壊れた嘘つきアリスを白兎が見ている   作:あくありす

4 / 5
くるしいなみだ

「織斑君の弟って、なんていうか気味悪いよね」

 

 

ある日、クラスメイトの女子がそんな事を言っていた。

それが悪口だという事は解っていた。

でも別にそれに対して悲しいだとか、この野郎なんて感想が浮かぶわけでも無く。

ああ、そうなんだと納得するだけである。

 

 

「だよねー、なんかいつも無表情で何考えてんだかわかんないし」

「まったくだ。 十春と血が繋がっていると考えただけで反吐が出る」

「そういえば笑ったり泣いたりするトコ見たことないかも!」

「あ、私も!」

 

 

無表情。

意味は判る、表情が無い、つまり喜怒哀楽という感情の起伏が顔に現れない事。

そう聞いて、ふと考えてみる。

涙は出る。

そもそも出なかったら今頃失明している。

そう言えば泣くのってどんな時なんだろ?

笑う時は判る、嬉しいときだ。

じゃあ泣くときは?

 

 

あれ……どんな時だっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、いい加減に起きやがれ!」

「ぐ……ぁ、っ!?」

 

 

鳩尾に、刺すような冷たい衝撃を感じると共に、意識が引き千切られるように無理矢理覚醒された。

今すぐにでも腹を抱えて転げ廻りたいところだが、肩が回らずにただ呻くことしか出来なかった。

暫くして、足と腕が椅子に括られ縛られている事に気がついた。

 

状況が、飲み込めなかった。

 

痛みと、焦りと、不安と、恐怖……逃げ場の無いマイナスな感情によってかき混ぜられた深い宵闇のような黒い渦に、絶望が引き立てられた。

思わず呼吸が荒くなるが、鳩尾を蹴られた痛みによって、腹部に引きつるような痛みが走り、呼吸さえままならない。

 

 

「よぉー、漸く起きやがったなガキ」

 

 

ハスキーな女性の声が聞こえた。

恐る恐る顔を上げると、目つきの悪い女性の顔が見受けられた。

衣服はライダージャケットのようなレザー製のもので、顔を悟られないようになのか、髑髏の顎のデザインのフェイスガードによって顔の下半分が覆われていた。

 

 

「これからよぉ、オレに殴られて絶叫して貰わなきゃならねぇんだわ」

「な…ん、で?」

「何でだぁ?! んなこと、一々説明してやる義理なんざ、ねぇんだよ!」

「ぅあ!?」

 

 

鼻が、潰れたかと思った。

椅子ごとひっくり返り、背中から床に落ちた。

唇から、鼻から、血が滴り落ちる。

血が、唾液が、鼻水が、なんだかよくわからない粘液が顔から零れ落ちてくる。

痺れる、どこがとか具体的な事がわからないくらいにジンジンと痛みが響く。

 

 

「きったねぇ面構えになったなぁ、あぁん?」

「! かひぃ……ぅ」

 

 

胸を踏みつけられ、肺から空気が無理矢理迫り出される。

体が酸素を求めて口をパクパクと金魚のように開く。

ヒューヒューと笛のように気道が鳴り、その音が更に息苦しさを助長する。

 

 

「おいおい、もっと派手に鳴いてくれねぇかなあ! それじゃあマイクが拾わねぇぞ?」

 

 

顔を踏みつけられながら、その言葉に気になる点が見つかった。

マイク?

先ほどの発言から鑑みるに、誰かに僕の声を、悲鳴を聴かせたい?

 

状況が急過ぎて、最初の思考が痛みだったから気づかなかったが、僕は誘拐された上で暴行されているのだろう。

その前に何があったか、痛くて記憶を遡るのが億劫だが、学校から帰宅する途中だった気がする。

 

さて、僕を誘拐するメリットは何だ?

身代金? 生憎、ウチは篠ノ之家にお世話にならなければ明日食うにこまるような経済状態だ。

篠ノ之家……篠ノ之、束、束さん?

 

IS、束さんを脅迫してISを作らせるつもりなのか?

 

 

「つまんねぇなあ……なんでてめぇみたいなガキが拷問慣れしたみたいな顔してんだよ」

 

 

襟を掴まれ、体ごと引き寄せられた。

僕の顔をまじまじと見ながら、そう言われた。

 

 

「んじゃま、お願いを聞いてくれるまで待ってっか……指の骨でも折りながらな!」

 

 

パキン!

軽く、弾ける様な音が指から鳴った。

 

 

「あ……っ!?」

 

 

パキン!

 

 

「まず一本、次二本目な」

 

 

指に、手に、腕に、頭に、何かが広がる。

痛い。

苦しい。

熱い。

 

 

「あ、あ……うわあああああああああああああああああっ!?」

 

 

嫌だ、何だコレ。

堪え、られない。

誰か、助けてよ。

 

 

「ひゃはははははっ! やっと鳴きやがったなぁ! なかなかにイイ鳴き方じゃねぇか!」

「ぎっ……たいいいいいぁぅぁぁああああああああああああっ!!」

 

 

 

ああ、そっか……

 

涙って苦しいときに出るものなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリスは知らない世界に連れていかれちゃった。

 

見たことない、聞いたことない、嗅いだことない、触ったことない。

 

初めての世界に連れていかれちゃった。

 

アリスは涙を流します。

 

早く帰りたい、と。

 

だけれども、初めて来たから帰り道も解りません。

 

近くには怖い怖い赤い兵隊さんもいます。

 

でもね、アリス。

 

心配しないで。

 

知らない世界でもアリスの味方をしてくれる人はいるから。

 

ほら、いた。

 

後ろを見てごらん。

 

 




生きてた。

自分でもびっくり四か月ぶり。

血も涙もないって死んでるよね。
人でない、人でなし。

涙は心のずっと奥のほうからやってくるそうです。
同年代でこれが通じる人って案外少なかったりするのかな?
あ、でもなんかのCMでカバーっていうか口ずさんでた気がする。

じょぉーねーつのあかいばらー
あ、なんか違う。
赤いと真っ赤の違いだけで大分印象違うよね、不思議。

続きは来週?来年?来世?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。