環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった 作:風剣
「別にね、レナにだってそういう……男女のアレソレのこととかに、興味がないわけじゃないのよ?」
「うん」
「エミリーやかえで、いろは、かこ……あとはたまに混ざってくるささらとかと、
素直に友だち増えて嬉しいって言えばいいのにと指摘したら殴られそうだった。
「けれどまあ、やっぱ話題が偏るのよね。ある程度話が進んだら彼氏持ちの独壇場みたいなもんよ。かえでは論外、エミリーやかこはいつでも良さげな相手捕まえられそうだけどまだフリーだし……ここまで言えばわかるでしょう?」
「……ナンノコトヤラ……」
「あの色ボケを!!なんとかしなさいって言ってんのよ!!」
ドン!! と叩かれ揺れる机。近くにいたクラスメイトたちがぎょっとした表情で見てくるのに片手で謝りつつ、苦笑いしたシュウは眼前の少女が憤慨する様子をなんともいえぬ表情で見つめる。
「そんなことを言ったってなあ……。それこそいろははどんな話をしてるんだよ、いや聞くのも怖いんだけども」
「はっ? いや、それは――っ。……ウルサイッ、何を言わせようとすんのよこの変態!!」
「あーーー待て待て待てそれは理不尽、いやなんとなくどんな話かはわかったけど大声で罵るのやめてくんねッ!?」
クラス中からの視線が凄く痛い――!?
顔を紅くして怒りだしたレナの叫び声に顔を引き攣らせたシュウは物凄く逃げたそうに教室の出入り口を、窓を見回し、やがて観念したように息を吐いて席に腰を落ち着けた。
ぼそりと呟く。
「恨むぞいろは……」
隣の教室で、不意に背筋の粟立つなにかを感じ取った桃色の少女がびくりと身を震わせた。
「ったく、人聞きの悪い怒鳴り文句ぶつけられてしまった……」
一体何をいろはから聞かされていたのか、赤くなってキレ散らかすレナの姿にまさか夜のあれそれじゃないだろうなと危惧を抱く。確か昨日もレナたちと遊びに行っていたよなと恋人の行動を振り返りつつ、なるべく当たり障りのなさそうなスキンシップを話題に選出しながら会話の内容を探る。
「あー……先週の土曜いろはとデートに行ってきたときの話でもしたのか?」
「翌日には聞かされたわよそれ。随分とお楽しみだったそうじゃない」
「俺その日には特に疚しいことした覚えないんだけどなあ! いろはの奴どんな話したの⁉︎」
距離感の死んだシュウの取る何気ないスキンシップひとつひとつでいろはが惚気まくっている事実など知る由もない。これ以上続けるともっとレナが不機嫌になりそうな気配を察した少年はひとまず惚気話の追求を断念して話題の切り替えを図る。
「そういや昨日いろはが言ってたよ、今度好きなアイドルのライブ観に行くんだって? なんかうちの婆ちゃんもその子のこと興味もってたっぽいんだけどどんな活動してる子なんだ」
「へ? ……あ~~さゆさゆ刀剣アイドルだからかな……いや普通に努力家なトコに惹かれたのかも? やっぱりオトナの人にも魅力はわかるものよね、うんっ」
「へえ、そういう感じなんだな。……アイドルなあ、最近めっきりテレビ見なくなってたしほとんど見てなかったなあ……」
「さゆさゆは良いわよ……正統派な頑張るアイドルって感じで――」
席を近づけてそんなやりとりをする2人。身を乗り出すようにして推しの布教をするレナに相槌を打ち話を聞いていたシュウは、そこで教室の入り口からこちらの様子を窺っていたいろはと目が合った。
柔らかな笑みを浮かべて手を振ってくるいろはに軽く手を振り返す彼は、少女のもう片方の手に提げられている弁当箱に気付いて目元を弛める。早くしないと昼休みなくなるなとぼやいて時計を一瞥するとレナに目配せして腰をあげた。
「レナ、昼飯いつものところでいいだろ?行こうぜ、秋野さんあたりはもう先に待ってるかもな」
「ん、そうね。……もしかしてアンタの弁当、あれ?」
「アレ。……みなまで言うな、俺の胃はもういろはに握られてんだ……」
「このボンクラ……。こんな調子じゃあの惚気のストッパーなんて期待できそうにないわね……」
面目ねえと口元を引き攣らせた少年にふっと微笑み、席を立ったレナは友人たちと連れ立って屋上へと移動していく。
その後ろ姿をみるシュウの級友たちは、なんともいえぬ表情で顔を見合わせた。
「途中まで一方的にいびられてるように見えたんだけどな……。桂城のやつって結構水波さんと仲いい感じなのか」
「だよな……。あの子クラスじゃほとんど喋ったりしないじゃん。違う学年の子とは結構一緒にいるの見かけるけれど休み時間ひとりでいるときはずっと『話しかけないで』ってオーラ出してるし」
「胸しかみないような奴は嫌いだって言ってたぜ」
「このクラスの男全滅じゃねえか」
「下心向けない奴と付き合ってたいなら彼女もちのシュウの奴と絡むのは当然ってことか……環さんとも仲いいみたいだしただの友だちって感じかなあ、二股説囁かれてたのちょっと信じてたけど」
「でもアイツこの間めちゃくちゃ美人の女の子とデートしてたぞ」
「は? 許されねえだろ……」
――殺気を感じた。
やっかみって怖いよなあと若干遠い目になる少年は、否定のしようもない根も葉もある噂からの殺意をひしひしと背筋に感じながら教室を後にする。
気まずそうに首筋を撫でる少年を半目で見るレナには呆れたように鼻を鳴らされていた。
「モテる男はつらいわね。レナもその話は教室で聞いたけど一体どこの誰とデートなんかしたのよ、また魔法少女?」
「『また』って何さ……。レナは会ったことないんだっけかな。最近は俺やいろは、ういたちとマギウスのあれそれ手伝ってくれてて……常盤ななかって言うんだけど」
「例の血みどろブートキャンプの……?」
「もう俺は突っ込まないぞ、それだけは深掘りしないって決めたんだ」
いろはとななかは普通に仲がいいのにその切っ掛けを聴こうものならば恐ろしく殺伐としたものになるのがトラップすぎた。廊下で待っていた当の本人が「過ぎたことだからいいのに……」とでも言いたげにするのに頭を痛めながら、少女たちとともに屋上へと向かうシュウは放課後に待つ予定へ思いを巡らせることに決める。
「……これからは、そういうことが必要にならないようになっていったら良いよなあ」
準備は終わった。
今日、神浜市にて再びドッペルを用いた自動浄化システムが展開される。
マギウスの掲げた救済の旗印ともなったドッペルは、それまでは逃れ得ぬ死と破滅の運命しかなかった魔法少女の定めを覆す画期的な発明となった。
不可逆の破滅そのものである魔女化を回避できる。ソウルジェムを限界まで濁らせても死ぬことなく、逆に呪いの力を味方につけて窮地に立ち向かうことができる。
魔女化してしまえば魔法少女の魂そのものであるソウルジェムは砕け、呪いの種となって魔女の胎に宿り異形と化す。その末路を回避することができるだけでも、自動浄化システムの樹立は救済を冠するに相応しい大偉業だった。
しかし、それに何の危険性も伴わないのかとなるとそうではない。
ドッペルは魔女化の直前、ソウルジェムに取り込まれた穢れを
それに加え、長く魔法少女として活動してきた者やドッペルを濫用しすぎてしまった者がドッペルを発動してしまえば本体と呪いを切り離せず一体化した状態で具現する現象も報告されている。
魔女化からドッペルへ。魔法少女から穢れを蒐集することで宇宙を運営する立場に在るキュゥべえがこの変革にあたってどのような対応をしてくるかも未知数。
ドッペルシステムの保全と改良は必須。今回の神浜市での再展開を終えても、考えなくてはいけない案件は山積みとなっていた。
だが――それも、まずは此処からだ。
「……」
手にする得物の感触を意識しながら、辺りの気配へ意識を巡らせる。
(白羽根、黒羽根が23人、事前の周知に応え今回の計画を見守るのを希望した魔法少女が1、3、7、8、10、12、15……19人。まあこんなところかな……)
嗅覚、聴覚、視覚──。シュウの索敵能力を総動員し見渡しのいい空間を陣取っていれば、周辺の人間の気配を掌握することは容易い。
事前に届け出のなかった参加者も含めてフェントホープの地下聖堂を訪れた魔法少女の様子を確認していたシュウのもとへ、ぱたぱたと駆け寄るひとりの魔法少女がいた。
「あっ、桂城さん!こんにちは……いよいよですね!」
「夏目さんか。……いよいよっつっても、まあやらなければいけないことは山積みなんだけれどもね。とはいえ、これで魔法少女が生きていくにあたっての最低限の保証もつく。何事もなく成功すればそれが一番だな」
緑色の髪を肩まで伸ばした魔法少女。ななかの率いる魔法少女のグループに加わり、学校では最近いろはたちのガールズトークによく混ざるようになったという少女が柔らかな笑顔とともに呼びかけた言葉に、シュウもまた笑みを浮かべながら応じる。
「夏目さんはドッペル使ったことあるか?ここだけの話、使ってないならそれに越したことはないんだけどな」
「え、ええ……?」
「俺が言うのもなんだけどアレあくまで魔女化よりはマシ、なんてラインだからな。扱いに慣れないと普通に暴走してまわりに危害を加えるリスクが付き纏うし、俺だってそれまともに浴びて死にそうになったし。ほら、水名神社の時とかななかと助けてくれてただろ」
「……あー、フェリシアちゃんに潰されて、いろはさんに絞め落とされてたっていう……なんで生きてるんですか……?」
「生まれつき頑丈なんだよ」
「──しれっとした顔でよくもまあ言うものネ、魔女紛いに踏み潰されるもの絞め落とされるも尋常な肉体では即死して当然だろうに」
呆れ顔で口を挟んだのは、長く伸ばされた青い髪を左右で編み込んだ少女。かこと同じく、ななかのグループに属す彼女はチャイナ風の衣装に変身して戦う魔法少女だった筈だ。
「……あっ、美雨さん!話すのは初めてだったかな。桂城さん、こちらは私のチームメイトで──」
「ああ、話はななかから聞いてるよ。安心して背を預けることのできる頼れる仲間が居るって……。桂城シュウだ。よろしく」
「純美雨。……フゥン、アナタが……。私もよくななかからアナタの話聞かされてるネ、男の話題にしてはいまいち浮ついたことは話してくれないけども……随分と信頼されてるみたいネ?」
手を伸ばされるのに応じ握手を交わす。魔法少女になる前からなにかしらの武芸でも嗜んでいたのか、握り合う掌からは積み重ねてきた鍛錬の跡を伺わせる感触が返ってくる。
確か……ななかが魔女守のウワサを打ち破るにあたっても活躍した立役者だったか。無法の性能を誇る魔法ばかりが印象に残っていた相手だったが、いざ顔を合わせてみれば相当に『動ける』のも察せられた。
「……」
美雨の方もほんのささいなふれあいに何か思うところがあったのか、手を握り合いながら僅かに目を見開く。やがて顔をあげ少年と目を合わせた彼女は、にこやかに笑顔を浮かべ囁きかけた。
「機会があれば立ち合いの一つも所望したいところネ。人間拳を交わしてみれば、言葉だけではわからないものもよくわかる――。あとは純粋に、その異様な肉体についても興味がアルヨ」
「カラクリはまあ単純なもんさ、気が向けば教えるよ」
笑顔が本来は威嚇の用途だったという言説を語ったのは果たしてどこの誰だったか。笑顔の筈なのに好戦的にさえ感じる表情で囁かれた言葉に苦笑する少年は、そこで魔法少女を集める聖堂の壇上にひとりの少女が登って行ったのを目にする。
姉と比べて色素の薄い桃色の髪、力をいれて触れれば折れてしまいそうな小さな身体。魔法少女たちの視線を一身に背負うようにして壇上に出たういは、明らかに緊張しているとわかるガチガチの動作で歩いて行く。やがてマイクの据え置かれた中央で立ち止まった彼女は、何度か深呼吸をしてマイクのスイッチを入れた。
聖堂に荘厳な音楽が流れだす。
『え、えー、本日は私たちマギウスの……(えっなにこの音楽!? リハーサルとぜんぜん違うよねどうなって――)え、えー、自動浄化システムの展開計画に来場いただきっ、ありがとうございます! 今回の計画では魔女化を防ぎドッペルを具現化させるシステムを神浜全域に展開、いずれは全世界を覆うまで拡大していくことを目標にしています。――灯花ちゃんっ、ねむちゃんっ』
『はいはーいっ、ういお疲れっ。――こほん、これから始める儀式は私たちのもつ3種の固有魔法を組み合わせて魔法少女を魔女へと至らせるプロセスに介入してのものになるよ、具体的には――』
『ワルプルギスの襲来後に再編された新生「マギウス」は救済の核となる僕、灯花、ういを中心に僕たちを支えてくれるメンバーで構成されているよ。今回自動浄化システムの再展開を行ったあとは――』
「……あんな小さな子どもたちが最近まで神浜市で巻き起こってた大異変の中核だっただなんて夢にも思わなかったネ。それも、魔女化だなんてどうしようもない代物までひっくりかえそうだなんて……」
「本当に凄い話ですよねっ。……あれ?シュウさん、一体どこに――」
「――流石に、何事もなくとはいかないか」
「そうですね。智江さんが警戒していた通り、自動浄化システムの展開を前に襲撃が来ましたか。あの人の推測では、来るとしても軽い偵察程度のものだろうとのことでしたが……」
音楽とともに警護の任を任された者たちに共有されたのは、フェントホープ襲撃の報。地下聖堂を飛び出し人っ子ひとりいない回廊を高速で走り抜けるシュウは、合流したななかとともに襲撃者が現れウワサと交戦しているという正門へと向かっていた。
「いろはは?」
「ういさんたちのところに。彼女さえ控えているのなら儀式に邪魔が入る可能性はないでしょう」
「そうだろうな――。おっ、マジで来たか。速いな――」
ガッッッッ
高速で駆け抜けていこうとした黒い影、その胴を抉るようにして振りぬかれた拳に薙がれたヒトガタが調度品の数々を蹴散らして転がり壁に激突する。
その頭を貫くように投擲された黒木刀。壁面に半身を埋めた格好になっていた黒衣めがけ飛来した凶刃は、しかし身をよじらせたソレが真横に跳躍したことで難を逃れていた。
「……」
「シュウさん?」
「……いや。嫌な手応えだったもんでな」
──
「ななか、絶対にこいつを向こうに通すな。こいつは、多分──」
にたあ、と。
目深に被った黒衣の内側で、それは笑みを浮かべ──。突貫した。
黒木刀を捨て、身軽さを手に入れた少年は突き出された拳を捕らえそのまま捻り上げながらへし折る。
『──えっ、私がマギウスのリーダーなの? お姉ちゃんや灯花ちゃんじゃなくて?』
『正確には、いろはや灯花、ねむ、うい。全員がマギウスとして新生マギウスの翼を率いる魔法少女になってもらうことになるね』
『私は相談役として携わらせてもらいます。一歩引いた立ち位置でしかできなきことはありますし……あと、申し訳ありません。これからプライベートが少し多忙になりそうで……』
ねむに渡された黒羽根の装備、投げ放たれた黒鎖は一気に伸び上がってななかに腕を斬り落とされた黒衣の脚へ絡みつく。掌に返ってくる重い手応え、およそ確信に近いものになる推測に、少年の顔が苦々しげに歪められた。
『魔法少女をなるだけ集め、儀式を開始する前には供給したグリーフシードで浄化してもらおう。事前に穢れを吸い取るだけでもういの負担はだいぶ減る』
『そうだね。あとは……3種の魔法を取り込んでシステムそのものとなり、ういたち3人が神浜にいなくても穢れの吸収とドッペルを維持する「核」が必要だけど──この子の力を借りよう』
『モッキュ!』
『キュゥべえ!』
『ミニキュゥべえ、そういえばコイツ居たな。……もしかして婆ちゃん、イブやらワルプルギスやらの騒動に紛れてずっとコイツモルモットにしてたんじゃ……』
露わになったソレの顔に、ななかの剣筋が鈍った。
顔を覆っていた黒衣を剥ぎ取られながらも斬撃を紙一重で回避、カウンターで少女の首を狙った襲撃者の胴に、縦横無尽に操られる黒鎖に仕込まれた刃がつきたてられる。直後に壁へと叩きつけられた襲撃者が身動きを取り戻すよりも早く、覆いかぶさる影があった。
『うい。……規模も縮小し、万全を期したサポートもあるとはいえ、それでもこれは一度失敗して、お前が魔女になったのと同じ要領で行われる計画だ。すべてはういと、ねむと、灯花、3人にかかっているが……お前の魂にかかる負荷は、1番大きい。本当に、大丈夫か?』
『うん、平気だよ。……そんなに心配しないでってば、お兄ちゃん』
『そら心配にもなるさ、妹だぜ?』
『……妹、かあ。……そうだよね……』
『あ?』
『ううん、なんでもない。……本当に平気だよ、お兄ちゃん。お姉ちゃんややちよさん、ななかさん、フェリシアさん……大好きなみんなの未来を守るための計画に、私の力が役立てるっていうのが、私は本当に嬉しいんだ』
『だからね、お兄ちゃん。私は頑張るよ。──絶対に、この儀式は成功させてみせるから──。だから、終わったらたくさん褒めてほしいな』
『OK、たくさん褒めるしたくさん労うよ。……打ち上げはいろはたちと旅行にでもいこうか、好きなもん食べて好きなように遊ぼう』
『ご、ご褒美が豪華すぎない……?』
振り上げた拳へ巻きつく鎖、鋼の鉄拳と化した拳骨を照準する。
四肢を拘束され、身動きを封じられた襲撃者に逃げ場はない。
「──可愛い妹が、いま全身全霊で頑張ってるんだ」
聖堂の方向へ、魔法少女から抽出された穢れが向かうのを知覚する。
全ては、ここから始まるのだ。
自動浄化システムの樹立がハッピーエンドに直結するわけではない。世界全域へとシステムを拡げ魔女を絶滅させるまでは今後も命を懸ける戦いが続くだろうし、何より敵は魔女だけではない。大団円の結末を望もうとするならば、これまで以上に力を尽くし自分たちを襲う猛威に立ち向かう必要があるだろう。
そして──今も、みんなが笑顔で生きていられる未来のために、大切な妹たちが全力を振り絞って戦っている。
「邪魔だ、お前は」
襲撃者に、対抗は許されなかった。
フェントホープの一角を揺らした、致命の一撃。
それを頭部に受けた襲撃者は罅割れ、砕け、跡形もなく粉砕される。
蹂躙され尽くした廊下、しかし襲撃にあたって門で対応していたウワサが損傷した以外に怪我人はなし。
敵のいなくなった空間でななかとともに息をついた少年に、聖堂にてういたちのサポートをしていた老婆から連絡があった。
『──儀式は完了したよ。神浜全域に自動浄化システムが拡げられ、ういたちも消耗はあるが無事だ。……邪魔者は消えたかい?』
「ああ、ななかと対応した。……それについて悪い報告がひとつ」
何もさせずに一方的に屠りさったあととは思えない苦々しい余韻。歯噛みする少年は、ひとまずは成功した計画に安堵しながらも険しい表情で報告した。
「ミラーズに魔法少女を単独で立ち入らせるのはもうやめておいた方がいいだろうな。厄介なのが出てきた。……俺の脚力、腕力、頑丈さ。
鏡の魔女とやらは、随分と嫌がらせが得意らしい。
自身とまったく同じ容貌、身体能力を有した襲撃者。
砕かれ消えていった少年のいた破壊痕を苦い表情で見つめながら、シュウはうんざりとした調子でひとりごちた。
お婆ちゃん共依存をハッピーエンドにするためにそこそこスペック盛ったのに公式からお出しされた鏡の魔女が普通に上位互換だったの苦笑いになる、マジでどうすんねんこいつ