アメリカ合衆国も日本国召喚に全力出演したいようです 作:スカイキッド
2016年4月――
二カ月後のロウリア王国。
日本からさほど離れていないロデニウス大陸の中でも特に国土の大きいこの国の北部には巨大な軍事基地が建設されていた。
基地――それも4,000メートル級の滑走路が2本に3000メートル級の滑走路が3本もあるこの空軍基地は、しかしながら自衛隊の基地ではない。
この基地のフェンスゲートにはロデニウスの大陸共通語、日本語、そして英語で立入禁止と描かれている――アメリカ軍ロウリア基地、二ヶ月前にこの異世界=惑星αの開拓に乗り出した米政府が設置した、突貫的な前線基地である。
日本と一緒に転移したアメリカ人と一部在日外国人を地球へ帰還させたのち、米政府はとんでもない行動に出た。
惑星αに日本列島を発見したこと、日本にいた自国民を地球へ帰還させたこと、惑星αを新たなフロンティアとして開拓しようとしていることを国内外に公表したのだ。
別に公表しなくても良いじゃないか、いや確かにそうだが、米国民以外の在日外国人らも救助した以上、いずれはどのみち他国にバレるのは必然的ではあった。
そのため公表に乗り出したようだが、このニュースは世界的に大きな反響を生み出し、米国民は政府のこの発表を軒並み好意的に受け取ったが――他国は資源問題や石油価格とかの事を気にして批判的に受け取った。
特に中国とロシアはこの発表にいろんなルートで云々と口を出してきたが、要するに自分たちも異世界開拓をさせろと言ってるのだ。
無論、米国はそれらの声を一切合切無視して開拓権を独裁した――だってアイツらに開拓権を渡したら、どんなことになるか分かったもんじゃないもの、と米国政府は思っている。
まぁ、異世界――特に日本とも貿易している資源大国のクイラ王国での資源開発、ロウリア王国の土地開拓により、米経済は過去例を見ないほどの急成長を遂げた(米国は両国と国交を締結した。まぁクイラは日米が全力でブランチマイニングしようが直下掘りしようが地下資源が無限水路が如く涌き出てくるし、ロウリアも日本は土地の広大さと文明発達の遅れから北部の開発だけで持て余していたのでちょうど良かった)。
その米経済復活による反動で日本転移以降の経済恐慌で冷えきっていた世界経済も右肩上がりし始めた――そもそも対日投資額の多い米国から恐慌が始まったのだ――ため、中露+αの国以外は異世界開拓を後々には好意的に受け取り始め、大半の欧州諸国は開拓を支持するようになった。
まぁこれによって石油資源が異世界から輸入されてきて、石油が売れなくることを焦った中東諸国などの石油輸出国や石油取引所が、原油価格をバカみたいに安くし始めた――おかげで自動車大国はみんな喜び、バイオ燃料輸出国の経済が死んだ。
だが異世界開拓には問題があった。それは現地民族との対立である――というとまるで西部開拓民とインディアンのようなので語弊があるだろう。もう少し詳しく述べると、米国(と日本)がパーパルディア皇国と戦争状態になったのだ。
米艦隊はワームホール付近で皇国の大艦隊を殲滅し、それが原因でとばっちりを受けた日本は皇国に民族浄化を宣言されている。
そして皇国は戦列艦でロサンゼルスを砲撃したため、米国はパ皇に本気で怒り狂っている。
さて、そんなこんなで自衛隊はパ皇と戦争を繰り広げ――すでに日本近海やアルタラスで自衛隊と皇軍が何度も衝突している、もちろん自衛隊側が圧倒的に有利な状態で――、その間にパ皇許すまじを掲げる米政府は異世界進駐米軍の大規模増派を決定している。
先ほどのロウリア基地もまた、米軍がそのパ皇との戦争のために作り上げた基地であり、すでにロウリア王国は今世界最大の軍事基地と化していた。
そしてその基地や軍港には8隻の大型空母からなる8個空母打撃群、1,000機の米空軍の戦闘機や攻撃機に戦略爆撃機、7個陸軍師団と1個海兵師団、全て米軍戦力である部隊が地球から送られ、配置されていた。
「あいつら、本気だ」
とは何処かの日本政府官僚の言葉。
日本とフロンティアを探してこの異世界に飛び込んできた挙句、現地の国家を報復として亡国化させようとまでしている。
ちなみにその足掛かりとして日本列島の在日米軍基地も運用していくため、やはり不沈空母である日本から日本国民を地球に帰還させる計画は破棄されたそうな。
というわけで、日本はこの世界での居残りが米国により決定されてしまった。
せっかく日本は異世界に転移してきたのに、これではいつだろうと何処にいようと、日本はアメリカの影響を受けていくしかなさそうだった。