アメリカ合衆国も日本国召喚に全力出演したいようです   作:スカイキッド

30 / 51
ここ最近投稿ペースが遅くて申し訳ありません! なかなか執筆の時間が取れないものでして。
あ、それと今回は久々に2000文字代となっております。


第30話「後始末と決断」

 

 

 中央暦1642年4月26日――

 

 先進12ヵ国会議の最中だったカルトアルパスはその日、大勢の人々でごった返していた。いや、途中でアニュンリール皇国とグラ・バルカス帝国の代表が退席したため、現在は10ヵ国会議となっているが。

 

 集まったのは、会議のために集まった各国使節、その護衛を務める艦隊の将兵はもちろん、カルトアルパスの住民たち、さらには騒ぎを聞き付けミリシアル国内から集まってきた大勢の野次馬だった。彼らはある物を見て騒いでいた。

 

 ひとつはカルトアルパスに襲来した数百機の飛行機械を一方的に殲滅した日本国海上自衛隊の護衛艦隊、もうひとつは巨大戦艦や超巨大空母を擁してグ帝艦隊を殲滅した米海軍艦隊、そして、鹵獲されたグラ・バルカス帝国の戦艦たちだった。

 

 先日、グラ・バルカス帝国海軍がカルトアルパス湾を急襲したことで発生した『カルトアルパス沖大海戦』は、米海軍の攻勢と海自艦隊の防御により帝国海軍側の惨敗、残った少ない戦力は降伏するに至った。

 

 米軍艦によって湾内に曳航されてきたグラ・バルカス艦艇は、米海軍の攻撃の前にも辛うじて沈まず、最終的に降伏した艦艇だ。

 

 カルトアルパス湾に移送された鹵獲艦艇は3隻の戦艦だった。うち2隻は長門型戦艦に酷似したヘルクレス級戦艦――コルネフォロス、ラス・アルゲティ――だった。

 

 この2隻はハープーン攻撃に耐え、船体や機関へのダメージもなく海上に浮いていた。だが上部構造物の大半が主砲を除きほぼ全て叩き潰され、戦闘を行うためのシステムから要員まですべてを吹き飛ばされ、戦闘不能になっていた。そのため、降伏自体はなんとか生きてた士官連中がとっとと行ってくれた。

 

 そしてもう1隻は、先程もカルトアルパス湾に来航履歴のある戦艦だった。

 そう、戦艦グレードアトラスターである。

 

 この艦はヘルクレス級の2隻よりも損傷は少なかったものの、やはり戦闘不能に陥っていたため、艦長ラクスタルにより米海軍への降伏が決められていた。

 

 見物人たちは、これらの戦艦の大きさ、そしてこれらが純科学製であるということに驚愕し、同時にそれを一方的に叩き潰した米海軍艦隊と日本艦隊に驚愕と畏怖の感情を抱いた。

 

 おそらくあれらの戦艦は米国の所有となり、今後グラ・バルカス軍の旗の下で戦う事は無いだろう――カルトアルパスにいた人々、さらに降伏したグラ・バルカス帝国軍のほぼすべての将兵がそう感じていた。

 

 

 

 

 

 所変わって先進10ヵ国会議では、今回の戦闘における後始末が話されていた。やはり見物人や野次馬らの思っていた通り、3隻のグラ・バルカス戦艦は米海軍の所有となろうとしていた。

 

 米国側も、それには賛同している。戦艦は運用にバカみたいな高コストが懸かるが、現在米海軍の運用しているアイオワ級・サウスダコタ級戦艦は半世紀以上前に建造された老齢艦ばかりだ。

 

 その更新のために活用してやろうではないか。そう考えている。

 

 またグラ・バルカス帝国の処遇に関しては、ムーの提案により、すべての侵略行動の停止と撤兵、さらに今までの侵略行為への謝罪と賠償を行えば、今までのことはすべて水に流そう、ということで決まっている。既に声明はグ帝側に伝えられ、しかも旧レイフォル勢力圏の領有継続は許可しており、かなり寛大だ。

 

 あとはグラ・バルカスが話を呑んでくれるかだが、まさか今回手ひどくやられたというのにも関わらず、それを蹴ったりするほど、グラ・バルカスもバカではなかろう。

 

 

 

 さて、そんな訳で一応の後始末は終わり、ここで米国の代表は本来会議で行おうとしていたことを議題に出した。以前、グラメウス大陸での開拓中にて見つかった、何かのビーコン――魔帝復活ビーコンに関してである。

 

 これがどこかの国の所有物なのか、正確な意見を聞くため、米側は直接そのビーコンをさまざまな角度から撮った写真を資料として、会議場に持ち込んできている。

 

 米国の代表が議長の許可をもらうと、米国代表者はそのビーコンに関する資料を各国の代表に配った。

 

 最初こそ、誰もがクエスチョンマークを頭の上に浮かべたが、その写真の一枚、ビーコンに古の魔法帝国(ラヴァーナル)の紋章が描かれていることにパンドーラ大魔法公国の代表が気づき、それを口にした。ラヴァーナルの話題が出た途端、再び会議場は荒れに荒れた。

 

 またこのとき、米国と日本はラヴァーナルがビーコンなどという物を作れるあたり、かなり高度な技術を有していることを悟った。

 

 同時にこの世界で聞かれる古の魔法帝国の噂が、全くの与太話ではない、ということも。

 

 

 

 

 

 さらに所変わってグラ・バルカス帝国。

 

 その首都である帝都ラグナは皇城ニブルズ城。そこでは皇帝グラルークスを始めとする国政や軍事のトップが集まっていた。緊急で行われた、国の今後を決定づけるための帝前会議である。

 

 先ほど外交官護衛の名目のもと、カルトアルパス急襲に出撃したグレードアトラスターから攻撃隊壊滅とカルトアルパス急襲作戦が完全に失敗したことが通信により伝えられた。

 

 それどころかグレードアトラスターは戦闘――それもミリシアルではなく米国の艦隊と交戦ののち降伏し、ヘルクレス級戦艦2隻とともに鹵獲されたという。グレードアトラスターとヘルクレス級戦艦は帝国の象徴である戦艦であり、それが鹵獲されたことは帝国上層部に大きな衝撃を与えていた。

 

 特に「今回の作戦で現地人どもは我らにひれ伏す事になるでしょう」などと皇帝に自信満々で語っていた外務省長官モポールは顔面蒼白で今にも卒倒しそうである。

 

 作戦を立案した帝国海軍東方艦隊司令長官カイザルと帝国監査軍司令長官ミレケネスの2人も顔色が優れない。

 

 

 この世界をすべて支配することを夢見ていた皇帝グラルークスは、決断した。自分たちがこの世界を支配することは不可能、であるならば、今後は彼らと融和の道を歩むしかない、と。

 

 

 グラルークスはモポールに最後の仕事として、カルトアルパスにいる帝国外交官――シエリアに列強国との交渉を行うように命じ、また今回の責任として、これをモポールの最後の仕事とする、と伝えた。

 

 その言葉の意味を理解したモポールは、御意を伝えたのち、今にも卒倒しそうな顔をしつつ、急ぎ部屋を出ていった。

 

 責任を取るべく、まだ他にも処罰されるであろう人員は多数いるだろう、そしてそれは自分かもしれない、と会議参加者の大半は腹を括った。

 

 

 




これでようやく、米国も魔帝関連に絡み始めましたね。
そういえば、米海兵隊が戦車の運用止めるらしいですね。時代なのかなぁ。
戦車といえば、14話で出したグリフィンⅡ軽戦車、あれ現実だとどのくらい進展したんですかね?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。