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「・・・・はあっ! ・・・・はあっ!」
「・・・・まっ、待って! もうっ・・・・息がっ!!」
「走って!! 止まったら、捕まるよ!!」
女子生徒たちは必死に走っていた。
その数──5人。
オークたちに追われ、不良たちに追われている。
彼女たちは比較的遅くに捕まった緑橋学園の生徒であり、アスカと亮子のクラスメイトであった。
不幸中の幸いで、まだ凌辱を受けておらず逃げようとする気力があった。
その際に凌辱を受け過ぎて半ば心神喪失の女子グループもおり、それにオークたちが気をとられている隙に、女子たちはそれぞれ拉致されたグループごとで混乱に乗じて逃げた。
彼女たちはそこそこ運動は出来たが、亮子よりはかなり劣る。
逃げるにしてもギリギリだ。
足を引っ張ってしまう子もいる。
それでも仲間を見捨てないのは、5人が幼き頃からの友だったからだろう。
「ここっ! 入って!!」
先頭を行く女子が半開きの倉庫を見つけた。
5人はそこに雪崩れ込んだ。
しっかりと内側からカギを掛け、5人は息を殺して身を寄せ合った。
あれだけ激しい運動をして汗をかいたにも関わらず彼女たちの誰もが暑さよりも、遅い来る恐怖のために身体の芯から沸き上がる寒さを感じていた。
外からはドタバタと走り回る音や、オークや不良たちの怒号が聞こえてくる。
その度に、暗闇の中で彼女たちは身を固くしていた。
やがて声が遠くなった。
安心してやっと息が整った彼女たちは、息を潜めて話だした。
「・・・・ど、どうしよう・・・・」
「わかんないよぉ・・・・」
「スマホも繋がらない・・・・」
沈黙が支配し、誰1人として具体的な解決法が思い付かない。
それは突然だった。
扉がミシミシ、と軋み出した。
扉はまるで岩に打ち付けられたかのうよな凹凸が出来る。
「ひっ!?」
1人の女子が上げた短い悲鳴。
慌てて横にいた友人が口を塞いだが──
「きゃああああっ!!!」
無意味だった。
鉄製のドアが引き剥がされ、そこにはオークが2人いた。
オークたちはニタリ、と嗤う。
1人は入り口を固め、もう1人が侵入する。
「いやああああああっ!!」
女子の1人が恐慌状態となる。
それが全体に伝達し、女子たちは抱き合って、ただ怯えて震えるだけだ。
「グフフフ」
オークは
それは捕らえた獲物が苦しむ様を楽しむ、残忍な狩人の如く、
明らかな慢心さに満ちた行為だ。
狩場において、圧倒的な弱肉強食の構図の上ではそれは何の問題も無い。
けれど──
「オマエタチハ──」
オークはそれを自覚していなかった。
だからこそ、彼らは簡単に不意を突かれた。
「ガッ!?」
背中に生じた強烈な痛みが一瞬で、身体全体に拡がった。
それが高電圧から来るものだという事に、オークたちは気が付いたものの、意識を失い倒れた彼らには何の意味もなかった。
「怪我は無いか?」
倒れたオークの背後から
その人物はフルフェイスでスマートな印象を受けるヘルメットを被っており、そのヘルメットは遮光処置が施された特別製のバイザーを装着しているために顔はわからない。
背格好からして男なのは間違いなさそうだった。
「み、みんな、大丈夫です。 怪我をした子はいません」
「そうか。脱出経路を確保している。──着いてきてくれ」
それよりも彼女たちが気になったのは、見えない顔よりもその声。
あまりにも
けれども、落ち着くとそれは聞いたことのある声だった。
「聖栄・・・・セツナくん、なの?」
「違う」
その人物はきっぱりと否定した。
「・・・・俺は──」
わずかな沈黙の後に、
「
そう答えた。
第9話「チョリースと鋼鉄と、ハムの人 Ⅵフェーズ」
──くたばれやあああっ!!!
──死ねえぇぇぇぇっ!!!
シグーやジンの銃撃は続いていた。
しかしその対象は、廃工場内にいるアスカや亮子では無くなっていた。
「・・・・どうしたんだろう?」
アスカと亮子は先ほどまで会話するのも困難な状態だった。
けれども、今は亮子の声が簡単に通った。
「気になるなら外を見てみれば」
アスカは亮子にそう提案した。
「大丈夫?」
「ええ。彼らは私たちに構っている暇はないもの」
アスカはフフッ、と面白そうに笑う。
亮子は窓から慎重に外を除くと、シグーらは
亮子は空に視線を向けると、100mほど上空に一機の戦闘機のような機体が飛んでいた。
機体はビックリするほどの銃弾に晒されている。
それでも持ち前のスピードは圧倒的であり、素人目から見ても当たる気配を感じることは無い。
ヒラリ、ヒラリと攻撃を巧みに躱し、ビーム兵器で反撃をする。
その射撃はシグーたちとは比べ物にならないほどに正確で、発射の度に命中している。
(日本自衛軍の新型可変外骨格、フラッグ。 まだ数機しかロールアウトされていないはず。 それなのに
アスカは自身が所属しているDSOとは敵対こそしていないが、協力関係でさえ無い自衛軍の機体が救援として来ることになったのか。
それはアスカにも分からないが、この状況に混乱しないのは、先ほど入った通信があったからだ。
──フラッグがシグーたちを相手にする。 その間にお前さんは友達を連れて、指定ポイントに行け。
DSOのナンバー2にして、技術主任である
アスカはアンドロイドアームを使用するための補助として脳に装着したマイクロチップを通して、暗号通信で送られた音声及び地図データを確認していた。
「亮子、今のうちに脱出するわよ」
網膜に映し出された3D地図。
アスカには目標地点までの道筋が見えていた。
イアン・ヴァスティ。
前世ではソレスタルビーイングの優れたメカニックとして活躍した。
彼無しでは、ガンダムやトレミーがその優れた能力を最後まで発揮することは出来なかっただろう。
他人に頼ることを苦手としていた刹那であるが、イアンのメカニックとしての能力はそんな刹那をして、全面的に信頼するものであり、彼が自身以上に大切にしていたガンダムの整備に関して不満を抱いたことはなかったほどであった。
イアンもまた、この世界に転生していた。
今世でもまた前世の妻──リンダと結婚していた。
そして、二人の子であるミレイナも産まれていた。
3人は前世を思い出すことも無く、数十年生きていた。
しかし数週間前に巻き込まれた
3人は火傷こそ負わなかったが、有毒ガスを吸ったことにより生死の境をさ迷うものの奇跡的に障害もなく、快方した。
幸か不幸か、その際には3人は前世の記憶が甦っていた。
イアンはリンダやミレイナと協力し、前世でソレスタルビーイングが使用していた秘匿コードでネット世界を探っていたところ、ヴェーダが3人を捕捉。
それにより、刹那は3人の存在を確認した。
直ぐ様刹那はイアン、リンダ、ミレイナに接触。
イアンたちは刹那に協力を約束し、元々所属していた米連を辞めるために行動を開始していた。
その最中、イアンが所属しているDSOのエージェントであるアスカが苦境に立たされた。
偶然にも対魔忍として任務中の刹那が、アスカと同じ学園に通っていたこともあり、イアンは刹那に協力を要請。
それと同時にグラハムが操るGNフラッグが、
刹那は捕まっていた女子たちの救出に向かい、イアンは刹那から渡されたハロ2機が操るオートマトンが護衛に付きつつ小型軍用パソコンからアスカのアンドロイドアームの武装解除を行っていた。
「「イアン、マモル! マモル!」」
オートマトンは長方形の頭部に砲身が付いており、4脚で歩行する対人兵器である。
米連が運用する軍用ドローンよりも汎用性が高く、各種の装備オプションがある。
搭載AIにより定められた行動をできるが、ハロが
ハロ搭乗オートマトン──『ハロマトン』ならば、新米どころか並みの対魔忍相手も勤まる。
白ハロ搭乗型オートマント──白ハロマトンは通常の頭部GNマシンガンと、左右マニュピレーターにGNビームソードとGNシールドを装備する接近戦仕様。
緑ハロ搭乗型オートマント──緑ハロマトンは通常の頭部GNマシンガンと、左右マニュピレーター及び左右隠しマニュピレーターにGNアサルトライフル及びGNピストルを装備する射撃戦仕様。
小型疑似GNドライブを搭載しているが、生物に悪影響を与える毒素は排除されている。
2機のハロマトンは、GNドライブによりホバーリングして進む。
粒子量が非殺傷レベルに抑えられているGN兵器により、遭遇した敵を次々に鎮圧していく。
「こりぁ、とんでもないものを開発しよったな」
イアンはハロマトンの性能に、思わず苦笑していた。
余談だが──ハロ及びハロマトンは
以上。
「・・・・出来れば戦いたくなかった」
「だけど、俺たちは──」
「分かっているよ。僕たちは──戦うしかないんだ」
「そうだ。 そのために俺たち──
「・・・・行こう。 僕たちには他人の血をすすってでも、守らなければならない人たちがいるんだ!」
「ああ!」
刹那は女子たちを護りながら迫り来る敵に対処していた。
屈強なオークを相手に正面から体術だけで圧倒し、数がけの頼りの不良たちを一撃で気絶させていく。
刹那の活躍もあり、必死で逃げ回っていたのがウソのように追っ手を簡単に振り切り、刹那たちは廃工場から離れていた。
「間もなく迎えが来る」
刹那の声に、女子たちから安堵の声が上がる。
そうすると、余計な思考をする余裕が女子に生まれていた。
刹那の表情は彼女たちが知る疑似人格の刹那とは違い、あまり表情を動かさない本来のものであったが、何となく心穏やか印象を受けていた。
「刹那くん、いままで相当無理をしてた?」
「・・・・そうだな。 やはり、自分を偽るのは疲れる」
「でも、なんでそうしたの?」
「必要だからだ」
刹那はそれ以上の質問には答えない、とばかりに短く言った。
聞いた女子もそれを悟り、余計な事を言わなかった。
それから5分と経たずに、黒のセダンが2台到着した。
そこからスーツ姿の女性が降りて来た。
「我々は警察の者です」
二人の婦警が、警察手帳を掲示しながら女子たちに優しく声をかけた。
「車に乗って下さい。 貴女たちをご家族の元へと連れていきます」
女子たちは次々に車に乗り込んだ。
そして最後の女子が乗り込んだ。
刹那は乗車していない。
「ありがとう、刹那くん」
「気にするな。 俺は任務を果たしたに過ぎない」
「うん。 それでも、ありがとう」
「そうか。──出して下さい。彼女たちを頼みます」
「了解です」
婦警が応えると、二台の車は出発した。
刹那はそれを背に、廃工場の方向に走り出した。
GN粒子による強化された刹那の肉体は、軽く車を超えたスピードを出していた。
あっという間に刹那は廃工場に戻ると、そこにはGNフラッグによりスクラップにされたシグーやジンがいくつも転がり、気絶したオークや不良が寝そべっていた。
そして彼らに囚われていた女子たちも、力なく座り込んでいた。
「流石だな」
「ふっ、雑兵ばかりだ。 誇る戦果などではない」
GNフラッグを纏うグラハムと刹那は合流した。
刹那とグラハムの関係は前世で敵対するも、時を経て
このミッションが始まる前にリボンズが手を回し、
そして上空に待機している攻撃大型輸送機──『プトレマイオス』にて、指揮を執るのは本名──リーサ・クジョウ、コードネーム──『スメラギ・李・ノリエガ』である。
彼女もまた、前世から刹那の仲間である。
スメラギは列車脱線する事故に巻き込まれ、1週間も生死の境をさ迷う。
それは──イノベイターとしての目覚めでもあった。
退院した翌日、脳量子波を関知したヴェーダ。
それをリボンズから連絡を受けた刹那は、スメラギと接触。
スメラギもまた、刹那に協力することを約束した。
彼女は刹那と再会して1週間で会社を辞め、刹那の仲間として今世でも
「ミス・スメラギの戦術プランでは間もなくセカンドフェーズと、なるが。 ──さてさて、何が出るやら」
「──!? 来るぞ!」
刹那の急な警告。
刹那がその場を離脱すると同時に、フラッグも遅れる事なく反応する。
直後──二人がいた場所に
イノベイターとして覚醒しつつある
合わせて尋常ならざる反射神経により、必殺のタイミングで放たれた攻撃にも何なく反応したのだ。
「あれ、は・・・・」
「ほう」
上空からの襲撃者。
それらは──外骨格5機。
シグーやジンとは違い、
それぞれの武器を倒れているシグー、オーク、不良たちに向け──引き金を引いた。
「──! しまった!!」
敵意がこちらに向けられていない。
そう刹那が感じ時には、ビームの奔流が外骨格のシグーやジンさえも簡単に無に還した。
さらにだめ押しとばかりに、ミサイルの雨も降ってきた。
大地が黒く、赤く染め上げられる。
「・・・・お前、たち・・・・」
刹那はその瞳に
襲撃者は肉片と鉄屑が混ざる黒煙の大地に降り立ち、刹那とグラハムに対峙した。
そして刹那は、敵の姿をはっきりと見据えて吼えた。
「答えろ!! こんな行いをする者たちが、
もちろん5機は答えない。
刹那もそれは頭では分かっている。
明確な目的を持って殺したのだろう。
おそらく──証拠隠滅。
分かっている。
それでも、そうであっても、魂まで焼き付けられたガンダムに対する特別な思いが刹那に口を開かせる。
「無抵抗の者たちを一方的に殺すお前たちは、ガンダムでは無い!!」
犯罪者たちに巻き込まれた女子たちは一般人である。
突然降ってきたビームやミサイルに反応出来るはずもなく、1人残らず肉片へと変わってしまった。
「俺が──」
刹那の両目の虹彩が黒から、黄金の光に変わる。
その瞬間──GNリングが反応し、刹那は一瞬でエクシアを纏った。
エクシアはGN粒子をGNドライブから大量に放出し、爆発的な推進力を発生させた。
その推進力を持って、敵に突撃する。
「貴様たちを駆逐する!!」
あと、1話から2話で過去編を終えたいです