アメリカ合衆国も日本国召喚に全力出演したいようです   作:スカイキッド

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第21話「眠れる獅子」

 

 

 中国。

 

 

 

 かつて世界六大文明の一つとして数えられた黄河文明と長江文明が存在し、その後の数世紀、国名、王朝、政治体制、指導者を変えつつもアヘン戦争までアジア最大の勢力を持った大国として君臨した国家。

 

 アヘン戦争以降は西欧の列強諸国の影響、そして極東の突然変異国家である亜列強・日本の勢力増加、国内の内乱などにより最大の勢力という名誉は失われていた。

 

 しかし21世紀以降、経済的に日本を追い越した中国は再びアジア最大の勢力を持った大国として君臨し――そして日本が異世界に転移した後、完全なるアジア最大の大国として再び君臨した。

 

 

 

 2015年4月。

 中国政府は日本転移による米第7艦隊の部隊消失をいいことに、ついに行動を開始した。

 

 日本の転移により米国の極東軍事プレゼンスが低下した段階で、中国軍は戦力展開の目標ラインである第一・第二列島線の確保のために動き出したのである。

 

 中国海軍(PLAN)の空母「遼寧」を旗艦とする空母艦隊を台湾沖合いに展開した。

 空母1隻、ミサイル駆逐艦4隻、フリゲート2隻、補給艦1隻が出撃し、連日のように爆撃機や戦闘機が台湾上空へと飛来。

 これにより東太平洋地域で米軍・台湾軍・韓国軍他と中国軍による緊張状態が発生するなどし、それによる混乱は長く続いた。

 

 中国海軍による台湾沖合いでの挑発行動を発端とする『第四次台湾海峡危機』と、中国に唆される形で北朝鮮軍が南下を図った事による『半島危機』は極東情勢を極度に緊張化させた。

 

 だが中国はすぐにでも戦略目標を達成するチャンスであり、この日本転移による機会を逃さず、またすぐにでも行動を起こすつもりだった。

 ……つもりだったのだ。

 

 

 

 

 2016年4月。

 あの日、合衆国が過去に類を見ない、とんでもないことを起こした。

 

 合衆国は消えた米第7艦隊と日本列島を遠く離れた地球外惑星にて発見し、あろうことかワームホールなるものを形成して救出してきたのである。

 

 合衆国は米第7艦隊からなる在日米軍部隊を地球に帰還させ、さらにその惑星――惑星αの開拓を名目に、大規模な軍拡を開始したのだ。

 

 退役していた旧式の大型空母7隻、戦艦6隻、数千機の退役軍用機が現役復帰し、戦車や装甲車、新型航空機、イージス艦も次々に量産された。

 兵士上限数の増加により増えた数十万人の合衆国軍兵士――異世界に夢を見た多くの合衆国の若者達が軍に志願し、軍は大量の人材確保にも成功していた――も脅威だった。

 

 最大の問題は、惑星αをフロンティアとして開拓し始めた米国の経済力は恐ろしいまでに絶好調で、これだけの軍拡を問題なく行える力があることだった。

 

 

 

 中国首脳部は憂鬱だった。これはまさしく由々しき事態である。

 確かに再就役した米軍の空母や戦艦はそのほとんどが旧式かつ惑星αに送られてるし、兵士もまた(しか)りなのだが、それでも、それでもだ。

 

 合計して17隻の大型空母――まもなく最新型のG.R.フォード級が就役予定のため18隻に増える予定だ――だけでも、1隻しか大型空母を持たない中国海軍では追い着けない。

 最悪の場合、米国と戦争を起こしたら、17隻もの空母が中国に殴りかかって来ることも否定できない。

 

 

 

 ならば中国はなるべく合衆国と事を構えなければ良いのでは、と思われるかもしれないが、それも今の中国には無理な話である。

 なぜならば、中国は地球最大の人的市場であり、それを活かして経済的に乗り上がってきたのだが、合衆国は異世界に人的市場を見出だし始めてるからだ。

 

 もし、もしも米国、さらに欧州諸国までも異世界に市場を移したとしたならば、中国経済の崩壊、そして最悪共産党の失脚も考えられる。

 まさか米国もそこまで馬鹿な真似はやらないとは思うが、それを防ぐためには軍拡や軍の挑発による威嚇で、これを抑制せねばなるまい。

 

 

 中国は現在急ぎ軍拡を行っている。

 2016年後半以降、中国海軍は2020年までに新型の大型空母4隻、小型空母4隻、強襲揚陸艦4隻を完成させるのとを目標に緊急建造を開始した。

 2025年までには排水量10万トンの超大型空母2隻をさらに追加で進水させる予定である。

 

 大型空母は中国唯一の空母「遼寧」(旧ヴァリャーグ)をベースに、小型空母はキエフ級「ミンスク」をベースに、強襲揚陸艦は完全新規設計を目指している。

 現在、大型空母は2隻が進水間近であり、あとの艦載機パイロットの訓練も性急で行われていた。

 護衛を務める駆逐艦、巡洋艦、フリゲートの建造、艦載機となるJ-15、J-10K、J-20、J-31などの量産も然りだ。

 

 こんな性急さで本当に戦力として成立するのかと聞かれれば、確かに疑問が残る。

 しかし、中国には時間が無いのだ。

 

 また中国はこの時、空母や護衛艦艇の他にも、米海軍に対抗するため、とんでもないことを行っていた。

 人々の間では都市伝説程度にしか囁かれていなかったソヴィエツキー・ソユーズ級をベースとした大型艦艇……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――要するに、()()の建造である。

 

 

 

 

 

 

 

 




現実で出来るわけないよなぁ?

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解説
・空母「遼寧」
中国の練習空母。ウクライナから買い取った旧ソ連製空母「ヴァリャーグ」を買い取り、改装して中国海軍に配備させたもの。……たぶん練習用、まさか実戦投入はしないと思う。たぶん。

・空母「ミンスク」
旧ソ連製の軽空母。ソ連崩壊後に中国が買い取り、テーマパークとして展示していた(結局廃園したらしい)。本作では廃園から9カ月後の2016年10月に中国海軍が買い取り、国産軽空母のベースとしている。

・J-10K
中国空軍の主力戦闘機J-10の艦載機型。名称は本作オリジナル。欧州機のようなクロースカップルドデルタが特徴的な機体。というかパッと見欧州機にしか見えない。
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