環いろはちゃんと共依存的にイチャイチャしたい人生だった 作:風剣
『……あれ、おとーさん。お母さんは?』
『ああ、さっき買い物行ってくるって。化粧品がなくなっちゃったから探してくるっていってたから少しぃ……遅くなるんじゃあないかなあ』
『はあー? 別にいらねえじゃん化粧なんてさあ。せっかくの旅行なのにほんっと……』
今にして思えば、母さんはなにかと理由をつけていなくなることが多かった気がする。
パートの予定を忘れていただとか、いきつけのお店の予約をしていただとか、欲しかったものを買わなきゃだとか言っていきなりどこかに行って、帰ってきて。
それでも俺が違和感を覚えなかったのは……単純に俺が魔女だとか魔法少女だとかいったものなんて知りもしなかったという事実以上に、婆ちゃんや父さんが不自然にならない範囲で母さんをサポートしていたのもでかかったと思う。
ああ、でも――そこそこあの人は、血の匂いをさせてたか。
きっと、ずっと前から。俺が産まれるより前から、命を懸けて魔女とあのひとは戦っていて。
俺は、まったくそんなことに気付きもしないでのうのうと過ごしていた。
『あーー、……つっっかれたあ。今日はお風呂はいって寝る……』
『……おばあちゃん、お母さんってどっかケガしてんのかな』
『……どうして、そう思ったんだい?』
『血の匂いが結構ひどいよ、今日は買い物行ってただけってほんと? 婆ちゃん一緒に行ってたよな、なんかあったの? ぱっと見じゃどこ怪我してんのかとかわかんなかったけど……』
『ああ、一応気は使ってたんだけどシュウならわかっちゃうかい。いいかい、理恵ちゃんはね。……生理が特に酷くてね……』
『せいり』
『そう、女の子はね、お婆ちゃんみたいになるまでは一生それと付き合っていかなきゃいけないんだ。よく理恵ちゃんレバーとか買って鉄分取ってるだろう? 波がきついときはかなりの量の血が出ちゃうからね……。いろはちゃんのママもそうだし、いろはちゃんだっていずれはそうなってくるんだよ? 気付いたときにはいろいろ気を利かせてやりなさいね』
……………………わかる、うんわからないでもないのだ。大切なひとを魔女との戦いに巻き込みたくないだなんて気持ちはよーーーくわかるつもりだ。
いやでも、高校生になった今ではもう少し誤魔化し方はあったんじゃないかと思わないではないし……。実際に言われてみれば血の匂いする女の人がいてもそこまで気にならなくなったのそういう風に言いくるめられた影響もないではなかったし……。
――あのひとが魔女なんかになる前に、俺が気付くことさえできていたなら。魔女からだってなんだって母さんを救けて、魔女になってしまうのを防げたんじゃないか――。そんな風に考えてしまうことも、少なくはない。
そんな風に言ったとき。婆ちゃんは、複雑そうにしながら頷いていた。
『否定はできないよ。……私には理恵を助けられなかった。あの子が魔女になってしまったときだって傍にいてやれることはできなかったし、あの子が家に現れたときだって旦那や息子を守ってやれることはできなかった。……確かに、もっと早くシュウに魔法少女のことを伝えていれば、理恵は助けられていたかもしれないしもっと家族みんなで生きていられたかもしれないね?』
『……』
『けれど――もっと酷いことになることだって、有り得たかもしれない。仮に自分を助けてくれた息子が目の前で魔女に殺されたり瀕死の重傷を負ったりしたなら……理恵ちゃんはその瞬間に魔女になってしまっていてもおかしくはないからね』
それは、いつかあった選択の話。
理恵の魔法は強化。普段は自身にかけて全盛より遥かに衰えた能力を補強するのに使っていた魔法をシュウにかければ、魔力を持たない
けれど──シュウの母は、そうしなかった。絶対に、息子を頼って自身の立つ死地へと彼を招こうとはしなかった。
『結果論で言えば、ああ――失敗だね。それは否定しようもない。けれど――その選択は、「母」としては決して間違いではなかったと、私はそう思うよ』
『……』
『ただ──「どうにかできるかもしれなかった」シュウを頼らない選択を尊重した以上、私は責任をもって理恵を支え、助けるべきだったんだ。……ごめんね、シュウ。私は……』
『よしてくれよ』
すべては後の祭りだ。
母さんは魔女になった。父さんは死んだ。婆ちゃんだって……一度死んで葬儀まで済ませている以上ろくに外を出歩けなくなってしまっている。
喪ったものは取り戻せない。誰かを責めたってなんの意味もない。だから──手の届くところにいる、大切なひとたちだけはせめて、二度と喪うことのないように。
いまできることをひとつひとつ、積み重ねていくことしかできないのだ。
ああ、けれど──。
それでも、ひとつだけ。
…………母さんにとって、俺は。
あのひとが与えてくれた
***
トトトトッと小気味良く包丁の音が響く。
今日はみかづき荘で当番をするときと比べてもやや頭数も多い、材料の方も増えてくるが単純な作業であれば気楽なものだった。まな板のうえには既に細切れになった玉ねぎで山ができている――。そのまま手際よく鍋のうえにどばっと玉ねぎを落とした少年は人参の皮を手際よくスライスするとまな板のうえに乗せ輪切りにした。
「それじゃあ次はじゃがいもと……ああうん、もうわかったと思うひとも居ると思うけど今日はカレー作ろうかなって。あとはスイーツとかケーキとかも用意してるからそれで……」
・いま玉ねぎ5つくらいなかった?
・ちょっと早すぎで草
・リーダーって結構料理上手なんですね……
・告知されてるより早くから配信してると思ってたら野郎の料理配信だった、訴訟
・こいつはっや……
「えへへ、シュウくん凄いでしょっ。私がお料理をシュウくんちのお婆ちゃんに教わってたときも一緒に練習に付き合ってくれてたんだ。今は一緒に下宿させてもらってるところでも6人分のお料理を当番で作ったりもしてるんだよ?」
「おいいろは、おい」
「あ、そうだマネージャーだった……」
・違うそうじゃない
・いろはちゃん今そいつと同棲してるって言いました????
・なんでそんなこというの
・うそでしょ
・いろはちゃんが婚約まで済ませているのは公式サイトにも載ってる公然の事実ですが……(吐血)
・わたし知ってましたよ、シュウさんといろはちゃんがそういう関係なのはカミハマギカやりだした時期からずっと知ってますよ……
・配信や2ndライブから推しだした新参が脳破壊されてるの笑う
自身にカメラを向ける恋人の流す配信がどのような惨状になっているのかはコメント欄を見ずとも想像がついた。危うく切り分けたじゃがいもと人参を鍋の上からぶちまけそうになったシュウは口元を僅かに引き攣らせ恋人に声をかけるが、いろははといえばどこ吹く風といった調子で配信を行うカメラを向けるのを止めないでいる。アイドルにもなってプライバシーとか情報リテラシーといった概念についてもそれなりに指導されている筈なのだが……。
助けを向けるように背後へと視線を向けるシュウだったが、一緒にパーティの準備を進めている魔法少女たちは我関せずといった素振りで飾りつけやらお喋りやらに興じている。頼れる味方がいなかった。クソが……ッ。
溜息をひとつ。腕を伸ばしてカメラを手に持ついろはの背に手をまわし、華奢な身体を引き寄せたシュウは耳元に口を寄せ囁きかける。
「いろは。俺は一応カミハマギカの配信に出てる間はマネージャーで通してるんだ。こういう配信だって今じゃ身内以外の視聴者が大半なんだから知り合い相手みたいなノリはよそうな」
「あっ……。うん……」
もう高校生になったというのにまだ不用心なところが残っている恋人には困ったものだった。「わかったな?」と念押しするのにこくこくと頬を染めては頷くいろはの頭を軽く撫でては鍋に豚肉を投下する少年は、途端に後方からはねあがる黄色い悲鳴に仏頂面になりながらも耳をそばたてる。
「アイツほんと臆面ないわよね……」「経験豊富だとああいう仕草ひとつに色気が出るねっ!?」――ガールズトークいつも楽しそうにするよな女の子って……。呆れ顔で肩をすくめたシュウは鍋を確認しある程度具材に火が通ったのを確認しては水を注いで煮込み出す。
そうして半目で視線を向けたのは、ライブ成功記念の打ち上げの準備風景を映す配信を始めてから未だに自分を映し続けている担当アイドルの方だった。
「だいたいいろははなんでずっと俺の方を撮っているんだよ。男なんか映したって需要なんかないだろ、せっかく配信してんだからアイドルを映せよアイドルを」
「そ、それは……でもマネージャーだって結構人気なんだよ? ほら、最近は何度か動画や配信にも顔を出してくれてるでしょ? ファンのみんなもマネージャーのことが気になってるって言ってくれてるしそれならって……」
「えぇ……?」
・まさかマジで彼氏の調理光景ずっと見せられるとは思わなんだ
・映えるのがむかつく
・いろはちゃんの顔みせて
・イケメン死すべし リア充爆発しろ
・レナちゃんたち映して
・梨花ちゃん結婚して
(そんなことあるか……? いろはたちのファンなら多少スペック高い程度の男より断然アイドルの方が需要あると思うけどな……)
視聴者の怨嗟と懇願に満ちたコメント欄など露知らず、恋人の魅力を伝えるつもり満々のようだったいろはの言に胡乱なものを見る目をしてしまうシュウだったが……少女が指摘に従ってくれる分には文句はない。おとなしくカメラを仲間たちの方へ向けたいろはにひとまず安堵を露わにして肩をおろした少年は、鍋のなかで具材がほどよく煮込まれているのを認めるとぼとぼととルーを投下し鍋をかきまぜていく。
とてとてと近付く気配。配信を続けるアイドルたちの邪魔にならないように気配を潜めながら近付いてきた妹分──12才になったういたちが、彼がかき混ぜる鍋を覗き込んでは目を輝かせた。
「わぁぁっ、美味しそう!お兄ちゃんのカレー美味しいから楽しみっ、もういい匂いしてるね!」
「だろ? 野菜たっぷり肉たっぷりで栄養満点だぞ……じゃあうい問題だ。ここからもう一品俺は投下するつもりだけど何かわかるか?」
「ふーん? ……ねえねむ、昨日のパーティの準備でお兄さまなにか蜂蜜とか買ってたっけ」
「うーん。……チョコとか、あったような……」
「それだっ! お兄ちゃんたまにそういう隠し味いれたりするもんね……!」
「ほーん……」
悪くない推理だった。残念ながら正答ではなかったが……。ちなみにチョコ類は軽食枠である。
目を輝かせ己を見上げる可愛らしい妹分の回答にニヤリと笑いつつ首を振ったシュウは、ちらりと鍋を一瞥してルーがある程度溶けているのをみると冷蔵庫を開ける。なかから彼が取り出した最後の材料をみた少女たちは驚きを露わにして目を見開いた。
「えっ、お兄ちゃんカレーに牛乳いれるの!?」
「意外なチョイスだね。……美味しいの?」
「あーそういやこれういも食ったことなかったっけ? 実家で母さんがたまに作ってくれてたやつでさ、久々に食ってみたくなったから再現してみたんだ。味は保証するぞ、辛みが薄れてだいぶ甘口寄りになるけど――。……一口食べてみる?」
「はーいっ、食べたい食べたい!」
軽い気持ちでかけた言葉だったが、真っ先に笑顔で手をあげた灯花にういやねむまで続きだしたのに苦笑する。「順番にな。じゃあちょっと待てよ……」と器を用意しようとしたシュウは、隣で待機姿勢に入った灯花がわざとらしく口を開けているのに気付くと手の動きをとめた。
「あーん……」
「……こいつめ」
「ふーってしてぇ――。……くふふ、おいひ、あふ……!」
「……ほんとにするんだ……。お兄さん灯花に甘すぎな……、いる。あむ……」
「あーんっ……えへへ……」
「美味しい? なによりなにより――おっと」
もうすぐ中学生にもなるというのに一向に兄離れをする気のなさそうなういたちの反応に口元を弛めていたシュウに『私には……してくれないの??』とでも言いたげな視線がびしびし突き刺さった。
いまは指摘に従ってきっちりアイドルやってる──やってるのだろうかあれ? 特段視聴者に配慮したりもせずきゃっきゃっとガールズトークやってるだけに見えるが──パーティの準備をしてくれている恋人を待たせすぎるのもよくない。
牛乳を勢いよくぶちまけてからひと煮込みしたミルクカレーのたっぷりと入った鍋。その取っ手を掴んだシュウは慎重な足取りでテーブル席へと向かい中央に敷かれたナプキンのうえへと乗せた。
「はいお待たせー、特製ミルクカレーできたぞー」
「わあっ待ってました!美味しそう―!」
「それじゃあもうすぐ時間だしパーティも始めようっか!ちょっと待ってて、照明とマイク少しチェックしてくるね!」
「マネージャーさんの用意してくれたスイーツもたくさんありますし……もう机のうえが豪華ですね……!」
途端に色めき立つ少女たちがパーティの準備を進めるなか、全員ぶんのカレーをよそおった少年はマミに手招きされ「それじゃあマネージャーさんはこっちね!」と案内された席に座る。いろはの向かいに座る自分も含め、テーブル上を浮遊し席に着く少女たちの様子を映すカメラ蜻蛉のウワサはしっかりとカメラに収めているようだった。
――アイドル映せよアイドルを……。
じろりとねむの創ったアイ活用便利シリーズを胡乱な目で見つめるシュウだったが、息をはいた彼はういや灯花、ねむが並んで自身の隣に座るなかで沈黙を守る。
ぱちぱちと手を叩いたいろはが笑顔で声を張り上げた。
「それじゃあ、早速……カミハマギカ、2ndライブ成功記念パーティ、始めまーすっ! みんな、ありがとうーっ!!」
「(――お姉さまってこういう音頭取るのも慣れてきたよねっ)」
「(マギウスでもしっかり経験積んでるしな。最近はみかづき荘でもやちよさんに練習だのとか言われてあれそれ教えられてたりしてるみたいだし……)」
「じゃーんっ、凄いでしょうっ? みんなでいろいろと準備してきたんだよ! 今日は美味しいご飯やスイーツを食べて自分たちへのごほうびを堪能しながら、ファンのみんなから寄せられてきた質問にもどんどん答えていきたいと思っていますっ。――その前に今日は、みんなに私の大切な妹たちを紹介するね!」
・妹!?
・ちらちら準備配信に映ってた可愛い娘やっぱ妹だったんか
・今更だけどカメラの動きとか切り替えぬるぬるしててすげえな、ご当地アイドルの配信でこれはなかなかみない
・マネージャーどいて
「くふふっ……こんにちはーっ! 世界を変える神浜市ご当地アイドル、Magiusです!カミハ☆マギカの姉妹グループとして今日からデビューするよー! 里見灯花です、よろしくねっ!」
「噓だけどね。初めましてみなさん。僕は柊ねむ、そこの灯花ともうひとりと一緒にカミハマギカを応援していろいろサポートしてるよ、よろしくね」
「た、環ういですっ。ええと、今回は私たちの目標を進めていくのにあたってちょっとだけ『顔出し』した方がいいってことでっ、この場をお借りさせていただきました! カミハマギカの大ファンですっ、お姉ちゃんやみんなのこともよろしくお願いしますっ!」
「「「おーー……」」」
・かわいい
・かわいい
・ひとり凄い紛らわしかったけどきちんと自己紹介えらい
・ういちゃんがカミハマギカの曲作ってんのかな
「ういちゃんたちも自己紹介ありがとう。それじゃあ早速……」
「うんっ! カミハ⭐︎マギカ2ndライブ成功を祝しまして──」
『『『かんぱーーーいっ!』』』
音をたててぶつかったグラスが澄んだ音色をあげる。乾杯を告げてから一拍遅れての歓声、グラスをテーブルに置いた少女たちはそれぞれ並べられた自分の分のカレーに口をつけていく。
「んんーーっ、おいひぃっ。んむ……、マネージャーさんお料理上手なんですね……! いろはさんからもよく手料理してるとは聞いてたんですけれどそういうのって何時からやりだしたんですか……?」
「あー、俺はどうだったか……確かいろはが料理を始めたタイミングで実家の婆ちゃんに手伝わされだしたんだよな。小学生の頃だっけ?」
「うんっ。……ふふっ、懐かしいな。私がお料理始めたいって言ったとき真っ先に手伝ってくれるって言ってくれたもんね……。……そうだっ、シュウくん関連の質問も最近増えてきたんだよっ。早速いくつか答えていこうか」
「ねえいろは。これカミハマギカの配信なんだよ」
「いいじゃないのシュウ。アンタも仮にもマネージャーでしょ、担当アイドルのファンからの質問にはきりきり答えていく義務があるわよ」
「えぇ……」
しょうがないなあと唸りながら自分の分のミルクカレーを呑んだシュウはういの
「ええこれ答えなきゃいけないの? 取り敢えず俺の分はやるけどさ……」
「あ、それ私たちの分あるの? 3サイズとか聞かれて勝手に答えたりとかしたらしばくからね」
「言う訳ないじゃん、流石にそこは信頼してくれていいぜ」
・カメラは見た
・レナちゃんの目線から隠れて流れるように質問の用紙が握り潰されてて草
・む、無念……
・3サイズの質問あったんかいwww
・草、灯花ちゃんのジト目かわいい
・ノールックでゴミ箱に投げんの無駄に鮮やかな動きで草
Q.レッスン前の準備運動したあとのマッサージは好評でしたがまたやらないんですか? 今度するときはマミさんとレナちゃんいろはちゃんのカットもっと多めにしてください。
A.ああいうの配信ファン少ない頃の
Q.カミハ⭐︎マギカの他の娘に手は出してないですよね?
A.みんな可愛いけど出してないよ。いろはに関してはごめん俺が18になったら結婚するから……。
Q.いろはちゃんとの婚約の決め手を教えてください。
A.昔から大好きで結婚したかったけど少し前に就職先で目処がついたからそれ切っ掛けに。結婚本気で考えるなら稼ぎは欲しかったからなあ。
・嫁さんの炎上しててもまったく気にせずに惚気まくって砂糖の山で無理やり鎮火するパワースタイルちょっとどうにかしてほしい、こっちは推しの知りたくもなかった恋人の好きなところとかレナちゃんが止めてくれるまで聞かされたんやぞ
・こっちはお前と結婚したい理由ではちゃめちゃデレッデレで惚気られまくったのにお前なんだその理由は、意外と地に足立ってんじゃねえか……
・いいなあいいなあ
・結婚したかったって言ったときにめちゃくちゃニヤニヤしだすカミハマギカ好き、仲良さそう
・マッサージの切り抜き見に行ったらめちゃくちゃやべえ音だしてて草、肩が壊れた音してたのにあれできちんと効果あったとか嘘だろ‼︎
「──とまあこんなもんだな。……どうしたんだよその顔」
「べっつにいー?」
「? まあいいけどさ……。ああそうだ、ちょっと気になる質問あったからこれいろは答えてくれよ。別に変なのとかじゃないから」
「うん、わかった!」
身を乗り出して向かい側に座るシュウからファンからのお便りのひとつを受け取るいろは。席に座り直して文面を確認した彼女は、その内容をみると僅かに沈黙し頬を赤らめた。
「……シュウくんの前でこれ言うのちょっと恥ずかしいよ」
「まあ俺も気になるしな。構わないから好きに答えてもらって良いぞ」
「イジワル……」
Q.長い付き合いとのことで、マネージャーさんと婚約を約束するまでにも彼のいろいろな側面をみてきたものと思います。それらを引っくるめて将来を誓う相手として彼を選んだ理由があればひとつ伺いたいです。
「……んー……。それこそ私も保育園の頃からシュウくんのことが大好きだったし、ずっと結婚したいって思ってたけど……そうだなあ……」
ぽつぽつと呟く言葉。細い顎に手をあてて考え込むいろはは、ほんのりと頬を染めながら向かいの少年を見やる。柔和な表情で彼を見つめる桃色の少女は、口元を弛めながら囁いた。
「かっこいいところも、優しいところも、意地悪なところも、ダメなところもたくさん見てきて……私は、そんなシュウくんのぜんぶが好きだったけれど。そうだなぁ、強いていう、おっきな理由は……」
淡く微笑む少女の視線の先には、シュウの隣に座る妹たち。
きょとんとして自分を見返すういたちの姿を見つめ柔和な表情を浮かべるいろはの瞳は、どこまでも温かな慈愛に満ちていた。
「私の大切なものを、私と同じように尊重してくれて。私にも負けないくらいに、精一杯に愛してくれる。そういうひとだったから、私は……私の
シュウくん:悩みのつきない年頃。主に女性関係。
いろはちゃん:実は婚約指輪渡されたお返しで
レナちゃん:いろはちゃんのストッパー。たまにブレーキ役放棄することも多々。JKになってツンがやや減少し友だちもちょっと増えた。
マミさん:カミハマギカに入って友だちが増えてニコニコしてる。シュウのことはカスだと思っているが嫌いではない。
梨花ちゃん:ガールズトークが毎日楽しいがいろはちゃんの寄せる感情が重いのがやや気になるムードメーカー。シュウのことを心配している。いろいろと。
かこちゃん:シュウくんとその女性関係参考にした小説を書き溜めしてる。普通に考えれば地獄な筈なのに当人らは極めて仲がいいのもあってストレスなく3角どころではない関係図を観測しては執筆のモチベにしている。シュウくんのことを普通に尊敬しているが彼氏ができたら自分だけをみてほしい。切に。
うい・ねむ・灯花:めちゃくちゃブラコン拗らせてる。