リリカルクエスト   作:アバン流

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お待たせしました。ドラクエ片手に久しぶりになのは無印を一気に見て疲れた作者です。
今回も割りと長めとなっております。

今回の話を書いてて思ったことはリリカルの設定ってドラクエと絡ませやすいんですよね。
前回の呪いの件もですが、ジュエルシードとかⅨのアレの話と絡ませやすいですし。
そしてようやくはやて以外の原作メインキャラ登場!
あとデバイスの英語については日本語の場合もあれば英語の場合もありますのでご注意ください。

それではごゆっくりどうぞ


第4話 『よかったらキミも食べる?』

 解呪に向けての話し合いも終わり、冬至は気分転換するようにカレキの国に自分たちも行けるのかと僕に聞いてきた。それに追従するようにはやてもその話題に乗った。

 別に反対ではなかったので、今度の連休にカレキの国に行くことを決めた。まあ、向こうの都合もあるから連絡だけはしておかないとね。

 本当ならルーラを使えばいいんだけど、着地の際にかかる負荷を考えるとはやてが危険だから、旅の扉を開いてもらわないといけない。

 

 それにはやてや冬至から、これからも冒険に行く許可をもらったし、当分頭が上がらないな……。

 よし、今度何か異世界からお土産でも取ってこよう。

 

 ……でも気になるのは闇の書を物知りの杖で調べたときのこと。

呪われているからか、解説が滅茶苦茶だったけど、ピンポイントで僕たちの欲しい情報が手に入った。下手に手を出すと不味いということもだけど……。もしかしたら闇の書自身がそう改変した可能性もあるかもしれない。

 うーん、文献で読んだ魔王ラプソーンの持ってた杖みたいに闇の書にも意志があるのかもしれないけど……

 

 駄目だ……情報が足りなさすぎる。

 とりあえずこれ以上悪化しないようにはやてに毎日MP回復系のアイテムと祈りの指輪を渡すとして、闇の書と似たアイテムがないか調べるために、かくれんぼうに話を聞くか図書館にでも篭ろうかな? せめて管理局が来てくれれば詳しいことがわかるのに……。まあ、来ないのはしょうがないか。

 

 冬至は高町さんの手伝いをすると決めたみたいだしね。ジュエルシードのことは冬至たちに任せて、僕は闇の書の呪いを解こう。

 

 

――それから明けて次の日

 

 昨日の騒ぎのため、ここら一帯の学校は休校となった。

 それを利用して、はやては冬至とともに検査のために病院へと向かい、僕は商店街に買い物にきていた。

 

 本当なら僕もはやてたちと一緒に行きたかったけど、昨日何も買っていなくて、食材とかほとんど空っぽになっていたから、大量に荷物を運べる鞄を持っている僕が買出しに行くことになった。

 肩にトーポを乗せ、商店街を歩き回る。

 いつもなら魔法の筒の中にいてもらうのだが、あの中にずっといるのも窮屈だと思い、別に人目に晒しても問題ないトーポを連れ出した。トーポなら精々変わったペットと見られるぐらいだろう。

 それにもうはやてたちに秘密にしなくてもいいから、スカルやサイモンたちも家の中限定で自由にさせている。シャインはさすがに無理だったけど……。これはカレキの国に行ったら出してあげるからそれまで我慢してもらうしかない。

 まあ一応トーポたちも魔力を持ってるから、もし何かあっても冬至が気付くだろう。

 

 そんなことを考えながらも一通りの買い物を終え、鞄にしまいこむ。

 本当に便利だねこの鞄。中に入れれば基本的にどんな衝撃を受けても無事だし、食品とかの鮮度も保ったままだし。まあ、変に考えても無駄だし、かくれんぼうがくれたものだからと納得しておこう。

 

「買い物も終わったし、さあ帰ろ――」

 

「――ちゅ!!」

 

突然トーポが肩から飛び降り、鼻をひくつかせるとどこかに走り出した。

 

「ちょっ、トーポ!?」

 

 慌てて追いかけるも、元々素早いトーポを捕まえるのは至難の業だ。さっきの動作からトーポが惹かれるような何かがあったのだろう。ならば今はトーポを見失わないようにしないと!

 

 かなりのペースで走り、ようやくトーポに追いつく。呼吸を整え、トーポの視線を追うと、トーポが見ていたのはたい焼き屋だった。……トーポってたい焼き好きだったっけ?

 

 そう疑問に思いながらも、トーポを抱き上げ注意を込めてでこピンを一発。さすがに人前で見た目鼠のトーポに注意するのはどうかと思ったから。それでトーポは反省したのか、一鳴きすると大人しく定位置の肩に飛び乗った。

 

 そういえば何でトーポはこのたい焼き屋に来たのだろうか?

 そう思い書かれていたメニューを見て納得がいった。

 

 メニューにはチーズ味のたい焼きが、しかも現在そのたい焼きを調理中、チーズが好きなトーポがつられても仕方ないだろう。現に今もトーポは期待した眼差しで見つめてくる。

 

「はあ……しょうがないか。すいません、チーズのたい焼きください」

 

「あいよー。他にもいろいろあるからどうだい?」

 

「そうですね、それじゃあ――」

 

 結局、お土産に基本の漉し餡と粒餡、クリーム、トーポ用にチーズと目を引いたカレー味のたい焼きを幾つか購入した。他にも抹茶やチョコとかがあるけど、これは今度にするとしよう。

 

◆ ◆ ◆

 

 たい焼きを購入し、さっさと帰ろうとしたけど待ちきれなくなったトーポにせがまれ、仕方なく公園に立ち寄り食べることにした。遊具から離れた場所に備え付けられたベンチに座り込み、僕の隣に座ったトーポにたい焼きを手渡す。

 自分の大きさほどあるたい焼きを受け取ったトーポは待ってましたとばかりに噛り付いた。

 一心不乱に食べ続けるトーポに和みつつ、僕もカレー味のたい焼きを一口。

 

「うん……おいしいけど、おやつには向かないかな」

 

 肉が普通に入ってるし……まあいいか。

 もう一口食べたところで、無意識に動かした足が何か硬い物を蹴飛ばしたのに気付いた。

 

「何これ?」

 

 なんだろうと思い、拾い上げると青い菱形の宝石のような物。これって冬至が言ってたやつだよね。確か……ジュエルシードだったっけ? 一応その危険性も聞いていたけど、持ってても何ともないし、違うのかな?

 

 もしかしたらよく似たので、誰かが落としたものかもしれないと思い、周りを見渡すも誰もいない。こんなことなら冬至にその宝石の写真か何か見せてもらえばよかったな……。

 映像でチラッと見ただけだし。一度拾ってしまった手前ここに捨てていくのもどうかと思うし、面倒だけど家に持って帰るか。

 

 そう決め、それを鞄に仕舞い込み、たい焼きの残りを平らげる。

 ふと、トーポの方を見ると何故か期待に満ちた眼差しで見つめられていた。その小さな手にはすでにたい焼きがない。

 

「えっ、もう食べたの?」

 

「ちゅー」

 

 僕の驚きをよそにもう一個よこせと鳴いてくる。はあ、はやてのご飯食べられなくなっても知らないよ? そう注意するも聞く耳を持たない。どうしよ――ん? 今敵意を向けられたような気がしたけど……気のせい?

 

「チュー!」

 

「……しょうがないな、これで本当に最後だよ」

 

 催促の声にこれでご飯が食べられなくなっても自業自得だと思い、たい焼きを袋から取り出しトーポに渡そうとして――

 

「それを渡してください」

 

「えっ」

 

 いつの間にか、僕たちの座っていたベンチの前に斧? 鎌? みたいな恐らく武器だろうと思う物を突きつけてくる金髪ツインテールの少女がいた。

 いきなりのことに固まってしまったが、すぐに冷静さを取り戻すと、目の前の少女に気取られないようにサッと観察する。

 

 少女はその華奢な見た目とは裏腹に身の丈ほどありそうな武器を軽々と持っており、マントをつけているがやたら寒そうな格好をしている。うーん、逃げるのは無理かな……?

 装備的にも速そうだし、トーポに任せれば何とかなるだろうけど、逃げ切れる保証はない。仮にピオラを使っても逃げ切れないだろう。何とか対話できないものか考えるが、思いつかない。

 

 ただ気になったのは、少女の眼だった。母さんたちが亡くなったときのはやてのあの寂しそうな瞳にとてもよく似ている。

 何故この少女がそんな眼をしているのかが非常に気になった。いや、気になっただけだけどね。態々薮蛇突く気はないし。

 

「早く渡してください」

 

「えーっと……」

 

 黙っていたのを渡さないと判断されたのか、催促の言葉にやや怒気が含まれている。

 しかしこの少女の言う“それ”って何だろうか?

 

 左手、たい焼きの入った袋。右手、トーポに渡そうとしたたい焼き。あっ、取られた。

 トーポは奪い取ったたい焼きをモキュモキュと食べている。……うん、マスターが武器突きつけられてるのに自分の食欲優先ですか、そうですか。

 …………今日の夕食はチーズ抜いてやる。

 

 そう心に誓い、改めて少女にそれとは何か聞こうと顔を上げ――

 

「えっ?」

 

 目の前の少女の様子につい声を漏らしてしまった。

 少女は僕に武器を突きつけながらある一点を凝視していた。そんな少女の視線を辿っていくと視線の先にはトーポがたい焼きに齧り付いている光景。

 

 食事中のトーポの様子に可愛らしい物を見るかのように目を奪われている。僕の視線にもまったく気付いていない。……ああ、トーポのラブリーの特性が発動したのか。

 さすが家の妹をものの数秒で陥落させたラブリー。

 

(さて、どうしようか……)

 

 今のうちに逃げようかと思ったが、トーポを動かせば少女は我に返るだろう。だったら少女の渡してほしい物を今のうちに考えるとしよう。

 

 たい焼きは……ないな。買えば済む話だし、わざわざ武器もって襲う必要がない。もしそうだったらどれだけ餓えているのだと言いたい。

 この鞄? それともトーポ? うーん、それ以外だと……あっ、さっき拾ったあれか。

 少女の渡してほしいそれに思い至った僕は、いまだトーポに目を奪われている少女に呼びかけた。

 

「おーい、聞こえてるー?」

 

「………」

 

「おーい」

 

「………」

 

「気付け!!」

 

「……はっ!?」

 

 最後の方はほぼ叫んでいたけど、何度目かの呼びかけにようやく気付いたようで、びくりと肩がはねる。そして少女は頭を軽く振り、再び凛々しい顔つきになると、キッと睨み付けてきた。

……恥ずかしさからか頬を赤くしているのは言わない方が良いだろう。

 

 その少女の様子に苦笑しながら、鞄からさっき拾った青い宝石――ジュエルシードと思われる物を取り出した。

 瞬間、少女からの敵意が強くなる。この反応からこれは本物のジュエルシードらしいことがわかる。……何でこんなところに落ちてるんだ。

 

「――っ!! それを今すぐ渡してください!!」

 

「いいよ。はい、どうぞ」

 

「……えっ!?」

 

 少女は差し出されたジュエルシードを見て、困惑したような表情をする。

 その様子にいらないのかと問いかけると、首を横に振り、ジュエルシードを受け取った。ただ受け取ったときかなり驚いた様子で僕を見てきた。

 

「えっと……、何ともないんですか?」

 

「はい?」

 

 少女の問いかけの意味がわからず、首を傾げる。

 そんな僕を見て、おかしいと呟きながら少女の方も首を傾げる。しかしジュエルシードの方を優先したのかすぐに持っていた武器に近づけた。

 

「バルディッシュ……お願い」

 

≪Yes sir. Sealing.≫

 

「おおっ!」

 

 少女の呼びかけに答えたバルディッシュという武器は、何かをジュエルシードに施し、吸い込まれるように武器に消えたのを見て思わず声が出る。

 どこかで見たことあると思ったら、冬至のリベリオンと同じデバイスか。

 

 ということは、この子も高町さんと同じようにジュエルシードを集めている子なのだろう。

 あれ? でも確か冬至が言ってたのは高町さんとフェレットだけって聞いたけど……。

 じゃあこの子は何者?

 

 疑問に思い、目の前の謎の少女に尋ねた。

 

「ねえ、なんで君はその宝石を集めてるの?」

 

「……貴方には関係ないから、話しても意味がない」

 

 ジュエルシードを渡したからか先ほどよりも言葉に棘がなくなってはいるが、依然と警戒したままの少女。その言葉に確かにそうだと思う。だけどこっちはいきなり武器向けられたんだけどね……。

 

「それに貴方も魔導師ならジュエルシードの危険性をわかっているはずです」

 

「うーん、まあなんとなくは分かるけど、でもそれ以前に僕は魔導師じゃないよ」

 

「……じゃあその子は何?」

 

 嘘を言うなとばかりに自分の手を舐めているトーポを指差す少女。あ、そういうことか。

 この子は僕の連れてるトーポが持ってる魔力から使い魔だと思って僕が魔導師だと判断したのか。そういえば冬至が、僕やはやてもリンカーコアがあるって言ってたっけ。魔力持ちのトーポと僕が少女の探しているジュエルシードを持っている。……これは勘違いされても仕方ない。

 

「それは勘違いだよ。僕はこのトーポのようなモンスターたちと共に戦い学び、その固い絆で一つの力を成すモンスターマスター。断じて魔導師なんて存在じゃない」

 

 訂正すべくトーポをひょいっと持ち上げ、少女の前に掲げる。

 ……あ、こてんと首を傾げてるトーポを見てわなわなと手を震わせている。もしかしてまたラブリーの特性が発動しちゃってる?

 

≪Sir!≫

 

「はうっ!? だ、大丈夫だよ。ありがとうバルディッシュ」

 

≪No problem≫

 

 デバイスの呼びかけに再び正気に戻った少女。

 女の子だし、かわいい物に目がないのかな? 今だに視線はトーポに釘付けだし。

 

「よかったら抱っこする?」

 

「いいの!?」

 

≪Sir!?≫

 

 目の色を変えた少女はデバイスを手放し――って、大事な武器投げ捨てていいの!?

 そして少女は嬉々としてトーポに手を伸ばすが、触れるか触れないかというところでピタッと止まった。どうやらギリギリのところで我に返ったようだ。その証拠に少女は自分の行ったことに羞恥でまた顔を真っ赤にさせると、落としたデバイスをすぐさま回収し、距離をとった。

 おしい、もうすこしだったのに。……いや、何考えているんだ自分。

 

「と、とにかくジュエルシードは危険なのでこれ以上関わらないでください!!」

 

 少女は誤魔化す様に大声でそう言い切った。

 まあその様子にこれ以上は薮蛇かなと思ったが、純粋な疑問が出てきてしまい、ついまた質問してしまった。

 

「わかったけど、もしまた拾ったらどうすればいいわけ? そのまま放置するのは危ないんでしょ?」

 

「え、えーっと……ど、どうしようバルディッシュ」

 

≪Sir, please calm down≫

 

「う、うん。あの、少し待って」

 

 僕の言葉に少女は困った様子で、一言断りを入れるとなにやらデバイスとこそこそと相談し始めた。いくら無条件でジュエルシードを渡しているとはいえ、ここまで素直に答えようとするのは人が良すぎるのか、純粋なのか。

 今だ相談している少女とデバイスに苦笑しながら、たい焼きの袋に飛び掛ろうとしているトーポを片手で取り押さえる。

 さっきから狙ってたっぽいけど、甘いね。あ、こら暴れるな!! ジタバタもがくの押さえつけるため、力を強めながらトーポをどうしようか考える。

 あ、そうだ。目の前にいる少女を利用させてもらおう。それにうまくいけば情報収集が出来るかもしれない。出来なくてもさっきのトーポに対しての仕返しにはなるか。

 

 ちょうど少女の方も相談を終え、納得のいく返答を考えたのか自信満々の表情をしている。

 その出鼻を挫くようで悪いけど欲しがってるジュエルシードをあげたんだし、別にこれくらいはいいよね。

 

「あ、あの「よかったら、キミも食べる?」……えっ?」

 

 トーポが奪おうとしていたチーズたい焼きを、話を遮られきょとんとしている目の前の少女に差し出した。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

(………どうして私はさっきまで敵対? していた人と一緒にお菓子を食べているんだろう)

 

 

 誠の隣に腰掛け、手渡されたたい焼きを眺めながら、なぜこうなったのかと金髪の少女――フェイト・テスタロッサは考えていた。

 フェイトは母親から散らばったジュエルシードを集めるように命令された。そして少しでも母親の役に立ちたい彼女は母親の研究を助けるためと、使い魔であるアルフとともにこの世界にやってきていた。

 

 拠点となる場所を確認したフェイトたちは別れて探したほうがいいと、二手に分かれて探索を開始した。そして暫く経ち、ジュエルシードと思われる微弱な魔力反応を察知したフェイトはすぐさま公園に飛び、そこでベンチに座る誠とトーポを発見する。

 

 トーポから発せられる魔力から使い魔だと判断し、その近くにいる誠がジュエルシードを持っていると確信したフェイトは、実力行使で奪い取ることも考えながら、誠の目の前に降り立つ。

そして自身の相棒であるバルディッシュを突きつけた。

 

「それを渡してください」

 

 フェイトは無防備なのにまったく動じない誠に、只者ではないと警戒を強め、いつ襲い掛かられてもいいようにしていたのだが――

 

(か、可愛い……!! 持ち帰っちゃダメかな?)

 

 と、トーポの食べている可愛さに眼を奪われてしまった。挙句、誠に呼びかけられるまでジュエルシードのことが頭からすっぽり抜け落ち、トーポを持ち帰る方法を考えていた。

 そんな醜態を晒してしまったフェイトであったが、戦闘にならずにジュエルシードを受け取ることが出来て内心ホッとする。実力行使と考えながらもフェイト自身、あまり関係ない人を襲いたくないのである。

 

 その後も誠を魔導師と疑うが、本人の否定とデバイスを所有していない様子から違うと判断した。

 その際説明したモンスターマスターとは何かよくわからなかったが、トーポと楽しそうにじゃれている誠を見るに、自分とアルフのような関係なんだろうなと思った。

 またトーポの可愛さに目を奪われ、今度は自身のデバイスまで投げ出すという失態を犯したが……

 

 そして誠のペースにすっかり嵌ってしまったフェイトは、どういうわけか一緒にたい焼きを食べるという奇妙なことになっていた。といっても誠からしてみれば、トーポへのお仕置きにフェイトに渡しただけであって、一緒に食べようなどと考えておらず、そのまま帰ってもらっても一向に構わなかったのだが。

 そんなことを知らないフェイトはつい受け取ったあと、そのままなんとなく誠の隣に腰掛けてしまった。

 

(……何でこの人の隣に座っちゃったの!?)

 

 ここまでを振り返りようやく正気に返ったフェイトは、自身の行動に内心そうツッコミを入れる。だが座ってしまった手前そのまま立ち去るわけにもいかず、これを食べたら立ち去ろうと決めたのだった。なお誠に敵意はないと判断し、いつまでもBJのままではどうかと思ったフェイトはBJを解除した。

 

 しかし、そう決めたもののフェイトは中々たい焼きに口をつけようとしなかった。

 何故なら――

 

「……………」

 

(た、食べづらい……)

 

 先ほどからジーっと見つめてくるトーポの物欲しげな視線にフェイトは気付いており、それが余計に食べるのを躊躇させる。

 それでも貰ってしまった手前食べないわけにはいかず、どうしようかとフェイトは一人葛藤する。

 

 せめてこの視線を何とかしてほしいと、誠に目で訴えかけるも考え事をしているのか気付いていない。何故自分は誠からたい焼きを受け取ってしまったのだと、数分前の自分を怒りたい衝動に駆られるも、過ぎてしまったことはどうしようもない。

 そしてフェイトは思いついた。トーポと半分こしようと。

 

「………キミも一緒に食べる?」

 

「!」

 

 フェイトの提案に音が出そうなほどの速さで頷くトーポ。

 一応誠に同意を得ようと思ったフェイトであったが、今だこちらに気付いていないので諦めた。

 

「それじゃあ半分こね?」

 

「ちゅ!」

 

「……はい、どうぞ」

 

 真ん中から綺麗に半分に割るとトーポに手渡す。

 トーポはそれを受け取るやいなや、一目散に齧り付いた。

 

「おいしい?」

 

「ちゅー!」

 

「そうなんだ……よかったね」

 

 トーポの満足気な返事にフェイトは静かに微笑む。

 その姿を眺めながら、ようやくフェイトもたい焼きを一口食べる。

 

「…………おいしい」

 

 そう小さく感想を述べると、誠が考え事から戻ってくるまでの間、トーポと共に黙々と食べ続けたのだった。フェイトが食べ終わる頃、ようやく顔を上げた誠は隣に座るフェイトに自己紹介する。

 

「そういえば自己紹介してなかったね。僕は八神誠。究極を求める一人のモンスターマスターだよ」

 

「……フェイト。フェイト・テスタロッサ」

 

「フェイトね……うん、覚えた。それでトーポ、何か言うことはないの?」

 

「……ちゅー」

 

「……はぁ、素直でよろしい。ごめんね、この子が強請っちゃったみたいで。お詫びにもう一つどうぞ」

 

「あ、ありがとう」

 

 鞄に放り込んでおいた袋からもう一つたい焼きを取り出し、手渡す。明らかに入らないであろう袋を鞄から取り出す誠に疑問に思う間もなく、フェイトはそのまま素直に受け取ってしまうのであった。

 フェイトが再び食べ始めたのを見計らって、誠はフェイトにどうしても聞いておきたかったことを尋ねる。

 

「実はジュエルシードが何か危険っていうのは知っているんだけど、詳しいことはよく知らないんだ」

 

「えっ?」

 

 思わぬ発言にフェイトは目を丸くする。

 フェイトとしては何故ジュエルシードを集めているのかとか聞かれると思っていたわけだが、それ以前に誠はジュエルシードの性質を分かっていなかった。誠は昨日あった事件をフェイトに話し、対策のためにもどういうものか知りたいと尋ねる。

 

「……その事件って解決したの?」

 

「うん、フェイトと同じようにジュエルシードを封印して回っている子がいるから。その子のおかげで昨日は助かったよ」

 

 何気ない会話から自分以外にも探索者がいることを知るフェイト。

 そして誠に情報を教えるべきかどうか迷った。ジュエルシードのことを話したらもしかしたら、誠も狙う様になるのではないのかと思ったからだ。

 

「そうなんだ。……わかった、ジュエルシードのこと教えるよ(多分、この人は別の探索者の協力者じゃないはず……)」

 

 しかしフェイトは教えることを選んだ。

 ここまで話をして、無条件でジュエルシードを渡したことや、別の探索者の情報も簡単に教え、デバイスを持っている様子もない。それに悪い人物に見えなかったのもあるが、教えれば態々関わってくることはないだろうと判断したからだ。

 何故ジュエルシードの名前を知っているのかも、恐らくその探索者に助けられた際に名前だけ教えられたのだろうとフェイトは思った。

 

 そして母親から渡された資料で知ったジュエルシードに秘められた力を話した。

 ジュエルシードが、願いを叶える性質を持っていること。ただし、そのほとんどが歪んだ形で叶えられてしまうという危険性も。また、誠が拾ったジュエルシードは封印処理がされておらず、暴走する危険があったことも。

 

「だからジュエルシードにはこれ以上関わらないで」

 

「そっか、じゃあ僕があのまま持ってたら危なかったわけだ。……助けてくれてありがとう」

 

「え? あ、うん……」

 

 それを聞いた誠がまずしたことはフェイトに感謝をすることであった。

 誠自身、冬至の話でジュエルシードの危険性は理解していたが、その暴走の原因がわかっていなかった。なお誠が持っても発動しなかったのは運がよかっただけである。はやての一件から念のためにと、呪いよけのお守りを装備していたことと、ポケットなどに仕舞わずに干渉を受け付けない鞄の中に放り込んだからであった。

 しかしもし知らずに家に持ち帰り、はやてや冬至が知らずに何かを願っていたら二人を危険に晒してしまうところだった。だからこそ誠は素直にフェイトに感謝した。

 一方のフェイトは誠からの純粋な感謝の言葉に嬉しさや照れるといった感情以上に戸惑っていた。

 

(結果的にこの人の家族を救った形になったけど、私の都合でバルディッシュを向けて……それに疑っちゃったし。それなのにお礼を言われるのは……、でもこの人はすごく感謝しているみたいで……どうしよう)

 

 他人からの無条件な感謝の念に嬉しさよりも戸惑いの方が大きかったのである。

 またフェイトは誠が本当に何も知らないのに武器を向けてしまったことに対しての罪悪感もあった。フェイトがもっと単純な性格ならば、素直にお礼を受け取るのだろうが、今のフェイトには無理であった。

 

 一方の誠からしてみれば、フェイトは何か事情を抱えながらもこの町に降りまかれた災厄を回収してくれている存在である。加えてこれまでに会話してみて、多少荒っぽい面もあるが、態々危険性を話してくれたり、真剣に誠の疑問に答えようとする様子に素直で優しい子だという印象を持っていた。

 そんな風に一方的に好印象を抱かれているとは知らないフェイトは、どうしようと内心葛藤していたのだが。もしこの場にはやてか冬至がいればまだ話は変わったのであるが、微妙に天然が入っている二人の間には、間違っていないが認識のズレが存在していた。

 

(あれ……? ジュエルシードとよく似た話をどこかで読んだような………何だったっけ?)

 

 さて、フェイトが罪悪感に苛まれている中、誠はジュエルシードの性質とよく似た話をどこかで読んだような感覚を覚えていた。それが何だったかと記憶を遡っていると、やがてその答えにたどり着いたのか、あっ、と小さく声を出す。

 いきなり声を上げた誠にどうしたのかとフェイトは顔を向けた。

 

「思い出した。そのジュエルシードの力って“女神の果実”の話によく似てるんだ」

 

「女神の……果実?」

 

「うん。だいぶ前に文献で読んだんだけど―――」

 

 そう言って誠が語ったのは、普通なら御伽噺と思うような内容だった。

 女神の果実―――それは天使が住む世界の世界樹に実るリンゴに似た黄金の果実。

 果実が実るには人間を助ける守護天使という存在への感謝の心が結晶化した“星のオーラ”を捧げる必要がある。この果実には口にした者、または手にした者の願いを叶える力を持つと言われている。ただし果実には巨大な力が宿っており、よほど清らかな心を持ったものでなければ、その力に魅入られ、暴走してしまう。

 それが誠が読んだ文献の内容であった。

 

「――っていう話なんだけど、すごく似てると思わない?」

 

 聞き入っていたフェイトは、内心では驚きの声を上げたが、表情には出さずただ黙って頷いた。

 誠が語った女神の果実の力は、非常にジュエルシードの持つ力に酷似していた。普通なら嘘だと思うが、フェイトは次元世界のことを知っている。そのため自分たちが知らない世界――管理外世界には女神の果実は存在しているのではないかと思った。そして誠の考察にフェイトは耳を疑った。

 

「もしかしたらジュエルシードも女神の果実と同じように清らかな心、つまりは邪がない純粋な願いを叶える物なのかもしれないね」

 

「それは……」

 

 その誠の推測交じりの考察をフェイトは違うと言い切れなかった。

 しかしこの考察が合っているとしたら願いを正しく叶えるには、願い以外の考えを一切排除しなければならないことになる。そんなことを普通の人間が出来るはずもない。つまり人間が使うのは結局不可能ということだ。

 

 後日フェイトは、この仮説が合っているのではないかと思われる事態に遭遇する。

 そこでかけがえのない出逢いもあるのだが、それは割愛する。

 

 それはさておき、ある程度話が済んだところで、教えてくれたお礼ということで渡されたお茶を飲んでいると、フェイトの元に不意に念話が届いた。

 

【フェイト。今どこにいるんだい?】

 

 その声は彼女の使い魔、アルフからのものであった。フェイトはちらりと誠を見てから、念話に応える。

 

【魔力反応があったから公園の方にいる。ジュエルシードも貰えたから大丈夫だよ】

 

【さっすがアタシのご主人様!! ……って、え? 貰った?】

 

【うん】

 

 簡潔に自分がどのような経緯でジュエルシードを手に入れたかを伝える。自身の名誉のためにトーポの可愛さに釣られたことは言わなかったが……。そして流されるまま誠と一緒にたい焼きを食べて、色々と話していたことも伝えた。

 それを聞いたアルフは、今日あった人物なのにフェイトがそこまで詳しく話すなんて珍しいこともあるもんだなと思った。

 

【だけど、私その人にバルディッシュ向けちゃったし。……どうしよう】

 

【まあ、お礼くらい素直に受け取っておけばいいんじゃないかい? こっちが一方的に罪悪感を持ってるなら謝っておけばいいだろうしさ。悪い奴じゃないんだろ?】

 

【うん。…………そうだね、ありがとうアルフ。私ももう戻るから先に帰ってていいよ】

 

【あいよ。フェイトも早めに戻っておいでよ】

 

【わかった、また後でね】

 

 念話を終了させたフェイトは立ち上がると、誠の前に立ち。ぺこりと頭を下げた。突然頭を下げられたことに誠は面食らう。

 

「いきなり武器を向けてしまってごめんなさい。あとジュエルシードを渡してくれてありがとう。それから……たい焼きおいしかった……ありがとう」

 

「……こっちも色々と質問に答えてくれてありがとう。また会えたら会おうね」

 

「うん。またね、誠」

 

 ひらひらと手を振る誠に、くすりと少女らしい笑みを浮かべてフェイトは去って行った。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 拠点としているマンションへと帰るフェイトの足取りは軽かった。フェイト本人はそのことにまったく気付いていなかったが、相棒であるバルディッシュはそのことに気付いていた。

 

≪ご機嫌ですね≫

 

「そうかな……?」

 

 バルディッシュの言葉に耳を傾けながら、今日のことを振り返る。

 探索初日でジュエルシードを入手できただけでなく、別の探索者の存在。また女神の果実の話と願いに関する仮説と予想以上の収穫があった。そんな先行きがいい結果にフェイトの頬は自然と緩んでいた。

 

 ある程度ジュエルシードを集めたら、一度報告に帰る時にその話を母さんにしてみよう。もしかしたら母さんの研究の役に立つかもしれないから。

 それが自身を未知なる戦いに引き込むことを知らずに―――

 

 

「あっ、ジュエルシードのことどうすればいいのか言ってなかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 フェイトと別れ、帰宅した誠を出迎えたのは先に帰宅していたはやてであった。

 

「おかえり、兄ちゃん。ずいぶん遅かったんやな」

 

「ただいま。ちょっと色々あってね、後で話すよ。それでそっちはどうだった?」

 

「うん、石田先生めっちゃ驚いとったわ。時間はかかるけど動くようになると思うって」

 

「それはよかった。はい、これお土産」

 

「あ、たい焼きやん。今すぐお茶入れてくるわ。冬至ー、兄ちゃんの手伝いしてー」

 

「あいよー」

 

 

 たい焼きの袋を受け取ったはやては、誠と共にリビングへ移動すると冬至を呼び、手伝わせる。

 はやてがお茶の準備をしている間に、冬至と誠は協力して買った物の整理をした。比較的早く整理が終わり、冬至ははやてを手伝い、誠は部屋へ着替えに向かった。

 そして誠が戻ってくる頃には既に準備が終わっていたのだが、誠が手にしているモノを見て固まる二人。

 

「僕は帰ってくる途中でつまみ食いしたから二人とも多く食べていいよ」

 

「あ、ああ……」

 

「に、兄ちゃん。何でトーポにそんなことしたん……?」

 

 はやての視線の先には、縄でぐるぐる巻きにされて、反省中と書かれた紙が貼り付けられたトーポの姿があった。

 

「んー、まあマスター放っておいて食欲優先したことと、他人のものを強請ったことに対しての反省かな」

 

 そう言うと、楽しそうに今日あったことを話す誠であった。

 

 

 




いかがだったでしょうか?

今回はフェイト登場回、そして何気に危機を回避をした誠。
ちなみにジュエルシード発動を回避できたのは、作中で述べたとおり呪いよけの力です。
呪いよけのお守りに関しましては、少年ヤンガスよりです
ジュエルシードが発動した際ほとんどの場合所有者を取り込み、自身の意志では外せない
=所有者に対する呪いじゃね? と考えた結果こうなりました。

あと、ラプソーンについての記述は誠の誤解です。
誠は所有したことがない魔物については、基本的に文献や人伝便りです。

さて次回は恐らくカレキの国での話しとなると思います。
それに伴いなのはさんの出番が……。

それでは次回でお会いしましょう。

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