環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった   作:風剣

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戦いの終わり、そして明日へ

 

 

 黒江という魔法少女にとって、その1日はまさしくマギウスの翼に加入してから最も忙しない日だった。

 

 恋人とデートをしていたシュウを追い遊園地へミラーズへ仲間と向かうも唐突な階層の崩落に巻き込まれかけ這う這うの体で退避し、どうにか鏡の結界を抜け出して辿り着いたフェントホープは暫くすると屋敷全体がひっくり返るのではと危惧してしまうような激しい揺れに何度も見舞われた。ようやく落ち着いたかと思えばマギウスの翼の首魁である里見灯花が魔法少女たちを緊急収集。()()()()()()()()()()()()()()()()辿()()()()()()()、ワルプルギスの夜が近付いていることを通達されての防衛準備を指示された黒江は不気味に振動するフェントホープ内を走り回っていた。

 

「ああもう、本当にどうなってるのかなこの状況……。魔女守さんもワルプルギスの夜と戦うって話なのに広間には見当たらないし……」

「ひとまず私たちは自分たちに任されたことをしないと。ええと、補給用のグリーフシードは……」

 

 自身と同じくシュウの率いる部隊に所属する魔法少女とともに回廊を走る黒江は、不気味に揺れる建物に何度か足を取られながら足早に目的地を目指す。

 既にワルプルギスの夜との戦いに備えて、各部隊がそれぞれの持ち場に向かっているはずだった。黒羽根の少女はこれから想定される激戦を前に、消耗した魔法少女の補給をこなすべくグリーフシードを保管する倉庫へと向かっていたのだが――瞬間、一際強い震動が屋敷全体を揺るがした。

 

「わっ、何!?」

「さっきから凄い震動だよね、アリナ様が飼ってた魔女でも暴れてるんじゃないのこれ――、あれ?」

「これ……桜?」

 

 ふわりと、淡い桃色の花弁が舞った。

 豪奢な洋館内部には様々な装飾の用意されているフェントホープであるが、庭園や羽根の魔法少女の私室を除いて基本的に植物類の設置はない。桜だって庭園にも見かけた覚えはなかったのに何故桜がと、クロエは首を傾げ――。

 

「わっ」

 

 不意打ちに近い衝撃に驚きよろめいてしまう。すぐに体勢を立て直した少女たちはと再び走り出そうとして、直後に間近で発生した衝撃でよろめき尻もちをついた。

 破壊が、駆けぬける。

 

「―――――――ッ!!」

「きゃあぁああああ!?」

 

 花弁が光を放って輝き、盾となって少女たちの身を衝撃と飛び散った瓦礫の過半から守り抜いた。

 

 壁をぶち抜いて廊下を蹂躙した翡翠の閃光。吹き荒れる暴風に床を転がった少女たちの前方でキューブが舞い、起爆しては次々と壁に大穴を空けていく。少女2人をも巻き込んでばら撒かれる結界群が漆黒と桜色の剣閃が次々に迎撃し、真っ二つにしては閃光を放つ魔法少女めがけ駆けぬけていった。キューブを貫いて迫った『黒』を回避した少女に桜の刃が襲い掛かり、弾き飛ばされた彼女を2色の刃が襲いかかる――。

 一連の光景をほとんど目で追えず、けれど黒と桃色の光だけは見えた黒江は遠ざかっていく後ろ姿を見送り呆然と呟いた。

 

 

「シュウさんに……環さん?」

 

 

 一方、危うく通りすがりの黒羽根を激闘に巻き込みかけていた少年は黒木刀を回収し降り注いだ破壊の雨を凌ぎながらほっと安堵の息を吐く。

 

「どうにか、距離は取れたか……! いろは、屋敷の中は不味い――、魔法少女を巻き込む。どうにかアリナさんを連れて屋外まで誘導するぞ」

「わかった! 辺りに万年桜の花弁をばらまいたから、ある程度の攻撃からは近くの子たちを守れると思う。シュウくんも自由に使ってね!」

 

 並走する少女の言葉に頷くと同時、前方を飛翔するアリナの掌から放たれたキューブが視界を埋め尽くすほどの物量をもって飛来する。顔を見合わせた2人はそれぞれの得物を手に、真っ向からアリナの猛攻を迎え撃つべく走り出した。

 

 ――いろはが万年桜のウワサと融合し強化されたところで、そう簡単に趨勢がひっくり返るようであればそう苦労はしない。ねむによって作られたウワサである毛皮神を着込み、そのうえからエンブリオ・イブの魔力を吸収したアリナは本来の彼女の実力も相まって更に手の付けられないものとなっている。

 二対一であろうが気休めにもならない。肉体の強度など関係なく、結界の魔法を手繰り破滅を描くアリナの一挙一動が明確に死に近づくものだ、決して油断できる相手ではない。

 

 一手でも対処を誤ればそれが致命打に繋がるだろう、紛れない窮地がある。

 しかし――シュウもいろはも、今の自分たちならば勝てると信じて疑わなかった。

 

 漆黒の木刀を、桜の刃を振るい緑光を斬り裂きながら前へ前へと踏み出す。

 

「いろはっ、2歩踏み込め! 前のでかいのは俺が処理する!」

「うんっ! ――シュウくん、これ使って!」

 

 黒木刀を振り抜いたシュウが2人を押し潰そうとした結界を両断し、吸い上げた魔力を糧に膨張した樹を起爆して一気に周囲の星屑を薙ぎ払っていく。無手になった彼へといろはから投擲された桜の刃を借り受け、進路を埋めようとする四方形を断ち切りアリナとの距離を詰めた。

 

「ッ……! いい加減、鬱陶しいんですケド……!」

「壁!!」

「任せて!」

 

 言うが早いか、いろはの振り抜いた白桃の刃が鮮やかに閃いては戦闘を繰り広げる回廊の床を円形に切り取る。桜の花弁を凝縮させて作り出された刃は、よく伸びよく曲がりよく斬れる――、切り抜かれた壁に五指をめりこませがっちりと掴んだ少年は進路上のキューブを足場にしながら跳躍を繰り返し、前方の少女めがけて大質量を一気に叩きつけた。

 

「グゥァ……!?」

 

 障壁を展開し壁に叩き潰される事態を防いだアリナだったが、しかし少年の膂力に無理やり押し込まれる。彼女のすぐ横を通り過ぎた刃が背後の空間を断ち切り、ウワサ結界の外に広がる曇天が裂け目から覗いた。

 舌打ちし、咄嵯に展開したキューブを起爆させ石塊を粉々にしようとする彼女。その向かいで、己が叩きつけた壁へ向かって拳を振り上げていたシュウはそのままアリナを押し込むように壁を殴り飛ばした。

 

 切り抜かれた壁と障壁越しに、衝撃を通す。

 

「ガッッ――!?」

 

 切り裂かれたウワサ結界の裂け目から山間部の森のなかに転がり出たアリナ。追撃をかけようと駆ける2人の眼前で、彼女はよろめきながらも即座に体勢を立て直し両腕を大きく広げた。

 

「――輝いて!!」

「ッ」

 

 緑色の閃光が爆ぜる。

 踏み込み過ぎたいろはの脚を掴み後方へ放り投げた少年がキューブの起爆に巻き込まれた。盾とした黒木刀が爆風に彼の手を離れ吹き飛んでいくなか、直撃を受けたシュウは全身を焼かれ膝を突き、止めを刺さんと近づくキューブがいろはの振るった刃に断ち切られていくのを目にする。

 

『――』

 

 思わず、目を奪われた。

 衝撃が撒き散らされるなかで花弁が舞いあがり、蒼いスカートが翻ったかと思えば閃光を回避した直後に弧を描く白桜の刃が空間を彩る。ウワサと融合し青みがかった髪を靡かせるいろはが、宙を舞う花弁のようなふわりとした軽やかな動きで両手に握った刃を巧みに操りアリナの攻撃を捌いていく。

 命を懸ける戦いの只中にありながら、その姿はあまりにも綺麗だった。

 

 鞭のようにしなる刃を縦横無尽に閃かせアリナの追撃を阻むいろは。全身を襲う痛みよりも、大切な女の子を危険に晒すことへの焦燥よりも、眼前の少女が舞うようにして戦う姿に見惚れてしまう自分を自覚した彼は、思わず苦笑してしまいながら身を起こした。

 呼吸を整え、走り出す。こちらに気付いたアリナの差し向けたキューブを回避し、足場にして、回収した黒木刀で迎撃しながらいろはの隣に着地したシュウは口元を弛めた。

 

「……! シュウくん、大丈夫……?」

「ああ、ありがとう。助かったよ……、正直惚れ直したわ」

「……、ふぇっ。あ、ありがとう……」

「随分と余裕じゃないっ、戦ってる途中に惚気ちゃって、もう勝ったつもりなのカナ!?」

 

 怒声とともに襲いかかるキューブ群。迫り来る脅威を前に、2人は示し合わせたかのように同時に地を蹴る。

 いよいよ業を煮やしたのか、ありったけの魔力を用いてキューブをばらまき回避不可の範囲殲滅を行おうとするアリナへ向かい一気に駆け出した。

 

「――俺が合わせる、打ち漏らしは任せろ」

「うんっ!」

 

 星屑が、降り注いだ。

 虚空を裂く緑の閃光。雨のようになって襲いかかるそれは、しかし2人に届く寸前で断ち切られる。漆黒の木刀を振るうシュウと、白桜の剣筋をなぞるようにして振るわれるいろはの刃。互いに死角を補い合うようにして時に背を預け、時に片割れの進路を阻むものを八つ裂きにしては迫る星屑を斬り払い、あるいは弾き飛ばしてはアリナへ向かっていく少年と少女は、黒白の軌跡を残しながら疾駆する。

 

 少年の足を削ろうとしてきたキューブを鋭く伸びた刃が絡めとり切り裂いた。

 力技で星屑のひとつを上空まで打ち上げたシュウがいろはの身を打ち砕く軌道にあった雨を起爆、降り注ごうとしていた閃光の軌道をずらし進路を確保した。

 いろはの両断した結界の上を走った少年が、叩きつけた黒木刀の衝撃を伝播させ2人を押し潰そうとした巨大なキューブを弾き落とす。

 

「……ッ!!」

 

 ギリッ……! と音を鳴らして歯噛みするアリナはキューブの展開範囲を更に狭め、攻撃密度を増しながら己に迫る2人を睨みつける。

 高速で飛来するアリナの猛攻の数々を切り捨てていく彼らは、一振り一振りが全霊の一撃に等しい。対処を誤れば即座に致命傷を負うだろう星降る殺傷圏を進むシュウたちに余裕など欠片もない。距離を取りながら爆撃をしていればいつかはすり潰して終わる。そうすればアリナのアートを具現するための準備も整う。

 

 その筈なのに。

 2人は、止まらない。

 

「あぁぁぁ――――!!」

「ガァっっ、こいつ……!」

 

 刃が、届いた。

 黒木刀による魔力の噴射も用いた全力の一撃でこじ開けられた『穴』。僅かな間隙をかいくぐって腕を振り抜いたいろはから伸びた桜の白刃が、蛇のような軌道を描いてアリナの脚を裂いた。

 

 体勢を崩し足場としていたキューブから転がり落ちた少女が掌から放った閃光をもって追撃を阻むも、距離は詰められている。一歩一歩、着実にアリナを追い詰める2人を襲う攻撃は更に激しくなった。

 キューブを展開、結界内部に片割れを閉じ込め圧搾――。シュウの突き立てた黒木刀によって解体され失敗に終わる。

 戦闘を繰り広げる山間部ごと吹き飛ばす爆発――。キューブに内包される魔力ごといろはがバラバラにしたうえで桜の花弁で封印、威力を大幅に減衰させられ凌がれる。

 上空から降り注いだ星屑を迎撃し黒木刀を吹き飛ばされた少年を狙いキューブを集中、削り殺しにかかる――。いろはの新たに生成し投擲した桜の刃を借り受けた彼の振るった白い刃に絡めとられたキューブ群がまとめて断ち切られていく。

 

「――あぁ、このっ」

「随分と魅せてくれるじゃない、この2人は……!」

 

 二振りの刃を煌めかせる彼らの動きは、アリナをして思わず歯噛みする美しい光の舞を構築する。

 

 いろはとシュウ。それぞれが互いをカバーし合い、片割れの意図を汲んだうえで支え後押しする2人の連携には淀みひとつない。アリナの放つ必殺を悉く斬り伏せる少年と少女には、パートナーの動きが手に取るように理解することができていた。

 あるいは、心さえも繋がってるかのように。

 

 ――不思議だね、シュウくん。

 ――何が。

 

 致死の一撃を同時に放った斬撃をもって解体したシュウたち。次から次へと押し寄せるキューブ群の迎撃に追われながら、声もなく交わす言葉があった。

 

 ――こんなに危ない戦いを繰り広げてるのに私、凄く嬉しい。今私は、初めてシュウくんと並んで戦うことができてるの。

 ――反応に困るな。俺がもっと強かったらいろはを巻き込むこともなくアリナさんを倒せてたって言うのに。

 ――そんなこと言わないで。私、いつも前で戦っていたシュウくんと一緒に戦うことができて、こうして支え合えて……凄く嬉しいの。

 ――後ろにいろはが居てくれるっていうのも安心できる話だったんだけどな。

 

 連続の刺突、変幻自在の軌道を描いた刃は悉くが防がれるも、少年の狙いはそこにはない。2人への攻撃にまわされていたキューブを纏めて刺突に巻き込んで力づくで()()()()()彼に、アリナが険しい表情で飛びのき――直後起爆。「シット!」と毒づいては新たに生成された緑光も、作り出される端からいろはの繰り出した斬撃に分解されていった。

 

 ――シュウくんは凄いな。

 

 ずっと憧れだった。魔法少女として魔女と戦い、恋人を援護して後ろから見守るようになってから――あるいはそれより遥かに前から、ずっといろはは彼の動きを見ていた。

 楽しそうに笑ってスポーツをする彼が好きだった。

 病院や公園で大人たちがいないときを見計らってこっそりと、自分やういを軽々と抱えて走り回って遊んでくれた彼が好きだった。

 いろはよりずっと前に出て魔女と戦う彼の姿を見るのは苦しかった。だけれど――どんな恐ろしい魔女に対しても怯むことなく立ち向かう彼の背中に憧れて、いつか彼と同じように戦うことができたらという願いを、ずっと心の底で抱いていた。

 

 やちよたちに力を貸して貰って、ななかに鍛錬をつけてもらって。ねむに与えられた万年桜のウワサに補助してもらいながら、シュウの動きと組み合わせて彼と共闘して――。

 自分と違って魔法少女でもないのに、ウワサに補助されている訳でもないのに。今まで遭遇したどんな魔女よりも恐ろしいアリナを相手に一歩も引かず戦ってのける少年に、いろはは改めて尊敬を覚える。

 

 こんなに凄い男の子に、一番大切だって言ってもらえて、愛してもらえて、守ってもらえて。今はこうして、共に戦うことができているという事実が。こんなにも嬉しくて、愛おしかった。

 

「そうだよね」

「?」

「今回だけじゃない。どんな困難があったとしても、どんな壁が立ちはだかったとしても。これからは、ずっと――一緒に、乗り越えていきたいな」

 

 プロポーズかよ。

 思わず飛び出しかけた言葉は、いろは共々手元を狂わせかねない劇物だった。咄嵯に口をつぐみ言葉を呑み込んだ少年は、代わりに突き出した刃をもってアリナの放ったキューブ群を真っ二つに両断する。その勢いのままに距離を詰めアリナを木々の向こうへ吹き飛ばしたシュウは、白桜の刃を振るい叫んだ。

 

「いろはっ、ここで終わらせるぞ!!」

「うん!」

 

 何を――。吐き出した血の滴る顎を拭いながら唸るアリナが無尽蔵の魔力をもって必殺の陣形を整えていくのにも構わない。疾駆する少年は既に準備を整えていた。

 

「――来い!!」

「あ゛……っっ!?」

 

 アリナが横薙ぎに吹き飛ばされた。

 死角から彼女を襲ったものの正体は、キューブに弾かれ森の中に転がりそのままだった、少年の得物である黒木刀。黒木刀を落とした場からアリナを挟んだ位置取りを取っていたシュウに向かって回転しながら飛んできたそれを防いだキューブごと吹き飛ばされたアリナは、苦悶の声をあげ転がっていく。

 そこに押し当てられた手の感触に気付いたとき、彼女にできることはもうなかった。

 

 ――無力化の手段は整った、殺す必要はない。

 ――彼がすべきことはただひとつ。いろはが万年桜のウワサとともに仕込まれた魔法を発動する瞬間に、アリナを気絶させていればいい。

 

「――ヵ、あ」

 

 ソウルジェムが打ち抜かれた。

 でこぴんを喰らうのと大差ない、軽く小突く程度の衝撃――。当然彼女の額に在った魂が砕けることはなく、しかしまともに魂に打撃を浴びたことによってアリナの意識は刈り取られがくりと崩れ落ちる。

 そこへ伸びた、桜の精を宿す少女の細腕。

 

 ねむによって万年桜のウワサと融合する際に仕込まれた、アリナが身に纏う毛皮神のウワサの制御権限。魔力の接続として発動したそれに、意識を失ったことで魔法の制御を失ったアリナからウワサが剥ぎ取られねむのもとへ送還されていく。

 

「こい、つ――ヴァ゛!?」

 

 魔力をごっそりと抜き取られた瞬間、目を覚ましたアリナがキューブをぶつけようとして再びシュウにソウルジェムを叩き落とされた。

 

「こ、の……ぐぅ……」

「シュウくん、今のはちょっとやりすぎだったんじゃあ……」

「普通に反撃してきてたし……。砕かないように加減してたとはいえなんでソウルジェム殴られた直後に余裕で目を覚ましてんだこのひと……」

 

 若干の呆れを滲ませながら、それでもほっと息を吐いたシュウは肩の力を抜く。軽く彼を窘めたいろはもまた、散々攻撃を浴びていた恋人が血塗れながらも命に関わる傷はないと判断して安堵を露わにしていた。

 とはいえ、ゆっくりしている暇はない。空模様は既に怪しく、街の方向からは先程のアリナに負けず劣らずの強力な魔力の気配も知覚できる状態だった。シュウの傷を治癒しながら、遠慮がちに眦を伏せた少女はボロボロの彼を見つめ声をかける。

 

「シュウくん、ワルプルギスの夜はもう来てるみたいだし、私はこれから智江お婆ちゃんたちと合流するけれど……、シュウくんはどうする? フェントホープのところに案内してもらえれば休む場所を羽根の誰かに用意してもらったりとかもいけると思うけれど……」

「あー。……休みたいのは山々だけども……、お前はワルプルギスの方行くんだろう? なら俺も向かうよ、いろはは俺が見てないと心配だ」

「……うん、わかった。無理はしないでいいからね? シュウくんは私が守るから」

「言うようになったなあお前…………」

 

 はにかむように微笑んだいろはに溜息をひとつ。意識を切り替えるように頬を軽く叩いた少年は、身を起こすとワルプルギスを迎撃しているのだろう南凪区の方面へといろはと連れ立って向かっていく。

 連戦に次ぐ連戦に疲弊こそあれど、今更()()()()()()()に負けるつもりなど毛頭ない。盤面も終盤となれば自分の役割もほとんどないだろうと判断しながらも、少年は事態の終息を見届けるべくいろはとともに戦場へと向かっていった。

 

「にしてもフェントホープからアリナさんごと飛び出してきたは良いけどここどこだろうな……。わかりやすい目印はあるけど遠いし……、いろはどうする、俺が抱えて運んでいこうか?」

「……今なら私、シュウくんよりも早いと思うんだ。私がシュウくんを抱っこして運んでいけば、きっと早いと思うんだけど……」

「嘘だろ」

 

 ワルプルギスの夜。

 神浜へと呼び寄せられた超大型の魔女が魔法少女たちの尽力によって敗れ跡形も遺さずに打ち砕かれ消滅させられたのは、その10分後のことだった。

 

 




次回、エピローグ。マギウス編は完結になります。
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