環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった   作:風剣

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#あの子がこっちを見ている で作ったいろはちゃんイメージ図
童貞を殺すいろはちゃん
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夜這い5秒前
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絶交? またあんな思いするくらいなら自害するが??
手がかりの欠片


 

 

Title:お義父さんとお呼びしても良いでしょうか(震え声)

娘さんからもう連絡は行っているかと思いますが……なんかもう、いろはのことを任されておきながら本当、申し訳ない……責任は取ります。。。

 

Title:別に構わないよ

いやまあ、母さんがやたらと機嫌よくしてたからまた進展したのかなあとは薄々察していたけれどね……いろはもだいぶ激しいアプローチしてたらしいし時間の問題とは思っていたよ

 

Title:寂しい

それはそれと、娘がそういう報告をするまでに成長してしまったと思うと目から汗が…

 

Title:お労しy…

留守の間責任をもっていろはを守ると言っておきながら本当に申し訳ない……

 

Title:時差ねむい

まあそこらへんはいろいろ仕方ないよ、うん

避妊はしっかりね……おやすみー……学校の勉強も頑張って

とにかくいろはのことは任せるよ

 

Title:肝に銘じます

御気遣い感謝します

海外出張中にご心労おかけし申し訳ない

 

Title:ところでさ

シュウくんいろはと寝食ともにしてるらしいと聞いたんだけれど結婚はいつになりそう?

 

Title:無題

唐突に強烈なブローぶっこんできた…

責任は勿論取るつもりですけどまだ15だしせいぜい婚約指輪贈るくらいじゃないですかね(小声)

 

Title:おやすみ~

婚約指輪は贈るつもりなのか……(遠い目)

うーんいろはなら普通に喜びそうなのがなんとも……

 

 

「喜ぶの……?」

「?」

「……いや、何でもない」

 

 ……冗談ですとは言えなさそうだった。いやあながち冗談でもないのだが、流石に重いと自覚してるしそもそも校則を考えれば日常的に身につけられるものでもない指輪を贈るのはどうなのかと思うシュウであった。

 あと、彼の懐事情的な問題もある。収入が叔父から届く生活費学費のみ、貯蓄も父親の生命保険から切り崩している現状ではそれこそ本格的な指輪ではなくアクセサリのようなペアリング辺りが現実的だった。

 

 将来のこともそれなりに考えなければいけないだろう。高校生になればバイトをこなしつつ適当な運動部に入って後々のための経歴……それこそ甲子園なり全国大会なりで成績を作る必要があるかもしれない。

 幼い頃から世話になっていたおじさん……いろはの父親とのメールのやりとりを終えた少年は安堵と不安の入り交じった表情で嘆息する。罪悪感の凄まじかった義父とのやりとりを終え机に突っ伏す彼に、隣に座ってぴたりと肩を寄せてくるいろはが困ったように微笑んだ。

 

「お父さん? ……そんなに怖かったの? 別に反対とかもされていなかったと思うけれど……」

「そりゃあ義父(おじ)さんとは家族みたいな付き合いできてたとは思うけれどさあ……やっぱり大切な娘と一線を越えてしまったとなるといろいろ不安になるもんなんだよ。後悔はしてないけども」

 

 まあそれでも反省はするものである。普通に考えてまだ高校生にもなってないのにいわゆる不純異性交遊に相当するような真似をやらかすなど激昂されても仕方のないことだった。普通に認められてしまえばそれはそれで思うところもあったりする。

 

「あと、避妊、避妊……これも大事だよなあ。ゴムの消費だいぶ激しいことになりそうだしこれは帰りにでも買うとして……。いざ着けていてもってこともあるらしいからいろはも念のために薬を──、……」

「……いろは、なんで誘ってくるときはあんなにえげつない誘惑してくる癖にそんな恥ずかしがってるの」

「えっ……? だって、その……イロイロ思い出して。あんな……ううん、なんでもない」

 

 あんな……何なんだろうか。その先が凄く気になった。いやお互い不慣れななかで悦ばせることができたようならそれが何よりなのだが……。がっつきすぎだとか言われたらそれはそれで凹みそうだった。

 頬を紅潮させて沈黙するいろはに少しむらむらしながらも、今は流石に自重すべきだろうと目頭をぐりぐりと揉みながら己を戒める。

 

 神浜市から帰還した翌日。クラスメイトもいなくなった放課後の教室で、2人は今後の予定を練り直していた。

 

「……これ、授業中に調べていたやつ?」

「うん。夢でみたものや思い出した記憶を頼りにいろいろ検索してみたら、ここ……神浜市にあるみたいで……」

「まぁた神浜かあ……というかここって小学生ぐらいの頃に何度か行ったことあるような……」

 

 ……今朝がた、目を覚ましたいろはから近頃夢に出るようになった女の子が妹であったことと、その子の名前が環ういであることを思い出したと聞いたときにはそれだけしか思い出せていないなら進展は薄いなと考えていたのだが、彼女の話を聞く限り思いのほか妹との記憶は鮮明で。

 料理を作るようになったのも入院中は味の薄い病院食ばかり口にすることを強いられているういのために始めたこと、入院している間の見舞いはいろはの両親やシュウも一緒に行っていたこと、シュウといろはの関係の発展を意欲的に応援してくれていたこと──それらを含めた記憶のなかには、ういが入院していた病院を特定できる情報も幾つかあったようで。

 いろはがスマホで開いた目当ての病院──里見メディカルセンターのホームページを一瞥すると、少年はあっさり頷いた。

 

「そこならまあ、一時間もせずに行ける範囲だな。数少ない手がかりだし調べられるだけ調べるか」

「……本当に、良いの?」

「ん?」

 

 普通に礼を言われるかそのまま話をすすめるものと思っていただけに、シュウの反応を見た彼女の躊躇うような口振りは意外だった。

 目を丸くした少年に、いろははどこか遠慮がちな様子をしていて。

 

「その……本当にういが居たのかも定かじゃないのに、成果らしい成果が出るかもわからないのに病院にまで付き合って貰って……」

「おいおいたったいま親御さんにいろはのことは任せるよって言われたばかりなのに放っておける訳ないだろ……」

「……ありがとう」

 

 自分しか存在していたことを覚えてない妹のために捜索を手伝わせるのが気が引けるのはわかるが……既に魔法少女の魔女狩りに何度も協力してしまっている辺り本当に今更なものがあった。

 遠慮するなと笑う少年に礼を言いながらも。それでも浮かない顔をしている彼女に……まさか一番心配している問題に気付いていないということはないだろうなと、少年は眉を顰めた。

 

「そもそもいろは俺がいないとだいたい道間違えて迷子になるじゃん。地図アプリだってロクに使えないのにどうやって行くつもりだったんだ?」

「えっ。――な、ならないよ……! もう私中3だよ!?」

「いや、この前だって逃げ回る魔女追い回してようやく倒した時は知らない路地で涙目になってたし――」

「あれはシュウくんだって迷ってたでしょ!」

「10分だけね。結局地図確認して知ってる場所までいろは連れて移動したのも俺だっただろう」

「う、ううう……。もう、あんまりからかわないで……」

 

 顔を赤くして恥ずかしがる少女の姿に、からかっている訳ではないんだがなと苦笑する。最近は魔法少女としての活動を通してかいろはも随分と逞しくなっている気がするが──それでも、抜けている部分はままある。そこをサポートするのは他ならない自分の役目であると自負していた。

 

「それでも学校前の通りを少し歩けば直通のバスに乗れるから楽な方ではあるんだけどな。なんならまたあの小さいキュゥべえ探しに行くか?」

「……うーん……。今日は良いかな。ういのことを思い出すことができたのはあの子のおかげだし、また何か手がかりを見つけられるかもしれないけれど……また魔女の縄張りにいるようなら戦いになるかもしれないし」

 

 いろはの意見になるほどと納得する。

 どういう訳かあのキュゥべえ、衣美里(えみり)やかえでからの警戒心が強いという評とは裏腹に砂場の魔女の結界に踏み込んだ際は驚くほどあっさりといろはに近付いてきていたが……他の魔法少女といろはで何か条件に違いがあったのだろうか?

 ともあれ、砂場の魔女の討伐後にはいつの間にかいなくなっていた小さいキュゥべえをまた探すならば、それなりに準備を整えなければいけないだろうことも確かだった。

 

 砂場の魔女の使い魔にバットを壊されたことで必要のなくなったバットケースの代わりに黒い木刀を持ち込む竹刀袋を担ぎ、いろはと並んで校門を出てバス停まで向かっていたシュウは、ホームページを開いて里見メディカルセンターの情報を確認しては軽く頷く。

 

「……うん。やっぱここ何度か来たことあるよ俺。何年か前の記憶だからういとは別件だろうけれど……お婆ちゃんの検査に付き添っていったんだっけか……?」

「あ、智江(ともえ)おばあちゃんの……?あの人って凄い元気そうだったけれど何か悪いところあったのかな」

「ただの定期検診だったと思うぞ。今が元気だからって慢心するようなひとでもなかったし」

 

 健康に幾ら気を使っていても病気になるときはなるのだとよく理解していたのだろう。自分を魔女と称し揶揄う悪ガキを『カラスの餌にしてやろうかぁああ……?』などと嗤いながら追い回すだけの活力を持ちながらもバランスの良い食生活と定期的な検査は欠かさない人だった。

 ……そうして常日頃から健全な肉体の維持を心掛けていた彼女であろうとも、魔女に遭遇してしまえば呆気なく死んでしまったのだが。同居していたシュウよりずっと可愛がっていたいろはの嫁入り姿を見るまでは死ねないと豪語していた老婆の亡骸が父親とともに運ばれていったときは、少年も直前まで本当に元気だった家族同然の身内の死をなかなか受け入れられなかったものである。

 

「あと、あの病院だと……名前が出てこないな。頭のおかしい天才とひたすら静かに本読んだり書いたりしてた女の子がやたら印象に残ってるんだが」

「灯花ちゃんとねむちゃん? 2人ともういと一緒の病室で仲良しだったと思うけど」

「仲良し……喧嘩ばかりしてたような……あああー記憶がだいぶうっすらとしてるなあ、ういの記憶ごと忘れてるのかもしれない」

 

 いろはと並んで待っていたバス停に停車した里見メディカルセンター行きのバスが扉を開くのに、少女と共に乗り込んでいく。1人分だけ空いていた席にいろはを座らせ――なんならシュウの膝上に乗るようにすれば一緒に座れるんじゃないかと冗談交じりに口にしたが、人目があるからと恥ずかしそうにしながら断られた――動き出したバスが目当ての病院に着くのを待つ間、自然と会話は唯一少年の記憶に残る2人の女の子の話題となる。

 

「灯花ちゃんとねむちゃんまだ入院してるのかなあ。ういのことも覚えてくれていると良いんだけど」

「いろはにおじさんおばさん、俺まで忘れてるんだからそこは望みが薄いんじゃないかとは思うけれどなあ……。灯花に関しては本燃やして小火騒ぎ起こしてた気もしてるし病院から追い出されてそう」

「あ、それは覚えてるんだ。……ふふっ、ういに何かあったらどうするってシュウくん珍しく本気で怒ってたんだよ」

「そりゃあ何の関わりのない他人を直接危害加えられたりもしてないのに怒りはしないよな……うい関連だったのか」

 

 海水浴、初詣、クリスマスにバレンタイン、見舞いに買い物、身に覚えのないおままごと……シュウの記憶のなかにある空白に、恋人の妹のシルエットが少しずつ当て嵌められていく。

 ……本来ならこの空白の違和感に気付きもしなかったのだろうが。ういのことを世界で唯一覚えているいろはが身近に居るからか、それとも実際に触れてこそいないものの自分もあの小さなキュゥべえに会ったからだろうか──?

 少なくとも今は、自らの記憶に関して違和感を違和感と受け取れるようになっているように思えた。

 

「俺もあのキュゥべえに触ったら記憶が甦ったりしないかねえ……。いろはと同じくらい身近に居た筈なのに覚えてないってのも随分なむず痒さがあるよ」

「それは……うん。私も、シュウくんがういのことを思い出せたなら、本当に嬉しいな」

「なるべく思い出せるよう努力するよ──、……っとぉ」

 

 不意に背に、横腹に走った痛み。

 嬉しそうに微笑むいろはと笑い合いながらバスの到着を待っていた少年は、肩に担いでいた竹刀袋が内側からがたがたと跳ねだしたのに気付いて笑みを強張らせる。

 ──気付けば車内には、悪意に満ちた魔女の気配が充満していて。バスも人気(ひとけ)のない横道に曲がって停車すると、バス停もない場所で扉を開いた。

 

「シュウくん……」

「よりにもよってというか何というか……神浜市(このまち)魔女多すぎない? ……うわあ、いつの間にか乗客みんな口づけ喰らってる。いろは……」

「──んっ」

 

 席から立って抱きついた少女からの接吻(しゅくふく)を受け取りつつ。車内で竹刀袋から黒木刀を引き抜

いたシュウは、魔女の口づけを受け操られる乗客たちが続々とバスを降りていくのについていくと角笛を握る魔女の使い魔たちを目撃、いろはと共に物陰に隠れる。

 角笛を吹きながら操られる乗客を先導する使い魔たちは、続々と魔女の結界に無力な一般人を連れ込んでいるようだった。

 

「17人……運転手も含めれば18人か。魔女は派手なお食事会でも開くつもりなのかね」

「早く助けないと……」

「……調整後は弱めの魔女を探して上昇した能力の測定をしたかったんだけれどなあ、流石に放ってはいけないか」

 

 そもそも宝崎ではほとんど魔女の姿を見なくなってしまった──であればどこにいるかわからぬ魔女を探して右往左往するよりも危険度こそ高いものの魔女には困らない神浜で測定、検証を済ませた方が良いのかもしれない。

 

「……とはいえ、もう1人は魔法少女がいないと流石に身体能力測定するだけの余裕はもらえないよなあ。いろは、取り敢えず最初は溜めなしの連射。それから溜め撃ちを幾つかのパターンで試して──」

「うん。でも乗客のひとたちが使い魔に襲われたとき2人だけで対応できるかな……?」

「うぅう、ごめんなさいレナちゃんごめんなさい! でも待って魔女の反応を感じて来てみたら操られたひとたちが使い魔に結界に連れ拐われてて……ふゅぅううう!わ、私確かに弱いし1人で魔女に勝てる自信はないけれど放っておくこともできないし──」

 

「「「あ」」」

 

 結界の間近でいろはと相談し合うなか携帯で通話をしながらその場に現れたのは、つい昨日砂場の魔女の結界で追い詰められていたのを救出した紅葉色の髪の魔法少女で。

 利害の一致。

 臨時の共同戦線を組んだ3人による強襲を受けた魔女は、1分もかけずに無力化されることとなった。

 

 




拘束→殴る→撃つ→拘束→殴る→撃つ→拘束→串刺し→撃つ→撃つ→撃つ


カミハマこそこそウワサ噺
ういとおままごとするときは非常に高い頻度でいろはがお母さん役、シュウがお父さん役を指名された。稀にういがお母さん役をやりたいといっていろはを焦らせることがあったりなかったり。
他にもういは気合いを入れていろはをサポートしており買い物に一緒に行く度に際どい衣服をいろはに薦めていた。

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