リリカルクエスト   作:アバン流

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お待たせしました。
異世界旅行中篇です。今回はサクサク行きます。

それと後編を書いているのですが、かなり長いのでもしかしたら次は中篇2となるかもしれません。それと今回はオリキャラも出していきます。

それではごゆっくりどうぞ。



第6話 『どんなモンスターを持つかなんて人それぞれ』

 着替え終えた誠たちは、カレキ王にもう一度挨拶し王の間を出ると、何処へ行こうかとなった。

 広場で露店を回るという案も出たが、沢山の魔物が見たいというはやての要望を受けて牧場の方へと移動した。

 牧場は先ほど見た広場よりも広く、そこでは様々な魔物たちが思い思いに過ごしていた。早速魔物たちを見に行こうとしたはやてたちであったが、その前に管理人に見学することを伝えないといけないと誠に止められ、はやる気持ちを抑え、牧舎の方に向かった。

 

 牧舎では薄緑の民族衣装を着た温和そうな青年が書きものをしていた。

 誠たちが入ってきたのに気付くと、手を止め、優しそうな笑みを浮かべ、挨拶する。

 

「こんにちは、マコト君。おや、今日は一人ではないんですね」

 

「こんにちは、ヴィランさん。今日は家族と一緒に来ました」

 

「なるほど。では自己紹介を、私はこの牧場の管理をしているヴィランと申します。それで本日は牧場の見学ですか?」

 

 ヴィランと名乗った青年は、誠たちの様子から牧場見学に来たのではないかと尋ねると一同はそれに頷いた。ヴィランははやてと冬至に、牧場に訪れるモンスターマスターではないものに向けての注意事項などが書かれた紙を手渡す。

 紙に書かれていた注意事項をサッと読み終えた二人は、早速行こうと誠の返事を待たずして牧舎を飛び出していった。

 

「兄ちゃん! 冬至と先行っとるわ!!」

 

「って、ちょっと待って! それじゃあヴィランさん、またあとで!」

 

 挨拶もそこそこに、誠は先に牧舎を飛び出していったはやてたちを急いで追いかける。その元気な様子を見送りながら、ヴィランは笑みを浮かべる。

 

「やはり子供は元気が一番ですね」

 

 そう呟くとヴィランは中断していた仕事を再開した。暫く経ち、ある程度仕事が片付くと軽く伸びをする。

 

「……そういえば、この時期は気が立っている子たちがいましたね。マコト君がいるなら大丈夫でしょうけど、念のために伝えに行った方が良いですね」

 

「旦那、それなら俺が行ってきてやろうか」

 

 何時の間にいたのか、牧舎の奥からやってきた男がそう提案する。

 その提案に暫し考えるヴィランであったが、誠がいるのなら大丈夫だろうと判断すると、頷いた。

 

「それではお願いしますね」

 

「おうよ」

 

ヴィランの言葉に任せとけとばかりに自身の胸を軽く叩くと、男ははやてたちの元へと向かっていった。

 その頃、はやてたちは様々な魔物の姿を目にし、はしゃいでいた。

 小動物のような魔物、空を飛ぶ魔物、かっこいい魔物、時折会う誠の仲間たちなど。それら魔物たちの解説を誠から聞きながら、見て回っていた。ただ腐った死体などのはやてたちが近づくのを拒否した魔物は遠巻きに観察したのだが。

 魔物たちの中には触っても構わないという子たちもいて、はやてたちは大いに堪能した。そんな中、誠が魔物たちにお礼代わりに餌をやっている間に、次はあそこにしようと冬至が指差す。

 

 指差した先には竜系統の魔物たちが屯していた。何やらやっているようであったが、今まで安全だったから大丈夫だろうと、誠を置いて先に行こうとした時、後ろから引き止める声が聞こえた。

 

「譲ちゃんたち、そっちにいるのは気が荒い奴らが多いから近づかねえほうがいいぜ」

 

「あ、そうなんですか。教えてくれてどうもあり―――ひゃああああああっ!!?」

 

 礼を言おうと振り向いたはやては、後ろにいた人物の姿を見て悲鳴をあげた。

 そこにいたのは青い覆面を被り、灰色の肌色をした半裸の筋肉質な男。手には斧を持っており、見るからに不審者であった。

 

「おいおい、いきなり悲鳴を上げてどうし「離れやがれ、この不審者!!」―――ぐほっ!?」

 

「ちょ、冬至!?」

 

 悲鳴に気付いた誠が止める間もなく、近づいてきた不審者に、リベリオンを起動させた冬至が問答無用で拳を腹に叩き込んだ。

 不意打ちの一撃に不審者は片手で殴られた箇所を押さえ、呻き声を上げながら後ずる。一方、殴った冬至はある程度加減したとはいえ、普通なら悶絶するはずの一撃を耐えた不審者に一層警戒する。そしてはやてを背に庇いながらも、近づくならもう一撃と言わんばかりに拳を構えた。

 

「冬至、ストップ!!」

 

「兄貴、何で止めるんだよ!? どう考えてもこいつは不審者だろ!!」

 

 そこに慌てて誠が割り込んだ。いきなり割り込んできた誠に面食らう冬至であったが、何故不審者を庇うのかと誠に食って掛かる。誠は以前にもこんなことがあったなぁと思いながらも、冬至を落ち着かせると、目の前の不審者らしき人物がどのような存在なのか教えた。

 

「確かに不審者に見えなくもないけど、その半裸の人は不審者じゃなくてモンスターだから!!」

 

「「はあ!?」」

 

 誠が言ったことが理解できないのか叫ぶ二人。

 魔物についてある程度教えられていた二人であったが、肌の色はともかくどう見ても人にしか見えない。本当にこいつは魔物なのかと誠に尋ねようとした時、誠たちを呼ぶ声が聞こえた。

 

「皆さん! 大丈夫ですか!?」

 

 その声の主は、はやての悲鳴を聞きつけて慌てて走ってきたヴィランであった。ヴィランは現状を見て何があったのかを悟ったのか、慌ててはやてに頭を下げた。

 

「怖い思いをさせて申し訳ございません。彼はエリミネーターのオノマン。牧場の力仕事担当の私の魔物ですよ」

 

 ヴィランの言葉に衝撃を受ける二人。

 それは不審者が魔物であったことよりも、ヴィランがこのような魔物を従えていることに衝撃を受けたのだった。何となく何を考えているか悟った誠は、ため息を吐く。

 

「二人とも、どんなモンスターを持つかなんて人それぞれでしょ。そりゃあ僕も生理的に受け付けないモンスターはいるけど……おおなめくじとか。――コホンッ、それから冬至、いきなり殴りかかるのは良くないよ。気持ちは分かるけどさ……」

 

 誠の正論に、以前勘違いからスカルと戦おうとした時を思い出したのか冬至はうっ、と呻くと、罰が悪そうにオノマンに向かって頭を下げた。

 

「………いきなり殴ってしまってすいませんでした」

 

「いや、いいさ。それよりも坊主、中々いい拳持ってるじゃねえか」

 

≪やれやれ、やっぱりマスターはそそっかしいですね≫

 

殴られた箇所を擦りながらも、そう賞賛するオノマンに、冬至は申し訳ない気持ちになる。はやても親切に教えてくれたのに、叫んだことを謝罪するとオノマンは笑って許し、牧場の案内を買って出た。それを了承したヴィランは、くれぐれも失礼のないようにと言い残すと、仕事に戻っていった。

 

「それじゃあ、見学を再開しようか」

 

「おう! 俺様に任しときな!!」

 

任せろとばかりに軽くマッスルポーズをするオノマン。それに若干引きつつもオノマンの案内の元、一同は見学を再開したのであった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 一通り見学を終え、牧舎に戻ってきたはやてたちは、次の場所へと向かうことになった。

 着替えの際にかくれんぼうから渡されていたカレキの国の地図を広げて、次に行くべき場所を相談するはやてと冬至。誠はというと、二人から離れた場所におり、何やらシャディと話していた。

 

「大事な話? それって今じゃないと駄目なの?」

 

「はい。少しばかりお時間をいただくだけです。出来れば妹様たちには今は聞かれたくありませんから、マスターだけで来てくださると助かります」

 

 真剣な様子のシャディに、重要な話だと感じた誠は後回しにすべきではないと思った。

 しかし自分たちの都合ではやてたちに待っててもらうのも気が引けた誠は、どうするべきか迷う。そこに助け舟を出したのは、はやてたちが行く先を決めたことを告げにきたヴィランであった。

 

「それなら先ほどのお詫びもかねて私が案内しましょうか?」

 

「いいんですか?」

 

「ええ、私の仕事ももう終えていますし、残りの見回りはオノマンがやってくれますから別に構いませんよ。ですよね、オノマン?」

 

「別にいいが、旦那の留守番をやるんだ。後でマコトには別途肉を要求させてもらうぜ」

 

 それくらいなら構わないと誠は頷くと、交渉成立とオノマンは鼻歌を歌いながら見回りに向かった。その様子にやれやれと肩を竦めるヴィランに、苦笑しながらもお願いしますと誠は頭を下げたのであった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「え? 兄ちゃん一緒に行けへんの?」

 

「ごめん。シャディから大事な話があるって言うからさ。後で合流するから先に行っててくれないかな?」

 

「むー、わかったわ……でもはよ来てな」

 

 誠と一緒に行けないことにはやては残念そうであったが、直ぐに追いつくからという誠の言葉に渋々だが納得した。そして代わりにヴィランが案内役を勤めることを聞いた二人は、お礼を言う。別れる際、誠はそれぞれにお小遣いとして500Gを入れた巾着袋と、店頭で見せれば1割引してくれるゴールドパスを渡した。それらを受け取ったはやてたちは露店が立ち並ぶ広場の方へと向かったのだった。

 

「うわあっ、見たことないのがいっぱいや」

 

「早速見て回ろうぜ」

 

 広場に着いはやてたちは早速露店巡りを開始しようとしたが、その前に誠から貰ったお金を確認することにした。二人が巾着袋を開けると、中には数枚の小さな銀貨と大小多数の銅貨が入っていた。この世界の通過の基準が分からないはやてたちであったが、ヴィランがそれぞれどういった価値があるのかを説明する。

 

 この世界の通貨はGと呼ばれており、それぞれ銅貨、銀貨、金貨が存在し、さらに大、小と分かれている。なお、金塊などの塊は一定の価値があり、通貨の代わりに支払うことも可能であるが、そのように利用するのは専らモンスターマスターであり、誠も同じようにしている。

 また一部のモンスターたちが持つモンスター硬貨と呼ばれるものには、珍しい装飾がなされており、かなりの高値で取引されている。ちなみに二人にお小遣いとして渡したお金も、一般的にはかなりの大金になる。

 

 ヴィランから通貨の価値を聞いた二人は、大切そうに巾着袋を仕舞うと面白いものがないかと露店巡りを開始した。基本的に露店で売られている物はモンスターマスターが使うような道具が多かったが、それでも二人はヴィランに色々と尋ねながら買い物を続けていた。

 そんな中、とある露店で売られていた服を見ていたはやては残念そうに呟いた。

 

「うーん、私らの世界ではちょい目立つなあ。でも生地はええなあ……」

 

「生地だけ買えばいいんじゃないか?」

 

「誰が縫うと思っとるんや」

 

 冬至の軽い言葉にそうジト目で返すが、今持っている服の手触り感が名残惜しいのか、結局生地を購入する。

 

「あーあ、どっかに生地とか入れるだけで完成品できる道具でもあったらええのにな~」

 

「んな錬金術みたいな便利なもんあるわけないだろ」

 

「そんなんわかっとるわ。でもあるんなら欲しいなぁ……」

 

 そんな冗談交じりの会話をしつつ、二人は買い物を続けるのだった。

 まだ二人は知らない。近いうちに、その夢のような道具が目の前に現れることなど。そしてそれによって引き起こされる騒動など、この時の二人には知る術もなかった。

 

 さて、はやてたちが買い物を楽しんでいる一方、誠たちはというと、ちょうどシャディたちの話が済んだところであった。話を聞いた誠は、今はやてたちに聞かせるわけにはいかないなと納得する。

 

「……そっか。シャディたちがそう決めたなら、僕は喜んで送り出すよ」

 

 シャディから告げられたことに寂しそうにしながらも、そう笑顔で頷く。

 それは黙って聞いていた仲間たちもであった。

 

「……ありがとうございます。そこでマスターに頼みが――」

 

「―――うん、わかった。でもそれは最終日まで待っていてくれないかな? 今はみんなで楽しみたいんだ」

 

「はい。私も妹様たちに黙って去るわけにはいきませんから」

 

 その言葉に笑みを浮かべると、誠は仲間たちを魔法の筒に戻して、はやてたちがいる広場へと向かった。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 はやてたちと合流した僕は、二人から購入した物を預かると、図書館や道具屋、石版を配置する旅の扉の間など、色々な所を見て回った。そして今は二人の希望で格闘場に来ていた。格闘場ではちょうど定例大会が開催されるらしく、僕たちはヴィランさんに観戦席へと案内された。

 

「うおっ、すげえ。試合会場一望できるじゃねえか」

 

「こんなええとこで見せてもろてええんですか?」

 

 案内されたのは一般の立見席ではなく、王や貴族などが観戦するであろう豪華な部屋のような観戦席であった。冬至ははしゃいでいたが、はやてはここに来てからの自分たちの優遇っぷりに悪いと思っているのか、遠慮がちに尋ねた。それにヴィランさんは笑って答えた。

 

「はい、カレキ王からもお詫びとして出来る限りのことはするようにと言われてますから」

 

 どうやらヴィランさんにも既に話は伝わっているらしく、はやてもそれなら仕方ないと納得した。

 試合が始まるまで少しばかり時間があったので、僕とヴィランさんではやてたちに格闘場の試合形式について説明する。

 

「試合に参加するマスターが使用できるモンスターは三体まで(・・・・)で、装備は自由。試合中マスターは道具の使用も禁止だし、モンスターに大雑把な命令しか出来ない。まあ参加前にある程度プランを立てるのがマスターの基本だね」

 

「この試合には一般の大会以外にも、クラスを上げる定例大会、特別な時に催されるイベントバトル。そして誰でも参加できる勝ち抜き式のフリーバトルがあります。この勝ち抜き式のフリーバトルは元々マルタの国で行われていたもので、それを取り入れたものなんです。マルタの国との違いは、Sクラスにならなければ参加できないというわけでなく、各自のクラスに合わせて参加できるようになっております。これは旅人がよく来るマルタの国とは違って、強いマスターが訪れるのが少ないのを補うためなんですよ」

 

「ほぇ~」

 

「ちなみにクラスによって参加費も違います。最低クラスのEクラスからでも500Gです。なお最高クラスであるSクラスは5000Gかかりますね」

 

「「高っ!?」」

 

 Sクラスの値段に驚く二人であったが、別にそこまで高いとは思わなかった。

 モンスターマスターならばそれくらい稼ぐのにそこまで苦労しないし、フリーバトルの優勝商品は払った参加費用以上の品が当たる可能性が高い。それに今の自分の実力をはっきり知る機会にもなるし、対戦相手とお見合いや情報交換など色々と得になることが多いからだ。

 

 その事を二人に伝えると、理解したのか成程なーと頷く。本当に分かっているのか分からないが、まあいいや。そして冬至がヴィランさんに質問したんだけど、直ぐに止めておくべきだった。

 

「兄貴ってやっぱりこの国では凄いんすか?」

 

「それはもう。マコト君は星降りの大会で負けてしまったとはいえ、この国の復興に尽力を尽くしてくれました。特に――」

 

「あの……止めてくれると、助かるんですけど……」

 

「ええやん。私も他の人から兄ちゃんの活躍聞きたいし」

 

 我が事のように誇らしげに語るヴィランさんには、申し訳ないけど今すぐに止めてほしい。褒められるのは嬉しいけど……すごく、恥ずかしいです、はい。というか僕が知らないところで話が大きくなってる部分があるし……。

 顔を赤くしながら、他人視点での僕の話を聞いていると時間がきたのか、格闘場内に司会の声が響き渡った。………た、助かった。

 

「さあ、やってまいりました! Dクラス定例格闘大会! 配合という新たな力を手にしたマスターたちが魅せる熱き闘い! 新たな勇者となるのは一体誰だ!?」

 

「勇者? 何で優勝するだけで勇者なんて呼ばれるんだ?」

 

「この世界には勇者なんて職業はないんだけど、強いモンスターマスターはそう呼ばれるんだよ」

 

「へえー」

 

 冬至は納得したのか頷くと、視線を格闘場へと向けた。それと同時に第一試合が始まった。さて、僕も未来のライバルたちの実力を見ないとね。

 目の前で繰り広げられているどこか初々しさを感じさせる激闘に、懐かしいなあという思いになりつつも、ヴィランさんとともに時折はやてたちに軽く解説をしながら試合を観戦した。

 

「すごいなぁ~」

 

「これが……モンスターバトル」

 

 舞台でマスターたちが激闘を繰り広げる中、観戦していた二人はそう感嘆の声をもらす。

 試合はクラスの低いマスターと、配合したてのモンスターばかりだからか、まだそこまで強い技や呪文は出なかった。それでも二人にとっては十分満足だったようで、大会が終わった後も楽しそうに試合の感想を言い合っていた。

 

「そろそろいい時間だし、今日の観光はこれくらいにして宿に行こっか」

 

「うーん、もっと色々見て回りたかったんやけどなぁ……」

 

 はやてたちはまだ遊び足りなさそうだったが、明日もあるからということで渋々頷いた。

 僕たちはヴィランさんにお礼を言い、オノマン用の肉を渡して別れた。そして明日の予定を立てながら用意された宿へと向かうのであった。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 宿に戻った誠たちは、夕食を済ませると、部屋で思い思いに過ごしていた。

 そんな中、そういえばとベッドに寝転んでいた冬至は牧場で聞きそびれていたことを尋ねた。

 

「そういやさ、オノマンみたいな人型の魔物って他にもいるのか?」

 

「ああそや、結局あのまま有耶無耶になっとったし、教えて欲しいな」

 

 冬至に乗っかるように、はやてもトーポと遊んでいた手を止め、誠に顔を向ける。テーブルに向かって何かを書いていた誠はその手を止めると、二人の質問に答えた。

 

「オノマンのような人型のモンスターは沢山いるよ。前に教えた系統に分類すると、この子たちは怪人系に分類されるんだ」

 

「どんなのがいるんだ?」

 

「うーん、思いつく限りだと、デスストーカー、ウィッチレディに魔女、怪人系に分類されないけど、スラ忍と呼ばれている子たちや、人に近い獣人や魔族のようなモンスターがいるね」

 

 誠は鞄から取り出した紙にサラサラと何かを書いていくと、はやてたちに見せた。そこには魔物の系統が大きく書かれていた。

 スライム系、ドラゴン系、水系、虫系、植物系、ゾンビ系、悪魔系、鳥系、獣系、物質系、怪人系、???系。それらの下に、知る限りの人型の魔物たちの名が系統別に書かれていた。

 

「意外とおるんやなぁ……。ってかごろつきって、よおそんな名前つけたな………」

 

「そうだよな、魔女とか殺人鬼もまんまじゃないか」

 

「…………二人とも何か勘違いしているようだけど、そういうモンスターの元の多くって人だよ? 人間がモンスターに変化したんだ」

 

 人が魔物になるという言葉に驚くはやてたちであったが、牧場で見た腐った死体などのゾンビ系統の具体例を挙げると、あー、と声を上げた。ただ元が人であったと聞いたはやては、一人顔色を悪くさせたが、安心させるように誠がフォローする。

 

「まあそこまで気にする必要はないよ。今の人型のモンスターの多くは純粋にマ素から生まれたモンスターがほとんどだから。配合で生まれる場合も、モンスターの種族に刻まれた血が呼び起こされたりして生まれる場合があるだけだからね」

 

「……それは一安心やわ。でも魔物って奥深いんやなぁ……。ところで兄ちゃん、さっきは何書いとったん?」

 

 安心したのか、ホッと息を吐いたはやては、今度は先ほど誠が書いていた本のような物が何かと尋ねた。それに少し待ってと告げると、数行書き記す。そして持っていた羽ペンを置き、手早く片付けるとその本をはやてたちに見せた。

 その本は分厚くボロボロであったが、とても大切にしているのが見て取れた。

 

「その本って何や?」

 

「これはね、僕の冒険の書だよ」

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 次の日から誠たちは各国を巡って本格的な観光を開始した。

 タイジュの国ではテリーはいなかったが、大図書館やカレキの国とはまた違った店を楽しんだり、たまたまタイジュの国に来ていたミレーユにマルタの案内を頼んだり、冬至がわるぼうに悪戯されるなどのハプニングがあったものの、楽しい数日間を過ごした。

 そして帰る前日、誠たちは再び格闘場へと訪れていた。格闘場に訪れた理由は、この日に開催される大会に誠が出場するためであった。

 

 はやてと冬至、二人への解説のためにと頼まれたヴィランが観戦席で試合が始まるのを今か今かと待っていた。

 この数日間、旅行を思う存分楽しみ、モンスターバトルも何回か観戦したはやてたちであったが、誠が戦うところを一度も見たことがないため、誠がどのような戦いを見せるのかを非常に楽しみにしていた。

 

「兄貴の戦いか……楽しみだな」

 

「そやな~、トーポも一緒に応援しよな」

 

「……ちゅっ」

 

 はやての膝の上でチーズを齧っていたトーポは、一鳴きすると再びチーズを齧りはじめる。

 言葉を理解しているはやてはトーポを持ち上げると、メッと叱った。

 

「見やへんでも結果は分かるって……あかんで、トーポの仲間も出るんやからしっかり応援せな」

 

「ちゅー………」

 

「うん? どないしたん? そんな言葉を濁して」

 

 トーポの様子がおかしいことに気付いたはやては、一体どうしたのかと問い詰めようとしたが、ヴィランが唐突に話題を振った。

 

「そういえば今日は、マコト君はトーポを参加させていないようですが、ハヤテ君は彼がどのようなメンバーで挑むのか知っていますか?」

 

「えーと……それは……」

 

 明らかに話題逸らしとわかるそれであったが、はやてには十分効果があった。ヴィランの質問に答えようと、誠が受付を済ませていた際にエントリーしていた魔物たちを思い出す。

 

「確か……スカルにサイモン、シャディやったと思います」

 

「成程、彼の騎士たちですか。しかし珍しいですね。エースではないとはいえ、最初の仲間の子孫であるトーポを使わないなんて」

 

「え? そうなんですか?」

 

「ええ。トーポはマコト君が最初に仲間にしたフェアリーラットの系譜を受け継いでいます。それに――と、マコト君が出てきますよ」

 

 司会の声に誠の出番をきた事を告げると、ヴィランは話を中断させた。

 それにはやてはどこかモヤモヤとした気持ちを抱えながらも、舞台へと目を向けた。

 

「さあ、新たなチャレンジャーを紹介しよう!! 我らがカレキの国のエースにして、数多の騎士を従えし若きマスター。元星降り代表……マコト!!」

 

『わああああああっ!!』

 

 登場口よりその姿を現した誠は、星降りの際に着ていたローブを身に纏っていた、その後をサイモン、シャディ、スカルの三体の騎士たちが続く。ゆっくりと自然体で歩く誠たち。時折歓声に応えるように手を振り、階段を上がり舞台に立つ。

 

 誠は反対口から現れた対戦相手を不適な笑みで迎えると、お互い対峙する。

 そして――第一試合が始まった。

 

 

 




いかがだったでしょうか?
今回は観光編、オリキャラのヴィランについてはアバン先生のようなイメージをしてくだされば大丈夫です。それから色々とフラグが立ちました。
大会のルールとか、系統についてとか……

人が魔物に変化するについては、マデュライトとマ素の件はカットしました。
なお、誠が語った人型の魔物の件は完全に捏造です。

次回は大会編+α 投稿は遅くなる可能性がありますが、ゆっくりお待ちください。

それと異世界旅行編終了後に、キャラ設定などを追加します。
それでは次回でお会いしましょう。

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