環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった   作:風剣

52 / 126
魔法少女宗教にのめりこんだ先輩が聖女になってるなんて

 

 

 鹿目まどかにとって。巴マミという少女は尊敬する魔法少女としての先達であり、かっこよくて綺麗な憧れの象徴であり……そしてなにより、彼女にとっての大切な友人で、仲間だった。

 

 魔女のいなくなった見滝原市を出て各地から魔女が集まっているという神浜市で起こる異変を追っていって――そして、音信不通になって家にさえ帰ることのなくなってしまったマミ。『神浜市は魔女も非常に強力、何が起こるかもわからないから』と見滝原を出ないよう厳しく言い含められていても、まどかには消息を絶った彼女の行方を探すのを諦めることはできなかった。

 

 けれど、土地勘のない未知の街、手がかりひとつない先輩の行方に捜索は最初の段階から躓きつつあって。この街の魔法少女なら神浜を訪れていたマミと会ったことがあるのではないかと、街にひしめく魔女の気配を追いながらも突如消えた魔女の気配にいきなり行き詰まり、今後の方針も決めあぐねていたところに現れたのが1人の少年だった。

 竹刀袋を担ぐ黒髪の少年……桂城シュウと名乗った少年が巴マミの名を出したのに、2人の魔法少女はわかりやすく動じたように目を見開く。一瞬の空白の後、願ってもない誘いにまどかが顔を輝かせるのに気付いたほむらは慌てて少年に疑問を投げかけた。

 

「同僚……? 巴さんって、今は何をして……案内してくれるって本当なんですか?」

 

「もちろん。今は婆ちゃん……うちのグループの相談役みたいな人の相手をしてもらってるからちょっと遠いけれどまあ普通にショートカットできる範囲だから気にしないでもらっていいよ。積もる話もあるだろうし、ゆっくり話していくといいさ」

 

 弱気な印象を修正させるに足る警戒を露わにした視線を向ける眼鏡をかけた黒髪の魔法少女の投げかけた疑問に、巴マミの同僚であると語った少年は平然とした調子で路地を先導する。

 

「俺と巴さんの所属しているのはマギウスの翼っていう魔法少女たちの集まりでね。一回だけ共闘したあとはそれっきりだけれど、あの人の活躍はよく見かけるよ。この街の魔女はやたら強いんだけれどそれでも砲撃1発でぜんぶ吹っ飛ばすとかザラだし……、俺も首尾よく進めばああいう風になれんのかね」

 

 この先で自分たちを連れていく『運び屋』と合流するのだと説明し2人を案内しながらマミの健在を語る彼に、ひとまずは安堵したように笑顔を浮かべていたまどかはそこで首を傾げた。

 

「えっと……桂城シュウさん、ですよね? マギウスの翼は魔法少女の集まりっていっていたのに、どうして……あ、男の人みたいな恰好の方が動きやすいからとか!?」

 

「俺は男だから安心してくれ。魔法少女でもないのにマギウスの翼にいる理由はまあ、さっき言ったように婆ちゃんが相談役やってるからってのと……。彼女が魔法少女だからさ。アレの掲げる魔法少女の救済が都合がいいのと、魔女を倒すのに必要な力をくれるって言うから手を貸してるってことだよ」

 

「へぇ……彼女さんが魔法少女なんだ! 恋人が魔法少女のことを知っていろいろ力を貸してくれるだなんて良いなあ……。あ、あのっ魔法少女のことはどうやって知ったんですか?」

 

「ハハハ、そこらへんはちょっと血生臭くなるからなあ……お、着いたよ」

 

 路地を進んだ先の突き当り。人気のない行き止まりまで案内されたのに眉を顰めたほむらは一気に警戒度を跳ね上げてどういうつもりなのかとシュウに問い質そうとして――。

 少女たちの目の前で、空間が裂ける。

 

 黒羽根の魔法少女による空間跳躍。虚空に開かれた穴の向こう側から出てくる黒ローブの魔法少女に軽く手を上げたシュウは、唖然とする2人の方を振り向くと悪戯っぽく笑った。

 

「巴マミはこの先だ。……ようこそ、マギウスの翼へ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 眼鏡の少女はともかく、桃色の髪をリボンで結わえたツーサイドアップの少女に関しては恋人がよく似た色合いだったこともあり見つけるのは容易だった。

 

「神浜で……というよりあちこちの街で最近異変が起きてることは知ってるよね? 巴さんもそれを知ってこの街の調査に来ていたって話らしいし」

 

「あっ……はい! 見滝原市ではすっかり魔女が見なくなって……でも、この街にはたくさん魔女が集まっているんですよね? それも凄く強いとか……」

 

「そうそう、ただでさえ無尽蔵に増殖する魔女とか使い魔とかがいるのにそんな状況になってるから、街が崩壊しないようにマギウスの翼総がかりで間引いてたらしいけれどそれでもギリギリだったみたいで……。巴さんが来てからはだいぶ安定したらしいよ。本当に強いよねあの人、黒羽根の間じゃ殲滅聖女(ホーリーマミ)とか言われて崇められるくらいの勢いだし……あとは何て呼ばれてたっけ、見滝原のアヴェンタドール?」

 

「えっと……。うん、確かに一部の黒羽根の魔法少女のなかじゃ熱狂的な人気を集めてるんじゃないかな……。最近はファンクラブも数が集まりつつあるって聞いたし……」

 

「ふぁ、ファンクラブ……! マミさんが元気そうなら安心、だけど……それならどうして連絡もなかったんだろう……」

 

 無言で運び屋の少女と顔を見合わせる。背後のまどかの話を聞いて訝し気な視線を向けてくる彼女に何か事情があったんだろうと肩を竦めたシュウは、マギウスの翼の居城……ホテルフェントホープを先導する自分たちの背後をついてくる少女たちの様子を確認する。

 御伽噺のお城を彷彿とさせるような広々とした廊下や調度品の並んだ壁を興味津々に見ている桃色の少女には既に警戒の色はない。眼鏡の少女はといえば自分たちを連れての瞬間移動を為した運び屋の魔法少女やシュウに対し最大限の注意を払いながらも、現状は異論を唱えることも表立って疑念を露わにするでもなく観察に専念しているようだった。

 

 悪くない姿勢だと思う。魔法少女は命懸けだ、不慮の事態に備えいつでも連れと共に離脱できるように準備を整えるに越したことはない――。目を細めちらりと暁美ほむらを一瞥した少年は、昨日の呼び出しでマギウスの翼でも限られた人員にのみ教えられる『秘密基地』に訪れた彼に背後の少女たちの案内を任せた老婆とのやりとりを反芻した。

 

『シュウ。この2人の魔法少女が明日神浜に来るはずだから雫ちゃんと一緒にここまで案内してやってくれないかい? 人手も集まった以上この街に不確定要素になるような魔法少女を呼び込むのは避けたいところだけれど……来るというなら排除するわけにもいかないからねえ』

 

 そんなことをいって表示する画面のひとつ、黒髪を三つ編みにした眼鏡の少女と桃色の髪の少女の映った映像を少年にみせた老婆。彼女に呼び出されさてどういう記憶を押し付けられるかと警戒していた少年は、意外そうな顔になりながらもそれなら喜んでと快諾した。

 老婆に呼び出され向かう前は甘えるようにいろはを抱きしめ彼の抱える秘密を吐露してしまっていたこともあり疲弊に自覚はあった。これでまた自分の弱さを突きつけられる世界の記憶を()()()()()()ようなことになれば、いつものように取り繕える自信がなかった。

 

『……あ、一応私の方でも確認は済ませているけれどもしこの黒髪の娘が会ったとき()()()()()()()()()()()()もうすっかり研がれたナイフみたいになっちゃってるから気をつけな。ただでさえ時間停止とくすねた兵器を駆使して魔女を爆殺銃殺するような娘から一気に甘さと遠慮が削ぎ落されてるから』

 

『……え?』

 

『あと、桃色の女の子も丁重にね。あの娘も時と場合によっては女神さまになるから』

 

『……?? ああ、うんわかった』

 

 ……あの言葉はどういう意味だったのだろうなと首を傾げる。あの老婆に関してプライバシーの概念もへったくれもないのは今更だったが……見た目がドストライクすぎて女神として崇めているとかなったら身内としてあまりに気色悪すぎるのでもしかしたら魔法少女になったときに神様になりたいとでも願って叶えた()でもあったのかもしれないと現実逃避気味に結論づける。

 老婆が念押しするようにして口にしていた『この娘たち次第でマギウスの魔法少女救済があっという間に頓挫しかねないからね、気を付けるんだよ』なる言についてもできれば忘れたいところだった。

 

「……まあ細かい話はぜんぶ婆ちゃんに丸投げすればいいのは気が楽か。巴さんのカウンセリングあたりも済ませられてるといいけれど……。あ、ここだよ。巴さんもいるからゆっくり話すと良い」

 

 ……偏屈な婆さんもいると思うけれどまあ、危害を加えられはしないから。そう口添えし扉を開いたシュウたちの踏み込んだ一室には、学校の授業でも使われるような長テーブルとそこに並べられた席に座る老婆と金髪の魔法少女がいた。

 神浜市外から訪れた魔法少女がマギウスの翼に居つく場合は制服や自前の私服1日分くらいしか荷物を持たずに来ることも少なくないが、基本的な生活の場はホテルフェントホープを含めたウワサによって構築されるアジトの内部で賄えるうえに限られた衣類も老婆の着せ替え人形になることで概ね解決される。例に漏れずマミも智江の着せ替えにでもされた後なのか、落ち着いた色合いのワンピースにゆったりとしたカーディガンを組み合わせた姿はとても同年代とは思えない大人びた様相をしていた。

 

 室内に設置された大きな機械が白煙を吐きながら稼働するのを興味深げに見守っていたマミ。シュウに案内されたまどかとほむらが現れたのを見た金髪の少女はガタリと椅子を揺らし立ち上がるも、言葉に窮したような苦し気な表情で彼女たちに呼びかけようとして開かれた口の動きも止まる。そんな彼女の様子を見守っていた智江は、肉づきのない細い五指を伸ばして背中を押すと柔らかな語調で囁きかけた。

 

「――キュゥべえの隠した秘密や魔法少女の宿命についての責任を感じる必要はないといっても、マミちゃんは背負ってしまうのだろうけれど。それなら猶更、言いたいことは言っておかないと駄目だと思うよ。だってほら……マミちゃんには、貴方を心配してこの街まで来てくれるような仲間がいるじゃあないか」

 

「……うん。うん……!」

 

 眦から滴り落ちる涙を拭いながら少女は友人たちのもとに駆け寄る。彼女の姿をみて顔を明るくしたまどかとほむらをひっしと抱きしめた。

 

「わぁっ、マミさん無事でよか……ひゃ!?」

「あぷ、え、巴さん……?」

 

「ごめんなさい……本当にごめんなさい2人とも……! 私、私ずっと謝りたかった、貴方たちを、美樹さんを魔法少女にしてしまったこと……魔法少女の運命に巻き込んでしまったこと……! でももう大丈夫、魔法少女はこの街で救われるから。貴方たちの願いが踏み躙られるようなことは、決してないようにするから……!」

 

「っ……?」

 

 先輩の腕のなかに抱き止められまどかとともに羞恥と困惑を滲ませていたほむらがぴくりと目を見開いて硬直する。『知ってる側』でなくとも、今のマミの様子は些か異常に映ったのだろう。彼女の抱擁を受けながら首を動かしたまどかは煙を吐く機械の傍にたつ老婆を見つめると疑問を投げかけた。

 

「あの、お婆さんが桂城さんたちにお願いして私たちを呼んでくれたんですよね……? マミさん一体どうしたんですか? それに、魔法少女を救うってどういう……」

 

「世の円環を廻す神に至るか、それともすべて滅ぼす異形になるか。……いずれ人の身でいれなくなる女の子にまっとうな人生を送る権利を与えられるのなら、この()はやっぱり千載一遇の機会なのかもしれないねえ」

 

「?」

 

 こっちの話だよと誤魔化す老婆は、落ち着いたマミがごめんなさいと謝りながら少女たちから身を離すのを見計らって室内に設置された機械を操作する。

 ガコガコと音をたてて形を組み変える機械から魔法少女が感知したのは魔力。魔女のそれとも異なる魔力を発するウワサを初めて目撃した2人が目を見開く中、変形した機械がスクリーンを机の前に幾つも展開したのを確認した智江はおいでとまどかたちを呼び寄せた。

 

「っ、これ、は……?」

 

 遠慮がちにまどかの隣に腰かけた黒髪の少女が、映し出された映像を見るなり息を呑む。

 表示されたスクリーンに映る映像は不規則に移り変わっていく。街の上空を飛び交う何体もの燕の使い魔、晴天のなか雷の降り注ぐ山を見上げる運び屋と呼ばれた魔法少女と同じローブを纏った少女たち、そして――、今しがた映った、巨大な歯車とその下に立つようにして逆さまになった女性的な輪郭――。

 

「いま、の」

 

「ほむらちゃん?」

 

 隣のまどかの声にも反応できず、沈黙して一瞬だけ最強の魔女を映し出したスクリーンを凝視するほむら。彼女の様子を確認した智江は、部屋の照明を少しだけ薄暗くしてスクリーンの映像をくっきりと映し出すと少女たちの前に立って淡く微笑む。

 

「――こういうデモンストレーションは、大抵は灯花ちゃんやみふゆちゃんに任せているんだろうけれどもねぇ。まあ肉の体で動くのも久しぶりだ、今まで引き籠っていた分も働くとしますか……」

 

 にこやかに微笑み。魔法少女となって70年、一度の死を経てマギウスの翼に協力する身となった老婆は指先にどす黒く濁ったソウルジェムを浮かべながら目を細めた。

 

「マミちゃんの近況、魔法少女の真実、神浜の異変や各地で起きている魔女の減少……。まどかちゃんたちも聞きたいことは幾つかあるだろうけれど、そうだね。まずは、私たちマギウスの翼について語ろうか」

「マギウスの翼の目的は魔法少女の救済。キュゥべえの誘い文句に乗せられた結果破滅の運命(さだめ)を課せられた魔法少女を救済し、世界中に居る、そしてこれから生まれる魔法少女を軛から解き放つ――。それにともなって武力もまた必要になってね。私たちは優秀な魔法少女の勧誘を行っているんだ」

 

「武力、優秀な魔法少女……」

 

「マミさんみたいな、ですか?」

 

 まどかの問いにくしゃりと笑いながら頷く智江に、黒髪の少女は先ほど映像に映った魔女について想起する。

 歯車じみた巨大な構造物。その下に逆さまに立つヒトガタ。僅かに映し出された災厄そのものである強大な魔女が見間違いでなければ、魔法少女の救済を謳うマギウスの翼が武力を求める目的は――。

 

「そうさ」

 

 ほむらの思考を見透かしたように口元を弛め、確固たる意志とともに老婆は語る。

 

「魔法少女の救済にあたって、邪魔なものは排除しないとだからね。……舞台装置の魔女。ワルプルギスの夜は、討滅する」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 魔法少女にも当然、生活がある。彼女たちのなかでも多くの魔法少女が抱えもつしがらみのなかでも、家族というのは非常に強固なものだ。

 ――魔女に家族を殺されたことで魔法少女になった者、魔法少女の願いで家族を殺しあるいは縁を切ることで離別を果たした者も魔法少女には少なくはないが。少なくとも鹿目まどかはそうではなかったらしい。家族に今回の神浜市の探訪のことを話していなかったといって慌てふためいた彼女は神浜市で過ごすのならホテルフェントホープで泊ったらどうかという老婆の誘いを申し訳なさそうに断ってほむらとともに立ち去って行った。

 

 ホテルフェントホープはねむや灯花によって秘匿された拠点としての役割を果たせるよう調整を施されたウワサによって構築されたマギウスの誇る城塞だ。

 需要に応じ日々拡大される敷地は広大。庭の手入れや廊下の清掃、リクエストがあれば黒羽根や白羽根の魔法少女に料理も作る働きグマたちによって運営される城は、家庭や学業のしがらみが薄い神浜市外から訪れた魔法少女たちの住まいとしても機能している。

 

 そんなホテルフェントホープの、シュウに割り当てられた一室。机のうえに乗せられていたスナック類からひとつを回収しフェリシアへの土産にでもしておくかとバッグのなかに詰めた少年は、少女たちとの対話を終え疲れ切ったように安楽椅子に座り込む老婆を一瞥した。

 

 聞けば、神浜に探索に訪れるようになった巴マミが音信不通になってから何日も過ぎていたという。さぞ心配を募らせていただろう魔法少女たちは、やや怪しい集団の思想に染まりながらも傷一つない姿で出会うことのできたマミに心底安堵した様子だった。

 マミの事情を説明するに伴って、魔法少女の真実について智江が話したときは流石に衝撃を受けた様子だったが……。それでも帰るころには取り乱した様子もなく落ち着いているようだった。

 ……教えられた魔法少女の真実がショックでなかったというわけではないだろう。そんな彼女が尾を引くまでに魔法少女の真実を重く受け止めることはなかったのはマギウスの翼がそんな現実を打開しようとしているという話を聞いたのと……マミを引き入れた理由のひとつとして語られたワルプルギスの夜という災厄についての話もあってか。

 

「……もう聖女さまと魔女守がいたってのに俺まで引き入れた理由はどんなものかと思ってたけれど。そこまで強いの、ワルプルギス」

 

「どうだろうねえ。それこそ文明をひっくり返すとかいうキュゥべえの説明も笑えない程度には強力な魔女だが……今マギウスが抱え込む手札は、非常に優秀だ。現状の戦力なら精鋭を揃えて総攻撃をしかければワルプルギス単体くらいなら1()()()()()()()倒せるんじゃないかな」

 

「は? 雑魚じゃん。……あー、1分か。総攻撃をしかけて? 秒じゃなくて?」

 

 老婆のいう精鋭……最上位の魔法少女であると断言できる異能を操るマギウスの3人、殲滅聖女などといった物騒な名で呼ばれるにふさわしい制圧力を誇る巴マミ、対魔女特攻を保有する魔女守のウワサ、多くの魔法少女が在籍する翼のなかから選抜されるだろう戦闘能力に秀でた魔法少女たちを想起しながら、それらの総攻撃に1分近く耐えるという魔女の存在にうへえと唸り声をあげる。

 ――それに加え『単体なら』と前置いたということはつまり、使い魔もいるのだろう。最強の魔女にふさわしい性能をもつ使い魔が、それこそ山のように。

 

「使い魔だって神浜市の魔法少女なら問題ないくらいの強さだから10秒あればマミちゃんで殲滅できると思うけれど、肝心の本体が一番強いからねえ。アマツカヅチやマミちゃんの砲撃でダメージ与えられた時点で本気出されたらもう少しかかるのかも。本音を言えば1撃で滅ぼせればそれが一番なんだけれども」

 

「……えぇ」

 

 随分と馬鹿げた規格(スペック)をしているのだろう魔女についてまるで見てきたかのような物言いで語る老婆に半目になりながらも、恐らくは最強の魔女を滅ぼす算段をつけているのだろうと予想しながらも確認をとる。

 

「で、フェントホープまで連れてこいっていうならマギウスの翼に誘おうとしてるもんだと思ってたけれど……結局勧誘とかしないでよかったの? 巴さんはマギウスの翼での活動はともかくワルプルギス戦に鹿目さんや暁美さんを巻き込みたがる感じはしなかったけれど。……あと、その口ぶりだとどの程度時間をかけるかはともかく確実にワルプルギスの夜を倒せるだけの準備はもう整ってるんだろう?」

 

「勿論。どうやらこの線では女神化するだけの因果を重ねてはいなかったみたいだからね、今日のはその確認と牽制を兼ねてのものだよ。魔女守と集雷針のアマツカヅチの連射で確実に倒せるワルプルギスの夜ならともかく、女神まどかや救済の魔女なんぞ現れようものならすべて台無しにされかねないからね」

 

「……厄ネタの気配については聞かないでおくよ。ただでさえこっちは婆ちゃんに押し付けられた記憶で手一杯だし」

 

 既に日は沈もうとしている。時間停止使うようなバグ枠の魔法少女と敵対するようなことは絶対にやめてくれよと念押ししながらバッグを担いで帰宅の準備を整える少年に、老婆は微笑みかけた。

 

「それで、魔女守。新しい体の調子はどうだい?」

 

「――あぁ、この上ない。慣らしも着実に進んでいる、今なら『空の剣』も問題なく使えるだろう。……逆に、還御の魔女の置き土産とは相性が悪いようだが――っと。アレ、どうするよ。いい加減消し飛ばしとく?」

 

「……いや、魔力を吸う厄介者であっても、だからこその使い道というものがある。要らないなら置いてお行き、私が調整を済ませておくから」

 

 無言で頷いた少年が運び屋の魔法少女に連絡を取りながら立ち去っていく。1人残された老婆は、夕焼けの陽射しが差し込む窓からの光に照らされた室内を目まぐるしく色を変える瞳で覗き込んだ。

 睥睨するのは、竹刀袋のなかに納められた黒木刀――。呆れたように息を吐いて。袋を持ち上げた指から嫌な音を立てながら老婆は呻いた。

 

「重ッ……、随分と変わり果てたねえ、貴方も……まあどうせこのなかに入ってるのは砕けた魂の欠片のほんの一部でしかないのだろうけれど」

「……シュウには、苦労をかけてるよ。抽出した記憶を何度も、何度も埋め込んで。ウワサとの同化もつつがなく済ませた、そう時間をかけずにシュウなりの答えを出すだろうさ」

 

「……私も。あの馬鹿の因果が尽きるまでは、若いののためにも頑張らないとねえ」

 

 





お婆ちゃん視点
まどかちゃん:可愛いとは思うけれど見てると滅茶苦茶トラウマ思い出す。
ほむらちゃん:笑顔で飴をあげた。まどかちゃんにも帰りに分けてあげてね。
マミちゃん:お菓子作って振る舞ってくれる優しい娘。いつか一緒に作りたい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。