環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった 作:風剣
ここ暫くで一番でかい失敗をした自覚はあった。
「…………はぁ」
溜息をつく。
重たい、重たい吐息を吐き出して。すすり泣く声が幾つも聞こえる液晶パネル越しに幼い息子や彼を助けてくれた魔法少女たちと会話する母親の背を見つめた。
『あぁもうほんと、どうしたんだよみんな……』
「もう、落ち着いて。みんな可愛いのにそんなに泣いちゃって……。まったく、シュウってば愛されてるねえ」
「……まあね、自覚はある」
『ぐすっ……』
『……ごめんなさい、私たちまで。シュウくんがようやくお母さんと話せたのをみてたら、ついこっちまで釣られちゃって……』
ねむに手配されたウワサ、その画面の向こうでは、見知らぬ世界に放り出された末にねむのウワサ越しに自分の母親と会えた6才児がまず泣き出し。その直後、健在の理恵の顔を見たいろはが声も出さずにだばだばと泣き出して号泣。その様子をみていたねむ、さな、うい、フェリシアまで泣き出してしまう。比較的落ち着いていたやちよや鶴乃ですら何度も目元を拭い、みかづき荘では魔法少女大号泣の惨事が繰り広げられていた。
理恵や6才のシュウも流石に困り顔でみんなが落ち着くのを待っている。その様子を背後から眺めるシュウは、何も考えず不貞寝したくなる心地になりながら小さく息をついた。
『うぇぇぇぇえ……っ、りっ、理恵さぁん……。ぐずっ、んぅっ、ひっ……うっ、うぅ……』
『いろはずっと泣いてる……』
……まあ、理恵が同伴することになってしまった時点でこうなるかもしれないとは思っていたのだが。
(……失敗したなあ、マジで……)
青年と理恵、2人がいるのは「向こう」と繋がる入口の存在する鏡の魔女結界だ。
この時系列には断じて存在しない魔女の結界。唯一の10年後との窓口であるこの場にシュウ以外の人間が居れば、安全面のリスクを抜きにしてもそれなりの問題が発生する。当然、健在の母を結界内に連れてくる気は彼には毛頭なかった。
……なかった、のだが。
「……」(どうして顔を見られただけでこんなに泣かれてんのという目)
「……」(目を逸らす)
問題が発生したのは、2時間ほど前のこと。
家族の魔女化……。シュウの家に現れた、何者かの変じていた理恵が6才の少年の目の前で魔女として顕現したという話を聞いて彼が案じたのは幼子の自分が『折れる』可能性だった。
はっきり言って、6才の子どもだろうがなんだろうがシュウにとって自分は心配する対象でもない。頑丈さは小さい頃から折り紙つき、仮に交通事故でも起こって6才の自分がまきこまれたとしてもどうせ平気だろと雑に流すくらいには「自分たち」の肉体には信頼を置いていた。
とはいえ、メンタル面に関してとなると話だ。実体験も込みで言うなら
それが魔法少女でない赤の他人ならば気の毒には思えど死ぬよりは安いとシュウは流すだろう。
自分であろうと扱いはそこまで変わらない。なにせ心の傷がソウルジェムの穢れに──生死に文字通り直結し得る魔法少女と比べれば、生身の人間はずっとマシな状況で傷を受け止められるからだ。
だが、これは自分だけの話にはならない。自分たちには帰るべき場所がある。
家族の死。魔女化。異形との遭遇。それらを経て幼いシュウがへし折られた状態で帰ったときどのような影響が出るかは読めない。成人まで見事に生き抜いたベテランといえど理恵も魔法少女だ、息子の精神状態次第で母にも悪影響が及ぶ可能性を考えれば、なんとしてもシュウは自分を立て直す必要があった。
だから、彼が頼ったのは義妹たちであり、幼馴染であり、母だった。
『――わかった、任せてよ』
『そっちで6才のお姉さんに、お兄さんを励ますためのメッセージをもらう……。鏡の先の世界で音声を収録して、こちらに共有できるようにウワサを調整すればいいんだね? 大丈夫、すぐに用意してみせるさ』
『うん、時間の同期も問題なし! お兄さま、こっちは鏡を通した繋がりをある程度維持できるようになってるから、ウワサを中継してある程度話すこともできると思う! ……小さなお姉さまによろしくねっ!』
『あっシュウくん!おかえりーー!』
『えっ、トラブル!? しゅ、シュウくんになにかあったの!?』
『お、応援……? わかったっ、フレー、フレーってすればいいの? ……わぁっ、マイクとカメラだっ! こんなおっきいの初めて見たかも……! すごいすごい、テレビのひとみたい!』
『待ってるって……? それだけでいいの? ……わかった! いっぱい、いーーっぱいっ、大好きって気持ちを込めて伝えるね!』
つくづく、頼もしい女の子たちだった。
自分でさえわけのわからなくなってしまうような状況でも頼れる相手がいて、当たり前のように信じてくれるひとがいて。帰りを誰かが待ってくれて。
灯花とねむが急ピッチで完成させてくれた通信用のウワサ片手に、一度鏡の魔女結界を出たシュウは家に戻った。ワクワクと帰りを待ってずっと窓から様子をみていたいろはと接触し小さな幼馴染に応援のためのメッセージをもらった彼は、母親を呼びにきたところで問題にぶちあたる。
『……は? 母さん俺を探しに行ったの?』
『あぁ、やっぱりシュウのことが心配だったみたいでね。少し前に神浜に向かっていったよ。……魔女の気配を頼りに探してみるっていってたけれど、その様子じゃすれ違ったみたいだね……』
『……マジか』
――考えてみれば。シュウはとっとと元の世界に戻って小さなシュウと入れ替わりで帰るつもりでいて、その旨は智江や理恵にも伝えていたことだった。
そして、『向こう』で起きた幼いシュウの出奔とその顛末を確認できるまで魔女結界でずっと待ちぼうけを食らわされていたシュウが神浜市から戻り家に帰った時点で時刻は既に午後3時をまわっている。応援のメッセージを収録したいろはも喜色満面の顔でお婆ちゃんに用意してもらったフルーツを堪能していた。
ついでにいえば、シュウはこちらの家族との連絡手段など持ち合わせていない。特定の魔女を探しに行った家族が、数時間しても連絡の一つもよこさない状況……。シュウが同じ立場でも、そろそろ捜索を視野に入れる段階ではあった。
『……悪いことしたな……』
『どうしようか。電話も今してみたんだけど繋がらなくてねえ、流石に魔女結界のなかだと電波も届かないし……』
『いや、俺がいくよ。神浜ならダッシュでいけばすぐだし、お母さんの魔力は覚えてるから追える。……30分刻みで公衆電話から連絡いれるようにするからさ、もし俺がいない間帰ってきたらそのとき教えて』
そうして、
使い魔たちの残骸が転がる結界内部、オーラの燃え滾る拳骨で異形を叩き潰していた理恵と無事に合流したシュウは街中に出ると無事に会えたと智江に連絡。そのまま6才の自分に向けたメッセージだけ撮ってもらって家に帰すつもりだったのだが……。
『え、その魔女の結界越しに向こうのシュウと話せるの⁉︎ それなら私も行きたいよ、心配だから声だけでも聞きたいし……!』
『──、イイヨ』
……わかっていた、いやわかっているのだ。鏡の結界に彼女を連れていくことのリスクは。
だが、それでも。
ただ息子のことを思っての理恵の頼みを断るなら、それらしい理由が必要で。母さんを前にして下手な誤魔化しをしてしまえば、シュウにはその背景を隠し切れる気がしなくて。
どうにか、通話だけでなんとか誤魔化せたらなんて目論見もビデオ通話によって不意打ちで理恵が顔出しした瞬間いろはが泣き崩れたことであっけなく破れた。
「――落ち着いた? いろはちゃん大丈夫そう?」
『んぅ……っ。ぐすっ。ありがとう、理恵さん。……ごめんなさい……』
『いろはなんでそんな泣いてんだよもー。ほら鼻かみな鼻』
『うぅ……。ありがとぉ……』
まあそうもなるよなと、大号泣した末にずびずびと鼻を鳴らして幼いシュウにちり紙を差し伸べられるいろはの姿を見ながら思う。
『ぐずっ、うぅ……ごめんシュウくん……。ありがとうね……』
「……」
だって、いろはだって家族だった。
9年、一緒にいたのだ。理恵のことだって、実の母にも負けないくらいに慕っていた。それが突然失踪して行方不明になって、魔女になってたのがわかって、顔を合わせることのできる機会が永遠に失われてしまって――。二度と会うことのできなかった家族と、再び会えて、話せている。
泣き崩れて小さな自分に慰められている幼馴染を、シュウには責めることはできなかった。
「……いろは。もう平気か?」
『うん、もう……。平気、だから。本当にごめんなさい、邪魔しちゃって……』
「いいのいいの。無理に溜め込んだりするよりもね、泣きたいってときにもう全部吐き出しちゃうのがいっちばん健康にいいんだから」
『……うん』
画面の向こう、何度も泣き腫らした目元を拭っていたいろはは、理恵の言葉に目を少し丸くすると力なく、けれど確かに微笑む。その顔を見た彼女もくすりと笑うと両手で口端に指を添えてにっと笑顔を作った。
「……ねっねっ、いろはちゃん。無理そうだったら少し休んでからでもいいんだけどさ……ちょっとニコっとしてみてくれない? 私、いろはちゃんの笑顔もっと見てみたいなぁ」
『あっ。……こう? ……うまく、笑えてるかな……』
「………………………………シュウ、どうしよう。いろはちゃんめちゃくちゃ綺麗になってない……? ほんと、絶対幸せにしないとダメだよ……?」
「わかってるって」
『もっ、もうっ理恵さんってば!』
ようやく落ち着いたいろはが泣き止んで照れだすのに、シュウと理恵は顔を見合わせてにやりと笑う。小さく鼻を啜ったいろはが理恵にも見えやすいようにと幼い少年を抱えなおすのに、目元を弛めた彼女は遥か彼方へと飛んで行った愛息に微笑みを浮かべ声をかけた。
「シュウ、元気してる? そっち側での暮らしはどう、おっきくなったいろはちゃんたちには随分お世話になったんじゃない? お礼はちゃんと言った?」
『……まーね、言ったよっ!』
「こっちはこっちで大変だったんだよぉ、からあげ作ってたのに貴方がいなくなっちゃって、おっきいシュウが急に出てきてて……、」
『そうだ、からあげ!俺食べてないー!え、もしかしてもうなくなっちゃったの!?』
「ふふっ。大丈夫大丈夫。シュウがちゃんと帰ってこれたらご褒美でいっぱいからあげ作ってあげるからね……」
『やったー!』
……なんかちょっと恥ずかしくなってきたかもな。
ちんまい年頃の自分が母親と通話しながらきゃいきゃいとはしゃいでいるのを見ているとじわじわとこみあげる羞恥心。これを向こうのみんなが見ているんだよなと思ってしまうと猶更だった。
『……ねっ、母さん見てっおっきくなったいろは! 今はずっと泣いてべちゃべちゃだけどさ、じゅーねんごって本当にすっごいんだよ! すっげーーキレーになったんだぜ! アイドルもやってるんだって!』
『えへへ……』
「アイドル……⁉ すっごいねえいろはちゃん?! え、いつアイドルになったのっ、彼氏もちで大丈夫!?」
『力技でイロイロやってるからへーきだって! あとねあとねっ、うい、来てういー! えへへへっ、ねえ母さんっ、この子誰かわかる!?』
「……。ういちゃん!?!? えっ、ういちゃん!? おっきくなったねえっ、ええーーー!? え、普通にものすっごいサプライズなんだけど……。えぇ……。そっかあ……」
『うぅうぅぅ……。理恵さぁん……』
『げえっ、ういまで泣くの待ってよー!』
『だ、だいじょうぶ、ガマンガマン……』
『ほんとにへーき、うい? ……高い高いしてあげよっか!』
『だ、大丈夫だよお兄ちゃんってば……!』
「……そっかあ……。おっきくなったねぇ……」
ちらりと横目で母親の顔をみたら、画面を見つめる
「……なぁシュウ。他のみんなも紹介してあげてよ。母さんもどんな娘たちに世話になってるか気になってたみたいだからさ」
『んーっ、わかった! えっとね、モデルのやっちゃん! 母さんとよくみるマカロンの歌うたってる子の番組覚えてる!? マリリンちゃんだよ!』
『……初めまして、七海やちよっていいます。……シュウくん、その説明はちょっと……ね?』
『でー、オレをさっき助けてくれたさなちゃ……なんで奥逃げたの!?「こんな顔見せられないですー!」……? さなちゃんと、フェリ姉! すっげー力持ちなんだ!』
『……なんかむずむずすんな……』
『鶴乃姉ちゃん! ちゅーか料理のお店やってるんだって! ばんばんざい! 美味しくっていっぱい食えて好き! 料理すっげえ美味しいんだよ!』
『て、照れるなー!』
『で、ねむお姉ちゃん! ウワサとかってモンスターいっぱい作れるんだって! 帰るときコピーもらって帰ってくるからさ、そいつに学校いかせてオレしゅぎょーしたいな!』
『いやぁそれは……』
『……ダメ?』
『いいよ!!』
「ねむ、ガキの俺を甘やかすんじゃないぞ」
灯花はウワサの調整と異世界通信の維持で基地に籠りきり、ななかは習い事で神浜市外に行っているらしかった。今はいない紅髪の少女について『婚約者! いろはと一緒にオレと結婚するんだってー!』なる爆弾発言が炸裂し、隣から向けられた冷ややかな視線から目を逸らしている間も向こうではバタバタとしながらみかづき荘の仲間たちの紹介と挨拶が投げかけられる。
「……初めまして、桂城理恵っていいます。本当に、うちの子がお世話になってるみたいで……。まだまだご迷惑をおかけしちゃうかもだけれど、どうか仲良くしてあげてね、ほら、この子……結構、寂しがり屋なとこあるから……」
『「
向こう側とこちら側で声が重なったのに笑い声が響く。薄々と
『ふふっ……。でもね、理恵さん。シュウくんにお世話になってるのは、寧ろこっちの方で……。シュウくんが一緒に居てくれることが、どんなに力になったか……。私――。……シュウくんと会えて、本当に良かったです』
「……そっか」
『どっちのオレの話?』
『どっちもだよ』
きょとんと顔をみつめる小さなシュウに微笑み返すいろはの姿を眺める理恵の目尻には涙が浮かんでいた。嬉しそうに、慈しむように、ほんのちょっと寂し気に――。画面の向こうの団欒を見つめる母の姿を一瞬、なんともいえぬ顔で見つめるシュウはちらりと時計を確認した。
時刻は、5時をまわろうとしている――。
やや性急かもしれないが、帰りにはちょうどいい時間帯だった。
「……シュウ。こっちはもう日曜だ。明日は学校だぞ」
『へ? ……あ』
「いろはも言ってただろ。お前
『……。うん!』
高らかな声が響く。
それに慌てだすのはいろはたちだった。
『えっ、シュウくん――。もう、
『今から!?』
「なんだ、なんか問題でもあるか? 灯花とねむが頑張って維持してくれてるけど、この通話も出入り口もいつ魔女に妨害されるかわからないんだ。元々この通話が繋がった段階ですぐにでも帰るって手筈だろ」
『だってシュウくん、出入口があるのは鏡の魔女の結界だよ!こっちのシュウくんも、魔女と会ったばかりで――』
『オレはへーきだよ!』
「だとさ」
『でも――』
『平気平気! だってさ――』
いろはたちが、助けてくれるんでしょ?
『――』
少女たちを見上げて天真爛漫に笑いながら問いかける幼子に、最早憂いは存在しない。身の守りも帰る方法も段取りも、全てを丸投げしてお姉ちゃんたちに頼るシュウの問いかけにほんの少し沈黙が満ち、やがて少女たちは顔を見合わせては頷きあった。
『任せて!!』
「……」
ちょっぴり幼い方の我が子にも
――まあ、向こうの俺をもう少し休ませてやってもよかったかもだけど……。母さんも、ずっと不安そうではあったからな。
「……あとは待ちだな。あっちが魔女の結界突撃して出入口に辿り着いたら、俺とガキの俺が入れ替わっておしまい。……それまで
『からあげ?! 食べた――い!』
ぶつっと音を立てて通話が切れる瞬間、年上の自分の声を聞きつけた我が子の張り上げた大きな声。
それに耐えきれずに小さく噴き出した理恵は、目元の涙を拭いながらからからと笑った。
「はははっ。……うん、そうだね。わかった。……シュウも大変だったからね、いっぱい作ってあげないと」
使い魔が駆逐され魔女も半殺しにされたその結界にはシュウと理恵のふたりきり。姦しい空間との通話が途切れてしまうと、途端に静かに感じた。
「……」
「……」
「そういえばさ。……私をあそこの皆と話させちゃって、よかったの? 未来のこと教えるのってよくないんじゃないのかな」
「……よく気付いてくれたな……。もっと早く気付いてくれたら俺も嬉しかったなぁぁぁ……」
「シュウすっごい顔してるよ?!」
「だっ、誰のせいだと思って……。ダメとはいえねえよダメとは……、あと魔女のせいでガキのオレが向こう行っちゃってる時点で今更だからそこらへんは気にしないでいいよ。基本俺とアイツさえ元の場所に戻れれば
それでも。思っていたよりはまあ。
心持ちは、悪くなかった。
「で、シュウ。……神浜市拠点にしてるみたいなこといってたよね。それで、あっちにいったシュウはずっとみんなと過ごしていたんだよね。
「……ソウダヨ」
「…………何人誑し込んだのよ…………。しかもやちよさんって、つい流しちゃったけどあのマリリンちゃんよね。料理番組やってる、あの子役の? めちゃくちゃ綺麗だったけどモデルになったんだあの子……。え、よく考えたらマリリンちゃんもいろはちゃんもあの可愛い女の子たちもみんな魔法少女なのしんどくなってきたかも、世も末じゃない……」
「ああ、まあこの時代の魔法少女の環境は知らんけど10年後もキュゥべえ普通に終わってるからな。魔女化とかはなんとか防げてるけど」
「きちんと守ってんだ、じゃあハーレムはギリ許してあげる。いろはちゃんたちが許してくれるってんならね。私が同じ立場だったらぜっっっったいイヤだけど」
「……うす」
きっと、無理だったろうとは思うけど。
家族に嘘を貫き通せてしまったら、かなり後悔してしまったろうから。
「シュウはさ、いつから魔法少女と魔女のこと知ったって言ってたっけ」
「15だな。いろはがういの病気を魔法少女の願いで治して、それからいろいろ」
「……そっか。ごめんね」
「謝るなよ」
「いやあ謝りもするよ。15で知ったなら……それまでなんにも、将来の私は教えてなかったってことでしょ? 巻き込みたくなかったんだけど……、いや、よく考えたらさ、街のなかに割とうようよ居たりする魔女の危険とか教えないのってそれはそれですっごく不味いよね。ほんとごめんね……」
「謝るなって」
「だってさ。多分私、シュウのこと傷つけたでしょう」
――。
バレてるとは、思っていた。
「……」
「ねえ、シュウ」
「私、魔女になっちゃったんでしょ」
…………………………………………………はい。
「……いつわかった?」
「いろはちゃんにめちゃくちゃ泣かれたのもそうだけど、まあ疑いだしたのは最初に会ったときかな」
「は?」
「泣いてたでしょ、シュウ。死んだお母さんに逢えたって顔してたよ」
「……………………………………………………………泣いてねえし」