対魔忍独立遊撃隊『ソレスタルビーイング』   作:自己満足です

8 / 10
長引きます(笑)
あと2話ほどで過去編は終わらせたいです。

あと評価&お気に入り登録ありがとうございます!
励みになります、これからもゆるりと頑張って行きますのでよろしくお願いします!


第7話「チョリースと鋼鉄と、ハムの人 Ⅳフェーズ」

 

「でも、意外だよねぇ。 アスカちゃんがねぇ~」

 

 

アスカにとって、目の前の心底腹立たしいチャラ男を再起不能にすることなど造作もない。

 

それでも今の彼女は、拓斗の馴れ馴れしく肩を抱いた手を()()()()()()()()

 

先ほどビリーと別れた2人は、拓斗と拓斗の子分らしい不良たちに囲まれた。

 

拓斗がノマドと繋がりがあることを自慢気に告げ、アスカの正体を周囲にバラすと脅されたためについていくことになった。

 

複数の男たちが周りを囲み、亮子もアスカの後ろから着いてくる形になっていた。

 

 

(・・・・どこから()()()に情報が漏れたの?)

 

 

ノマド──米連を本拠地とする多国籍複合企業体である。

 

『遊牧民』を意味する社名に相応しく多岐に活動する巨大な組織で、豊富な資金力を背景に精密機器、重工業、軍事など様々な事業を行っている。

 

ノマドはあらゆる闇の仕事を行う部門があり、世界各国に進出してはその国の闇社会を掌握している。

 

その総帥こそ表向きは全く別人であるが、真の支配者はエドウィン・ブラックである。

 

 

(・・・・亮子も逃がす気は無いのはただヤリたいだけ?)

 

 

ノマドは五車の対魔忍や日本政府だけでなく、米連とも対立していた。

 

そしてノマドの下部組織は日本にも存在し、大小様々な悪事を働いている。

 

石上拓斗は兄の石上亮司の紹介により、ノマド下部組織とのパイプを持ったこと、ノマドからアスカの正体──米連のエージェント──を知ったこと、さらにノマドからアスカと()()()()()が出来れば、下部組織とはいえ幹部として組織に迎え入れられること等──拓斗が聞いてもいないのにベラベラ勝手に喋っていた。

 

 

(・・・・やっぱり、()()()()()()()()()()()()()ってことが関係してたみたいね)

 

 

五車の対魔忍たちを管轄する組織・内務省公共安全庁調査第三部『セクションスリー』の部長──山本信繁。

 

その1人娘が亮子である。

 

 

「ちょっと、ちょっと? アスカちゃん、酷いんじゃない。 俺の話聞いてる!?」

 

 

話をしても上の空で、無視されていると思って機嫌を悪くした拓斗は、アスカの豊満な片胸を荒々しく掴んだ。

 

「痛いッ! 揉むなら優しくして、ね。 痛いのはイヤだよ」

 

 

アスカの媚びるような視線と、猫なで声に拓斗は瞬時に機嫌が直ったようだ。

 

 

「へへ! 俺のテクで昇天させてあげるよ、アスカちゃん♪」

 

 

拓斗は強くもなく弱くもない絶妙な力強加減で、彼女の胸を揉みしだく。

 

 

「うん。 気持ち良くして」

 

アスカは()()()()()()()()()()()()()で、択斗を見つめた。

 

さらに拓斗の腰に手を回し、自らの身体を密着させた。

 

特に、拓斗に対するセックスアピールの強い豊満な胸を遠慮なく押し付ける。

 

彼女のヤル気に満ちた行動に拓斗もボルテージが上がり、ズボンの中では『息子』が徐々に力を増していく。

 

拓斗の中では、アスカは正体をばらされないように何とか必死に媚を売っている憐れな女、というおめでたいお花畑のような思考であった。

 

 

(よくも私の胸を好き勝手に揉んでっ! 後でその腐った手を斬り落としてやるから、覚えてなさい!)

 

 

アスカは表情とは裏腹に、深層では今にも爆発しそうな火山の如く怒りを溜めていた。

 

拓斗はテクニックはあるのかも知れないが、彼女にとって今与えられる胸への刺激はとても快楽などほど遠い。

 

快楽とはほど遠い不快な刺激だった。

 

そもそも、特に()()()()を同じ人間とは認識していないアスカにとって、拓斗の手はマッサージ機ぐらいの認識だった。

 

感じているフリをしているのは、拓斗に油断させてノマドの情報を引き出すためであり、自身の都合で巻き込んでしまったためにせめてもの償いとして亮子へと興味がいかせないようにするためだった。

 

 

 

 

 

 

 

第7話「チョリースと鋼鉄と、ハムの人 Ⅳフェーズ」

 

 

 

 

 

 

 

一団は路地裏を進むと、急に開けた場所に出た。

 

 

そこは廃墟となった工場があった。

 

 

「来たか、拓斗。 待ちかねたぞ」

 

「兄貴!」

 

 

細身の拓斗とは比べものにならないほど、ガタイの良い大男──石上亮司がいた。

 

全国大会で優勝するほどの空手の腕を持ち、他のスポーツでも高い能力を示す。

 

けれども──素行の悪さの方が目立つという男であった。

 

 

()()()の指示だ。 その女を犯せ」

 

 

亮司は──亮子を指さした。

 

今まで特に表情を変えることない亮子であったが、さすがにその表情にはわずかな怯えが見える。

 

 

「え~! 最初にアスカちゃんを抱きたいんだけどなぁ」

 

「そう焦るな、拓斗。時間はたっぷりある。 さっさと抱いて、甲河を食えばいいのさ」

 

「あははは! そうするよ。 じゃあ、さっさと()()()を呼んでくれよ。 特にアスカちゃんとのカラミは高画質で頼むよ!」

 

「そうだな。 ──()()()()()を呼ぶ。 少し待ってろ」

 

 

亮司がスマホを操作すると、高額そうな大型カメラを持った2人の男が現れた。

 

そして──その後に続いて、大男たちが続いた。

 

 

「・・・・えっ?」

 

 

今まで気丈に振る舞っていた亮子であるが、さすがに大男たちが()()()()を持っていたことに動揺を隠せなかった。

 

尖った耳と牙に、筋肉質の肉体、何よりも緑の皮膚が人では無いと如実に語っている。

 

彼らは魔界の住人であり、ここ数十年でこちらの世界でも裏の世界に住んでいる──『オーク』である。

 

オークは知能は低いが、腕力では軽く人間を凌駕する。

 

緑橋学園の女子生徒たちが首輪をされており、それぞれが首輪を鎖で連結されて、オークが前後左右に付いている。

 

女子生徒たちは40人ほどおり、恐怖や絶望に染まる者たちや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()たちがいた。

 

「よーし、オークどもと女たちも来たことだ。 さっさと、おっ始めるぞ!」

 

「あははは。マジかよ兄貴! オッパイはアスカちゃんとは比べ物にはならないけど、バランスの取れたスレンダー美少女の亮子ちゃんを()()()()()のかよ? もったいね~」

 

「そういうな。 ──さっさとヤらないと俺が喰っちまうぞ?」

 

「いやいや、俺がヤリてぇよ! 昨日は女を抱いてないし、たまってるんだよ!!」

 

「くっくくく。 そんな泣きそうな顔をするな。 あの人には壊しても良い、と言われている。 ()()()()()()どう扱ってもいいぞ」

 

「やったぜ!!」

 

「オーク共も、お前たちも好きにヤレや!! 首輪をしている女たちは何しようが構わねえ! 早いもん勝ちだ!!」

 

 

亮司がスマホを操作すると、ガチャンとそれぞれ女子生徒を繋いでいた鎖が外れた。

 

 

「ひゃはははは!! 捕まったら犯される鬼ごっこの始まりだぁ!!!」

 

 

亮司の言葉に、不良たちが一斉に動いた。

 

 

「うおおおっ!! あの巨乳は俺のだ!」

 

「ヤったる! ロリは俺によこせ!」

 

「何でもいいぜぇ! ヤらせろやぁ!!」

 

「ひゃっはっ!! 女! 女! おんなぁぁぁっ!!」

 

急な事態に反応が遅れた女子生徒たちは、慌てて動き出した。

 

 

「いやあああっ!!」

 

「逃げてっ!」

 

「助けてぇぇぇっ!!」

 

「きゃああああっ!!」

 

 

不良たちから逃げてきた女子生徒たちは、目の前にあるオークの壁で前に進めなくなった。

 

進路を塞がれ、動きが鈍っていた女子生徒たちにオークたちは襲い掛かった。

 

 

「ひいぃぃぃぃっ!!」

 

「イヤアアアアァァッ!!!」

 

 

女子生徒たちは逃げようとするが、見た目とは裏腹に素早い動きのオークに簡単に捕まる。

 

捕まった勝ち気な女子生徒は、乱暴に押し倒された。

 

 

「やめろ! 離しなさいよっ!!」

 

 

女子生徒はのし掛かってきたオークを必死で蹴るが、オークはまったく気にする素振りも無い。

 

制服を乱暴に剥ぎ取っていく。

 

 

「やめてっ! 離してっ!!」

 

 

女子生徒は必死に恐怖を抑えていたが、スポーツで鍛えられた健康的な裸体が剥き出しにされ、とうとう泣き出した。

 

 

「やめてっ!! やめ、や、やめてよっ!!! わたし、はじめては彼に──」

 

「ダマレ」

 

 

オークは女子生徒の口を手で塞ぐ。

 

 

「オンナ、オマエハ、オレ、ノ、モノ。 オマエ、オレ、ガ、ハラマス」

 

 

拙い言葉であるが、それははっきりと女子生徒は理解できてしまった。

 

「スキナダケ、ワメケ。 オマエ、ナク、タノシイ」

 

 

オークは女子生徒の両足を掴み、強引に大きく開かせた。

 

恥部をオークに見られ、女子生徒はパニックに陥った。

 

 

「イヤッ! いやああああああああぁっ!!!! 離してっ!! 離してよっ!!!!」

 

 

オークは下卑た笑みを浮かべ、自身の下半身の『露出させた欲望』を女子生徒に叩き付けようと腰を突き出した。

 

 

「ぎゃあああああっ!?」

 

突如、誰かの苦悶の声が発せられ──

 

 

「お楽しみの最中に、残念ね」

 

 

さらに、そんな言葉が響くと──

 

 

「ア?」

 

 

オークの頭部は、ズルリと身体から落ちた。

 

破裂した水道管の如く、オークの首から血から吹き出した。

 

大柄の体格に見合った量であり、場が凍り付くほどの血の雨を降らせる。

 

「キャアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

オークの一番近くにいた女子生徒は血塗れになっただけでなく、呆けた顔で固まったオークの首が顔の目の前に落ちてきたために驚いて声を張り上げていた。

 

いつの間にか鎖が切れていたため、自らに倒れこんできたオークの肉塊をどけた。

 

 

「ほう」

 

 

オークを殺されても亮司は慌てることもなく、悠然とオークを殺した──()()()を見た。

 

 

「その義肢を使わなくても、軽々とオークと()を殺るとはな」

 

 

右肩から腰にかけて斬り裂かれ、臓物をぶちまけて絶命した拓斗が、アスカの後方に見えた。

 

女子生徒に襲い掛かる事もなく、不良たちは顔を引きつらせてたり、腰を抜かして動きを止めていた。

 

オークたちは()()()()()()()()()()()の出現に、即座に戦闘体勢に入った。

 

 

「くっくくく。 やるじゃねえか」

 

 

一方亮司は、身内を殺されても怒りを露にすることもなく、楽しそうに笑っただけだった。

 

 

「フフフ」

 

 

アスカは妖しく笑う。

 

まるで血に濡れた刀から血を払うように、右足をその場で一閃させた。

 

「私って生まれた時から義肢を付けていたわけではないの」

 

 

甲河アスカのために開発されたアンドロイドツールは、本来なら戦闘用であるが、普通の生活をする時は()()()()()として偽装されており、所長或いはDSOナンバー2にして技術主任──小谷健司──の許可を得なければ戦闘モードを使用できない。

 

それでも対魔粒子による風神の術に加え、今まで築き上げてきた彼女の戦闘技術の前では、何の訓練も受けた事も無くさして運動も真面目に取り組んだことがないただの高校男子(石上拓斗)や、魔族の中では下級に属するオークに遅れをとることなど無い。

 

 

「だろうな。 それは()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

アスカが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を知っているのは、極わずかな人間である。

 

アサギと、所長と、アンドロイドアームの開発主任の小谷、そして──()である。

 

 

(・・・・答えはシンプルだった、てことね)

 

 

亮司の発言にアスカから笑顔が消え、その顔はまるで能面の如く無表情になった。

 

 

()()()はどこ? 大人しく喋るなら楽に殺して上げる」

 

「くっくくく。 これからなぶる女の言うことを聞くと思うのか?」

 

「そうね。 なら、実力行使といくわ」

 

「いいぜぇ! 力で従わせるのは俺好みだ!! ──オーク共!! 相手をしてやれや! 相手は対魔忍だ! 多少の無理でも壊れやしねえ! ヤリたい放題にヤっていいぞ!!」

 

「「「「ウォオオオオオオオオッ!!!」」」」

 

 

オークたちは雄叫びを上げた。

 

先ほどまでの女子学生たちを相手する時のような手加減など一切無い、本気の突進だ。

 

殺気だった肉壁の突進は地響きを引き連れ、アスカに襲い掛かる。

 

その迫力に女子生徒たちは呑まれるも、アスカは動じることなく静かに呟いた。

 

 

「風神・陣刃」

 

 

対魔粒子が『力』として変換される。

 

アスカの両足は魔の風を纏い、右脚を大きく()()()()()

 

「はっ!!」

 

 

ゾクリと悪寒が走り、『死の予感』に襲われ、危機感を募らせた。

 

──手を出してはならない!

 

ここに来て、ようやくオークたちの生存本能が警報を上げた。

 

けれどもそれは──

 

 

「グギャアアアアアァァァアアッ!!!」

 

 

あまりにも遅い。

 

射線上にいたオークたちは、正しく『死』を呼び込む荒れ狂う風の刃に命を狩られた。

 

急所を防具で護ってはいたが、風の刃はそれらの存在をまったく感じさせない。

 

──頭

 

──胸部

 

──腹部

斬り裂かれた部位が空を舞う。

 

屍となったオークたちが倒れる。

 

それから少し遅れ、ボトッ、ボトッ、と肉塊が堕ちてくる。

 

「これじゃあ、準備運動にもならないわよ」

 

アスカはさらりと言った。

 

そして──辺り一面を真っ赤に染める血の豪雨が降る。

 

 

「「「「・・・・」」」」

 

 

そのあまりにも非現実的な光景に、一般人の不良や女子生徒たちは刺激が強すぎて、逆に黙り混んでしまった。

 

その中心にいるアスカだが、彼女はまるで血を浴びていない。

 

彼女を中心に巻き起こる風が防壁となっているからだ。

血を巻き込んで上昇気流になっている赤き風は、彼女の抑制された感情を現すかの如く、吹き荒れる。

 

 

「一撃で10殺とは豪気だな! いい具合に盛り上がってきたなぁ!! これは俺が相手しねぇとなあっ!!!」

 

 

亮司は血の臭いに闘志を掻き立てられたようだ。

 

狂気の笑みを浮かべて、アスカとの間合いを詰める。

 

 

「オラアアアァッ!!」

 

 

吹き荒れる風に怯むことなく、正拳突きを放った。

 

その拳は、さすがは学生チャンピオンと言える素晴らしい威力と疾さを兼ね揃えている。

 

でもそれは──

 

 

「この程度よね」

 

 

一般人ならば、という条件付きである。

 

裏の世界では下の下。

 

アンドロイドツールを使えない状態のアスカは、パワータイプの戦いが出来ない。

 

それでも──

 

「なにっ!?」

アスカは、軽々と亮司の拳を片手で受け止めた。

 

対魔粒子による身体能力の拡張だけでも十分だったが、さらに風の防壁による()()()()()()()をズラしたのだ。

 

「こんなのだったら、目を瞑ってても十分。──次は私の番だよね」

 

アスカは風を纏った右脚で──

 

 

「がっ!?」

 

 

亮司の腹を蹴り抜いた。

 

巨漢の男がまるでサッカーボールのように空を舞い、廃棄工場の壁を貫通していった。

 

はたから見れば、明らかに亮司より華奢なアスカ。

 

いくら手より足の方が威力があるとはいえ、亮司の拳より数倍の破壊力を発揮した蹴りに、周りの者たちは戦慄していた。

 

 

「・・・・あっ! やっば・・・・やっちゃった・・・・」

 

 

アスカは我に返った。

 

無表情だった顔に、焦りの表情が浮かんでいた。

 

 

「手加減が足りなかったかも・・・・」

 

仇の手掛かりに遭遇してアスカは感情的になっていた。

 

亮司から情報を引き出すためにも、最初は手加減して無力化しようと考えていたのだ。

 

だが、襲われている女子生徒たちを、見たら冷静ではいられなかったのだ。

 

(・・・・私って、そんなにお人好しじゃないし、割り切るタイプだと思ってたんだけどな~)

 

 

女子生徒の中にはアスカのクラスメイトも居た。

 

短い期間だが共に過ごした彼女たちに、アスカは自分で思ったよりも大切に思っていたようだ。

 

 

(・・・・あ~あ、今日で青春も終わりだね)

 

 

アスカは苦笑した。

 

対魔忍としての真の力を解放すれば、たとえオークから救ったとしても怖れられることは理解している。

 

人を超えし、超人の力の代償の1つは、たとえ善なる力の行使をしていても、『普通の者』たちは畏れ、共に過ごすことは叶わないことだろう。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()にある。

 

それでもアスカは、この選択に後悔はしていなかった。

 

(見過ごしていたらきっと、目覚めが悪かった。──そうだよね、アサギさん・・・・)

 

アスカは遥か高みにいる『最強の対魔忍』に想いを馳せた。

 

 

「・・・・面倒くさいけど、あのバカをたたき起こして色々と聴くとしようかなぁ」

 

 

アスカがよし、と気合いを入れ直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山本亮子は()()()()()を理解している。

 

何故なら彼女は、父親が()()()()()()()()()()に関わっていることを知っているからだ。

 

それは偶然だった。

亮子は4年前のある日、ミニブログ系アプリ『today』で友人が投稿していたアプリ内のアルバムを見ていた。

 

投稿タイトルは私の歴史。

 

モザイク加工もなく個人情報が駄々漏れの写真であったが、公開範囲はフレンド登録された数人だけではあった。

 

それだけに、見ていないとすぐに分かってしまう。

 

後で何を言われるわからないので、面倒と思いつつも『感想』のために一通り見ることにした。

 

何気なく見ていた時──ある写真を見た亮子は思わず目を見張った。

 

その写真は、数年前のとあるイベント会場を写したものであった。

 

白と黒の色の車──パトカーを背にして、当時小学生だった友人とその家族が笑顔で写っていた。

 

警察の広報イベントのようだった。

写真にはパトカーだけでなく、広報に駆り出された多くの警察官が写っていた。

 

亮子が驚いた理由はただ1つ──()()()()()()()()をよく知っているからだ。

 

近所の交番に勤務しているから、というような理由でない。

 

亮子の家に出入りしている──()()()()()の1人であったからだ。

 

しかも1番親しくしている者だったからこそ、身の上のことはある程度知っており、過去に武道を嗜む程度にしていたが会社員として勤めていた、としか聞いていなかったからだ。

 

──ひょっとしたら警察官の時に何か事情があって辞め、人に話したくない過去なのかも知れない。

 

そう考えた亮子は、驚きはしたものの特にそれを追及することはなかった。

 

だがそれから1ヶ月後──亮子は図らずしも、()()にたどり着いてしまった。

 

その日亮子は、リビングにスマホを置いたまま外出してしまった。

 

いつもは父親から防犯を兼ねているので()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ように言われていたのだが、 歩いて5分ほどのコンビニに行って10分ほどで帰って来る予定だったので油断していたのだ。

 

コンビニで飲み物を選んでいると、家事手伝いが亮子の元に()()()を届けに来たのだ。

 

その時──彼女が珍しく焦っているように亮子は感じた。

 

夜に自室でスマホを操作し、todayの閲覧をしているとふと彼女のことが頭に浮かんだからだ。

 

でも結局は気のせいだろうと、思った時に亮子は気が付いた。

 

録音用アプリが起動待機状態になっており、()()()()()()()()()()()()()になっていることに。

 

今日は録音した記憶は無いが、一応録音されたデータが無いか亮子が確認したところ、本日の録音データがあった。

 

亮子は心当たりが無かったので、録音データを再生した。

 

──亮子は家にいるか?

 

亮子の父である山本信繁の声。

 

複数の人間が走り回る音。

 

──いません!

 

普段はクールな家事手伝いの女性が、焦った声を出している。

 

少なくとも、亮子は一度足りとも焦っていたところを見たことは無い。

 

──防犯ベルのGPSはどうか?

 

──申し訳ありません! お嬢様の消息不明になった10分前に不具合が発生しており、居場所を特定出来ません。

 

──侵入形跡はあったのか?

 

──全くありませんでした。 しかしお嬢様の行方が分かりませんので、バックアップチームに援護を要請し、捜索を行います!

 

──・・・・すまんな。 恐らくは娘がスマートフォンを所持するのを忘れただけだと思うが。

 

──いえ、内務省公共安全庁調査第三部(セクションスリー)の山本部長のご息女である事は、残念ですが()()()()()()()()()()()()()()()()()()であるのは間違いありません。 ですから、用心するに越したことはありません。 ──それに、我々()()がついていながらの失態です。 お詫びのしようもありません。 ですが、まずは四の五の言う前にご息女の身柄を確認します。

 

──頼む。

 

二人のやり取りを最後に、音声データは終わっていた。

 

その予想もしない内容に亮子は眠いだけだろうと結論付け、眠った。

 

次の日。

再び音声データを再生すると、その内容は昨日と何ら変わることは無かった。

 

モヤモヤする日々。

 

1ヶ月が経った休みの日に、珍しく信繁がリビングにいた。

 

そして亮子は音声データを父に聞かせて、その内容の意味をストレートに質問した。

 

──そうか、知ってしまったか。

 

信繁は苦しそうにして語った。

 

──秘密にしていたのには理由がある。

 

仕事は国の行く末を左右することもあり守秘義務もあるが、何よりも誘拐されるかも知れない、と思っての日常生活は苦痛を伴うものだ。

 

だから、無用なストレスを感じることなく()()()()()()をさせてやる。

 

それが、自分が仕事で家に中々帰れない上に、母とも死別し、独りっ子で寂しい思いをさせている亮子にできる唯一の親らしいことである、と信繁は考えていたのだ。

 

──すまない、亮子。 お前を危険にさらすことになるかもしれん。

 

亮子の認識では父は警察官である。

 

──お父さんがこの仕事に着いたのってもしかして・・・・お母さんが死んだことと関係あるの?

 

2年前に、亮子の母が──麻薬中毒者に刺されて──死んでから信繁が家にいる時間が短くなっていったのだ。

 

そして徐々に二人の間に溝が空いていき、やがて会話もほとんど無くなった。

 

会話をしたのも実に()()()()()だ。

 

──そうだ。 母さんの死には、強大な犯罪組織が絡んでいた。

その犯罪組織により、私たちのように大切な者を奪われた者たちの数はとてつもなく多い。 しかも、その犯罪組織は()()()()()()()()()()()()()()()()()()ほどの力を持っている。 だからこそ、国はそれに対応できる力を持った者たちの力を借り、対抗するために対応部署を組織した。 私は母さんが死んだ翌週、政府高官からの接触があり、迷うことなくセクションスリーの部長となることを決めた。

 

──・・・・お父さん、辛そうな顔だよ。

 

──私は母さんを殺された復習心から部長になることを決めた。 だが、時だ経つにつれて冷静になれた時・・・・私は亮子の事をまったく省みていないことに、今さら気が付いた。 そして思い出した・・・・母さんの最後の願いは復讐ではなく、お前の幸福だった。 それからは後悔の連続だ。 お前の身の安全を考えるならば即座に組織から抜けるべきだ。 だが・・・・母さんの命を奪う原因を作った犯罪組織だけではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()に、日本で対応できるのはセクションスリーだけだ。 今私が組織を離れれば、近い将来に理不尽なエゴにより命を奪われ、悲しみに暮れる者たちが大勢生まれる。 だから、私は・・・・

 

──止めないでよ、お父さん。 母さんもきっと分かってくれるよ。 誰かのために必死になれる、そんなお父さんをお母さんは大好きだったんだから。

 

──・・・・亮子。

 

──私は将来、自分の身に何か起きてもお父さんを恨まない。 だから私たち親子みたいに不幸になる人を、1人でも多く救って。

 

──分かった、全力を尽くす。 それが亮子と母さんへのせめてもの罪滅ぼしだ。

 

──無理し過ぎないようにね。

 

──善処する。

 

この出来事は二人にとってのブレイクポイントであった。

 

この件により、二人にあった溝は徐々に埋まり、親子の仲は修復された。

 

 

(あの時、知れてよかった)

 

 

昔を思い出すのはきっと、()()()()()()()()()()()が来てしまったからだと、亮子は工場内を駆けながら思った。

 

 

「待て! 止まれっ!! クソアマ!!」

 

 

必死の形相で拓斗や取り巻きの不良たちが、亮子を追いかけていた。

 

亮子は亮司が電子制御された手錠が外れた瞬間──即座に駆け出した。

 

普段ののんびりした口調や、頭の軽そうな能天気な笑顔を浮かべる女子高生。

 

そこから陸上部をも圧倒する走力や体力を想像できる者は、皆無と言っていいだろう。

 

男子高校生を越える運動能力に加え、緊急事態ですぐに身体を動かせたのには理由がある。

 

あの日から亮子は家に来ていた女性SPを中心に、()()()()()()()()()()()()()()()を行っていたおかげだった。

 

それでも──

 

 

「はあ、はあ、はあっ・・・・ クソッ! ようやく追い詰めた! さっさとヤらせろよ!! お前はアスカちゃんの前菜なんだからよぉ!!」

 

 

工場は広いとはいえ、通路を人数を使って塞がれてしまったら、いかに亮子が素早くても逃げ切れない。

 

一方通行の角部屋に追い込まれてしまった。

彼女の目の前には、拓斗と5人の不良がいる。

 

 

「あの~、さすがに乙女の純潔はそんなに軽い物じゃないよ~」

 

 

亮子は内心の焦りを悟られないように、時間稼ぎをする。

 

拐われた時にスマホは没収されて亮子から10m以上離れたため、身に付けている防犯ベルが緊急事態を報せるためにGPS情報を発信している。

程無く助けが来るはずだ。

 

 

「ウゼえっ! お前らっ! さっさと押さえ付けろ!!」

 

「はいっ!」

 

 

不良たちが亮子に飛び掛かる。

 

ある程度格闘訓練はやったもののそちらの才能はあまり無かったのか、1対1ならば兎も角、亮子は1対複数で圧倒できるレベルには達しなかった。

 

彼女より体格の良い5人相手に勝てる見込みはない。

 

故に、彼女は()()()()()()()()()

 

 

「さようなら~」

 

 

窓を開けた。

 

ここは2階だ。

 

高さにして10mはある。

 

それでも、彼女は迷わず飛び出した。

 

 

「あ・・・・」

 

 

そのあまりの思いっきりの良さに、不良たちは呆然となった。

 

「ちっ! 逃げられた!」

 

 

窓から身を乗り出したものの、亮子のように飛び出す気骨はない拓斗。

 

無事に着地を決め、走り出した亮子を舌打ちして見逃すしかやかった。

 

 

「まっ、兄貴は謝れば許してくれるさ。 それよりも、むしゃくしゃしたなあ。よしゃっ! こうなったら、アスカちゃんを抱いてストレス発散するかあ!」

 

 

それは選択ミスだった──と、拓斗が気が付くことは無かった。

 

彼は自らが死んだ──と、自覚する前に()()へと変わったからだ。

 

それはあらゆる悪行を繰り返して来た男には、痛みさえ感じない一瞬の死は幸せな最後だったであろう。

 

 

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