アメリカ合衆国も日本国召喚に全力出演したいようです 作:スカイキッド
戦艦グレードアトラスター率いるグラ・バルカス帝国海軍東征艦隊所属の水上打撃部隊13隻は、全艦が24ノットの速力でカルトアルパス目指して航行していた。
「報告! カルトアルパス攻撃隊は敵の迎撃により壊滅的被害を負った模様、現在母艦に帰投中とのことです!」
「そうか……残存機は?」
「70機程です」
「3割以下じゃないか」
通信士からカルトアルパス攻撃隊が壊滅したとの報告を受けたグレードアトラスターの艦長、そして水上打撃部隊の臨時指揮官を兼任するラクスタルは驚嘆する。
まもなくこの水上打撃部隊――グレードアトラスター含む戦艦4隻、重巡洋艦2隻、巡洋艦2隻、駆逐艦5隻は、世界各国の精鋭艦隊の集まるカルトアルパス湾へと突入する。計画ではそうなっていた。
だが先ほどから何故か、空母機動部隊の旗艦ベテルギウスやそれに所属する他艦艇との連絡がつかず、仕方なく水上打撃部隊は当初の命令に従ってカルトアルパスを目指して航行を続けている。
そこへカルトアルパス攻撃隊壊滅の報せ、ここまで来るととてもではないが作戦がうまく行ってると言える状況ではない。しかし撤退の命令も来ておらず、それどころかカルトアルパス湾の入り口であるフォーク海峡はもう目と鼻の先であった。
「これではエアカバーは期待できんな」
空母を持たない水上打撃部隊は当然ながら対空戦力が不足しており、そのためカルトアルパス空襲に飛来する攻撃隊の戦闘機からのエアカバーを期待していたのだが、これでは不可能だろう。
「帰投する機にエアカバーを頼めんか?」
ラクスタルは参謀に尋ねる。
「一応は頼みました。ですが、アンタレスが18機、リゲルとシリウスがそれぞれ2機の計22機だけです」
「? じゃあ他の機はどうしたんだ?」
「それが……奴らカルトアルパスにはもう行きたくないの一点張りで言うことを聞きません。だいいち、もう燃料がありませんよ」
艦橋の窓から、ラクスタルは空を見上げる。確かに20機程度の帝国軍航空機が編隊を組んで空を飛んでおり、しかし間に合わせの部隊のように編隊は少し乱れている。
「そうか……やむを得ん。エアカバーはとても期待出来そうにないが、このままカルトアルパス湾に突撃する。総員戦闘配置につけ!」
「総員戦闘配置!」
ラクスタルの命令は各艦に正確に伝達されていく。艦内に緊迫したブザーが鳴り響き、休憩中の兵達も慌ただしく持ち場につく。各艦も陣形を変更し、輪形陣から単縦陣へと移行を始めた。この時すでに敵の攻撃が始まろうとしていることに、彼らは気づいていなかった。
米海軍はグラ・バルカス帝国の戦艦グレードアトラスター率いる水上打撃部隊に海戦を挑もうとしていた。もちろん前時代的な主砲を用いた有視界内での砲撃戦ではなく、有視界外から一方的に艦対艦ミサイルを叩き込む飽和攻撃である。
「全艦対水上戦闘、ハープーン発射用意!」
本来なら先ほどの敵空母機動部隊を殲滅したときのように電子戦を掛けて飽和攻撃を行いたかったが、近くに友軍である海自の護衛艦隊がいる以上、おいそれとは電子戦を行えない。
先ほど対艦攻撃に飛ばしたF/A-18Fも整備のために飛ばせないため、やはり電子戦無しかつ水上艦からの対艦ミサイル攻撃しかないのだ。
「攻撃開始!」
命令の直後から敵艦隊向けて、艦隊のイージス巡洋艦2隻、イージス駆逐艦3隻、戦艦1隻の専用発射筒から、56発のハープーン対艦ミサイルが撃ち出される。うち2発は動作不良を起こし海面に叩きつけられたが、それでも54発のミサイルが順調に飛行していた。
最初にグ帝水上打撃部隊に迫るハープーンを発見したのは、艦隊正面18キロの位置を飛行していたリゲル型雷撃機に搭乗する偵察員だった。
「ん? あれは――!?」
偵察員は自機の遥かに低空、海面スレスレを、帝国軍のアンタレス戦闘機すら凌ぐ時速1000キロの高速で飛行している物体の群れを目にして驚愕する。
「未確認機多数、艦隊1時方向より超低空から急速接近! 1分以内に艦隊と会敵する! なお、敵の高度は10メートル以下、速度は時速1000キロ以上!!」
彼の通報はグレードアトラスター率いる艦隊に正しく伝わった。その通報があったところで、グラ・バルカス帝国の艦隊が出来ることなど無いに等しいのだが。
通報を受けた旗艦グレードアトラスターでラクスタルは驚愕した。アンタレスの2倍近い速さの敵が、艦隊を目指しているという。彼は即座に命令を出した。
「対空戦闘用意だ! 全力で撃ち落とせ! 各艦の判断で撃ち方を始めろ!! 主副対空砲も自由射撃だ!」
いったいどんな敵なのかはラクスタルにも分からない。だが、これがカルトアルパス攻撃隊の壊滅と空母機動部隊との連絡途絶の要因であることは想像がついた。やがて艦隊に破壊が訪れる。
最初にハープーン攻撃の犠牲となったのは、艦隊前衛を務めるキャニス・ミナー級駆逐艦ゴメイサだった。正確に照準を付けるために一度
瞬間、ハープーンの弾頭が炸裂。爆発の火の手はゴメイサの火薬庫にも回り、直後にゴメイサは大爆発した。もはやゴメイサは軍艦として使うことの出来ない状態にあったが、誰もその事を気にする余裕はなかった。
他の艦にもハープーンが迫っていたからだ。
ハープーンが目視で確認された段階で、艦隊からは多数の40ミリ対空機関砲と10センチ両用砲から放たれた火線がこれを迎え撃った――無論、それらの対空砲火により撃ち上げられた砲弾や機銃弾が、一発たりとてすべてのハープーンに掠りもしなかったのだが。
やがてハープーンは次々に艦隊の各艦に狙いをつけて急降下し、最初、艦隊前衛を務める駆逐艦ツルギ、駆逐艦メイロの2隻に閃光が走ったと思うと、次の瞬間には艦隊前方にいたヘルクレス級戦艦ラス・アルゲティの上部構造物が爆散した。
そしてキャニス・メジャー級巡洋艦ウェズンが魚雷発射管の誘爆により中央からへし折られ、オリオン級戦艦プロキオンの艦首が派手に吹き飛び、直後にはまるで潜水艦の急速潜航が如く海底へと突き進み始めた。
続いて艦隊側面のタウルス級重巡洋艦アルキオネとケラエノが魚雷発射管に直撃を受けて艦中央から引き裂かれると、直後にはヘルクレス級戦艦バルサーが5発近いハープーンの連続した着弾を受けて爆発炎上した。
そして――戦艦グレードアトラスターにも3発のハープーンが迫りつつあった。
「敵弾接近!」
「総員、衝撃に備え!」
ラクスタルはもはやハープーンを回避できないと悟ると、グレードアトラスターの艦長として、艦内の全員に衝撃に備えるよう命じる。彼には船員を護る義務があるのだ。
ラクスタルが艦橋の一角に頭を伏せた直後、グレードアトラスターをかつて彼女が経験したことの無い巨大なエネルギーが大きく揺さぶった。
すべてのハープーンが艦隊に着弾したとき、海上にあったのは多数の船の残骸と、さまざまな漂流物と、辛うじて浮いているが、もはや軍艦としての機能が完全に失われた数隻の軍艦――
――そして、中破しつつも、まだ戦闘可能な戦艦が一隻そこにあるだけだった。
グラ・バルカス帝国東征艦隊所属の超戦艦グレードアトラスターは、対艦ミサイルによる攻撃を生き延びることに成功したのである。
グレードアトラスターが食らったハープーンはやはり3発だった。まず1発は艦首に命中、特徴的な細長く反り上がった艦首を爆発で叩き潰し、艦首を醜く変形させたうえで、喫水線下にもダメージを起こし速力を24ノットに低下させた。
続く2発目は左舷中腹ほどに命中した。こちらは甲板上にて弾頭を炸裂させて爆発、爆発による衝撃で甲板を内側に凹ませたほか、左舷側の対空砲や副砲を全滅させたが、爆発が甲板の分厚い装甲を貫通することはなく、艦そのものに与えたダメージは軽微だった。
一部によっては自らの46センチ砲による攻撃すら耐えるグレードアトラスターの装甲を、21世紀の被弾を想定して造られていない軍艦への攻撃を想定して作られたハープーンが貫通することはかなりの困難であった。
最後の3発目は艦の後部、水上機カタパルト付近に命中した。この命中弾はグレードアトラスター表面の甲板に爆風で大穴を開け、カタパルトやクレーンなどの彼女の航空装備を爆風で全て吹き飛ばし全滅させた。
グレードアトラスターは速力低下、左舷側対空砲の全滅、航空装備使用不可などの被害を負ったものの、それでも主砲や照準機器、レーダー、さらに各種指揮所などは無事であり――つまるところ軍艦として未だ行動可能だった。
だがそれを見逃してくれるほど、米海軍は甘くない。このままカルトアルパスに突撃されては危ないだろう。対艦ミサイルによる攻撃の効果が薄いと判断するや否や、米海軍の艦隊司令官は次の手段に打って出るように命じた。
「戦艦ミズーリを出せ。戦艦どうしの殴り合いで、次こそ敵戦艦を確実に無力化しろ」
艦隊司令の命令を受け、米艦隊に含まれた戦艦 USSミズーリが急速に増速し、敵戦艦グレードアトラスター目指していく。今回、ミズーリは様々な改装が施されていた。
21世紀に入り初の戦艦決戦――それもアイオワ級戦艦と大和型戦艦(の擬きだが)というライバル同士の夢のマッチが、この異世界の海上にて始まろうとしていた。
ようやく、ようやく次回やりたいことが出来るんですね……大和(もどき)とミズーリの決戦が…