対魔忍独立遊撃隊『ソレスタルビーイング』   作:自己満足です

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3月18日
タイトル変更


第5話「チョリースと鋼鉄と、ハムの人 Ⅱフェーズ」

──4年前。

 

甲河アスカ。

 

アスカは10歳の時、SSS級危険度の純粋なる吸血鬼──『エドウィン・ブラック』に一族の者たちの大半を殺された。

 

井河家と並んで、強力な力を持つ五車対魔忍の宗家として知られていた甲河家も宗家はアスカだけが、分家はさして力を持たない者たちだけが生き残っただけであり、甲河家一族は実質消滅した。

 

そしてアスカは井河家で引き取られ、歳が近かったアサギを師匠とも姉とも慕い、成長していった。

 

一族の仇をとるべく必死に鍛練したこと、また努力を最大限に活かせる天賦の才を持ち合わせていたために、アスカは14歳の頃には対魔忍として頭角を表し始めた。

 

同年代には負け知らず、さらにその上の対魔忍たちにも肉薄する実力をつけ、20歳そこそこで『最強の対魔忍』として名を馳せるアサギに優るとも劣らない才覚を持つくノ一であると、将来を渇望されていた。

 

そんな折──アサギとアスカはとある任務中、偶然にもエドウィン・ブラックの痕跡を見つけてしまった。

 

 

「追いますっ!!」

 

「待ちなさいっ! アスカっ!!」

 

 

一族の仇を見つけたアスカはなりふり構わずブラックを追おうとしたが、アサギはそれを制止した。

 

エドウィン・ブラックと過去に交戦したことのあるアサギは、始祖吸血鬼であるブラックの力を十分過ぎるほど心得ていた。

過去に交戦した時は、最強の対魔忍といわれるアサギでさえブラックが()()()を持っていなければ、すでにこの世には存在していないだろう、と彼女は冷静に戦力差を理解していた。

だからこそ、アサギはアスカを止めたのだ。

 

アサギは冷静に、客観的にブラックとの戦力差を教え、準備不足であることを説明した。

 

最初は興奮していたアスカだが、次第に冷静さを取り戻していった。

 

(不承不承ながらも納得してくれたようね・・・・)

 

その認識がアサギの間違いであり、アスカの復讐心は彼女の想像以上であった。

 

無事に任務を終え、アサギが五車に連絡している時、ふとアスカの気配が消えた。

 

アスカはアサギの警戒を緩む瞬間をずっと待っていたのだ。

 

復讐を果たすために。

 

彼女は得意の『風術』により姿を眩ましていた。

こと隠密行動ならば異能力の力もあって、アスカの方が一歩上手であった。

 

アサギを上手く撒いたアスカは、()()()()()()()()()()()()()()()と交戦した。

 

 

(皆の仇っ!! 殺してやるっ!!!)

 

 

アスカはまったく冷静ではなかった。

 

普段の彼女ならばあり得ないゴリ押しの戦術。

 

対魔粒子を抑えることなく全力で使った。

 

 

「風神──」

 

 

クロスした両腕に纏った荒れ狂う異能の風。

 

その風を解き放つため、両腕を前方に突き出した。

 

 

「烈風!!!!」

 

 

両腕から周囲の物を巻き込み、無慈悲に破壊しながら──破壊の暴風が放たれた。

 

これまで多くの敵を屠ってきた大技だ。

 

無数の風刃が巻き込んだ敵を刻み、保有するエネルギーが追い討ちとなって脆くなった所に侵食して破壊する。

 

それをブラックは──

 

 

「ふっ」

 

 

微笑を浮かべるだけで、避けることもなく立ち尽くした。

 

(決まったっ!!!)

 

 

アスカは勝利を確信した。

 

風神烈風に巻き込まれたブラック。

 

立ち込める砂嵐の中、アスカは会心の笑みを浮かべた。

 

「やっ、やった!!! これで皆──」

 

 

しかし──その笑みは一瞬にして凍り付いた。

 

 

「ほう・・・・俺にキズをつけた、か」

 

アスカの攻撃は、ブラックの膨大な魔力により形成され、アサギの攻撃をも易々と塞ぐ『重力障壁』の前に、()()()()()()しか与えられていなかった。

 

ブラックの頬が少し切れて血が滲む程度で、服の端が少し破けた程度であった。

 

 

「くっくくく。 お前は楽しませてくれるか?」

 

 

ブラックが微笑みを浮かべた瞬間──

 

 

「・・・・えっ・・・・?」

 

 

左腕がぼとり、と落ちた。

 

アスカは何をされたかも分からなかった。

 

思わず落ちた左腕を呆然と、見つめてしまった。

 

 

「呆けている暇はないぞ」

 

 

ブラックにいつの間にかに接近され、魔力の籠った蹴りを喰らった。

 

「・・・・がはっ・・・・!?」

 

 

まるでボールのように簡単に吹き飛ばされ、アスカは壁に衝突した。

対魔粒子により、服とは思えない程の防御力を発揮する対魔忍スーツを着ていなければ、とっくに身体はバラバラになっていただろう。

 

軽く蹴られのに、まるで猛スピードのダンプカーに体当たりされたような衝撃。

 

 

「ふむ・・・・中々の『魔』であるな」

 

ブラックはアスカの左腕を拾い上げると、興味深そうにアスカを見た。

 

 

「ああああああああっ!!」

 

 

アスカは残った右腕で忍者刀を持ち、ブラックに斬りかかった。

ズブリ──と肉を引き裂いた感覚が右腕に伝わる。

 

 

「残念ながらそれはお前の腕だ。 ──次は左脚を貰う」

 

 

ブラックはアスカの左腕を盾として、アスカの刀を塞いだ。

 

そして右手に高濃度の魔力を纏わせ、魔力の刀を作り上げて──振り下ろした。

 

 

「あ”っ、う”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!?」

 

 

アスカは喉が潰れんほどの悲鳴を上げて倒れた。

 

先ほど左腕を切断された時には切断された事に気付く余地する無く斬られ、さらに戦意により昂りが最高潮にあってアドレナリンが過剰に分泌されて痛みを感じなかった。

 

だが今回は斬られたことをはっきりと自覚し、かつ最早アドレナリンではカバー出来ないほどのダメージを負ってしまった。

 

 

「感謝しろ。 出血で死んで終わぬように傷口は焼いておいた」

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!?」

 

ブラックの言葉はアスカに伝わることは無い。

 

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!)

 

 

今まで感じた事の無いほどの強烈な痛み。

左腕と左脚を失った痛みに加え、切断面が焼け爛れている。

 

切断箇所から全身に伝わり、一瞬足りとも休むことなく続く激痛。

 

頭を、肩を、腕を、背中を、腰を、脚を──全身を常に刀で刺されているような。

 

狂って仕舞わんばかりの痛みの中でも、対魔粒子により拡張されている肉体が気絶することをアスカに許さない。

 

瞳から流れる涙は止めなく、鼻や口からも液体を垂れ流す。

 

アスカは自らが流した血と液体がぶちまけられた沼を芋虫のように這いずりながら、逃げようとした。

ブラックの圧倒的な力の前に、アスカは()()()()()()()()()となっていた。

 

 

(助けて助けて助けて助けて助けて助けてっ!!!)

 

 

アスカの心は完全に折れた。

 

戦士としても、対魔忍としてのプライドもかなぐり捨て、目の前の()()から逃げることしか考えられない。

 

「・・・・つまらんな・・・・」

 

 

ブラックは這いずるアスカを見下す。

不様な敵に何ら感情の籠らぬ表情で近寄ると、その背中を容赦なく踏みつけた。

 

 

「がはっ!!?」

 

 

まるで何トンもの重りを乗せられたような圧迫感。

 

ほんのわずかも身体は動かせない。

 

 

「・・・・お、おねがい”・・・・じまず・・・・ 」

 

 

重圧の中、辛うじてアスカは口を動かせていた。

 

 

「・・・・な、なんでも、じまず、がら・・・・ご、ごろざない”で・・・・た、だずげて・・・・くだざい”・・・・」

 

 

アスカは涙ながらに懇願した。

 

もはや心が折れて屈服した少女は、憎き仇の慈悲にすがることに微塵も躊躇は無い。

 

涙でぐちゃぐちゃの顔に精一杯の愛想を浮かべ、すがるように残った右腕を必死に動かしてブラックの脚を抱く。

 

 

「・・・・見込み違いか・・・・。 やはりアサギしか居らぬか」

 

 

ブラックは、無造作に魔力刀を纏う右手を動かし──アスカの右腕と右脚を切断した。

 

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッ!!! い”だい”! い”だい”!い”だい”! い”だい”! い”だい”! い”だい”! い”だ──」

 

 

アスカは四肢を奪われても気絶出来ず、襲い掛かる痛みのために絶叫を上げる。

 

涙と血でぐちょぐちょの顔は整っているが故に、余計に不様が目立つ。

 

ブラックはため息をつくと、冷酷に告げた。

 

 

「これ以上喚くなら殺す」

 

 

その絶対零度を思わせる声音に、アスカはビクッと反応した。

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

彼女は唇を噛みきらんばかりにして血を流しながらも、声を抑え込んだ。

 

ブラックから放たれる殺気が、その発言に信憑性を持たせていた。

 

「・・・・望み通り生かしやる。 ──精々、ヤツらにあきられぬようにやれ」

 

ブラックの背後には、見るからに浮浪者と思われる男たちが居た。

 

餓えた獣のように血走った目でアスカを見ていた。

 

性交の経験がないアスカだが、これから自分の身に起こることは想像に難しくなかった。

 

誰とも知れぬ男たちに『初めて』を奪われ、10人以上はいるであろう男たちに次々に凌辱されるのだろう。

 

それでもアスカの心は穏やかだった。

 

 

(良かった・・・・)

 

 

ブラックが消えると、男たちが我先にとアスカに群がってきた。

 

「アハハハハッ。私、生きてる・・・・」

 

 

アスカは()()()()()を浮かべていた。

 

 

 

 

第5話「チョリースと鋼鉄と、ハムの人 Ⅱフェーズ」

 

 

 

 

 

──キ~ン、コ~ン、カ~ン、コ~ン~♪

 

 

 

 

ある日の緑橋学園。

 

本日は、3ヶ月に1度の授業が半日だけの金曜日。

 

明日からは土日が学校は休みのため、多くの生徒たちが友人や恋人たちとそのまま街に繰り出して行く。

 

 

「お疲チョリース! リョウ~コ、ア~スカ!」

 

 

放課後。

 

セツナが何時ものように、ウザい笑顔とテンションで一緒に帰る2人に声をかけた。

 

 

「チョリ~ス。 聖栄くん」

 

「お疲れ様」

 

 

周りから遠ざけられるも、2人は変わらずセツナとのコミュニケーションを拒絶することは無かった。

 

最も()()()()()()()()()()()()()()()であり、アスカは亮子が構っているから仕方なく付き合っているという所だ。

 

 

「二人とも! この後はフリ~タイム?」

 

「これからスカちゃんとスイーツを食べに行くよ~。 駅前に出来たばっかりの話題のお店──『図書館』だね~」

 

「ohッ!? 例のイケてるスーパースイーツ店かい? ヤバッ!! ハッハハハハ! パーフェクトなビューティフルガールズにぴったりチョリねー♪ 俺っちも一緒に行きたいチョリよ~♪」

 

 

セツナの言葉に気を良くしたのか、嬉しそうに亮子が提案した。

 

 

「なら、聖栄くんも行く~?」

 

 

意外と頑固な亮子が誘ったのだ。

 

アスカはここで抵抗しても無駄だとわかっているため、折衷案を出した。

 

 

「オゴリならいいわよ」

 

 

2人からの思わぬ誘いに、セツナは嬉しそうに乗った。

 

 

「マジでぇ!? 俺は不可能を可能にするチョリよ!」

 

 

疑似人格セツナの笑顔の裏で、本人格の刹那は自らの選択を悔いていた。

 

任務で使えるようにリボンズから『ブラックカード』を持っているのもあるし、例え高級レストランに入って2人と自分の分を払えるほどの所持金を刹那は個人でも持っている。

 

金の心配ではない。

 

彼の心配は──

 

(・・・・甘いのは・・・・苦手だ・・・・)

 

 

スイーツとの戦闘であった。

 

 

 

 

 

 

 

そこそこの行列の末、スイーツカフェ『図書館』に入った。

 

そこでアスカと亮子の2人は、極上スイーツバイキングを満喫していた。

 

セツナもニコニコとスイーツを食べている──ように見せ掛けて、実は苦しみの中にあった。

 

背中にはイヤな汗をかき、手が小刻みに震えている。

 

食べた量も2人の10分の1にも満たない。

 

イチゴショートケーキを1個食べるだけで精一杯であった。

 

コーヒーのブラックで何とか胃に流し込んでいたため、コーヒーは既に10杯もおかわりをしていた。

 

 

「甘いの苦手なんじゃないの?」

 

 

アスカはニヤニヤしながら、セツナに問いかけた。

 

彼女は目敏く、セツナの違和感に気が付いたようだ。

 

 

「な、何を言っているチョリスか!? 俺っちはあっま~いのは女の子を口説くのと同じぐらいに、得意チョリよ~!!」

 

「ふふふふ。 なら遠慮せずにそのケーキを食べちゃえばいいじゃない。 バイキングなのにおかわりしないと勿体無いわよ?」

 

 

アスカは意地悪そうに笑うと、自らの取ったチョコレートケーキとチーズケーキ、さらにシュークリームを盛り付けた皿をセツナの前に持ってきた。

 

 

「よ、余裕チョリよ♪♪♪」

 

セツナは()()()()()()()に、内心の刹那は()()()()()()にケーキたちにかぶり付いた。

 

結果──完全にケーキたちに打ちのめ(駆逐)された刹那は、スタッフルームに通されていた。

 

 

「若っ!? 大丈夫ですか!?」

 

執事姿のウェイターが刹那に肩を貸している。

 

それは『図書館』のスタッフの1人であり、2年前から()()()として刹那に仕えている──『ふうま天音』であった。

 

 

「あの甲河の娘っ!! 若に対して何という仕打ちをっ!! こうなったら、私が討ち滅ぼして──」

 

「止めろ、天音」

 

 

天音と同じく2年前から刹那に仕え()()()()()()()()を結成した佐郷文庫改め──『ライブラリー』が天音を諌めた。

 

ライブラリーのサイボーグボディは2年前の米連製ではない。

 

リボンズから提供された技術により造られ、より洗練されたボディとなっている。

 

最大の違いは体内にGNコンデンサを装備し、それによりGN粒子で駆動する腕部兵装『GNブレード』、腰部収納兵装『GNクナイ』を装備したことだろう。

 

 

「止めてくれるなっ! 佐──ふっふふふふ」

 

 

天音は怒りから一転、何故か笑い出した。

 

 

「ふふふ。 その格好、どうにか、ならないのか?」

 

 

某ピンクの悪魔ことカー○ィを縦に長くしたような体格で、体色はオレンジ。

 

コック帽と真ん中にポケットが付いたエプロン。

 

カー○ィに登場するキャラ──コックカ○サキの着ぐるみを、ライブラリーは着けていたのだ。

 

2人はウェイターとコックとして刹那のバックアップ要員として同じ任務についていた。

2人だけでなく、スイーツカフェ『図書館』は全てふうま一族の者たちで固められている。

 

 

「ふむ。 本来の姿では一般人に無用な威圧感を与える。 その点、この着ぐるみは色々と都合がよいのだ。 ──それよりも御館様の介抱を優先した方が良いぞ」

 

 

天音に肩を借りた刹那は、ぐったりとして辛うじて立っている状態だ。

 

 

「はっ!? 若ぁぁぁぁっ!」

 

 

天音は刹那を椅子に座らせると、ミネラルウォーターと整腸剤を渡した。

 

 

「・・・・助かる」

 

 

刹那はそれらを受け取ると、水と薬を一気に飲み干した。

 

刹那は天音に勧められ、スタッフルームの仮眠室で休息を取る。

 

すると──3時間程度で体調は全快した。

 

イノベーターとして覚醒した刹那は毒物系にはかなりの耐性を持つが、彼が個人的に苦手としている『甘味』は純粋種の耐性をも上回ったようだ。

 

むしろ3時間も回復にかかった、というべきだろうか。

 

 

「すっかり顔色は良くなりましたね」

 

 

刹那が目を覚ましたと聞き、スタッフルームに顔を出した天音はほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「安心してばかりはいられないぞ。──御館様、()()()()()より緊急連絡です。()()()()()()()()()()()()()()実行を、とのことです」

 

 

仕事を他のスタッフに任せて、ライブラリーは報告のために刹那の元を訪れていた。

 

 

「了解。 ──直ちに()()()()()()()に回る」

 

 

応えた刹那の瞳には、いつもの強靭な意思の光が宿っていた。

 

 

 

 

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