環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった 作:風剣
ねむは原作とはまた違うイベント踏んだのかちょっと怪しい動きでアニメもだいぶ中身が変わってきそうな気もしていますがこちらはこちらで大筋がある程度決まっているので独自路線になりそうです
――まどかちゃんたちはまだ、神浜から隔離できている……。杏子ちゃんは今はおとなしくしているけれど、状況次第では力づくで制圧する必要があるかもしれないねえ。協力態勢を構築できればそれに越したことはないけれど……。
――天乃鈴音。あの娘に関しては本人よりその背後にいる魔法少女の方が邪魔だけれど……放置すれば勝手に共食いする、そういう風に因果が定まっているか。少なくとも神浜の魔法少女への手出しさえ禁じれば支障はでなさそうだね。
――更紗帆奈。早急に対処しておきたいのはこの娘だね。マギウスの翼に管理された魔女の流出は最低限に抑えたいし、特にこの娘の場合は魔法の自由度も高い――。……常盤ななかもあの娘を追っているんだろう? 協同で捜索を行う分には構わないけれど、いざ対峙となれば絶対に魔法は使わせないようにね。
数多の世界と繋がる場所。隠れ家から次々とシュウに指示を出す老婆は、少年にも、マギウスの魔法少女にも見えぬ何かを見てきたようだった。
みかづき荘を離脱する前後から、ずっと智江の指示にシュウは従ってきた。
陰謀も、妄執も、野望も、義憤も。
相手が何を考え何を思ったのかも、まるで関係なかった。邪魔になると判断されたものはすべて斬った。
魔法少女狩り。魔法少女をターゲットに襲撃、殺害を繰り返していた銀髪の魔法少女をバラバラにした。ほとんど瀕死の状態で捕らえられた彼女は治癒の後に警告とともに神浜から追放されて以降神浜に訪れてはいない。
混沌の魔法少女。「暗示」の魔法を用いて様々な魔女を魔法少女を操り襲撃し疑心暗鬼を振りまいていた紫色の髪の魔法少女を、仇であると追っていたななかとともに襲撃。ななかに致命傷を負わされた彼女は今際に繰り出したドッペルをシュウの一撃によって消し飛ばされると己のソウルジェムを罅割れさせそのまま息絶えた。
多くの魔女を、魔法少女を排除した。それができるだけの力をシュウは手に入れていた。
魔法少女の真実を知って、そして自分の探していた家族が既に魔女と成り果てていたと知って。それでも彼女が、マギウスの翼への迎合を拒否し少年に歯向かうのであれば。いろはのことさえも、少年は切り捨てなければならない。
最後の一線を、環いろはの生きることのできる未来に据える。
その未来に、彼女の隣に自分がいなかったとしても。彼女さえ生きてくれるのであれば、彼はそれで――、
「……来たか」
歴史的な史料を保管・展示していた博物館に設置されたウワサ、その結界の深部でフェリシアとともに待機していたシュウは通路から響く足音に苦々し気に唸る。
「シュウくん!!」
扉を開いて駆けつけた少女たち。その先頭で息を切らせていたいろはは、莫大な書籍の展示される空中回廊の奥地で待ち受ける少年に気付くと目を見開いて歓喜の表情を浮かべた。今にも抱きつかんばかりに駆け寄った彼女は、けれど顔を曇らせると足を弛めシュウの目の前で立ち止まる。
その鼻先にはピタリと、透明な太刀の切っ先が突きつけられていた。
「――。……シュウ、くん」
「……悪い」
気まずそうに目を伏せた少年の手から太刀が消え失せる。けれどいろはとの距離は保ったまま、彼女とともに駆けつけた魔法少女たちを確認しながら声をかける。
「いろははともかくとして、七海さん、鶴乃……さなちゃんも来てるのか。フェリシアもわざわざ俺の家まで探しにきてたし……申し訳ないな、随分と心配をかけたみたいで」
「──そう思うのなら、事情の説明もきちんと済ませてくれると考えても良いのよね? よりにもよって貴方がいろはに刃を突きつけるようになったようになった理由まで含めて、しっかりと」
青い瞳に警戒を滲ませるやちよが槍を手にいろはを庇うように立って問い質すのに、諦観の滲む苦笑を浮かべた少年は行動をもって応えた。
彼がいつの間にか手に持っていた一冊の本に力を籠めることで、空中回廊がガコガコと音を立てて駆動する。一ヶ所に固まった彼女たちを引き連れる少年は、彼の合図に応じて『来館者』を運ぶなか最奥で待ち受けるウワサ――記憶キュレイターのウワサの気配を掴みながら告げた。
「勿論、話せる限りのことは話すよ。でも魔法少女の実情を知らない娘がそれなりにいるからさ……。まずは、魔法少女の実情の方から整理しようか」
「桂城くん、貴方まさか……ッ」
「七海さん」
ドロリとした感情が、眼前の少年から垣間見えた。
やちよは、その表情を知っている。
どうしようもない現実に心折れた絶望があった。立ちはだかる壁に膝を屈した諦観があった。――それでも、最後に残されたものだけは譲るまいという溢れださんばかりの激情があった。
「俺は、やるべきことをしますよ。たった一人、誰よりも大切な女の子の笑顔を奪ったとしても、それでもこれこそが唯一の活路だと信じているから」
「七海さんに、マギウスの翼に入れとは言えません。……それでも、貴方が魔法少女の真実に思うところがあるのなら――少しでも、俺の力になってあげたいと思ってくれるのなら」
「どうか――。いろはを、よろしくお願いします」
だが。
淡々とした口ぶりをしておきながら、その眼はあまりにも――。
『――記憶キュレイターで魔法少女の勧誘をするときによく使う魔法少女の記憶は誰のかだって? 私のだけれどもそれがどうかしたのかい』
『手垢がついてるわけでもあるまいにそんなに嫌そうな顔をするもんじゃないよ。……どうせ碌なもんでもないだろって? それはそうだよ、魔法少女の真実に触れてしまうような経験をした人間の記憶だもの中身に期待できるはずもないだろう』
『ただまあ、そこは灯花やねむの編集もあって後腐れのなさそうに
そうして、少女たちは目にするだろう。
70年前の魔法少女。希望と絶望の因果に囚われた死してもなお生きる老婆。
Memoria Archive No.003
Title: 泣き虫の呪い
――馬鹿な奴だった。
――大嫌いな幼馴染だった。
――その娘は……どうしようもない、泣き虫だった。
『あ、髪に虫ついてるわよ』
『ふぇええムシぃ!? 嫌だあぁぁぁ早く取ってええぇぇ!!』
『ばっ、馬鹿泣くんじゃないわよ私が意地悪したみたいじゃない!』
『怒鳴ったぁああああ』
『ああああああああああもう!!』
「……ここは」
「神浜市……だよね? でもちょっと……全体的に建物も少ないような……」
少女たちが迷いこんだのは、戦後の復興に賑わうかつての神浜、そしてそこで生きたかつての魔法少女の世界。
現代の新西区に立ち並ぶビル街は影も形もない。変わりに広がる住宅街とそこに面した工事の作業現場を抜けた先、2人の少女が言い争っていた。
『はい、虫はもういない、いないから! ――いいからとっとと黙って、みんなこっち見てるでしょ馬鹿!』
『うぁあああああああ』
『ねえ、ちょっと。おい。……だから泣くなってえぇ!』
――家が隣同士。それぞれの親も仲良し。
――であればその腐れ縁も当然の帰結だったのだろうか。家に帰るときも一緒、遊ぶときも一緒、お出かけするときも一緒、買い物に行くときも学校に行くときも一緒だしお風呂やご飯、眠るときもたまに一緒……。そんな幼馴染は、もう信じられないくらいに泣き虫だった。
目の前に虫が現れれば泣く。駆け回ってずっこければ泣く。オモチャを取り上げられれば泣くし絵本で悲しい話を読めば泣くし同級生に軽くいびられただけでもわんわんと泣く。
とんでもない娘だった。大声で泣く幼馴染を引っ張って帰ろうとして町の人々から奇異の視線を浴びる羽目になったのも一度や二度ではない。
――まったく。いっそ絶交してやろうと何度思ったことか──、いや、何度も絶交をしていたかねえ。
――だけどこの縁も、いざ絶ってやろうとしてもなかなか離れないもので。絶交だと言って泣かせながら追い払っても、翌日には仲直りしようと言ってくるのだ。そっけなく扱おうとしたら涙目になって「ごめんなさい……もう私泣いたりしないからあ」と縋りついてくるおまけつきで。
――そこで拒絶できるほど非情でもなかった以上、絶交が繰り返し反故にされるのも致し方ないことではあったのだろうか。自分から謝らずとも「しょうがないなあ」「仲直りしようか」程度であっさり笑顔になることもちっぽけなプライドを守れて楽ではあったかもしれないと、今では思わないでもないけれど。
「この声……智江お婆ちゃん。じゃあこの娘たちって、もしかして……」
「……」
ナレーションのように響く記憶の持ち主の声。加速度的に過ぎ去っていく光景のなかをじゃれあい、なきわめき、怒鳴り、遊び、笑いあう少女たちの様子を眺めるいろはが誰の記憶なのかに当たりをつけるなか、また場面が移り変わっていった。
――そうして月日が過ぎて、私たちは学生になって。結局騒がしい幼馴染殿は、何も変わっていなかった。
『うっ、うぇっ。ひぃっ、ぐす……』
『もうまた泣いて……今度は何? 怪我はないよね、どうしたの虐められたりとかしてないよね?』
『ん、ううん。これ……』
『……またぶあっつい本を読んで……よく飽きないわねえ』
涙腺の緩みっぷりは相変わらずだったが……そういう性質がありがたいと思える場面も、ないではなかった。
学内で複数人で集まって弱いもの虐めをするような女子たちに絡まれたときにぎゃーぎゃーと大泣き泣きして先生方を呼び出したりとか。
……魔女に追い詰められたときの泣き声で、図体ばかりでかい怪物を怯ませたりとか。
『ほらほらほらぁ、泣け! 喚け! アンタの泣き声魔女にも有効だってわかったんだからとっとと泣きなさい!』
『ひ、ひどぉい! 泣けって言われても急にはできないよぉ!』
『あんだけ涙腺ガバガバなくせに何言ってんの?』
『お、怒るよぉ!?』
冗談冗談と謝りながら杖を振る少女がいた。ばさばさと黒翼をはためかせる逞しい体躯をした天狗たち。少女によって操られる使い魔が火を、風を手繰り魔女の体躯を削り取っていく。
──何も変わらなかったといったが……ひとつ、いや私を加えてふたつ、変化はあった。
――魔法少女。願いをひとつ叶えて呪いを振り撒く魔女を狩る、常識の裏側にある存在──それに、いつの間にか彼女はなっていて。それを知った私も、魔法少女になっても弱く、泣き虫のままであった彼女を助けるべく魔法少女になっていた。
『──!? ……』
魔女の反撃は届かない。幼馴染の援護を受けた天狗遣いの少女の猛攻を受け、魔女はあっけなく崩れ落ちる。駆け寄ってきた幼馴染とハイタッチを交わす彼女たちは、笑顔で勝利の喜びを分かち合った。
『いえーい!』
『……いえーい。…………っ』
『……どうしたの?』
『………………………………この人も、魔法少女だったんだよね』
「――ぁ」
いろはが言葉を失うなか、場面が次々に移り変わる。
過ぎ去ったもの。喪われたもの。取り返しのつかない喪失というものを、無情に突きつけていく。
『――魔女は私に任せて欲しい。背中は2人に任せるよ。……大丈夫、3人なら勝てるとも』
彼女たちには、先達といえる魔法少女がいた。強く、頼もしく、なんでも相談することのできる先輩――。彼女はある日、魔女との戦闘の最中にソウルジェムを砕かれ外傷ひとつないままに倒れる。魔法少女となった少女の魂そのものであるソウルジェムを砕かれた彼女は即死していた。
『え、私の願い? ……えへへへー。じ、実はね。好きな人と、付き合えますようにって……えへへへ。…………ねぇーその反応辛辣―――!!』
『ああーーあ。……さいっあく。どうして、魔法少女なんかになっちゃったんだろう』
唐突な先輩の死。それを涙ながらに乗り越え魔女と戦うようになった彼女たちは、月日が過ぎるともうひとりの友人とともに戦うようになっていった。
だが、人を簡単に喰らう異形たちとの戦いは日々精神をすり減らす。交友関係にも罅が入り徐々に追い詰められていった彼女はやがてソウルジェムをどす黒く染め上げ、魔女になった。
『これは正当な契約の対価だよ』
白い獣はのうのうと抜かした。
魂をちっぽけな宝石ひとつに変える所業。
ソウルジェムの限界を超える穢れを溜め込んだ魔法少女が魔女になることを教えずに契約を進めたことへの糾弾。
真実を知り親友が泣き崩れるなか激昂する少女に対してもキュゥべえは顔色ひとつ変えず。願いを叶えたことと魔法少女としての力を与えたのと対価に自らが異形と成り果てるまで異形と戦い続ける定めを押し付けたことの正当性を並べ、バラバラにされると呆れたようにもう一体のキュゥべえが現れては『訳が分からないよ』と言い捨てていった。
魔法少女の真実に絶望して。自身の戦いに終わりがないことを知って。けれど、魔女は待ってはくれない。そして魔女を倒さなければ自分もいずれは魔女になる――。
止まる訳にはいかなかった。
魔女を倒す。人を救う。魔女を倒す。誰も守れなかった。倒して。守って。倒して、傷ついて、守れなくて、倒して、倒して――。
……どんな人、だったのかな。
やっぱり、辛かったのかなあ……。
グリーフシードのみを残して灰になる魔女を見送りながらそう零して涙を溢れさせる幼馴染の姿に、少女は束の間絶句して。
魔法少女になって。不思議な力を手に入れて、魔女なんて化け物と戦うようになって、魔法少女の真実を知って。いずれ自分たちが魔女になるのだと理解させられても──何も、目の前の少女は変わらないのだなと思った。
泣き虫なところも、弱っちいところも、怖がりなところも。
……底抜けなくらいに、お人好しで優しいところも。会った時から、何も変わらなくて。
なら──私が、守らないと。
そう思った。
――思っていた、筈なのだったのにねえ。
『……なんで』
『なんで、アンタが私を庇うのよ……!!』
『……えへ、へ。なんで、だろうねえ。咄嗟に、体が動いちゃった』
その日倒した魔女は、前々から追っていた私たちの縄張りに迷い込んでは呪いをばらまいて逃げていくはた迷惑極まる異形だった。
足止めにとけしかけてくるやたらと硬い使い魔にさえ気を付ければ、そう手強い相手という訳でもない。簡単に倒せる魔女の筈だった。実際倒せた。
でもその直後にやってきた、2体目が問題だった。
魔法少女と戦って逃げてきたのか、その魔女は満身創痍で1発強烈な一撃を見舞えば倒れたけれど。その胎のなかで護られていた『本体』による不意打ちを、私は対応しきれなくて。
私を庇ったあの娘は、胸の中央を魔女の刃に貫かれていた。
致命傷を負った彼女を連れて隠れながら治療するけれど――留めなく傷口から血を流す彼女は、どうしようもなく手遅れだった。
『なんで……なんでよぉ……!』
『あんた、真正面から心臓をざっくりもってかれて、今にも死にそうなのに……! どうしてそんな笑顔なのよ……!』
『頑丈なのが取り柄だからかなあ、痛みももう感じないし』
それは鈍感なだけだ馬鹿と叩きつけようとした罵倒は、言葉にならなかった。
何も言えずに、ただすすり泣く。
『……私がキュゥべえに願ったこと、言ってなかったよね』
『……え』
『私ね、言ったんだ。――やりたいことが多すぎて決められないから、叶えられる願いを3つに増やしてくださいって』
『な、な……じゃ、それで傷を治して』
『無理だよ、あの本体強いもん。私が復活したって、またやられちゃうだけだし』
私を庇って、貴女がやられたらもう勝てないもの。
『残ってるのは、あと二つだから――ひとぉつ』
貴方は、死なないでください。
不意に身体の奥に流れ込んできたものの把握もおぼつかないまま、少女はいやいやと首を振って。
『いや、いやだ、だって、私たち2人だから、今までやってこれたのに』
『大丈夫だよぉ、智江ちゃんは、つよいもん。……こふっ。もうひとつ、はぁ』
貴方は、魔女にならないでください。
『――ぇ』
『ソウルジェム濁ってるよぉ、グリーフシードも残ってないでしょう? もう、ドジなんだからあ」
「ばっ、なんで、どうしてそんな馬鹿じゃないの!? まず貴方を復活させて、二つ目で魔女を倒せばそれで解決でしょう!? どうしてそんな、なんで、私なんかに――』
『私はもう駄目なんだって。ほら、ソウルジェムだってこんなに濁ってるし』
絶句する私に構わず、私のソウルジェムに彼女は手を触れて。
『だから、特大サービス。私の残ってる魔力、ぜんぶ上げちゃいます』
『ぇ、?』
直後、全身に漲る力。
今ならあんな魔女くらいは容易く葬れる、それが当然のことのように理解できた。
でも、それは――腕のなかの幼馴染を、魔法少女として終わらせることと同義で。
直後に、真っ黒に染まった自身のソウルジェムを握った彼女は――自分の命そのものといえるソウルジェムを、躊躇なく握り潰した。
『えへへ。魔女になると思ったあ? ならないよ、私ああなるの嫌だもん』
『なん、で』
『大好きなあなたを、殺したくないもの』
じゃあ、3つ目。
もう魔法少女に与えられた奇跡の尽くは使い潰したのに関わらず、彼女は笑顔で微笑んで。
告げる。
その後も延々と残されることとなる、親友への、幼馴染への、だいすきな女の子への
『なかないで。わたしは、あなたのえがおが』
だいすき、だから――。
『……ぁ?』
命が。彼女の掌から零れ落ちた。
ぱらぱらと、砕けたソウルジェムの欠片が。掌から零れ落ちて、力なく投げ出された手を離れ地面に転がって行って――。
『あ。ぁああああ』
どろりと、胸のなかで何かが溶け落ちるような気がした。
精神の均衡が崩れる。絶叫と共に溢れだした呪いが、全方位に撒き散らされる呪いをもって魔女を打ち倒す。
奇しくも、それは。
後の時代において神浜市で再現される、ドッペルと呼ばれる現象に酷似していた。
『――最悪でしょう、その娘』
ウワサに再現された老婆が、記憶の光景に立ち尽くす少女たちの前で苦笑する。
『親友を置いていつの間にか魔法少女になんてなって、贅沢に叶える願いを3つに増やして。その挙句に肝心の願いを使い潰して私なんかに使って――。いや、愚痴はこのくらいにしておきましょうか。ひとつだけ言わせてもらうのなら最期の
『本当は、この後はみふゆちゃんの記憶も使った神浜市におけるドッペルの講習もメニューにあるんだけれど……最低限の前提は整ったようだし、ひとまずは中断としましょうか』
『ああでも、良いかい? ……世界はどうしようもなく残酷でも、救いはあるべきなんだよ。私は、私たちは。その為に神浜で活動をしているんだから』
『だから、どうしても譲れない一線があるというのなら――それを守るために、全霊を尽くしなさい』
その言葉とともにウワサによって再現された世界から引き戻される少女たち。
ゴンドラに乗り記憶ミュージアムの出入り口、空中回廊に向かう少女たちを、シュウが待ち受けていた。
とっくのとうに、手遅れだった。
そう判断せざるを得なかった。
「――なんで。なんでよぉ」
「俺たちは周回遅れだった。それだけのことなんだよ」
「だから――諦めろ。いろは、お前の妹は、ういはもう――」
少年は、最後の一線を守るために。最愛の少女の心を、踏み躙る。
次回、「決別の神鳴り」。