アメリカ合衆国も日本国召喚に全力出演したいようです   作:スカイキッド

29 / 51
やっとミズーリ対GAですよ、やっと!
今回も4600文字と、今までからすれば比較的長文なのでご注意下さい。
 


第29話「ミズーリvsGA」

 

 

「今度は戦艦だって?」

 

 対艦ミサイルの直撃を耐えた戦艦グレードアトラスターの艦橋で、レーダー士から報告を受けた艦長のラクスタルは、思わず嘆きたくなった。

 

「はっ、本艦正面……カルトアルパス湾付近から戦艦らしき艦影が、巡洋艦クラスの艦艇を1隻伴い、30ノット以上で本艦に接近しているのをレーダーが捉えました」

 

 

 ――これ以上戦えるのか?

 

 ラクスタルは思わずにはいられなかった。ただでさえ、この戦艦は先ほどの未知の攻撃で中破しており、随伴艦も全滅している。ヘルクレス級戦艦の2隻はまだ浮いていたし艦としての面影も残していたが、軍艦としての機能はほぼ喪失したと見て間違いないだろう。

 

 しかし逃げられる保証もない。グレードアトラスターは先ほどの攻撃で艦首へダメージを受けており、速力が24ノットまで落ちている。敵艦が先の光弾で攻撃してくる可能性もあるため勝つのは難しいかもしれないが、30ノット以上で迫る敵艦から逃れることはできない。

 

「敵との会敵予想時刻は?」

「本艦主砲の射程圏内に入るのは10分以内です」

「考えてる猶予は無いか……対水上戦闘用意! 主砲発射準備だ! それと、通信士! エアカバーの航空機を全部対艦攻撃に振り向けろ!」

 

 ラクスタルは叫び、直後に味方航空機による航空支援と、主砲――3基の45口径46センチ3連装砲による敵艦への攻撃を命じた。

 

 

 

 一方の米海軍戦艦――USSミズーリも主砲による砲撃の準備を開始した。

 

 ミズーリの主砲は50口径40.6センチ3連装砲3基であり、グレードアトラスターの45口径46センチ砲よりも砲身は長いが直径は細い。そのため砲の威力そのものはグレードアトラスターに分があるが、砲身長の長いミズーリの主砲は砲口初速が速く、装甲貫通力はどっこいどっこいだ。

 

 ただしミズーリには今回のカルトアルパス派遣において特別な改装が施されており、今後米海軍に就役予定の大型艦艇に搭載するいくつかの兵装の試験を行うテストベッド艦として様々な新兵装や装備、それらを運用するための最新システムを搭載していた。

 

 例えば――

 

「僚艦とのデータリンク完了!」

 

 代表として「アーセナル・シップ」――ミサイル等の火器の管制などを随伴する友軍艦によって行い、ただ自艦はそれらの火器の発射母艦として戦闘を行う艦の実験として、高性能なデータリンク・システムが付与されていた。

 

 本来のアーセナル・シップはミサイルのみを発射するが、ミズーリの場合はミサイルの代わりに40.6cm主砲を発射する。21世紀の軍艦による火器管制は恐ろしいまでの命中率を叩き出す。

 

 今回はアーレイ・バーク級イージス駆逐艦 USSラファエル・ペラルタが戦艦ミズーリに随伴しデータリンクによってミズーリの火器の管制を行う。主砲から副砲、さらにミサイルやCIWSまで、ほぼ全ての――発射を除く――火器管制がラファエルに委ねられていた。

 

「敵航空機接近!」

「火器管制をラファエルが代行、対空ミサイル発射!」

 

 手始めと言わんばかりに、襲来した敵の航空機22機に向け、ラファエルの管制のもとミズーリのMk.41VLSとRAM近接ミサイル、57mmCIGSが火を噴く。あくまでもテストによる対空戦闘だったが、ミズーリは5分も経たずにあっさりとこれを全滅させた。

 

「敵航空機、全排除!」

「よし、敵艦に砲撃を行う。弾種、多目的榴弾! 目標には外交官が乗っていると考えられるため、撃沈はするな。上部構造物だけを破壊し無力化する」

 

 発射するのはロケット補助推進の精密誘導HE弾であり、弾頭は21世紀生まれの高性能爆薬、さらにロケットの加速によって射程距離は100km近くにまで伸ばされ、命中率は艦船相手でも5割近くにまで上っていた(代わりに炸薬量は減ったが)。

 

「砲撃を開始する。主砲射撃用意、弾種多目的榴弾、全門斉射用意!!」

 

 ミズーリは指向させた3基9門の40.6cm主砲を50km先の敵戦艦に大きく仰角を付けて向ける。駆逐艦ラファエルの火器システムは相手との相対速度を瞬時に算出し、そして砲弾の飛翔速度をも計算、敵の未来位置に向かってミズーリの主砲を照準させた。

 

「撃てェーッ!!」

 

 戦艦ミズーリの主砲が火を噴いた。

 

 

 

 同時に戦艦グレードアトラスターの艦橋では、水平線上で閃光が起きるのが確認できた。惑星そのものの直径が地球よりも大きいため、50km先の目標も戦艦の艦橋からならギリギリ目視できる。

 

「て、敵艦発砲!!」

 

 見張り所で双眼鏡を覗いていた見張り員が信じられないと言わんばかりの声音で報告の声をあげた。自艦の46cm砲は射程42kmであり、まだまだ遠い。カルトアルパスにいた米海軍の戦艦は、口径長は長いとはいえ口径は目算40.6cmであり、大したことなかったはずである。

 

(バカな! まだ50kmは離れてるんだぞ!)

 

 ラクスタルも叫びたくなった。だがその叫びを彼は圧し殺す。指揮官が冷静でなければ、部下の士気は非常に低下するからだ。代わりに、彼は命令を飛ばす。

 

「回避しろ! 取り舵いっぱい!」

「取り舵いっぱい、アイ!」

 

 ラクスタルが命じ、舵をとった艦は大きく傾き始めた。だがラクスタルは、回避機動を取った所で敵弾を避けられないのでは、と踏んでいた。

 

(もしこれが先ほど我が艦隊を壊滅させた光弾攻撃であれば、ほぼ百発百中――避けられないはずだ)

 

 攻撃の手段こそ異なるが、彼の予想は概ね正しかった。

 

 

 

 ミズーリが天高く発射した9発の40.6cm砲弾は、マッハ2以上の高速で50口径の砲身から飛び出した後に高空向けて急上昇した。そして弓なりの弾道飛行に入る直前に尾部のロケットモーターを点火、運動エネルギーを増加させ、GPS誘導と内蔵されているジャイロにより軌道修正しつつ敵艦に突撃するコースを取った。

 

 1分以上の飛行ののち、弾道飛行における終末段階に入りつつあった9発は先端の赤外線シーカーを作動させ、精密な誘導のもとスラスターで軌道を微調整しつつ未来位置を目指し続け、そしてグレードアトラスターに大落角で突っ込んだ。

 

 命中弾は6発だった。命中弾となった6発は底部の遅動信管を作動させ、砲弾内部に収められていた炸薬を起爆させた。起爆時に生じた衝撃波と爆風は着弾地点を中心として同心円状に広がり、周囲の構造物を凪ぎ払った。

 

 初弾でまさかの6発が命中、この際にグレードアトラスターの上部構造物は厚い装甲が施された主砲、司令塔、煙突などを除いて、その1/3がこのときの命中弾の炸裂によって全滅した。

 

「ダメージコントロール! 応急処置要員は艦内火災の消火急げ!」

 

 ラクスタルはダメージコントロールの要員に命令を飛ばす。まだまだ戦えるだろうが、初弾でいきなりの大ダメージだった。

 

 

 

 

 この間に、ミズーリはグレードアトラスターの砲戦圏内の42kmへと侵入していた。普通に考えれば、あのままグレードアトラスターの射程圏外から一方的にロケットアシスト弾を撃ち込むべきだったが、あれは飽くまでも試験的に装備されたため数が少なく、先の9発で全てだった。

 

 そのため後は全て通常の――つまりかつての砲戦距離内の38kmで発射する砲弾だけである。非ロケットアシストであれば、多目的榴弾はまだ残っていた。

 

 

 

 

 対するグレードアトラスターも、ミズーリを主砲の射程圏内に捉えたため、ようやく砲撃を始めようとしていた(ミズーリに随伴するラファエルはGAから一定の距離を保ち続けた)。

 

「レーダー照準、完了!」

 

 辛うじて未だに無事だった対水上レーダーのデータをもとに、グレードアトラスターの主砲が照準される(対空レーダーは先の着弾時にイカれていた)。

 

「主砲、砲撃はじめ!」

「砲撃はじめ、撃てェッ!!」

 

 ラクスタルが命じ、グレードアトラスター前部2基6門の46cm砲が敵めがけて火を噴いた。初弾は外れ、2回目は挟叉に終わったが、3回目のうち1発はミズーリに直撃するコースを取った。

 

 

 

 

 

 ミズーリもグレードアトラスターの砲撃を確認した。ラファエルからデータリンクしたデータにより既に着弾予測地点は計算済みであった。

 

「1発直撃コースです!!」

 

 敵戦艦が放った6発の46cm砲弾はほとんどが至近弾で、そのうち1発がどの方向に避けようともミズーリに命中するコースであった。

 

「この際だ。新兵装の実験を行う。対空レーザーを起動、本艦に向かう敵砲弾に照射せよ!」

「了解、『対空レーザー』起動」

 

 ミズーリの艦尾に置かれたドーム状の物体が旋回し、それのレンズにあたる部分からレーザーが照射される。ドーム状の物体はレーザーの照射を続け――照射開始から10秒後、ミズーリを目指していた砲弾が空中で自爆した。

 

「敵砲弾の迎撃を確認!」

 

 ミズーリには今回、試験的に『SACOIL』と呼ばれるヨウ素酸素化学レーザー(COIL)砲が装備されていた。要するに、『対空用レーザー砲』である。

 弾道ミサイル迎撃機「AL-1」の対弾道弾レーザー砲を艦上運用出来るように改良のもとミズーリに対空用として搭載したのがSACOILだった。

 

 もともと弾道ミサイルの撃墜を目的に造られたため、対空用としての威力は過剰だったが、音速で飛翔する敵砲弾の迎撃には向いていた。

 

 その後もグレードアトラスターの砲撃を避けつつミズーリは砲戦距離に迫り、やがて砲戦距離の相対距離38kmに到達した。

 

「敵、主砲の射程圏内!」

「よぉーし、お返しといこうじゃないか。1番2番主砲、弾種多目的弾、撃てェッ!!」

 

 ミズーリの主砲が再び火を噴いた。

 

 

 

 

 1分後、グレードアトラスターにはミズーリが放った6発の40.6cm砲弾が襲来した。非誘導砲弾とはいえ駆逐艦ラファエルの高性能FCSに精密制御され、データリンクで正確に照準されたそれらは、正確にグレードアトラスターの未来位置へと殺到し、4発が命中した。

 

 シーカーとロケットモーターが無い分より多くの炸薬を弾頭に詰め込んでいたそれらの砲弾は、1発1発が先ほどよりも大きな爆発を起こした。

 

 この命中弾のうち、1発がグレードアトラスターの夜戦艦橋に突っ込んだ。艦内で砲弾が炸裂したことにより前檣楼は大きな振動に包まれ、この際に(相当デリケートなのに)辛うじて生き残ってた対水上レーダーと射撃照準レーダーがついにイカれた。

 

 それでも測距儀が無事だったため、戦闘はさらに続いた。ミズーリは6回の斉射を行い、GAも4回の斉射を行った。だが限界が来た。

 

 ミズーリが8回目の斉射をした際、命中弾の爆風が前部射撃指揮所の測距儀を吹き飛ばし、後部射撃指揮所は直撃弾を受けて撃破され――つまるところ、射撃不能だった。しかも後部射撃指揮所を吹き飛ばした40.6cm砲弾は後部副砲すらも叩き潰し、大規模な火災を引き起こさせていた。

 

「本艦、射撃不能です」

「……クソッ」

 

 ここまで努めて冷静を装ってきたラクスタルも、さすがに悪態をつかずにはいられなかった。もはやこの艦は戦えない。戦えないフネが出来ることなど何もなく、その戦えないフネを助けるべき味方はすでにいない。

 

「……降伏だ」

 

 ラクスタルの言葉に、誰からも異論は無かった。

 

 

 

 

 

 グレードアトラスターは戦闘旗をマストから引き下ろし、電文にて平文で降伏する旨を米海軍に発した。

 

 米海軍はこれを受け入れてグレードアトラスター占領のために、艦隊に随伴していた米海軍特殊部隊『ネイビー・シールズ』チーム1と米海兵隊員を強襲揚陸艦の搭載していたMV-22オスプレイにてGAに送った。

 

 ラペリング降下で甲板に降り立った彼らは瞬く間にGAを占拠し、ここにグラ・バルカス帝国のカルトアルパス攻撃作戦は潰えた。

 

 




 

解説
・USSミズーリ
アイオワ級戦艦。兵装試験のために新装備を搭載するため大改装が施された。主な改造点として、アーセナル・シップの実験としてデータリンク・システムの強化、Mk.41VLS(32セルを艦橋を挟む形で2基64セル)、レーダー砲SACOILの搭載など。簡単に表すとすれば、兵装とガワがアイオワ級のアーセナル・シップ。

・アーセナル・シップ
武器庫艦の名の通り、500セルのVLSに巡航ミサイルのみを載せ、それの発射()()を行う軍艦。ミサイルの管制は他艦が行うため、データリンク・システム以外にはレーダーはおろか艦橋も格納庫もない。

・SACOIL
弾道ミサイル迎撃機AL-1のレーザー砲を艦載対空レーザー砲として移植したもの。正式にはShip-to-Air Chemical oxygen iodine laser。元が対弾道弾用なので、LaWSやTHELなどの普通の対空レーザーと比べたらオーバーキルと言わんばかりの火力を持つ。

・ネイビー・シールズ
米海軍特殊部隊。本当は対空火器殲滅後GAに強襲してGAを海賊よろしく強奪するという展開を考えていたが、途中でGAvsミズーリがやりたくなったのでほぼお役御免に。強襲揚陸艦をわざわざ随伴させたのも、言ってしまえばこのため。
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。