環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった 作:風剣
「――きっと、地獄を見るよ」
そう言って止めてくれたひとがいた。
「どれだけ力を尽くしたとしても、必ず取りこぼしてしまう
「――私に止めることはできないけれど、それでも敢えて言うなら。……せめて、周りの大切なひとのことは見失わないようにしなさい」
誰かにどこかで言われたような言葉だった。
けれどそんなこと、戦うと決めたときからわかっている。魂が覚えている。この道がどんなに過酷なことなのか、それを走り切ることがどんなに困難か。
わかっている。承知の上で、戦うことを選んだのだ。
……わかっていたはずだった。
だから、自分は──。
***
「ただいまー!パトロール行ってくる!行ってきまーす!」
「えっ。……あーこらっ、ランドセル放らないでちゃん片付けなさい! ……もう行っちゃったか。忙しい子だねえまったく」
「シュウくん!」
「いろはっ。お帰りー。オレこれから神浜にパトロール行ってくる!」
「えっ。パトロール? ……神浜って、ういの病院とか?」
「んーん? いや、なんかさっ。あそこに行ったら会える気がするんだよねー、夢のなかで一緒に遊んでくれたおねーちゃん!」
「へっ?」
「じゃあ行ってくるー!」
「?? ……行ってらっしゃーい!」
***
「あぐっ、
「やっちゃん! ――ぁ」
「みふゆ!?」
「ぎっ、いぃっ!? かひぃ、ぁ、あっ、がっ。はな、してぇ……」
「みふゆっ、待って、今――」
「助けいる!? いらなくっても助けるけど!!」
「――ぇ」
「いくぞ必殺っ。ウルトラ・メテオスパーク・ストライク――改っっ!! 」
「うそ……」
「――初めまして、お姉ちゃん! オレは桂城シュウ。8才!! ……あれ、やっぱマリリンちゃんじゃん! マジか魔法少女だったの!? 去年までテレビ見てたよーっ。なんで他の娘になっちゃったのー!?」
「マリリンちゃん……?」
「――っ。ちょ、か、桂城くんっ? 助けてくれたのは嬉しいけど、その話はちょっと――」
***
「おにいさまっ。ねっねっ、だっこしてー!」
「いいぞいいぞー」
「おねえちゃん、わたしもー!」
「ふふふ、うんっ。 んしょっと……ぎゅーっ♪」
「ねむもオレとだな。ん、どうした?」
「この絵本、よんで!」
「いいぞーお散歩終わったらな。……あっ。そしたらついでに1階の図書室寄ってく?」
「やったっ。行く行くっ」
「えーまた読み聞かせー? たいくつだにゃぁ」
「むふっ。じゃあお兄さんの膝に座って読むの今日はぼくの番だねっ」
「……やだーー! 私もーーー!」
***
「ねえお母さーん。魔女の呪いって倒したら解けるもんじゃないの? 一昨日戦ったときのケガまだグズグズするんだけど――」
「へ? 一昨日? ……ぎゃーーーーーすっごいことになってる! なっ、またシュウってば知らないうちに魔女と戦って、これで普通に学校行ってたの!? うおおお《
「サンキュー!」
「サンキューじゃない!! 言いなさい!! 一言!!」
「あ、そういやグリーフシードポッケにしまったのあるよ。……あれどこだっけ」
「……さっき着替えたけど。洗濯してるやつじゃないかい?」
「あっ」
「シュウ!!!!」
「いでーっ」
***
「いただきまーすっ! んっ、おいしー!」
「やちよにこんな可愛い友だちができただなんてねぇ……。みふゆちゃんとも仲がいいんでしょう? どんな切っ掛けで仲良くなったのかしら」
「パトロールしてたら会ったんだ!」
「――先月、レッスンの帰りにみふゆと一緒に待ち合わせしてたら街を出歩いてる桂城くんに会って。夜に子どもがひとりだけだったから、心配でしょう? わかるところまで送って行ってあげたんだけど、なんでもよくこの辺りには遊びに来るみたいで何度か会うようになって。それでよく遊ぶようになったの」
「えっ」
(――ボロボロのやっちゃんとみっふ家まで運んであげたのオレじゃん!! の顔)
(それはそうだし物凄く感謝してるけどお婆ちゃんに心配かけたくないの口裏合わせて! の眼)
「そうなんだ。偉いわねえ。ふふっ、やちよもここ暫くは思い詰めてた感じで心配していたんだけど、最近はだいぶ明るくなって……。仲のいい友だちが増えたみたいで嬉しいわ。やちよのことよろしくね?」
「うん!!」
「ちょ、ちょっとお婆ちゃん……!」
***
「おっふろ、おっふろ~~♪」
「ねっねっシュウくん! あらいっこし――ど、どうしたのその痕?!」
「んー、ちょっとケガした! でもすぐ治ったから平気だぞ! 漫画のめっちゃつえーヤツみたいでかっこいいだろ!」
「……お母さんと時々、夜中に外に出てるよね。なにか、あったの?」
「えっ。……なんだ、気付いてたのか。んーーーーーー……。夢でみた気もするしな……。いろはには教えよっか」
「う、うん……」
「……………………あ、でもダメだ多分! あ~~~~。多分知ったら不味いもんなっ、ごめん今は無理!! だけど絶対そのうち教えるから、全部!」
「……もう」
「……わかった。約束ね?」
「うん!」
***
「おかあさっ、いっ、今の」
「……魔女のくちづけ。シュウがいなかったら、このひとも危なかったね……。魔女を探そう。被害者がもっといるかも……」
「か、母さん」
「……ひとって、死ぬの?」
「……うん。簡単に死んじゃうんだよ、ひとって」
***
「んっ、今日から来るっていってた子? 俺は桂城シュウ! よろしくな!」
「貴方が、師範の言っていた……。常盤ななかです。よろしくお願いいたしします。ここで、さっきは何を……?」
「動きを全部覚えちゃったから、もう教えることは何もないって言われてさ! この時間は自由にしていいって許可もらったから修行中! さっきは神速斬りの練習してた!」
「は、はあ……」
「ま、聞きたいことがあったら何でも聞いてくれよ! 教えるのも練習だって先生言ってたし!」
***
「彼女が! できました!!」
「――ぇっ」
「えっ、う、うそ……」
「逆にまだいなかったんだシュウ、モテそうなのに……。あっみふゆが灰になってる」
「――」
「……みふゆ、流石に小学生は……」
「う、ううぅ……!! や、やっちゃんだって、やっちゃんだって! シュウくんのこと大好きなくせに! う、うぅ、うわーーーん!!」
「ちょ、みふゆ!?」
「……みっふ……。やっちゃったなあ……。かなえさん、俺どうしたらいいかな……」
「いや、あたしに聞かれてもな……」
***
「…………………………………………詰んだか。参った」
「はい、私の勝ち♡ お兄様、悔しい? 悔しい? あれだけ自信満々になってリベンジだって言ってたのにね? くふふふふっ、これで今日だけでも3連敗だね♡ どうする~、まだやるぅ? 私は別に続けてあげてもいいけど♪」
「だぁくそっ、途中までいい線いってたと思うんだけどなあ。……山崩しでもやるか?」
「あははははっ、もうすっかり負け越しだもんねえ♪ 別にいーよっ、ういたちも呼んでやろ……けふっ、けほっ」
「……」
「待っ、大丈夫、だから――げほっ」
「よせ。そういうのは無理して堪えることでもないだろ。ほら抱っこしてやるから」
「……そんなので喜ぶほど、子どもじゃないよぉ」
「なに言ってんだ9才児」
「今度の夏祭りは3人を連れてく約束だろ。いろはにもお前の父さんたちにも話は通してんだ、それまでに少しだけでも体力は温存するのが灯花の仕事だぞ」
「……ぅん」
***
「いやぁ良いな、海……。おっと! ……いろは、今の結構強い波だったけどだいじょ」
「……シュウくん、水着、流されちゃった……」
「おっけーオレに掴まれ。正面から、ぎゅーって。よし、これで前は見えないから……。なんか今ちらっと見かけたんだよな水着。今から追えば多分拾えるはずだ。このまんま探すぞ、絶対離れんなよ」
「うん……」
「気合い入った格好してたからな……。あれ繋ぐのヒモだけか? うっかりしたらそりゃ取れるよな」
(うわ心臓の音でっけー……。まずいめっちゃムラムラしてきた)
「……シュウくんの、えっち」
「えっちなのはいろはだが???」
***
「たのもーーっ! シュウくんっ、勝負しよう!」
「えー、なんで?」
「やちよとみふゆに聞いたよ! 一番強いのは桂城くんだって! 私はさいきょーの魔法少女にならなきゃいけないのっ。勝負勝負ー!」
「じゃあ今パトロールやってるからさ、その後でいいよな? 病院とか結構魔女出てくること多いからさ、入院してる妹のまわりは特に念入りに見ないとなんだよ」
「そっそうなの!? わかった!」
「うぐぐ……ほ、ほんとに強い……」
「ごめんな、火を使いだしたから流石にちょっと本気でやったわ。火傷は切り傷より残るし地味に痛いんだよな……」
「うぅ、敗けたー……。ねえねえなんでそんなに強いの!? どうして!?」
「日頃の修行と母さんのおかげ。ねえ鶴乃ちゃん確か中華料理屋やってるんだっけ? 飯食わせてよ、腹も減ったしさ。勝ったから割引とかない?」
「え!? いいよー!」
「良いんだ……」
***
(これで、もう――)
「あぶなーーーーーーい!! 飛び降り自殺とか何度か見たけど普通にトラウマなんだからやめてくれよマジで!!!!」
「きゃぁぁぁごめんなさい!」
「お前だろ! 最近水名に出てきた透明な魔法少女! 何があったかは知らんけど相談なら乗るから! 引き上げるぞ、おらっ!! ボケが!!」
「あぁぁあああのっ、助けてもらってなんですけど、なんで私が見え、きゃぁぁあああああっ!」
「はぁ~~~~~……。で? なに? 要は自分に存在価値なんてなくって、それならいっそ――ってか。じゃあお前さ、魔女が1日で何人襲うか知ってるか」
「へ? な、なにを――」
「答えは、数えようがない、だ。個体差がそもそもでかすぎるし、誰も魔女の詳細なモニタリングなんかできんしな。何日も張り込みやって魔女の生態観察なんてしてたら死人が両手の数じゃ足りなくなる。ぶっちゃけ使い魔まで判定にいれようとしたらマジで数えようがない。こないだなんて一緒にバスに乗ってた乗客が使い魔に結界にいれられて普通に皆殺しにされかけてたんだぞ。やってられんだろ」
「――」
「お前は魔法少女だ。使い魔を、魔女をお前が倒したらそれだけ人を助けられる。それで存在価値がないだと? 言ったやつは俺が殴ってやる。魔女の倒し方わからんなら俺が教えてやる。あと顔も可愛い、声も可愛い。はい価値あり証明完了。異論は? ないな。あー自殺志願者たまたま見つけてマジびっくりした疲れたー……」
「あ、あのなんで私引きずられて……」
「自殺する直前だった女の子ほっぽるのが許されるわけないだろ、ほら行くぞ。取り敢えず先輩魔法少女頼るから……」
***
「いらっしゃーい! ……なんだシュウかよ」
「よっ、フェリシア。真面目に働いてるか~?」
「働いてるって! なー鶴乃!」
「フェリシアこらーっ、流れるように座って!早速奢られる準備まで整えてっ!まだ仕事中でしょーっ、いいけどっ!」
「いいのかよ」
「しししっ。おれコーラな!」
「この野郎マジで奢られる気満々だな、働け居候。まあいいけど……コーラふたつ、万々歳定食大盛りひとつ! フェリシアなにが……炒飯? じゃあそれも」
「シュウくん甘やかしすぎだよーー!」
「自覚はある」
***
「――シュウ、さん」
「ななか。ぐしょぬれじゃんか、風邪ひくぞ」
「……私、は……」
「魔法少女になったんだな。まだひとりでやってるのか」
「……帰って、ください」
「俺にはお前の気持ちはわからん。今のところ目の前で死なれたのは赤の他人しかいないからな。家族に死なれて、天涯孤独になったななかになんて励ましの言葉をかけたらいいか……いろいろと考えもしたけれど、結局納得のいく答えは出てこなかった」
「かえってって、言ってるじゃないですか」
「けれど、だからって放っておけるわけもないからな。だからまあ……連れ帰ることにした」
「かえっ……はぁ!?!?」
「最悪だんまり決め込んだって文句いったりしないから、取り敢えず風呂入って飯食えよ。俺の母さんも婆ちゃんも魔法少女だからななかの事情を踏み込んで聞き出そうとはしないだろうし、もしお前が気になるなら多少ノウハウは教えられるだろ。行くぞ~」
「ちょっ、きゃっ、引っ張らないでっ、こえ出しますよ……! 斬りますよ……! シュウさんならなんの遠慮もなく斬れるの知ってるんですからね……!」
「それは困るな。じゃあとっとと行くか……」
「え、ちょっと、まさかほんとにっ、きゃぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
***
「むむむ……逆位置……。徒労……。崩壊……。何度繰り返してもシュウさんお先真っ暗です、どうしましょう……」
「俺がどうしようだよ。メルちゃんの占い本当に当たるのに何度もろくでもない内容出されて既にかなり嫌なんだが? 女の子に囲まれて酒池肉林、背中刺される危険アリとか言われてたのが一番マシっぽさそうなの本当になんなんだよ」
「うーむ……。つ、次こそは……いたっ」
「やめなさい。シュウくんも止めないと」
「いやまあ。妹たちが元気になるって出してもらってからちょっと止めるに止めれなくなっちゃって……」
「……ずっと具合が悪いんでしょう?それって――」
「まあ、うん。いろはが魔法少女になって、病気を治す――。それが一番ありそうかなって。本音をいえば魔法少女なんかにはなってもらいたくないし、ういたちが自力で病気を治すのが一番なんだけど――いざとなったら、いろははきっと……」
***
「うん。私はなるよ。魔法少女に」
「……そっか」
「一度なってしまったら戻れないよ? 本当にいいのかい?」
「うん。魔法少女がどんなに大変なのかも聞いた。魔女になってしまうことも。ソウルジェムのことも。だけれど――これで、ういたちの病気が治るのなら。私は、魔法少女になるよ」
「……」
「シュウくん。魔法少女になるのが危険だから、ずっと私に隠してきたんだよね? ……ありがとう。だけど、もう大丈夫。私、精一杯やるよ。だけれど、もし私に何かあったら――」
「いろは」
「誓う。いろはを、俺は絶対に守るよ」
「いや――いろはも、いろはの家族も、ういも、ねむも、灯花も。必ず、必ず守ってみせる。いろはを魔女になんかさせたりしない。だから、だから――もし何かあったらだなんて、言わないでくれ。不安と罪悪感でいっぱいになっちまう」
「――」
「……ふふっ、うん。わかった。……ありがとう」
(――
(あとは、ういちゃんとねむちゃん、灯花ちゃんをキュゥべえのところに誘導して、魔法少女にする。それで――魔法少女が魔女にならない世界が作れる)
(――何事もなければ。いいんだけれどね)
「ところで――時々遊びに来てるななかさんややちよさん、フェリシアちゃんももしかして魔法少女なんだよね? ずっと何か隠し事してる感じだったもんね。……小さなころから、ずっと一緒に魔女と戦ってたんだよね?」
「あ、うん」
「――やっぱり挨拶、しなきゃだよね。これからいろいろ教えてもらわないといけないわけだし。きっと、長い付き合いになるわけだから」
「おう、そう、だな?」
「それでね、シュウくん。……私の知らないところで何人魔法少女をメロメロにしてきてたのかだけでも、聞かせて欲しいんだけど――」
「おっと流れ変わってきたな……」
「……しまらないね、まったく」
***
「桂城シュウ。現代においては珍しい、魔法少女の願いを受けて生まれた超人――。キミの活躍はまさしく獅子奮迅だ。つくづく大したものだと思うよ」
「なんだ、俺みたいなの他にいるのか?」
「紛争地域だとそこそこな頻度で生まれるかな。けれどそうした環境では栄養失調や戦闘行為、母親の魔女化などで生き残れないことも多いからね。それにキミは――。存在自体が、母親の魔法と極めて相性がよかったようだ。生まれ持った強靭な器に注がれた
「そうかい。……魔女の発生する元凶だってのを踏まえたらよ、キュゥべえお前はまあ殺しても殺したりないんだが……。正直どうにも恨めないんだよな。まあ礼は言うさ。俺の
「どういたしまして。お礼ついでに聞きたいんだけど、最近神浜市の一部に僕が入れない区域が発生して、どうもそれが広がっているようなんだ。何か心当たりはないかな?」
「さて、なんのことやら」
「まあ、
10時に後編投稿します