アメリカ合衆国も日本国召喚に全力出演したいようです 作:スカイキッド
皇国艦隊は艦載の魔導電磁レーダーにより、接近しつつある1,000発以上の敵対艦ミサイル――彼ら風の言い方なら対艦誘導魔光弾――の反応を探知することに成功していた。
「レーダーに反応! 特徴より対艦誘導魔光弾に相当すると推定! 速度マッハ0.9! 数……な……」
「どうした!」
とある皇国海軍艦の発令所では、レーダーの反応を監視していた監視員が、その規模に思わず絶句する。それを訝しんだ艦長が声がける。
「か、数えきれません! 数えきれないくらい大量の敵弾です! 最低でも4桁はあります!」
「4桁だと!? ば、馬鹿な……」
今度は艦長が絶句する番だった。最低でも1000発はあるであろう数の誘導魔光弾、先ほどこちらが700発以上(機能したのは600発程度だが)もの誘導魔光弾を撃ち込んだのに、それでも平然と上回る規模の攻撃を返してきた。
そんな、まさか、こちらの攻撃が一切通用しなかったとでもいうのか――
それは皇国海軍全体のほとんどの艦の乗員にとって、共通の感情であった。
彼らはこちらの攻撃を耐えてなおこちらを上回る規模で反撃してきた米艦隊に対し、一種の恐怖と絶望を抱いていた。
だが絶望することと、何もしないことはイコールでは繋がらない。
皇国海軍の艦艇は直ちに各艦の間隔をあけ、対空レーダーを作動させて迎撃用の対空誘導魔光弾――長距離SAMの発射を開始した。
長距離SAMを搭載する艦艇の割合は、皇国海軍は十分高い方だと言える。対空魔艦――ミサイル駆逐艦を始め、魔導戦艦や魔導巡洋艦、さらに航空魔導母艦など。
皇国海軍の水上艦艇であればほぼ確実に搭載していた。無論、海上要塞パルカオンもまた、VLSに長距離SAMを180発近く搭載している。
だが皇国艦隊が敵弾を迎撃する上で、いくつかの致命的な問題があり、その一つとして長距離SAMの命中率が、米海軍のそれと比べると致命的に低いことにあった。
皇国海軍艦艇の有する艦対空ミサイルの命中率は、驚異の50パーセント――10発撃っても5発しか当たらない。
何故こんなにも低いのかと言えば、もともとは光翼人による運用を想定している装備を光翼人なしで運用してるからだ。
本来、魔力が驚異的に高い光翼人による運用を想定して作られた魔帝製兵器は、光翼人の魔力を燃料として使用される。
しかし光翼人なき現在、それら装備は魔石を燃料に代用して使われている。
しかしそれでも魔力不足は否めず、光翼人の代わりに魔石で運用してる魔帝製兵器は、全力でその性能を発揮することが出来なくなってしまう。
例えば海上要塞パルカオンも、レールガンのような超兵器を搭載するのだが、レールガンは発射に膨大な電力を利用する。
そしてその電力は魔力を換算することで充填するのだが、魔石では電力換算の効率は、光翼人が行うよりも高くない。
そのため電力供給を十分に行えず、パルカオンはレールガンを一発でも撃てば電力不足となり、数時間は魔導電磁レーダーすらも使えなくなるため、レールガンを使えないのである。
よって皇国海軍のパルカオンではレールガンを撤去していた。
皇国軍魔導艦の長距離SAMを始めとする誘導魔光弾でも、同様の問題は発生する。
まず発射時の動作不良弾の割合が高くなるし、射程も命中率も速度も悪くなるのだ。
現在、米海軍の対艦ミサイル飽和攻撃を迎撃すべく、皇軍魔導艦から乱れ撃ちされている長距離SAMはそのような欠点を抱えながら撃ち上げられていた。
だがそれでも、ミサイルが艦隊へ20キロにまで近づいた時点で、皇国海軍はミサイルの撃墜数は1,200発中480発以上にまで到達していた。
長距離SAMのみならず魔導艦そのものも、同時処理可能な目標はイージス艦と比べたら半分以下だったが、それでもかなりの数の撃墜に成功していることには違いなかった。
やがてミサイルがさらに艦隊へ近づくと、長距離SAMのみならず短距離SAMや150mm3連装魔導砲、アトラタテス砲等による迎撃も始まる。
短距離SAMは長距離SAM同様に命中率が低かったため、実質的にはアトラタテス砲などの砲兵器による迎撃が主体となった。
空中戦艦パルキマイラにも搭載されているそれらは、敵誘導魔光弾の迎撃を主目的に作られたため凄まじい命中率を誇った。
特にアトラタテス砲の射撃は凄まじかった。魔導CIWSとも呼ばれるそれは、シャワーのような勢いで20mm魔光弾による弾幕を作り出し、迫るミサイルを触手のように絡め取っていく。
ミサイルの迎撃に成功しているアトラタテス砲に対し、皇国海軍の水兵らは少なくない希望を抱いた。もしかしたら、この攻撃を乗り切れるのではなかろうか――
――そして次の瞬間、その希望は一瞬にして砕かれた。
艦隊前衛の魔導フリゲート数十隻に閃光が走ったかと思うと、次の瞬間にはその閃光が艦隊全域に広がっていき――次の瞬間、爆音と爆風が海上に轟いた。
対空魔艦、魔導戦艦、魔導巡洋艦、航空魔導母艦、海上要塞、すべての艦艇にアトラタテス砲の弾幕を潜り抜けたミサイルが、次々と突っ込んだ。
400kgから1tの重量を持つ塊が、大落角から亜音速で突入したことで、大抵の魔導艦の装甲は貫通されてしまった。
元々、皇国軍魔導艦のベースとなった魔帝製魔導艦は、装甲が薄く作られている。1万年前の魔帝には、戦艦の装甲を破れるような兵器を持つ敵の存在がいなかったからだ。
その結果、わざわざ分厚い装甲を持つ必要もないとして装甲不要論が魔帝では主流となり、戦艦であっても大した装甲は施されることがなかった(装甲に魔法を流し魔法障壁を形成することは出来たが)。
それが裏目となり、本来戦艦の撃沈を目的としない米国の対艦ミサイルは魔導戦艦であっても装甲を貫通、内部に炸薬による爆発と残燃料による火災を撒き散らした。
爆発と火災はやがて魔導艦の機関や火薬庫にも到達し、魔導艦の内側から大爆発を引き起こさせ、艦そのものに致命的なダメージを与えた。
米海軍からすれば皇国海軍はダメコンのノウハウが素人レベルであったことも、艦のダメージを増やす一因となってしまった。
そして艦が致命的ダメージを受けたあとに待っているのは無論沈没か、どんなに運が良くとも漂流という結果のみだった。
海上要塞たるパルカオンのみ、その名称通り要塞並みの装甲を持っていたので沈没艦こそなかったが、それでも8隻中5隻が大破、残りの3隻も中破するなどの被害を負った。
パルカオンは単艦で敵艦隊を殲滅するという、その本来の役割を全うできぬままに無力化されてしまったのだ。
この時点で、運良く被弾を免れた艦、被弾したが耐えた艦、水中で被弾しようがない魔導潜水艦、そしてパルカオンのうち5隻と、無事だった皇軍機たちは本国へと敗走を開始していた。
最終的に、双方合計1,500発近い対艦ミサイルが撃たれあったこの大陸沖大海戦は、誰もが予想した通りの結果となった。
皇国海軍は今回の作戦に参加させた艦艇113隻のうち84隻を撃沈・無力化されるという大損害を被ったのである。
残された3隻のパルカオン、1隻の魔導空母、1隻の魔導戦艦、3隻の魔導駆逐艦は本国へと敗走し、残る21隻の潜水艦は、自分たちの本来の任務のため、独自の行動へと移った。
だがすでに本国の港を破壊されている皇国残存艦艇に、帰る場所など存在していなかった。
また21隻の潜水艦とて、16隻の米海軍攻撃型原潜、120機以上のMH-60対潜ヘリが対潜掃討戦を仕掛けており、長く保たないのは明白である。
そしてそもそも、彼らの祖国自体が長く保ちそうにもなかった。
はい、本日にて毎日投稿期間は終了です。今後はまた投稿が遅れることが予想されますが、絶対に完結まで執筆は続けます。