清は、かかとを弾ませながら346プロの廊下を歩いていた。
凛に迎えにきて欲しいと言われたのだが、あの神谷奈緒、北条加蓮と一緒であると言うのだ。
ふたりは姉である凛とユニットを組み、数々の番組に出演していた。凛の出ている番組をほとんど把握している清は、この2人のファンになってしまった。その憧れのアイドルに会えるかもしれないという期待感から、清は浮き足立っていた。
ウキウキしながら清は持っていた手提げカバンからケータイを取り出し、壁を背にして、姉にもうすぐ着くよと、入力する。隣の少し空いた扉には気づかずに。
がさり、と音がした。そちらを清が向いたと同時に
体がグンと引き込まれ、ケータイが手から離れていく。
一気に暗くなったことで、周りが一切把握出来なくなった。
真っ暗になった視界の中で鼻腔をくすぐる甘い匂いだけが際立つ。
そして誰かが清に蛇のように抱きついた。
それは、スリスリと清の体に頬擦りをして、鼻をスンスンとならす。
暗闇に
「にゃはは〜。やっぱり〜。凛ー!」
その柔らかく蠱惑的な声は姉の名を呼ぶ。
しかし、違和感に気付いたのか、小さな疑問の声を漏らし、もう一度すんすんと鼻を鳴らす。
その手はぺたぺたと清の輪郭や体を確かめ、1つの結論を出した。
「凛じゃない!」
その声とともに巻きついていたものがサッと離れる。ガタッと音がして、清の隣に何かガラスのようなものが落ちる。
パリンという硬質的な音と共に、ぼうっとそこが淡く光った。
暗闇の中、ケミカルな蛍光色に照らされたそれは猫のような目をした女の子であった。
「あれ?凛の匂いのする男の子?」
そのまま、彼女の指は違いを確かめるようにゆっくりと清に触れる。
頬、顎を滑らかな指が滑る。
触れてから、撫でるようになるまで時間はかからなかった。
清の頬をすりすりと柔らかく滑る。清はその女の子に縫い付けられたように目が逸らせない。
「へー、キミ、凛の何〜?」
頬が熱を帯びると共に、水晶のような瞳が近づいてくる。薄ぼんやりと光る室内でその瞳は怪しく光っていた。
「お、弟!です!」
何も分からず混乱している清は、とりあえず聞かれた質問に答える。
「へ〜…凛に弟がいたのは知らなかったな〜。」
少し間延びした喋り方で告げる。喋り方と猫のような瞳、この346プロのビルから、清は答えを導き出す。
「一ノ瀬志希さん?」
「にゃはは!アタシのこと知ってくれてるの〜!」
そう言って志希は体を起こして、リモコンのようなものを操作する。
ピピッと電子音がして、部屋が明るくなる。
明るさにクラクラしながら、清は志希を見上げる。
気崩した制服に、緩く癖のある暗めの臙脂色の髪が揺れた。
…
割れた器具を片付けた後、清は椅子に座らされていた。
「へ〜、弟なら凛にそっくりなのも納得〜。」
志希は清の周りをくるくる、ふんふんと嗅ぎ周りながら色々な角度から見ていく。
不意に首筋に志希の吐息が当たる。
「スンスン…。やっぱり凛と同じ匂いがするね〜。でもぉ〜、ちょっとオトコノコのニオイもあるね〜。おもしろ〜い。
…もう少し知りたいな〜。」
志希の指がうなじに触れる。髪の毛をかき分けられる心地良さと、首筋から昇ってくるゾクゾクした感覚に清は身震いする。
「…ヒトの匂いが出る場所って決まっててね〜。そのひとつが耳の後ろなんだ〜。」
そう言って志希は両側の首筋から柔らかく耳朶へとなぞる。耳を後ろから包み込む様に触れると、そのままスリスリと呼吸に合わせて触れていく。
そのまま、耳をつかみ、ゆっくりと避けて耳の後に顔を近づけていく。
バァンと音がして、扉が開かれる。
そこには肩で息をして、心配の表情を浮かべ、清のケータイを握りしめた凛が居た。
ちょうど扉に向かって座っていた清は、心配から怒りに変わっていく姉を見た。
ずんずんと近づいていく凛。
「志希…。ちょっと来て。」
「わぁお、凛!派手な登場!ちょっとまっててね。弟クンのニオイを確かめたら行…」
「 来 て 」
凛はそう言って志希の首根っこを掴む。
まるで親猫に加えられた子猫のようになった志希は、清に手を振りながら
「また、遊ぼうねー!」
と呑気に言い放つのだった。
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