環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった 作:風剣
気さくに話すことのできる友人というのは本当に得難いものだと、少年は思う。
シュウからすれば、なんでも気軽に話せる関係というのは仲が深すぎても浅すぎてもよくない。とてもではないが
とはいえそれも、なにか間違えれば無遠慮に相手の地雷を踏むことになりかねない関係であるのと同義である。
──具体的には、モデルもこなす大学部随一の美女や熱愛やってる恋人をはじめとした可愛らしい美少女との同棲生活を楽しんでいるのが発覚したり。
──いろはという最高の恋人がいながら、温泉旅行での暴走を境にもうひとりの異性と関係を作ったり。
友人たちと遊び終えたらそのまま住まいへと直行、そんな美少女たちとともにハロウィンパーティを楽しむ予定であったことをうっかり口を滑らせてしまったり。
「許せねえ」
「もげてまえダボカスが……」
「物凄い怨嗟を感じる」
つまり、絶賛友情の危機だった。
駅前のカラオケに集まり通信対戦のゲームをしたり歌を歌ったり。時計の針が5時を過ぎたところでお開きにしようとしていたシュウは、目をかっぴらく友人たちに詰られ苦笑を浮かべる。落ち着け落ち着けと憤怒の形相を浮かべる2人を押し返しながら弁明した。
「ちょっと待て、落ち着け? なにも一緒に住んでるからって特別なことなんてなにもないよ。そもそも女だらけの環境に男がひとりってのは相当きついんだぜ? いろはとイチャつくのにも気を使うし洗濯物だって──」
「いいか? 本当の持たざる者はな……。そういう愚痴を吐き出せるような環境にさえ辿りつけねぇんだよォ……!」
「切ない叫びやなぁ……」
怒り狂って訴えるメガネの姿には同じく友人に青筋を浮かべていた筈の茶髪の少年にさえ哀れみを誘った。
恋人が2人、妹分が3人(フェリシアなる子を含めれば4人)、極めつけは現役モデル七海やちよに高等部のムードメーカーである由比鶴乃がたまに泊まりにくる環境──。よくもそんな場所にいて男ひとりがしんどいとか言えるなと正当な怒りをぶちまける少年の罵倒を受け止めながら、シュウはしれっと返した。
「んなこと言ったってさ。同じ家で暮らしてるっつっても彼女以外の娘とかは俺からすりゃ姉妹とかとそう変わらないぞ? 逆にそのくらいの認識でもないとあんな可愛い娘らとの生活なんかとてもじゃないけどできないって」
「……ほーん?」
その言い草に口元を歪ませたのは彼が入部を検討する野球部に在籍する茶髪の少年だった。
澄ましたツラを取り繕って疚しいものなんかない、ホントダヨと主張するシュウにありありと疑念の眼差しを向ける彼は頬杖をつきながら問いかける。
「じゃあその言い分がホンマならあの子はどうなんや。ほら前遊びに行かせてもらった時に会った、金髪の──そやそや、フェリシアちゃん」
「ありゃあ間違いなく妹だよ妹。なんだかんだで構ってもらいたがりなとことか末っ子感あるぞ」
「それじゃあ……さなちゃんて娘はどうや。俺は会ったことあらへんけどその子もみかづき荘に居るんやろ?」
「あの子も妹感はある。内気だけどしっかり者の次女。でもちょっと小動物みたいでほっとけない感じはするんだよな……」
「ええそんな娘居るならちょっと紹介して欲しいわ。じゃあ……由比センパイは? あの人も結構みかづき荘に通ってるんやろ、そこらへんどうなん」
「近所のお姉さんみたいな。料理もうまいしういたちに勉強を教えるのにも付き合ってくれるしなんだかんだ細かく気を遣ってくれてて頼れるんだよな、本当にありがたい」
「お前の人生ギャルゲーかなんかか? そしたら七海やちよさんとかどうなんねん」
「……」
僅かな沈黙、しかしせっつく視線は黙秘を許さない。
一瞬躊躇って、まあこいつらなら特に遠慮しないでもいいかと割り切った少年はあっさりと白状した。
「……えっちな大人のお姉さん」
「それもう完全に家族扱い失敗しとるやんけ!!」
「……しゃあねえだろ~~? えっっっろいぞあの人……。正直年上の女の子とか守備範囲ではなかったんだけどさ、やちよさんで認識変わったぜ……。俺がもし独り身だったら普通に惚れてたと思うわ、マジで凄いぞあの人……」
魔法少女衣装の破壊力を友人たちに説明することができないのは歯がゆいところだった。やちよは体格こそスレンダーなものだが、一度変身してしまえばすらりとしたボディラインにぴっちりと合う蒼いドレスと深いスリットから覗く腿から爪先までの美しい脚が当人の容姿と相まって凄まじい破壊力を叩き出す。スケベな魔法少女衣装ランキングでもあればトップ3に食い込むのは確定の美しさと性的な魅力を醸す姿であった。
シュウが一番卑猥だと思う魔法少女衣装はいろはのソレであることは余談である。
「……お風呂覗いたこととかあったりすんのか」
「しねえって、俺だってあの娘たちに嫌われかねないことをするつもりはねーんだよ。フェリシアには一回覗かれたけど」
「こいついろはちゃんと一緒に風呂入ってるって聞いたで」
「たまになぐあぁー」
とうとう拳が入った。
固く握られたメガネの拳。胸倉を掴んできたどんどんと叩きつける少年は嫉妬と憤怒で鬼のような形相をしている。その背後ではエセ関西弁がゲラゲラと笑っていた。
「なんでっ、なんでお前そんな羨ましい環境でっ、ゆるせねえだろうが、お前、お前ェーーッ」
「はっはっはっ、悪いけど女性陣はともかくお前らに対しては特に引け目とかないんだわ」
1発は甘んじて受け、2発はじゃれあいとして受け取り、3発目で正当防衛に移った。
ギブギブギブと『握られ』るのに音をあげ掌で腕を叩くメガネを解放するシュウは、スッ…、と便乗して殴り倒しにいこうと腰を起こしていた友人がおとなしく着席するのに苦笑する。
「あーあー、未来のホームラン王さまが羨ましいことこのうえないわあ。甲子園で有名になったあとにマスコミからシュウのことについて聞かれたらお前の女性関係全部ぶみまけたってもええか?」
「恐ろしい脅し文句やめろよ俺のはマジで洒落になんないんだからよぉ!」
「でも正直そんなことするよりも先に背中刺されるのか早そうやなってちょっと思うで」
「やめて」
口元を引き攣らせた少年が既に大喧嘩で矢に貫かれナイフを突き立てられる実績を解放しているのを誰が知るだろうか。トラウマを思い出して震え声をだすのに笑い声をあげる友人の様子を眺めながら、シュウは遠い目になっては力なく笑った。
***
(――とはいってもまあ、流石に後ろから刺されるだなんてことはないだろうけどもな)
ほんの少し前に日の沈んだばかりの仄かに明るい夜道を歩きながら、少年はカラオケボックスで友人たちと交わした会話を回顧し嘆息する。
少なくとも、彼が惚れ込んだ少女や親しくする魔法少女たちにはそういう趣味はない。もしそういった兆候が伺えたのならシュウだって関係を改めるのも検討していただろう。
……もう一度、いろはと
(――ああ、いや)
そこで思い浮かべたのは、ある夜、打ち上げ旅行初日のこと。
――あの晩のように正気を喪って誰かを貪るようなことが、再び起きるようなら。いろはに自分を■してもらうのも、ありかもしれないが――。
「……まあ。そんな間違いがないようにするだけか」
ハロウィンの飾りつけがされた街並みを抜け住宅街に入れば、すぐにみかづき荘が見えた。
他の子たちはもう既にハロウィンパーティの仮装を済ませているだろうか? シュウはねむが用意してくれると言ってくれたウワサでそのあたりを済ませる算段はつけていたが、もしかしたら他の少女たちも相当本格的な仮装となっているかもしれない。
「(やちよさんもいるし、そこらへん平気だとは思うけど……あんまり過激な仮装でなけりゃいいな、血腥いのとか──)」
片手に買い込んだ菓子を詰め込んだ袋をさげ、扉の鍵を開く。
ただいまーと声をかけながら、玄関にシュウは足を踏み入れ──。
「シュウ!トリックオアトリート!」
「──過度にえっちなのとか不味いと思うんだよなあ⁉︎」
「わぷ⁉︎」
出迎えたフェリシアに向けて脱ぎ捨てたコートを叩きつける。
顔面で上着をキャッチ、視界も塞がれたたらを踏み掛けた金髪の少女はコートを取ると憤慨の表情を露わに声を張り上げる。
「あっぶねえなあシュウ!いきなり何すんだよ!」
「……悪いフェリシア、取り敢えず何も聞かずにそれ着といてくれ。というかそれ、何? え、なに?」
「あぁ? これがどうしたってんだよ、ハロウィンなんだからそりゃ仮装くらいするだろー?」
「嘘だろ」
頭に角と黒い耳を取り付けた金髪の少女は牛柄のキャミソールとミニスカートを身につけていた。
あるいは、それがもう少し幼い少女が着ていたのならシュウだってこうも過剰な反応をすることはなかっただろう。
しかし対象年齢が少し低かったのだろうコーデは13才の少女が着ると大きく露出が増え、加えフェリシアの発育が同年代の少女と比べても大きいことも相まって著しく犯罪感が増している。何故かその首元にはごつごつとした首輪がつけられているのも拍車をかけていた。
がくりと首を折る少年は目元を覆う。なるべくフェリシアの姿を視界に入れないよう努力しながら、少年は精一杯声を絞り出して問いかけた。
「マジ……マジでさ、フェリシア、その恰好なに……? いや、仮装なのはわかる、わかるけど──。……全体的に不味くね……?」
「? なんだよ、魔法少女のときの恰好とたいして変わんねえぞ?」
「えぇ……?」
そうかな……、そうかも……。
言われてみればやちよやいろは、その他ドスケベ魔法少女複数名の影響でいまいち目立たなかったもののフェリシアのそれも相当に露出のでかい部類だった気もする。いやそれにしてもこれは、やばい、やばくない……? と素朴な疑問を覚えるシュウだったが、いつまでも玄関前でたむろしているわけにもいかない。フェリシアへの追及も断念した彼は、牛さん仮装の少女にお菓子を預けると甘い匂い漂うみかづき荘に足を踏み入れる。
(まさか他の娘らまでンな恰好ってことはないだろうな、もしそうだったら俺とても顔向けできねえぞ……)
緊張故か、尻から足にかけてがやけに痒い気もした。
老婆がミラーズに遠征している以上やちよが唯一にして最大のストッパーだ。その監督下にあったフェリシアがこうである以上、もし他の娘らまで際どいラインすれすれの衣装を着ているようなら大人しく避難するのも選択肢としてはありえた。
──そんないやらしい妄想が妄想で済めばいいが。少なくとも少年には、際どい路線で攻めてきそうな相手に少なくとも2人ほどは心当たりというものがある。
(……無防備すぎるのも考えものだと思うんだけどなぁ~~~~)
「あっ、シュウさんお帰りなさい! ……どうかしましたか?」
「……いや、帰ってきたらいろいろ心配になってたからさなちゃん見て安心してさ。猫の仮装可愛いね、似合ってるよ。……痛ってフェリシア今のは痛かったぞおま……!? 悪かったよお前も可愛ぃっ、なんでもっと強く蹴ってくるんだお前ッッ!?」
「うるっせーばーか!」
向う脛を押さえ跳ねた少年を置き去りにして金髪の少女が走り去っていく。その耳が赤くなっているのを目にしたさなが目を丸くしてはくすりと微笑む。足を押さえていたシュウが恨みがまし気に視線を向けているのに気付くとびくっと
「ふふっ、ごっ、ごめんなさいっ、フェリシアさんが可愛くてつい……」
「いや、それはまあ良いんだけどな……。ったくあのガキ……、にしても」
随分とリアルだなあと視線を向けた先、薄地のガウンのうえから髪に似た色合いのカーディガンを羽織る少女の頭頂部では猫耳がぴくりと震える。腰から生える尻尾も含めてとても偽物には見えないと顔を寄せたシュウは恥ずかしそうにして尻尾を隠そうとするさなをじろじろと観察した。
「しゅ、シュウさん恥ずかしいですよ……!」
「いやいや恥ずかしいだなんてことないって、可愛いよ。……それ本物だよな? もしかしてねむのウワサにでも付けられたりしたか?」
「は、はい。……もうシュウさんにも付いてますよ?」
「ははは、俺がぁ?そんなまさか――」
「ほら」
背伸びして腕を頭へ伸ばしたさなが、シュウの頭に触れる。
頭部から伸びた尖った耳が、細い手で撫でられた。
「狼男さんのコーデですね、これ……」
「…………………………………………マジかあ」
少年は需要を理解していなかったが察しはした。
私室に素早く戻った少年はベッドのうえに畳まれていた衣装を確認するなりとっとと制服を脱ぎ捨て用意されていた装束に袖を通す。
ボロな印象を受ける前の開いた赤いシャツ、鋭く伸びた白い爪。血のりに塗れたズボンの後ろには気付けば腰に生えていた尻尾を通す穴まで用意されていた。
嗅覚も見た目相応のものになっている影響か、リビングを中心に広がる菓子や料理の匂いが部屋からでも感じ取れる。大衆のイメージするようなものほど毛深くはなくとも、室内の様子を反射した窓に映る姿は紛れもなく狼男だった。
「……ぉぉう。尻尾にまでしっかり感覚通ってんのか……、あまりさわらせたくないなこれは……」
腰で揺れる黒い尻尾をむんずと掴んでみる。ぞわぞわと形容しがたい不快感が背筋を奔りぬけた。顔を歪めて呻き声を漏らす少年は、心なし垂れ下がった尾から手を放し自身の身体の変化を再確認する。ぶん、ぶんっと尻尾を振り動きを観察していた少年は自身の姿を改めて確認すると足早にリビングへと向かった。
「あっ、お兄ちゃんお帰りなさいっ。……ワンちゃん!? すっごい可愛いよ!」
「狼だぞ。――こら灯花、尻尾触ろうとするのやめろって。そこすっげえゾワゾワするんだからよ」
「ええー。……お兄さま、トリックオアトリー……むぅー、悪戯させてよー!」
「やめい。そんなに気になるなら耳は触っていいから尻尾はマジでやめろよ。……はい、ういにもお菓子あげる」
「やった!ありがとうお兄ちゃんっ!」
みかづき荘のリビングは盛大に飾りつけられていた。盛大に飾りつけられたみかづき荘のリビングにやってきた少年は、仮装姿に興味津々の灯花にお菓子の詰め合わせセットを押しつけて悪戯を回避し軽々と少女をもちあげ片腕で抱える。
慣れた仕草でしがみつき頭に手を伸ばしては「あ、お兄さま若干フサフサ感増してる……」なんて口にして頭を撫でだす灯花を羨ましそうにみるういに気付くと狼男は無言で屈み灯花を抱く手とは反対の腕で少女を抱きあげた。
その尾を、背後から細い手がそっと撫でる。
「――」
無遠慮に掴まれるよりは余程マシだったが、それでも本能的な忌避感は寒気となってシュウを貫いた。匂いから背後の下手人の招待を察知したシュウは、半目になって妹分のひとりを見やった。
「ねぇむぅ……? 次触ったらお菓子の代わりにお前を食ってやるからな……」
「ごめんごめん、つい感触を確かめたくなって。……牙も鋭くなって凄みが増してるのにその格好だとなんだか締まらないね」
「余計なお世話だよ小悪魔め」
「今の僕たちは魔女だよ」
ねむ、うい、灯花は黒を基調としたローブを身にまとい頭には三角帽とお揃いの仮装をしていた。魔女っ子コスをする3人の可愛らしい姿は自然、妹分にクソ甘い少年の口元をゆるゆるに弛める。本気で嫌がっていた尻尾を触られたにも関わらず少年は既にねむへの態度を軟化させてしまっていた。
幼女2人を肩に担ぎ上げる少年が苦笑する。羨ましいー? とシュウに頬ずりする灯花に半目を向けるねむは、僅かな沈黙ののちに抱っこをせがむように彼へ手を伸ばした。
「俺両手が塞がってんだよなあ……」
「じゃあ私が前に移動するねー♪」
「えっ」
ふわりと、甘い香りが舞った。
よじよじと少年の腕に肩に手をかけて真ん中に移動したシュウの首に腕を回した灯花はそのままぎゅうとしがみつき密着する。目を見開いたういとねむが見守る中で頭をこてんと肩に乗せた彼女は満悦そうに笑みを浮かべた。
積極的だあ……と一連のやりとりを眺めていた鶴乃(恐らくはキョンシー風のチャイナコス)がキッチンで呟くのにシュウは返す言葉もない。より鋭くなった鼻孔は灯花の髪から振りまかれた香りに一気に満たされ彼の心臓を跳ね上げてた。
「――」
(なんだ、これ……いやこれは、いろはの――違う、少し……香水でもない、よな……?)
「と、灯花それはず、ズルいよ!!」
「え~、どうしてかにゃあ? 私はねむの場所を取ってあげたんだもん、逆にお礼を聴きたいくらいなんだけどなー♪」
「ぬぐっ」
全員ここで降ろしてお開きとかできねえかなあと満面の笑顔とともに密着する灯花に頬を寄せられながら少年は遠い目になる。
灯花の髪から嗅ぎ取れるものはいろはの匂いによく似ているが、それよりも僅かに甘く感じるのは気のせいではないだろう。積極的に頭をこすりつけてくる辺り香りに反応したのを見抜かれたのか、あるいは無意識か。パーティの準備をする鶴乃ややちよが微笑ましそうに視線を向けてくるのも彼の逃げ道を塞ぐ一因になっていた。
「ぅ、おい灯花、灯花?そろそろ、な……」
「……実験は最高かにゃあ?」
「ああ?」
「誘惑作戦♡ くふふふっ」
こいつめ……。
小さく囁きかけては満足そうに笑みを浮かべ少女はあっさりとシュウから離れる。鼻を手で覆い、今しがた嗅ぎ取ったばかりの匂いを吟味した少年はそこで呻くようにつぶやいた。
「……俺、お菓子は渡したのに結構な悪戯をされてねえかな……」
「お菓子分の配慮はしたもんっ。……どうだった? 感想を聞かせてほしいなあって」
「――」
今? この場で?
いったいどのような言葉を、吐けばいいというのか。
僅かな逡巡。
動悸も激しくなった辺りでういも降ろし、頭を悩ませ、それでも口を開こうとして――灯花がクスクスと笑っているのに、気付いた。
「あ、お兄さまもういいよ。だって――もう、答えは教えてくれてるもんね♡」
クスクスと笑う少女は背を翻して走り出し、やちよたちとともにパーティの準備へ加わりだす。
一体どうしたというのか。少年は眉をひそめ、問いかけようとして――。
落ち着きなく動く、自分の尻尾に気付いた。
「…………………………………………………参ったなこりゃ」
がっくりと項垂れ息を吐く。
穴が入ったら入りたい。久しく感じなかった手玉に取られる感覚を覚える少年は、憎たらしそうに灯花を睨み――視線に気付いては悪戯っぽく舌を出してきた少女に、小さく噴き出しては力なく笑った。
「本当……こんな調子じゃ、先が思いやられる」
妹分に思い切り誘惑されていると悪友たちに相談したらどんな反応を返してくれるか、少しだけ気になった。
長くなりすぎたので2話分け
・シュウくん:狼さん。倫理ブレーキ搭載済みだが負荷がかかりがち。
・灯花ちゃん:お兄さまの好きな匂いを割り出し済み。
・いろはちゃん、ななかさん:仮装着用中…。