渋谷凛の弟はお世話になる。   作:IOTR

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渋谷清 からまれる。

「おっ!しぶりーん!と、清くんも!久しぶりー!」

 

「こんにちは凛ちゃん!清くんも、おはようございます!」

 

未央と卯月の声がプロダクションの一室に響いた。

視線の先には、ソファーに座ってお喋りする姉弟の姿があった。

 

「未央、卯月おはよう。」

 

凛は軽く手を振って答えた。

 

「…おはようございます。島村さん、本田さん。」

 

少し間があってから、頭を下げて清は挨拶した。しかし、目線は若干2人の上だ。まだ、緊張が抜けないように見える。

それを見て凛はふっと笑うと、清の頭を撫でた。

そんな姉弟の仲のいい様子を見て、未央が言う。

 

「やっぱ、しぶりんが羨ましいよ!そんなに仲がいいのは羨ましい!」

「そうですね…互いに信頼し合ってる感じがします。」

 

未央に続くように卯月が顔を輝かせながら言った。

 

「そうかな…別に普通だと思うけど…。」

 

凛は努めて冷静になんでもないふうに言ったが、口角が上がっていた。やはり、弟との仲は良さそうである。

未央と卯月は、2人顔を見合わせて笑った。

 

「ところでさ!何話してたの?」

未央が凛と清に問いかける。

 

「ああ、清の宿題についてだよ。休日の間にする課題が出てたんだけど、清が終わってなくて…。

それで、今日が約束の日だったしどうしてもついてくるって、聞かなかったから、これから暇な2人に教えてもらいなって話してた。」

「あー、しぶりんはこれからダンスレッスンだもんね…、よし、そこまで会いたいと思われたからには、この未央ちゃんが一肌脱いじゃうぞー!」

「私も精一杯お手伝いさせていただきます!」

「…ありがとうございます。」

 

清は姉に、2人に会いたいから来てしまったと思いっきり暴露され、顔を赤くしながらも、お礼を言った。

大好きで憧れの的に、なんてこと言うんだと内心姉にブーたれなるが、一緒に勉強し、話すことができることに嬉しさを感じていた。

 

「あ、もう時間だ。私、そろそろ行くね。」

 

凛が壁掛けの時計を見ながら、ドアへ駆ける。

 

「はい、凛ちゃんいってらっしゃーい!」

「また後でね!しぶりん!」

 

凛は出口の前でくるりと回ると、

「…清に変なことしないでね。怒るから。」

 

半眼で主に未央を見ながら、言い放ち、部屋を後にした。

未央はえへへと苦笑いしたあと、

 

「…大事にされてるんだね。」

 

そう言って清に笑いかけた。

清は恥ずかしそうにしながら、それでもしっかりと頷いた。

 

 

「さてさてさて!さっそく清くんの宿題をやりますか!」

「そうですね!早速取り掛かりましょう!宿題はどれですか?」

「これですね。」

 

清は漢算数のプリントを取り出した。4枚ほどしかも、表裏どちらも印刷してある。

 

「意外と多いねー…」

「ですね、でもやっていきましょう!」

 

卯月が両拳をくっと握った。

 

 

 

宿題をやるにあたって席を決めたのだが…3人で教わる立場が1人である以上、必然的に清が未央と卯月に挟まれる形になった。

さらにその距離は近く、少し動けば体が触れ合う距離であった。

そして、追い討ちのように清にとって衝撃の発言を未央が言い放った。

 

「清くんさ、私とのこと未央ちゃんって呼んでみて!」

「え!?」

「いや、今のままじゃ固いからさ!なんなら敬語も崩してみようよ!」

「私のことも卯月ちゃんって呼んでください!」

「…」

「ほら!み・お・ちゃん!」

 

 

「………ぃみ、未央ちゃん。」

 

すぐ近くで未央の声が清の耳朶を震わせる。

清は真近で、顔を見る恥ずかしさのため、上目遣いで、震える声で、赤い顔でその名前を恐る恐る呼んだ。

 

未央は何故か込み上げてくる愛しいものを感じた。

 

「…なんだろう、私今、とっても満たされた気分だよ…。」

 

未央は恍惚とした表情を浮かべていた。

 

「わっ、私も、卯月ちゃんですよ!ほら、う・づ・き・ちゃ・ん、ですよ!」

 

卯月は自分の顔を指さしながら、催促する。

 

 

「……ぅ、卯月…ちゃん?」

 

 

先程とは違い、清の目は潤んでいた、さらに先程と同じように恥ずかしさと、上目遣いと、さらに体は若干恥ずかしさが度を越したため震えていた。

凛々しい姿とのギャップが著しかった。

 

卯月は何か新しい感覚が自分の中で生まれたのを感じた。

 

「なんでしょう、なにか悪いことをしている気になりますが、癖になるかもしれませんね〜…。」

 

卯月は困ったように笑いながら、緩まる頬を止めることが出来なかった。

清からかなり渋られながらも名前呼びは続行された。

慣れない名前呼びと勉強会は続く。

解ける問題を解いている時でも、2人は熱心に清を見つめており、清は顔が熱くなった。更に、ハミングや、いい匂いが耐えず、流れ続けており、集中が出来ないでいた。

また、質問する時にも、

「ぅ、卯月ちゃん…?」

「はい!なんでしょう!」

「ここの問3の文章題が、…、ここが分からなくて、教えてください。」

「はい!えーとここはー、…」

 

しばらくして、卯月の腕が清に触れる。その腕は柔らかく、つきたてのおもちのようだった。

本人は気づいていないようで、卯月が考える時間が長くなっていくほど、机の上に乗り出して、さらに清との距離が近づいていく。

 

「21個の飴を…ふむふむ、清くん?えっと、これをね、……」

 

説明は続いているが、卯月の綺麗で無防備な横顔を見て、かーっと顔が熱くなったが、清は大好きなアイドルを押しのける訳にもいかず、恥ずかしさで熟れたトマトみたいになりながら、回らない頭で考えた。卯月は桃の香りがした。

 

さらに、

 

「み、…未央ちゃん!」

「はいはい!」

「ここの割り算なんだけど…、合ってるか確認して欲しいんです。」

 

「これは、うんうん、合ってるね!偉いよくできた!」

 

未央は清に、ハイタッチを促したあと、思いっきりハグした。

 

「ン!? ッ~~~!」

「よぉし!もうちょっとだね。頑張ろう!」

 

未央はぐっと握りこぶしを突き上げた。

 

清はもはや何を考えているか分からない頭で問題をときながら、申し訳なさと恥ずかしさと、少しの嬉しさで顔がなかなか赤から戻らなかった。

 

なお、レッスンを少しだけ早く終わった凛はこの状況を見て、凛が見ていない所での清への過度な接触は禁止というルールが作られた。あと、清にもいくら大好きと言っても、少しは拒むようにと伝えたのだった。

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