?」

 

「……出来るのか?」

 

《……彼女の持つデバイスの術式はミッド式ですが、やりようによっては可能ですね……何故気付かなかったのでしょうか……》

 

 思い至らなかったとばかりに間の抜けた声を出す一人と一機に、大丈夫かなと不安に思う誠とはやてであった。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 今日一日で随分世界が変わったと私は思う。

 

 兄ちゃんがモンスターマスターっていう魔物と友達になれる職業になっとったこと。それになった経緯を聞いて、自分のせいで兄ちゃんは大変な思いをしてきたんやと思うとすごく申し訳なかった。

 ただ、次に私の心を占めたのは連れ去ったことへの怒りと、兄ちゃんがやりたい事ができてよかったと思う気持ちやった。

 怒りは当然カレキの国の王様と精霊に対して、兄ちゃんが帰ってこれたからええってわけっちゃう。自分らの都合で勝手に人様の家族誘拐しておいて、それではいそうですかで終わらせられるわけない。挙句に兄ちゃんはそれを今の今まで黙っとったし……。

 

 せやけど冒険の話しとる時の兄ちゃんの顔は生き生きしとった。お母さんたちが亡くなってから、私らが寂しくならんよう兄ちゃんは自分のしたいこととか我慢していつも一緒に居てくれた。やから兄ちゃんが私らのためやないことであんなに楽しそうにしとるのは嬉しかった。

 冬至も絶対に無茶しやんことを条件にジュエルシード? とかいう宝石をなのはちゃんと捜す許可をもろた。正直な話、私は反対やった。やけどあんな迷っとる冬至は見とうない。どっか抜けとるとこもあるけどきっと冬至なら大丈夫やろ。

 

 やけど……二人とも私を置いてどこか遠くへ行ってしまいそうで怖かった。そんなことあるわけないとわかっとるのに、嫌な思いが消えへん。はぁ……この時ほど自分の不自由な体が恨めしくてしょうがないわ。

 そんな風に物思いに耽っていると、兄ちゃんが私を呼んだ。

 

「はやてに渡したい物があるんだ」

 

「渡したい物?」

 

 こくりと頷いて兄ちゃんが取り出したのは、なんかの根っこやった。

 ……なんやこれ? これが何か尋ねようとする前に、兄ちゃんが言ったことが信じられへんくて、私と冬至は固まってしまった。

 

「これを使えばはやての足を治すことが出来るんだ」

 

「「はい……?」」

 

「さっき言ってた治療方法の件だけどね……。実はつい先日見つけたんだよ」

 

 そう言って笑顔で兄ちゃんは説明をしてくれた。

 この根っこはありとあらゆる病気を治す万能薬と呼ばれるパデキアの根っこと呼ばれるもので、飲むと体の悪い部分がポカポカと温かくなって、病気とかを治すらしい。これで私の足の麻痺を治すそうや。

 ついでに言っとくと、精霊の加護を受けとらへん私では本来効果は薄いそうやけど、兄ちゃんが用意したのは加護を持っとらん人でも十分効果が発揮する代物やそうや。

 

「ホンマに? これ飲めばホンマに治るんやな?」

 

「うん。パデキアの根っこは、ありとあらゆる病気に効く薬だからね。はやての病気もきっとよくなるよ」

 

「やったじゃないか!」

 

「う、うん」

 

「それじゃ、今すぐ煎じてくるから少し待っててね」

 

 兄ちゃんは根っこを持つと、そのまま台所へと向かった。

 私の足は治る。突然言われたことに最初は実感わかんかったけど、今まで何をしても無理やった病気が治る言われて嬉しくないわけない。

 ……ホンマに私の足が治るんか。胸の奥から沸きあがってくる歓喜が抑えきれず、声も自然と弾むのが自分でもわかる。

 兄ちゃんが根っこを煎じてくれとる間、ワクワクとこれから先の楽しいことを考えて、冬至と話して待っとった。冬至が言うには私にも魔力があるそうや。それやったら私も魔法が使えるようになるかもしれん。あ、でも兄ちゃんみたいなモンスターマスターになるのもええなぁ……。

 そんでもって数十分後、台所から出てきた兄ちゃんは、えらい微妙そうな顔をしながら出てきた。その顔に嫌な予感がしてしまう。

 

「に、兄ちゃん……まさか失敗したん……?」

 

「いや大丈夫だから……はい、これ」

 

「「…………え?」」

 

 目の間に置かれたそれを見て、私と冬至は固まった。

 湯呑みに入れられたそれは、なんやめっちゃ禍々しい色をしとった。

 ……そうやんなぁ、根っこやもんなぁ……。そらこんな色するわ、せめてもの救いなんは匂いだけはましやな。……あはは。

 

「……これ、飲まなあかんの?」

 

「良薬口苦し、だよ」

 

「……頑張れ」

 

 冬至の応援にイラっとするも、飲まな動けるようにならん。ごくりと息を飲み、深呼吸。

 ……よ、よし。覚悟は決まった。いざ!

 

「――――うっ!?」

 

 口に含んだ瞬間、口いっぱいに広がる苦さに思わず涙が出てくる。吐き出したい衝動を抑え、治すためやと頑張って勢いよく飲み干す。

 飲み終わると、何とも言えない達成感とともに足と胸元の部分がポカポカと温かくなってきた。

 

「よく頑張ったね。はい、口直し」

 

「うん」

 

 兄ちゃんから口直しに、お茶をもらい一気に飲み干す。ううっ、まだ口ん中が苦い……。

 暫くそんな風に口の苦さに身悶えしとったけど、やがてそれも収まった。

 

「それじゃ、動くかどうか試すな……」

 

 二人が見守る中、私は足に意識を集中させる。

 そして――ピクリと今まで何も反応せんかった足が確かに動いた。それだけやった。

 

「……あかん、動かへんわ」

 

「……ごめん、はやて」

 

 私の様子に失敗を悟った兄ちゃんは申し訳なさそうに私に謝った。それに大丈夫やと返すも、期待しとった分、私の落胆は大きかった。

 それでも諦めきれへんかった私は、足がもう一度動かへんか確かめようとした時、足に違和感(・・・)があった。

 

「兄ちゃん!! 足動かへんのに感覚だけ戻っとる!!」

 

「えっ……? ごめん、ちょっと確かめるよ」

 

 気落ちしとった兄ちゃんは慌てた様子でそう一言断ると、いつもやっとるマッサージをするように足の先を軽く何度も確かめるように揉んだ。

 

「あはは、に、兄ちゃん。く、くすぐったいからやめて……」

 

 聞こえとらんのか集中しとるんか知らへんけど、兄ちゃんは執拗に足を揉んでくる。

 ――って、今度は痛い!? 今まで石田先生に検査で確かめてもらっとった時や普段やっとんのは何も感じんかったのに、足のマッサージってこんなに痛いん!?

 …………絶対ちゃうわ。確かめるために強く押しこんどるし。

 

「兄ちゃん! 痛いからストップ!!」

 

「……感覚だけ戻ってる? いったいどういう……あ」

 

 なんかに気付いて固まってた兄ちゃんやったけど、それはええ。

 それよりもようやくマッサージが終わったから、痛みを和らげるために足をさする。

 ああ痛かった。ちょい涙目になってもうたわ。私が足をさすっとる間に、今まで黙って様子を伺っとった冬至は、固まったまんまの兄ちゃんに声をかけた。

 

「何か分かったのか?」

 

「…………うん。考えてみれば、今まで麻痺してたんだからそう簡単に動くわけないなーって」

 

 言い辛そうに頬を掻きながらそう言った兄ちゃんは、誤魔化すようにあははと笑った。

 えーっと、つまりどういうことや?

 

「筋力が落ちて動けなくなってるだけだと思う。あとはやて、ごめんね。痛がってるのに何回も確かめて」

 

「い、いや普段やっとることやで別にそれはええんやけどな……。ちゅうことは治ったんやな?」

 

「うん」

 

 さっきまでの雰囲気のせいか、何とも言えない微妙な雰囲気が場を支配する。

 いや、よう考えればそうやわ。何年も麻痺して足動かしとらんのにいきなり動くなんてありえへんわな。あはは、そんなに気付かんなんて別の意味で泣きそうやわ。

 ………ちゅうことはや、リハビリすれば動けるようになるんやな。

 うん、もう喜んでもええよな? 何も不味いことはあらへんな?

 

「よっしゃあああああ!!! 治ったああああっ!!」

 

「よかったじゃないか、はやて! 流石兄貴だ!」

 

「嬉しいのは分かるけど、二人とも静かにね」

 

 狂喜のあまり冬至と二人叫ぶ。兄ちゃんに近所迷惑だと注意されたけど、それでも嬉しいことはかわらん。注意する兄ちゃんの表情もすごく嬉しそうや。

 

「いやー、はやての病気が治って本当によかったぜ」

 

「ホンマやわ。あんな不味いもん頑張って飲んだのに治らんかったら、今頃私泣いとるで」

 

「あー、やっぱり不味かったんだね。すごい表情してたし」

 

 改めて兄ちゃんにお礼を言い、軽口を叩きあいながら、よかったなーと言い合う。ホンマによかったわ。兄ちゃんの言うとおり、悪い部分がポカポカ温かくなって治ってったしな。

 ……あれ? そういや私が温かくなった部分って足だけやないよな? 胸元の部分も同じように温かくなったし。もしかして他にも病気があったんやろうか?

 やけど足が動かんこと以外、私は至って健康そのものやし……。これは前の定期健診でもわかっとることや、一体どういうことやろう?

 そのことを兄ちゃんらに話すと。

 

「うーん、普通なら知らないうちに病気を患っていて、それが治ったって考えるべきだと思うけど……」

 

「いや、ちょっと待ってくれ。胸元部分って事はもしかしたらリンカーコアが異常を起こしていた可能性がある」

 

「リンカーコア? それって冬至がさっき私にある言うてたやつやんな? 一体何なんそれ?」

 

「……そういやデバイスとか魔法の説明はしたのにリンカーコアは話してなかったな」

 

≪またマスターのうっかりですか……≫

 

「お前もだろうが!」

 

 冬至とリベリオンが漫才じみたことをしとる間に兄ちゃんにリンカーコアについて聞いたけど、兄ちゃんも知らんそうや。しょうがなく冬至らの漫才が終わるまで待とうと思ったけど、何時まで経っても終わりそうにあらへんだから、はりせんでスパンッと冬至の頭を叩いて終わらせた。

 そしてリンカーコアがどういったものかや、酷使するとどうなるかなどを経験談を交えて、時折リベリオンの補足もありながらも、冬至は具体的に話してくれた。

 そんでリベリオンが言うには、私のリンカーコアは何か変やそうや。活動しとるようでしてないそんな曖昧な状態にあるらしい。せやけどリベリオン自体、そういったサーチ系能力はかなり低いため、合っとるかどうかもわからんそうや。

 

「そう言われても、私は今まで魔力なんて感じたことあらへんし、どういったもんかもわからへんで? ……兄ちゃん、何とかならへん?」

 

「うーん、そうだね。魔力がどういったものか知るためにも、まずは魔力を回復しようか」

 

「あるんかい……」

 

 ダメ元で兄ちゃんに頼ってみると、鞄からなんや高級そうなポットのようなものを取り出した。

 ホンマなんでも持っとるな……。

 

 そう呆れながらも、このポットが何や聞くと、エルフの飲み薬っちゅう消費した魔力を完全に回復する薬やそうや。冬至やリベリオンの言うことも気がかりやし、念のために飲んどくか。これで何もなかったら冬至からかったろ。

 そう考えながら、その薬をコップに注いで一気に飲み干す。さっきの根っこの煎じたやつみたいに不味いかと思ったけど、水みたいに飲みやすかった。

 

 飲み終わると同時に、力が満ち溢れてくるって言えばええんか、とにかく今まで感じたことあらへん力のようなものが私の中を駆け巡っとるのがわかる。どうやら冬至の言うことが当たっとったみたいや。これが魔力なんやな。

 兄ちゃんらと同じように、魔力という不思議な力が自分にもあって嬉しいなと思いつつも、どうして魔力がここまで減っていたのだろうかと疑問が生まれた。

 ……って、何や? なんか徐々に魔力が無くなってっとるような……?

 

「なんで疲れたような顔してんだ?」

 

「んー、なんやいきなり体中にあった力が抜けてってな。多分魔力やと思うんやけど……」

 

「どういうこと? 魔力は確かに回復したはずなのに……」

 

 私らが消えていく魔力に疑問符を浮かべ取ると、リベリオンが突如声を上げた。

 

≪マスター、大変です! はやて様の魔力が奪われています!≫

 

「はあ!? リベリオン! 特定できるか!?」

 

≪これくらいなら問題ありません! 少々お待ちを……。特定完了です。はやて様の自室より魔力反応をキャッチしました≫

 

「わ、私の部屋から……?」

 

 何でそんな所から? と疑問に思うも私には心当たりがあった。何時の頃からか私の部屋にあった鎖に縛られた本。もしかしたらそれかも知れへん。兄ちゃんたちも見当がついたのか、冬至が急いでその本を取りに行った。

 

「持ってきたぞ! 合ってるか!?」

 

≪はい、間違いありません≫

 

「ちょっと貸して」

 

 冬至から本を受け取った兄ちゃんは、本を持ち上げたり色んな角度から暫く眺めとったけど、やがて残念そうに大きく息を吐いてこっちに向き直った。も、もしかして命に関わるようなとんでもないことが分かったんじゃ……。そう不安になって――

 

「……モンスターじゃなかった」

 

「そっちかよ!!」

 

 一気に脱力した。冬至も緊張しとったのに、あまりにもな兄ちゃんの発言にさっきまで張り詰めとった空気も一気に四散した。

 ……これは兄ちゃん絶対素で言ったわ。その証拠にあれ? って首を傾げとるし。やけど私らの様子に気付いたのか、慌ててそう言った訳を話してくれた。

 

「あ、ごめん。別に悪ふざけで言ったつもりじゃないよ。悪魔の書とかエビルバイブルみたいに本がモンスター化したやつかな? って思ってね」

 

「そうか。で、はやての魔力を奪っている原因ってこれなんだろ?」

 

「うん、それにこの症状もだいたい見当がついてる。足の麻痺に魔力の減少……これは“呪い”の状態異常によく似てるね」

 

「「呪い!?」」

 

 予想外なオカルトな言葉に思わず身を震わせる。冬至もありえないと驚愕しとる。いや、よう考えたら兄ちゃんが連れとるスカルとかシャディってゾンビ系やっていう話やし今更やったな……。

 

「呪いの状態異常はね、これにかかってしまうとHPやMP……わかりやすくいうと体力と魔力が徐々に減少したり、動けなくなる麻痺状態になったりするんだ」

 

「かなり似てるな……」

 

「でも状態異常っていうくらいやったら治るもんやろ? なんで治らへんの?」

 

 疑問に思ったことを尋ねる。この呪いの症状を聞くと確かに私の症状とよく似とると思った。そやけど私の足の麻痺は治ったのに、なんで魔力が奪われ続けとるんや?

 

「似ていると言ったけど呪いそのものじゃないよ。多分はやて自身の体が出来ていない状態で、この本に無理に魔力が奪われているのが原因で、足が麻痺していたんだと思う。今回の薬で足が治ったのは魔力器官……リンカーコアだっけ? それの異常が治ったからじゃないかな?」

 

「……ちゅうことはまた動かんくなるん?」

 

「いや、魔力を一気に取られているわけじゃないから、定期的に魔力を回復させれば問題ないと思うよ」

 

 また動かんくなるかもしれへん不安がなくなり、ホッと胸をなでおろす。

 やけどこの呪いが解けん限り、またいつ動かんくなるかわからん。それになんでこの本が私の元にあるのかそれもわからん。……わからんことだらけやな。

 

「そうだね。じゃあまずはこの本を調べるとしようか」

 

 そう言って兄ちゃんは、RPGに出てくる魔法使いが使っとりそうな、先に丸い宝石のような物が付いた杖を取り出すと、本に向かって杖を振った。すると杖の先から青い光が飛び出し、本に直撃すると、その光は兄ちゃんの手元に戻ってきた。兄ちゃんはその光を、鞄から取り出したなんか皮のような物……確か羊皮紙? にかざすと、羊皮紙に光が吸い込まれ、文字が浮かび上がってきた。

 

「兄ちゃん、今のは……?」

 

「これはものしりの杖って道具で、調べたいものに振るうとその情報を得ることが出来るんだ。本来なら脳内に直接情報を送るんだけど、こういった呪いの道具に対応するために紙媒体に写すことも可能なんだよ」

 

「すげえ、まさに魔法の道具って感じだな」

 

≪……私のデータベースにもそのような道具の情報はありませんね≫

 

 ほえ~っと私らが兄ちゃんの出した魔法道具に感心しとる間に兄ちゃんは浮かび上がった文字を読むべく羊皮紙に視線を移していた。そしてその文章を読んで大きく目を見開き、呆然と呟いた。

 

「……なに……これ?」

 

 するりと兄ちゃんの手から滑り落ちた羊皮紙を冬至は拾い上げ、私のところへ持ってきた。私と冬至は一緒にその羊皮紙に書かれとったことを読んで、絶句した。

 

………………何やこれ?

 

 

『闇の書【■■◆■■■】

数多■の魔導師の技術を収集し、■■、■元するために作■れた主と■に旅をする書。この書の持ち主は、絶対■な力を手にすると言われている。この書に確■される機能は、転生■能、守護■士プログ■ム、蒐集機能、管■――(解読不可能)――守■騎士■ロ■ラムとは、■■の書と主を守るために【剣の騎士】【湖の騎士】【鉄槌の騎士】【盾の守護獣】を生み出す――(解読不可能)――以上が各機能である。しかし一定期■蒐集が■い場合、■のリン■ーコアを侵■する。この書の■ステムには真の■■にしか――(解読不可能)――また■■頁を蒐集することによって、それらを■る――(解読不可能)――この書の■来の■は【■■◆■■■】』

 

 一部塗り潰されとったり、滅茶苦茶な文字で書かれとったりしとって全部は分からんかったけど、一つだけ分かった。これが私の足を動けやんくした元凶やと。やけどこれ、呪われとるっちゅうよりも壊れとるような気がするな……。

 沈黙が場を支配する中、兄ちゃんは悔しそうに呟いた。

 

「情報が足りなさ過ぎる。これじゃあ今すぐに解呪は出来ない……」

 

「それじゃあ、もうどうにもならへんの?」

 

「大丈夫だよ。今下手に解呪すると、はやて自身に危害が及ぶ可能性があるから駄目だってだけだから。安全に解呪するためにも、この本――闇の書のことをもっとよく知らないといけない。そのために幾つかの道具と“ダモーレ”っていう対象の情報を手に入れる呪文とかが必要だね」

 

 不安になった私を、兄ちゃんは安心させるようにポンポンと頭を軽く撫でると、分かったことを話してくれた。どうやら今の状況やと私に何が起こるか分からんから、兄ちゃんは手も足も出ないみたいや。これで絶対に無理やと言われとったら、いくら私でも焦ったわ。それに兄ちゃんの話を詳しく聞くと、まだこの書は起動すらしとらんらしい。

 

「ということはだ、はやての魔力を奪っているのは闇の書が起動するために魔力を溜めているってことでいいんだよな?」

 

「今分かっている情報だけで推測するとね。詳しいことは分からないけど、守護騎士プログラムが起動すれば、その騎士たちから話くらい聞けるんじゃないかな?」

 

 結局闇の書の呪いを解くのは、起動してからにすることになった。

 読み取った情報から守護騎士プログラムの騎士たちに直接話を聞いた方が早いらしい。それにどうしようもなければ、精霊たちに協力を頼むそうや。

 それに私も異論はなかった。これまで不自由にさせた元凶やったけど、治ったからそれはもうええわ。それよりも私の騎士たち、家族が増える方が重要や。いつ起動するんやろうか? 楽しみやな。

 

 まあ、まずは明日病院行って、診てもらわなな。石田先生びっくりするやろうなー。

 

 




いかがでしたでしょうか?

今回明かされたのは精霊の加護。これによって誠は呪文を習得しています。
テリワン3Dで、テリーが役に立つ呪文を覚えたのも全てタイジュの国だったことからも、精霊が手を貸したのだろうと考え、その後忘れたのも加護を失ったからではないかとしました。

また今回ではやての足の麻痺は一先ず治療されましたが、根本的な解決は出来ていません。
作中で述べたとおり毎日MP回復しないといずれまた麻痺します。
そして主人公らは闇の書を現状では難しいが治せるものと誤認。

はやて→今日まで魔法の存在を知らなかった
冬至→魔法は知っているが、そこまで詳しくなく、リベリオンの知識以上のことは知らない
誠→道具が魔物化したものや呪いのアイテムの知識を持っており、解呪方法も知っている

まあ話的にも全て分かったら色々面倒ですし……
更に今回開示された闇の書の情報では、致命的な部分が隠されてしまっています。

それでは、次の更新も遅くなると思いますが、次回でお会いしましょう。



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