最近まったく執筆が出来ない状況であったためにここまで遅くなってしまい申し訳ございません。
それと前回言ったとおり異世界旅行編はもう一話増えてしまいました。
今回は大会編の前編となります。
注意点としましてはバトルがターン制でないため、色々とおかしい部分があるかもしれません。
それではごゆっくりどうぞ。
「デルパ!」
第一試合、誠の対戦相手が魔法の筒で呼び出したのは、ドロドロと溶けて燃えているマグマスライム、ニヤニヤと笑みを浮かべながら両腕から発火させている炎を振りまく炎の戦士。そして通常のゴーレムよりはるかに大きく、怒りのオーラを身に纏った怒りの魔人。
相手マスターの魔物たちは怒りの魔人を除くと、見るからに炎を得意としている印象を受ける。
それぞれの魔物たちが目の前の相手と視線を交差させ、その時を待つ。
「挑戦者であるマコト選手は、三回連続で行われる試合に勝利すれば優勝です。それでは張り切ってまいりましょう! 勝ち抜き戦第一試合………レディ……ファイッ!!」
「シャディ! 先手必勝、ガンガン行くよ!」
「わかりました!」
試合開始の合図とともに、誠はシャディに指示を出す。
地面に溶け込むように消えたシャディは、影を通じて炎の戦士の目の前に飛び出す。飛び出した勢いを利用して敵を斬り上げ、もう一度攻撃を加えると、敵に捕まらないうちにシャディは誠の元に戻る。
シャディは素早い身のこなしと影を利用してのヒット・アンド・アウェイを得意としていた。
誠に先手を取られた相手マスターであったが、負けじとマグマスライムたちに指示を出す。
「マグマン! モエール! お得意の火炎を見せてやれ! マジーンは何時も通り全力で行け!」
マグマスライムたちが放つ二つのメラゾーマ。その対象はスカルであった。誠の試合を見たことがある相手マスターは、攻撃の要であるスカルを優先した。
スカルの頭上に発生した巨大な火球が勢いよく落下する。しかしメラゾーマが直撃する前に、サイモンが庇うようにスカルを押しのけた。
「ぐっ……!!」
盾に直撃したメラゾーマの衝撃に後ずさるが、サイモンは僅かなうめき声と共に踏ん張り、耐え抜く。そして持っていた斧を横薙ぎに振るい、残り火をかき消す。しかしメラゾーマ二つ分の余波は大きく、直撃したサイモンを中心に広がった膨大な熱は庇ったはずのスカルの体力を容赦なく削り取った。
「へへっ、お前ならキラーアーマーで守ると踏んでいたぜ。だが俺たちの火力は庇っても貫くぜ?」
「……少しダメージ与えたからっていい気になってると足元掬われるよ。スカル!」
「ああ、我らを舐めるなっ!!」
得意げな相手マスターにムッとしながらも淡々と言うと、誠は新たにスカルに指示を出す。
指示を受けたスカルは前に躍り出ると、大きく息を吸い込む動作をし、輝くような凍て付くブレスを吐き出した。吐き出されたブレスは容赦なく相手の場を凍りつかせ、吹雪が弱点であるマグマスライムと炎の戦士に大ダメージを与える。
「ゴッ……!」
そこに攻撃を仕掛けたのは怒りの魔人であった。持っていたハンマーを両腕で大きく振りかぶり、スカルを叩き潰そうとする。その動作はとても遅く、通常ならば当たるはずがない。しかしブレスを吐き出した直後であったことが災いし、怒りの魔人の攻撃をスカルは避けることが出来なかった。
そしてそのまま振り下ろされるハンマー。大きな鈍い衝撃音が格闘場に響き渡った。
「よっしゃ! まずは1体! そのまま行けマジーン!」
「ゴッ!」
痛恨の一撃を食らわせスカルを倒したと喜ぶ相手マスターたち。それに対して誠はただじっとスカルがいた場所を見続けていた。その行動を訝しむことなく、相手マスターはこの調子でと怒りの魔人に指示を出す。
指示を受けた怒りの魔人は、次の獲物を倒そうと振り下ろしたままのハンマーを持ち上げようとして、異常に気付いた。完全に振り下ろしたと思っていたハンマーがわずかに持ち上がっていることに。
「……?「ぬるいわっ!」……ゴッ!?」
「何っ?!」
潰されたはずのスカルが、咆哮と共にハンマーを盾で弾き飛ばす。持っていた武器を弾かれたことで仰け反る怒りの魔人に一撃を加えると、スカルがその姿を完全に現した。
痛恨の一撃を喰らったはずなのに、飛び出してきたスカルは持っていた盾が多少傷ついた程度でほぼ無傷であった。
「ね? 足元掬われたでしょ?」
さっきのお返しとばかりにそう笑う誠に、相手マスターは怒り心頭の顔を向ける。
何故スカルが無事だったのか。それは配合を重ね続けたことにより発現した、“会心完全ガード”と呼ばれる特性のおかげであった。また怒りの魔人が持つ“魔神攻撃”という特性によって、怒りの魔人が放った通常攻撃が、会心の一撃かミスをするかの二択しかなかったのも味方した。これによってスカルはほぼ無傷で怒りの魔人の攻撃を受け止めることが出来たのだ。
「スカル!」
「くそがっ、マジーン! ガンガン行け!」
互いのマスターの声に答えるように、エースであるスカルと怒りの魔人が再びぶつかり合う。
その戦いを中心に残った魔物たちにも両者は指示を出す。誠はサイモンに庇わせず、スクルトやマジックバリアなどの補助魔法を優先し、援護を行う。
その動きに相手も同じように怒りの魔人を強化させようと炎の戦士がバイキルトをかけるが、シャディがいてつく波動を放ち元に戻す。また時折シャディが奇襲を仕掛け、後方にいたマグマスライムたちの体力を確実に削り取っていく。
相手マスターの魔物たちはその一撃が重いとはいえ、援護の差とスカル自身が回復持ちだったため、徐々に戦況は誠に傾いていた。
その事実に気付いていた相手マスターは補助を止め、確実に一体を仕留めようと全員にスカルを倒すように指示を出す。
「ちっ、お前ら! まずはナイトキングを倒せ!」
「「メラゾーマ!」」
再び二体が怒りの魔人と戦っていたスカルに向けてメラゾーマを放つ。
一発を回避するも、遅れて落ちてきたもう一発のメラゾーマが直撃する。更に避けたメラゾーマも地面に直撃した際の余波がスカルと怒りの魔人を襲う。
マジックバリアのおかげでダメージを抑えることが出来たスカルであったが、怒りの魔人の追撃が襲い掛かる。
その攻撃を防ぐも、後方からの火炎呪文の援護攻撃にスカルは攻めることが出来ない。防戦一方になりながらも、ベホマを使いながらじっとチャンスを待った。
「今だ……スカル!!」
「了解した。輝く息!!」
何度目かの火炎呪文で距離をとられたスカルは、誠の指示に従い輝く息を放った。
再び吐き出された凍て付くブレスによって、周囲の気温が一気に氷点下まで下がる。そしてそこに追い討ちをかけるようにシャディが氷結系最上級呪文を放つ。
「マヒャデドス!!」
舞台を影で覆いつくすほどの巨大な氷塊が現れる。そしてシャディが剣を振るうと、それに呼応するように氷塊が砕け、無数の氷柱が敵全体へと降り注いだ。
降り注いだ氷柱は怒りの魔人の近くにいたスカルにも直撃するが、ヒャド系統の攻撃を無効化するスカルには何処吹く風と、後方にいた炎の戦士たちを庇おうとする怒りの魔人の退路を塞ぐ。そしてそのチャンスを見逃す誠たちではない。
「今がチャンスだ……シャディ!」
「はあっ!!」
誠の合図に突っ込むシャディ。冷気を纏わせ、突き刺すように放たれた剣は、怒りの魔人の表面を砕き、深く突き刺さった。そして突き刺された場所を中心に罅が広がると、怒りの魔人の体は砕け散る。呆気なく倒されたことに対戦相手は呆然となった。シャディの放った一撃は、本来なら会心の一撃となるはずがなかった。しかし今回は対戦相手の作戦と編成が悪かった。
岩石で出来た怒りの魔人とスカルとの戦いに、早く潰そうと勝負に焦った対戦相手が“メラ系のコツ”を持つマグマスライムたちの炎による援護を何度も入れてしまった。
そしてスカルの輝く息とシャディのブリザーラッシュによって急速に冷やされた結果がこれである。怒りの魔人は本来なら耐え切れたであろう一撃に耐え切れず、倒れてしまった。
「や、やるな……。だがまだ俺にはマグマンとモエールがいる! まだまだこれからだ!」
対戦相手は自らを奮い立たせるようにそう言い放つと、マグマスライムたちに指示を出そうとする。しかし――
「ピキイッ………」
「も……燃え尽きた……」
怒りの魔人が倒れる前に、既に二体はマヒャドデスと輝く息という弱点攻撃を受け倒れていた。
その事実にポカーンと口を開け呆けている相手マスターに、誠は苦笑を隠すように頬を掻きながらも勝利宣言をした。
「……僕の勝ちだね」
「決着! マコト選手、見事一回戦を勝利しました! では舞台の整備の後、2回戦を始めようと思います。マコト選手は舞台袖でお待ちください」
◆ ◆ ◆
試合を観戦していたはやてたちは最上位の戦いに、応援するのも忘れ見惚れていた。
「すげえ……あれが最高クラスの戦いか」
「スカルたちかっこよかったなあ。せやけど何であのゴーレムはあんなあっさり砕けたんや?」
「ああ、あれはですね――」
はやての疑問にヴィランは怒りの魔人が砕けた原因である熱膨張について説明する。
ヴィランの説明は分かりやすく、はやてたちは何故怒りの魔人が簡単に倒せたのかを理解する。余談であるが、誠はこの熱膨張については冒険で養った経験からの行動であったりする。
それはさておき、舞台の修復が終わったことですぐさま第二試合が始まった。
第二試合の対戦相手が繰り出してきた魔物は、棍棒を持った青い一つ目の巨人であるギガンテスを中心に、大きなお腹をした深緑色の巨大なドラゴンであるギガントドラゴン。巨大な青いトカケのようなリザートファッツ。またもや誠の相手は高火力の魔物たちであった。
「それでは、第二試合……レディ……ファイッ!!」
開始の合図とともにマスターの命令なく、ギガンテスたちが一斉にスカルたちに接近すると、守ることなど知らないとばかりに容赦なく攻撃を行っていく。隙を狙ってスカルが攻撃を仕掛けようとするが、近づかせないとばかりにリザードファッツがその巨大な尻尾で薙ぎ払う。
そこにギガントドラゴンが、ギガンテスによって破壊された舞台の瓦礫を利用して追撃の岩石落しを行うなど、その怒涛の勢いに誠たちは防戦一方であった。
「わわっ、兄ちゃんらピンチやん!?」
「やばくないか……?」
その様子をハラハラと見守る二人。
試合が開始して今だに誠たちは有効打を与えておらず、圧倒的な火力の前に補助呪文や耐性を高めるなどをして耐え続けていた。
その間も敵の攻撃は続く。大規模な呪文を唱え、強力な特技を放つ。無論そんな調子が何時までも続くわけがなく、MPが足りなくなってきたのか敵の勢いは徐々に弱くなっていた。
誠はチャンスとばかりに指示を出す。まずシャディがギガントドラゴンとリザードファッツの残ったMPをマホトラで奪い取ると、スカルに分け与える。そして譲渡されたMPを消費しサイモンを回復させると、スカルとシャディは攻めに転じた。
「おおっ……!」
「そこや! 行けっ!!」
スカルとシャディは協力してギガンテスを吹き飛ばすと、それぞれMPが無くなった敵と対峙する。MPが無くなったとはいえ、素の攻撃力が高い二体と対峙するのは危険であったが、隙だらけの大振りの攻撃をみかわしきゃくを使いうまく回避する。
一方、マホトラが効かないため唯一MPが残っていたギガンテスの攻撃は、うまくサイモンが立ち回り対処する。
「……ぬんっ!」
『おおっと!! マコト選手のキラーアーマーが、ギガンテスの巨体から繰り出された痛恨の一撃を耐える!! どれだけの攻撃を受けても倒れないその姿はまさに鉄壁!』
敵からの攻撃を一身に受けているのに、まったく倒れないサイモンの存在に自然と観客の注目が集まる。キラーアーマーは確かに守備力が高いが、本来ならその特性もあって十分アタッカーとして活躍できる能力を持つ。しかし誠のサイモンは攻撃する素振りを一切見せず、ひたすら盾と補助に徹していた。時折スカルからの回復を受けて体勢を立て直しているが、それでもあの耐久力は尋常ではない。
「配合を重ねただけあってやはりサイモンは固いですね。それにマコト君は絶妙なタイミングで細かく指示を変えています」
「……えっ? 兄貴そこまでやってましたか?」
ヴィランの言葉に疑問が出てきた冬至は、多少仲良くなっていたこともあり、やや砕けた口調で尋ねる。その冬至の言い分は正しく、誠が試合中にスカルたちに出していた指示は、スカルとシャディに“ガンガン行け”とサイモンに“サポートしろ”としか言っていない。
それなのに何故ヴィランはそう言ったのか。その答えはとても簡単なものであった。
「ええ。確かにマコト君はその大雑把な指示しかしていません。ただその指示をする際、声に強弱をつけたり、微妙に言い変えたりしているんですよ。敵に合わせるマコト君の観察力もたいしたものですが、真に恐ろしいのは、その指示を理解し、確実に実行する仲間たちだと私は思いますね」
ヴィランの言うとおり、誠は細かく作戦を変えていた。例を挙げると“ガンガン行こうぜ”という指示をガンガン行け、行こう、行くんだなどと言い分けたりしている。
他にも速攻で決めるなら“手早く終わらせるためにも”ガンガン行けなどと複数の組み合わせを元に、相手が気付いても作戦内容がばれないようにしていた。
その一方で冬至の目を引いたのはシャディとスカルの放つ数々の氷結系の特技であった。
巨大な氷結を空中に造り落下させたり、地面から氷柱を生やしたり、時には剣自体に冷気を纏わせたりするなど、自身にとって参考になる部分が多数あった。
そして最後に残ったギガンテスもスカルの一撃によって倒れ、見事誠たちが勝利したのであった。
「ふぅ……ハラハラしたわ」
「流石に連戦となると兄貴たちでもきついんだな」
「そうですね。今回の大会は戦術面はともかく魔物たちのレベルが高いですから、マコト君でも厳しいでしょうね。しかし今の試合、マコト君は次に繋げるために態々持久戦を仕掛け、相手からMPを奪いましたからまだ余裕はあるでしょう」
そして始まった最後の試合、ここでアクシデントが起こった。
攻撃の余波によって吹き飛ばされてきた瓦礫を回避した誠であったが、回避した場所が悪かった。スカルが盾で弾いた瓦礫が、誠が回避した場所に飛来し、運悪く頭に直撃したのだ。
「マコ――「ぐっ……僕のことは気にするな!! 今やるべきことをやるんだ!!」――了解した!!」
痛みに耐えながらも、隙を晒そうとしたスカルたちをそう叱責する。
自身のミスによって誠に怪我を負わせてしまい、気を取られそうになったスカルであったが、その声で正気を取り戻すと一刻も早く敵を倒そうと飛び掛った。
指示を出した誠はというと、頭から血が流れ落ちており見ていて痛々しい。それを見て慌てるのは、観戦していたはやてたちであった。
「ど、どないしよう。兄ちゃん今すぐ治療しやな……」
「ああ、今すぐ兄貴に回復するように言って――」
これまでの試合も多少の怪我はあったが、今回のはっきりと目に見える怪我に、はやてたちは気が気でなかった。とにかく何とかするべきだと、冬至は誠に回復するように叫ぼうとしたが、手でヴィランに制される。
「いけません! 例え試合に関係なくとも試合中にマスターが呪文や道具を行使すれば失格になります」
「「そんな!?」」
ヴィランの言葉に二人は声を上げる。
つまり試合が終わるまで誠は一切怪我を治療できないのだ。表面上は悠然としている誠を見せかけであると即座に見破ったはやては、不安げな表情を浮かべる。
そんなはやてを安心させるようにヴィランは優しく声をかける。
「大丈夫です。もし命に関わるようならばかくれんぼうが介入します。それにマコト君はあの程度で倒れはしませんよ」
その言葉に嘘偽りはなかった。モンスターマスターとして冒険をする者ならあの程度の怪我など日常茶飯事だからだ。また格闘場内では技の威力なども制限されており、精霊の加護の存在もあるため、死に至る可能性は限りなく低い。
そう言われるも、はやてたちからしてみれば何一つ安心できるわけがない。ただ一刻も早く試合が終わるようにスカルたちを応援するしかなかった。
結局、最後の試合も危ういところもあったが何とか誠の勝利に終わった。
無事優勝できた安堵感からか誠は深々と息を吐くと、ベホイミで簡単に治療してから観客に応えるように笑顔で手を振る。怪我を治療した誠の姿にはやてたちは一安心すると、勝利を祝うべくと誠の元へと行こうとした時、それは起きた。
「並み居る強豪を打ち倒し、見事優勝を勝ち取ったのは――「ちょっといいかな?」――え、かくれんぼう? ああっ! 何をする!?」
「みんな! まだまだ盛り上がり足りないよね?」
突如現れたかくれんぼうは、司会のマイクを奪うと、観客に向かって呼びかける。
突然の言葉に観客たちは、きょとんと隣にいた者たちと顔を見合わせる。どの試合も最上位の戦いに恥じないものであった。だからこそかくれんぼうの言葉の意味が分からなかった。しかし一部のノリの良い観客は直ぐに意味が分かったようで、声を張り上げる。
「そうだ、もっと戦いを見せろ!!」
「こんなんじゃ物足りねえぞおっ!!」
「うんうん。わかってるじゃないか。そこで優勝者であるマコトに挑戦者だ! マコトには今からその挑戦者とのイベントバトルに挑んでもらおうと思う!! もちろんマコトが嫌なら別に構わないけど……どうかな?」
そう問いかけるかくれんぼうであったが、それは拒否権がない質問であった。
何せ観客たちのほとんどが、イベントバトルに挑戦するだろうと期待を込めた目で誠を見つめているのだ。一身に受ける無数の視線に誠は苦笑いを浮かべるも、かくれんぼうからマイクを受け取ると自信の思いを叫んだ。
「……僕も仲間たちもまだまだ物足りないと思っていたんだ。その挑戦……受けてたつよ!」
『わあああああああっ!!!』
「いいぞー!!」
「負けんじゃねえぞー!!」
誠の言葉に観客の声援と歓声が交じり合う。それに応えるように手を振ると、誠は司会にマイクを返す。そしてイベントバトルということで自身の怪我と仲間たちをかくれんぼうに回復させてもらうと、静かに舞台端に佇み、挑戦者の登場を待つ。
「さあ突如行われるイベントバトル!! 登場するのは――!?」
気を取り直し登場口から現れた人物を紹介しようとした司会は現れた人物の姿に驚きどまった。それは格闘場にいる観客もであった。現れたのは、カレキの国の王。
その背後からは、食虫植物のような魔物であるマンイーター、根のような魔物であるマンドラゴラ、巨大なバラの蕾のような魔物のローズバトラーが姿を現す。
「な、なんと!? 挑戦するのは我らがカレキの国の王だーーー!??」
格闘場内は一瞬どよめくが、すぐにそれは場を揺るがすほどの大歓声へと変わった。
めったに戦う姿を見せたことがない国王と誰もが認める確かな実力を持った元星降り代表が戦うのだ。これで熱くならないわけがない。誠もカレキ王の登場には驚いたようであったが、すぐにそれは笑みへと変わり、仲間たちも油断なく構える。
「騎士たちに最後に立ち塞がるのは、この地に蘇りし植物たちの軍団! それら全てを斬り裂き、マコト選手に勝利を届けられるのか!? それでは最終戦、レディ………ファイッ!!」
◆ ◆ ◆
既に試合開始の合図は出されていたが、カレキ王たちは先手を譲ってやろうとばかりに、一切指示をしなかった。ただじっと佇むその姿に不気味さを覚えながらも、誠はどう攻めるべきか考える。
カレキ王の魔物たちは全て植物系である。この植物系の多くは、状態異常に耐性を持つ反面、メラやギラといった火炎系統が弱点である。しかし誠の現在のメンバーには火炎系統の技を覚えている魔物がいない。
更に厄介なのは、ローズバトラーとマンイーターが装備している武器が全体攻撃可能な鞭であり、ローズバトラーにいたっては連続攻撃及び複数回行動できるという、誠にとっては非常に厄介な相手であった。
(せめてサイモンがアタックカンタを覚えていればどうにかなったんだけど……。ないもの強請りをしてもしょうがないか。それにローズバトラー自体の火力はそう高くない……はず)
以前ジュヒョウの国で行われた星降りの大会・レジェンドにおいて、カレキ王のパーティを見た誠であったが、その実力を完全に把握していない。
誠にとって懸念すべきことはただ一つ。カレキ王の魔物たちが何処まで配合されているかである。サイモンが異常なまでの耐久力を持っているのと同じように、ローズバトラーも攻撃力を底上げされている可能性がある。または長所である賢さを強化して呪文で押してくる可能性もあるのだ。
「(……迷ってても仕方ない。それに状態異常にされたら厄介だ。だったらここは――)先手必勝だ! シャディ、ガンガン行こう! サイモンとスカルはサポートを優先して!」
誠が選択したのは、第一試合同様シャディに先陣を切らせるというものだった。
先陣を切ったシャディはヒャドの耐性を持たないマンドラゴラに狙いをつけると、正面からではなくマンドラゴラの影を通じて背後から攻撃を仕掛ける。
自身の得意とする冷気の力を剣に宿し、ブリザーラッシュを放とうとする。しかし――
「何!? 冷気が……!」
剣に宿っていた冷気は突如四散する。それに驚き攻撃を止めようとするシャディであったが、既に単独で相手の場に飛び込んでいる。ここで攻撃を中断しては隙を晒すことになると、そのまま冷気を失った剣で斬りつける。
だが攻撃を一瞬でも躊躇してしまった段階で、マンドラゴラに防御させる時間を与えてしまった。その剣はマンドラゴラの腕に食い込むとシャディの動きを鈍らせる。そこにローズバトラーの鞭が襲い掛かり、シャディを弾き飛ばした。弾き飛ばされたシャディは素早く誠の元に戻る。
「くっ、申し訳ありませんマスター」
「いや、大丈夫だよ。マンイーターが赤い霧を使っていたことに気付かなかった僕のミスだ……」
誠は膝下までを覆う赤い霧を悔しそうに一瞥すると、まったく動く様子を見せなかったマンイーターを睨み付ける。
マンイーターは呼吸に合わせてその大きな口から赤い霧を少しずつ吐き出しており、隠す気がなくなったのか一気に赤い霧を吐き出した。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ、残念じゃったな……」
舞台を覆う赤い霧を見て、作戦が成功したカレキ王はにんまりと笑う。
カレキ王は舞台に上がったときから誠の視線がローズバトラーの方に向いているのに気づいていた。そして誠の魔物たちとこれまでの傾向から何をするのか予測がついたカレキ王は、試合が始まると同時に誠に気付かれないようにマンイーターに指示を出していた。
そしてその作戦は見事成功する。シャディは赤い霧が既に発動していたのに剣技を発動させた。少量の赤い霧ならば多少威力は弱まるが問題なく剣技を発動することが出来た。
しかしシャディは攻撃する方法を間違えてしまった。足元から飛び出してしまったことで、赤い霧の影響をもろに受けてしまったのだ。唯一計算外だったのは、シャディが機転を利かせてそのまま攻撃に入ったことであった。
イベントバトルの先手を取ったのはカレキ王であった。
いかがでしたでしょうか?
第一試合以外は省略しましたが、長々と書くとまた話数が増えてしまうため今回のようになりました。そしてまたかくれんぼうがやらかしました。
今回の話での戦闘においての余波によるダメージは完全に捏造です。
でもメラゾーマとかどう見ても横に並んでる魔物にもダメージ入ると思ってます。
それとシャドーナイトの特性についてですが、以下のとおりになっております。
シャドーナイト Bランク
《スタンダートボディ》、ヒャド系のコツ、連続(2回)???(+25で取得)
次回はカレキ王とのバトル決着+αとなるかと思います。
出来る限り早く投稿したいと思いますが、気長にお待ちください。
それでは次回でまたお会いしましょう。