爆豪はTSしたらかわいい。あなたもそう思いませんか?   作:星デルタ

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反応が良かったから筆が勝手に…


第二話

 雄英高校の受験対策の日々。香月ちゃんはなかなかピリピリしているようだが、俺は気楽なものである。学業は前世の記憶+個性による超学習で何とかなるしね。

 香月ちゃんも同じように全く心配いらないレベルの実力があるのだが、彼女は主席合格を狙っているからなあ。どんなライバルがいるのか分からない以上、万全を期しているようである。さすがかっちゃん。

 

 ……レスキューポイントがある以上、たぶん少しでも人助けをすれば楽勝だと思うんだが、言わないようにしておく。前同じ事を言ったらメチャクチャキレられたからだ。

 

「エンデヴァーフィギュア、1500円から……ちょっと安いか? まあ別にいいか」

 

 考え事をしながら日課となった個性トレーニングを終わらせる。この個性『TAS』は目標となる結果を頭の中で定めてから発動させなくてはならない。過程はイメージする必要はなく、目標も「できのいいオールマイトフィギュアを作る」くらいの大まかなものでいい。あとは自分でも分からぬままに手が動き、信じられない早さでフィギュアが出来上がっている。そこに俺の意思が介在する余地はない。

 「最高のヒーローになって老衰で死ぬ」とでも目標を設定して発動させたらどうなるのだろうか、と時々考えてしまう。体が自動で動いて人助けをして、そのまま死ぬまで続くのだろうか? そう考えるとビルの屋上から下を眺めたときのようにゾクゾクする。希死念慮ってやつ?

 まあやらないけどね。くだらないこと考えるのは終わり終わり。香月ちゃんに癒やしてもらおう。

 

「かっちゃーん、受験勉強の息抜きにどっか遊びに行かない?」

 

「てめえデク、さっきから全く勉強なんざしてねえじゃねえか」

 

 はい。実はずっとかっちゃんが一緒に居るんですよね。というかここはかっちゃんの家ですね。そろそろ受験も追い込みの時期にさしかかってきたので、最近の休日はたいていいつもどっちかの家で勉強会をしている。

 

「いやいや、これも立派な個性の訓練だって。削った破片も全部ゴミ箱に行くようにしてるんだから怒らないでよ」

 

「いつ見ても気持ちわりい動きだが、問題はそこじゃねえっての。俺様が主席を取るのは当然として、お前にも次席取ってもらわなきゃ、俺の将来設計にケチがつくじゃねーか」

 

「将来設計ねえ……かっちゃんはともかく、僕の方はそんなに気にしなくていい思うけどなあ。サイドキックって割と注目度低いぜ?」

 

「うるせーよ、そりゃあサボる言い訳にはならねえ。雄英の主席と次席が揃ってプロヒーロー事務所を開くとなれば、マスコミは必ず食いつく。そしたら知名度だって上がって、ヒーローチャートだって上がりやすくなる。」

 

「相変わらず考えることが微妙にみみっちいなあ……。

ねえ、でも僕にもっといい考えがあるよ」

 

「ああ?なんだよ。言っとくが、たとえてめえ相手でも

勝つのは俺だ。主席は譲らねーからな」

 

「いやいや、そうじゃなくてさ。

 

 結婚したらもっと知名度上がらない?」

 

 

「っっっっっ、は、はあ?」

 

 

「雄英主席と次席で、ヒーローとサイドキックで、更に夫婦。ここまでくれば多分史上初だぜ?きっとマスコミの食いつきも……」

 

「ばっっっっっ、ばぁっか野郎が!だ、誰がそんなことするかあ!」

 

 香月ちゃん顔真っ赤で草。でも悪くないと思うなあ。どうせいつかはする事になるだろうし。爆豪家のウェルカムぶりといったらヤバイぜ? いつだったか、我が母へのお裾分けとして渡された紙袋にこっそりゴムが入ってたときには流石に冷や汗が出たもんな。「あら、だって自分で買うのは恥ずかしいでしょう?」じゃ無いんだよ。使わないし、そもそも相手側の親から渡される方が100倍恥ずかしいわ。

 

「テメーはそりゃあ俺みたいな高嶺の花と結婚できれば万々歳だろうが、俺は超高収入イケメンと結婚すんだ!お、おまえみたいなクソナードお断りだね! そ、それに……」

 

「(照れているかっちゃんも可愛いなあ)

 うん、それに?」

 

「そ、そーゆうのを、目立つための道具として使うのは、やだ……」

 

「」

 

「な、なんか言えよ? なんで黙ってんだよ」

 

「うん、なんか急激にやる気出たよ。今なら全教科満点だって取れる気がする」

 

 この後メチャクチャ勉強した。かっちゃんは時たま乙女を出してくるから心臓に悪いぜ……。自分が物凄く汚れた人間になった気分だったよ。

 

 

 

 

 

 

「マ、ママァ……」

 

「あら香月、もう出久君帰ったの? どうしたのそんなに暗い顔して」

 

「出久に、お前みたいなやつと結婚なんてしないっていっちゃったぁ……」

 

「あらあら、そんなこと言ったの」

「ダメだぞお香月、そんなこと言ったら」

 

「うう……。パパ、ママ……。出久、あたしの事嫌いになったかな……」

 

「あらあら抱きついちゃって。だいじょうぶ大丈夫、そんなことないわよー」

(この子ももっと素直になればすぐ上手く行くと思うのにねえ……やっぱり思春期って難しいのね)

 

「大丈夫だぞ香月、もし嫌われたらパパのお嫁さんになろうなー?」

 

「うるっせえぞジジイ!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そんなこんなで時は過ぎていき、今日は雄英の入試本番である。すでに筆記試験は終了しており、後は実技試験を待つばかりなのだが。

 

「さて、かっちゃんは上手くやれてるかなー」

 

 とうとう入試当日を迎えた香月ちゃんはいつになく緊張していて面白かった。香月ちゃん、緊張すると周りにあたり始めるから分かりやすいのだ。絡み方もいつもと違って、やや小動物的な雰囲気が出てくるし。

 

「まあ、手作りのサポートアイテムも渡してるし大丈夫でしょう」

 

 TASの能力って物作りに一番向いてるような気がしなくもない。こんな感じのものがほしいなー、と思うだけですぐに作れてしまうのだから。

 ちなみに渡したのは原作でもかっちゃんが使ってた篭手である。かっちゃんの個性は『爆破』と言って、手のひらの汗腺からニトロ化合物を分泌することができるのだ。

 ……手のひらから爆発物が出るって、正直めっちゃ危なっかしい個性だと思うのだが。使いこなせるのは本人の類まれな才能によるものだろう。爆破の勢いで自由自在に空を飛び回るのはなかなかかっこいい。

 かっちゃんに渡した篭手は彼女がかいた汗をストックする機能がついていて、より爆発の威力を高めることができる他、いざというときはデカイ一発を撃つことができるようになっている。これがあれば0ポイントの敵にも安心だぜ!

 

「あー、しかしどうしてかっちゃんと同じ会場じゃなかったんだ。やる気でないぜマジで」

 

 約束した以上、次席を取れるよう努力しようとは思うが。どうせなら同じ会場でかっちゃんの勇姿を見たかったし見てほしかった……。こっそり会場移ったらだめ?ほら、雄英の校風は自由が売りって言うし。

 

 

「プリントには4種の敵が記載されています! 誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき行為! 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」

 

 

 うわっ、ビックリした。伏せていた頭を上げてあげて辺りを見回すと、いかにも委員長然とした少年が教師に食ってかかっていた。

 

 ま、まさか彼は……原作登場人物の飯田天哉くん!?

 いやあ、改めてヒロアカキャラを見ると感動するなあ。原作に縛られないとか言った気はするが、それはそれ。原作の登場人物に会うとつい嬉しくなってしまう。だって彼らの内面ってきちんと描写されてて、善人であることが分かりきっているんだぜ? 信用するのにここまでの根拠はないだろう。

 

 

 そうか、彼と同じ会場だったのか……。ということはどこかに麗日お茶子ちゃんもいるのかな? 僕にはもう香月ちゃんという心に決めた人がいるが、あのうららかフェイスは拝んでおきたいぜ。

 

 うん、ちょっとやる気が出た。TASで「次席になれる成績をとる」とでも設定してサボろうと思ってたけど、神聖なる受験においてそういう不正行為みたいなマネは良くないよな、うん。真面目に正々堂々と受験すべきだ。

 

「ありがとう原作キャラよ、君たちのおかげだぜ」

 

「ついでにそこの縮れ毛の君!先ほどからボソボソと気が散る!」

 

「!?」

 

 注意されてしまった。この髪、ストレートパーマかけてもすぐに元に戻るんだよなあ……。

 

 

 

 さて、ところ変わって受験会場である。スタート地点に集められた受験生たちは皆緊張と興奮が入り混じった顔をしている。国内最高峰の雄英高校を受ける者たちなのだ。きっと地元では天才と崇められている人も多いだろう。自信に満ちた顔つきからそれがわかる。

 

 でも倍率3000倍は普通にやばいよなあ。対魔忍かよ。この会場も想像以上にキチンとした町並みだし、金のかかり方えげつなく無いか? お? 資本主義の闇か? 一度鎌と槌を握っておくべきか?

 

 資本の格差と言う打破すべき現状について思いを馳せていると、ふと首筋にピリついた感覚が走る。そろそろスタートが近いのかな? 個性の副作用かなんなのかは知らないが、何故か僕は物凄く勘がいいのだ。

 

 誰にも悟られないように足に力を込め、全身に力を貯めていく。

 

 イメージする。

 

 僕が地面を踏みしめるごとに、体の中をスピードが循環していく。

 

 体の中に溜まったスピードは膨れ上がり、今にも解放の時を待っている。

 

 今。

 

 今。

 

 今!

 

「はいスタートォ!」

 

「イイイイイイヤッフゥーーーーーーーーー!!!」

 

 やったぞ、ついにケツワープ成功だ!しかもケツからじゃなくて普通に走る姿勢でできたのは初めてじゃないか!?

 

 周りの景色がどんどん後ろに流れていく。体にすさまじいGを感じながら、僕は見えてきたロボット群に向けて手を振り抜く。

 

「TAS流、裏技その1!『すり抜け+強制ハッキング』!」

 

 僕の手のひらが3Pロボットの装甲に近づき、近づき、そして()()()()()

 量子トンネル。詳しい説明はしないが、全ての物質が分子で構成されている以上、そこには微細なすき間が存在し、奇跡的な確率でそのすき間同士が噛み合えば、壁だって通り抜けれるという現象だ。

 そしてTASにおいて、1%とはつまり100%と言うことだ。どんな天文学的な確率だって、僕は必ず成功させることができる―――!

 すり抜けていった手が、()()そのロボットの制御チップに触れ、そしてその刺激が偶然致命傷となり壊す。

 そのまま周りのロボットにも次々に触れていく。『ブッコロス!』などと物騒なことを言いながら殴りかかってくる奴もいるが、彼らの攻撃は全て僕の体を通り抜けていく。

 30秒も経つと、周りのロボットは全て動かなくなっていた。外傷は全くないのに、致命的にブッ壊れてしまっているからだ。

 キレイな顔してるだろ? 死んでるんだぜ、そいつ……。

 

「これで20ポイントくらいか? 意外と先が長いな……」

 

 ここでモタモタしてると他の受験生が追いついてきそうだな。レスキューポイントの存在を知っちゃってる以上、誰かを助けに入っても不自然になって結局ポイント貰えなさそうだし、効率よく敵ポイントを稼いでいかなきゃね。

 

 

 

 試験開始から結構たったな。あの後も敵ロボットを壊していって、今は70ポイントくらいだ。もうここらへんでいいだろう。多分。0ポイントの巨大ロボットが出てくる前に終わらせれたし、結構いい感じじゃないか? さすがTASさん、さすタスってね。

 

「かっちゃんが頑張ってるか見たかったなあー」

 

 サポートアイテムの篭手もあげたし、一緒に特訓して強くなってるしで確実に原作よりも良い点数を取っているであろう香月ちゃんのことが気になって仕方ないぜ。

 そうそう、篭手をあげた時も可愛かったんだよ。香月ちゃん、荒っぽい面と乙女な面の2つがあってさ。その二面性がまたかわいいんだよなあ……。

 

「うおっとお!?」

 

 香月ちゃんの秘蔵エピソード集その1、『ベッドで僕の写真に語りかけてた』を思い出していると轟音と共に地面が揺れ始めた。

 

「いやでっっかいなあアレ!」

 

 想像以上だ。知識としては知ってたけど、実物を見るとやはりその迫力に圧倒される。

 これを高校入試に出すとかマジ? 見た感じ鉄製だし、どんな安全対策をとってもこれで死者を出さないのは無理だろ。今まで死亡事故が起きなかったのは幸運だよ。

 

 一応巻き込まれた人がいないか見ておくか。レスキューポイントを取ると不自然になる云々というより、人の道に反するわ。

 

「うわっ……」

 

 なんかうららかそうな人が転んで動けなくなっている。しかもちょうど0P敵がこちらにやってきている。不運すぎない?

 

「そこの君、大丈夫? 見た限りだと動けないようだが、もう心配いらない。僕がいるからね」

 

 これ、うららかさんです……(肉塊を差し出す)とかになったら寝覚め悪すぎるしね。みすみす見過ごせないぜ。(激ウマギャグ)

 

 

「イイイイイイイイイイイイイイイヤッッッッフゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 ケツワープで空高く跳躍する。

 

 0ポイントロボットがコマ送りのようにどんどん近づいてくる。何メーターもあろうかという巨体の頭上まで跳躍して叫ぶ。

 

「流石に安全に配慮しなさすぎだろ!

 喰らえや! TAS流裏技その2、『鎧通し+二重の極み』!」

 

 ロボットの頭を思い切り殴りつける。体がデカすぎるから、直接制御チップに触れることは出来そうにない。だがこの距離で殴りさえすれば、衝撃は届く! 精密駆動の極致とも呼べる僕の拳によって与えられた衝撃は、全身を駆け巡ったあとにコイツの急所(チップ)に殺到する!

 

「ま、僕にかかればざっとこんなもんよ。

 ……どうやって着地しようね、これ」

 

 刃牙よろしく五体倒立着地は修めている僕だが、この高さって五体倒立着地が効く範囲内だったか?なんかやばい気がするな……。

 

「クソっ、ここまでか! うおおおお、骨折、かっちゃんの看病、縮まる二人の距離ィーッ!」

 

「いや結構余裕そうやね!?」

 

 お?誰かに触られたと思ったらいきなり落下スピードがおちて、体が浮き始めた。隣を見るとさっき助けた丸顔の女の子がニコニコ笑っている。可愛い。

 

「私の個性、無重力! 触ったものを無重力状態にできるんよ!」

 

「なるほど、それでか……。

 よくも僕からかっちゃんの看病を奪ったな!?」

 

「今からでも落とそうか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 国立雄英高校、そのモニタールームで。雄英の教師たちが集まり、今回の試験の採点を行っていた。

 

「いやあ、今回の受験生は豊作じゃないかい!?

 あの0ポイントヴィランを倒した受験生が()()!」

 

 上座に座る動物が話すと同時に、モニターに二人の人物が映し出される。金髪で三白眼の少女が、ロボットの巨体をそれ以上の爆発で粉砕している。また、死んだ目をした縮れ毛の少年が、何かを叫びながらロボットを殴り、そのまま沈黙させている。

 

「爆豪香月くんは、レスキューポイントを一切取らずに敵ポイントだけでなんと104点!3桁得点は史上初じゃないかい?

 更にこちらの緑谷出久くんは敵ポイント74点! こちらも素晴らしい数字と言えるね!そして彼のレスキューポイントだが……」

 

「熱さが足りないけど、私は結構いいと思ったわ。同じ受験生の娘を助けるために0ポイントヴィランに立ち向かったんですもの」

 

「俺もミッドナイトに賛成だ。あれは鎧徹しの要領で中のチップだけを壊したんだよな? 無力化の手際も大したものだった」

 

「ふむふむ、なるほど! 皆なかなかに好印象のようだね! 君はどう思う、イレイザーヘッド?」

 教師陣が思い思いの意見を述べる中、動物が再び声を上げる。それに反応して、一人の男性が喋り始めた。ボサボサの髪で、目をけだるげに細めた男だ。

 

「概ね異論はありませんね。他の様子を見ても、常に最小限の労力でヴィランを倒している。なかなかに()()()です」

 

「イレイザーヘッドも好感触かい!これは彼の合格はもう決まったようなものかな!?」

 

「あくまで合理的といっただけです。それに、コイツは……。」

 

「ん? なんだい?」

 

「いえ、なんでもありません。」

 

「それじゃあ緑谷出久くんの成績は、敵ポイント74ポイント、レスキューポイント30ポイントの合計104ポイントだ! さっきの爆豪くんと合わせて、この二人が主席合格だね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうデク、入んぞー。

 何やってんだ?」

 

「足を痛くないように折る方法ってないかなって検索してた。かっちゃん、僕はおかゆは卵を入れたほうが好みだからよろしく」

 

「意味わからねーし、たとえ背骨折ったとしてもテメーの看病はしねーよバァカ」

 

 

 

 

 


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