アメリカ合衆国も日本国召喚に全力出演したいようです   作:スカイキッド

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今話にて前話の星の正体が明らかになります。
 


第43話「星の落下」

 

 

 1時間前――

 

 ブランシェル大陸沖の海中で1隻の米海軍籍の原子力潜水艦が、浅海にまで浮上し“ある兵器”の発射準備を行っていた。

 オハイオ級戦略ミサイル原子力潜水艦7番艦『USSアラスカ』――この世界に派遣された米軍戦力の一角である。

 

 米国がアニュンリール皇国に対して行った攻撃の正体、つまるところそれはSLBM、潜水艦発射型弾道ミサイルであった。

 アラスカは実戦テストを兼ね、今回のアニュンリール皇国に対するSLBM攻撃へと参加させられていた。

 

 

『警告する。我々に降伏せよ。さもなくば明日正午、怒った神々は大陸に星を落とす』

 

 

 先の皇国への警告――星とはつまりSLBMのことだ。SLBMは値段が高くこんなことに使うのはコスパとして最悪だが、地球では行えない実戦でのテストと、皇国への示威効果を狙っての行動であった。

 

 

「トライデント発射はじめ!」

 

 潜水艦アラスカの背面に設置された24基のSLBM用垂直発射型ミサイルハッチのうちひとつの蓋が開放され、そこからトライデント型SLBMが放たれる。

 

 飛翔開始から2分以内に時速2万1600キロメートル以上――マッハ17にまでつき上っていたミサイルは、ほんの数分後には低高度軌道にまで到達していた。

 

 本来のトライデントは多弾頭弾(MIRV)であり、14発のW88核弾頭を搭載するのだが、このトライデントは核弾頭を搭載しない通常弾頭型である。

 

 核はおろか爆発物すら搭載されていないが、それは再突入体の質量と、超音速での衝突速度が十分なエネルギーと効果をもたらし、それだけで周辺の目標を破壊するからである。

 こんなものが仮に都市部にでも着弾すれば、死者数万人は下らないだろう。

 

 

 アメリカはアニュンリール皇国の巨大要塞メンヒルに対し、この通常弾頭型トライデントを向けていた。

 

 メンヒルは1万年前、ブランシェル大陸に魔帝が建設した要塞である。

 シェルターも兼ねた地下数十メートルにまでおよぶ地下階層、VTOL機を運用する飛行場、トーチカ、そしてパルキマイラ用の巨大格納庫などなど。

 施設そのものはほとんどが地下に造られているのが最大の特徴であった。

 

 元はコア魔法用の発射サイロもあったのだが、アニュンリールはコア魔法を運用する技術を持たないため、無用の長物と化していたことが理由で撤去されている。

 

 目立ってたためすでに開戦直後から米軍の攻撃対象とされ何百発もの地中貫通爆弾の直撃、MOAB、サーモバリック爆弾による攻撃を受けていた。

 それでも陥落しなかったあたり、魔帝の技術力の高さが窺えるであろう。

 

 またメンヒルは、魔帝転移後に周辺を有翼人たちが取り囲むように住居を建てたため、メンヒルの周辺には大都市が多いというのもあった。

 都市部からの疎開が始まってるとはいえ、パニックによる交通網の混乱により、多数の人間がそれらの都市にいたままだった。

 

 

 だからこそSLBMがメンヒルへと落下していく様を、都市部に住む多くの人間が目撃することとなった。

 

 

 成層圏へと再突入したトライデントSLBMは弾頭のノーズコーンを真っ赤に輝かせながら、極超音速で落下していた。

 地上からそれを見ていた有翼人たちからは、それが流れ星であるかのように見えていたであろう。

 

 慣性航法による航法更新および再突入体の精密な誘導と制御により、トライデントSLBMは目標に対しほとんど誤差なく着弾した。

 

 メンヒルに30トン以上の塊がマッハ20以上の高速で突入したとき、メンヒルを構成する要塞の壁や天井は着弾地点を中心にぶち抜かれ、その瞬間発生した高圧力の衝撃波は周囲にある様々な物体を粉砕した。

 

 要塞表面には高圧力の衝撃波が吹き荒れあらゆるものを薙ぎ倒し、要塞の地上施設の四割に致命的ダメージを与えた。

 

 運が悪かったのは、着弾地点がちょうどメンヒルの中央――パルキマイラの地下格納庫上部で、要塞内部に突入してなおもその速度を落とさなかったトライデントSLBMは、ちょうどそこに駐まっていたパルキマイラを直撃したのである。

 

 その瞬間、パルキマイラの上部構造物は叩き潰され、多数の破片がパルキマイラの装甲を突き破り、内部に搭載されていた超大型魔導爆弾の誘爆を招いた。

 パルキマイラ内部の大型爆弾同時一斉誘爆――さらに高出力魔導機関、液体魔石の誘爆も招いたことで大爆発を起こした。

 

 地下格納庫という密閉された空間で、瞬間的に発生した爆発エネルギーと衝撃波によるエネルギーは荒れ狂い、他のパルキマイラさえも誘爆させ、瞬間的に連鎖的に勢いを高めていく。

 

 そしてそれらは逃げ場を求めてトライデントの突入口から吹き出たが、それだけでは収まらず要塞内部の隔壁を突き破りつつ急速にメンヒル内部を駆け回った。

 

 そうしてメンヒル内部の燃料タンク、弾薬庫、地下格納庫は次々に誘爆を引き起こし――20秒も経ったころ、メンヒル要塞は爆発による内部からの崩壊と、手の施しようがない大火災により完全に無力化されていた。

 

 

 

 

 

 この光景は当然、メンヒル周辺の都市の住民たちにより目撃されていた。

 まるで流れ星かのような物体が落ちてきたかと思うと、衝撃波が吹き荒れ、巨大要塞メンヒルが内部から爆発する。

 

 その信じられないような光景を見た皇国人たちは、それを見て一瞬に悟った。

 神々が星を落としたに違いない――と。

 

 1万年前、自分たちの先祖たるラヴァーナルが転移する原因となった、神による星落とし――実際に星は落ちなかったが、それを先代から言い伝えとして聞いてきた有翼人たちはすぐにそれだと判断した。

 

 なぜ今頃になって神々が攻撃してきたのかは不明だったが、そんなことは関係ない。

 少なくとも、アメリカは神の眷属であり、自分たちが再び滅亡の危機にあることに違いはない。

 

 米軍もそれを意図しての、メッセージをしたあとの攻撃であったが、その効果は完全に抜群であった。

 

 

 

 これを受けて、アニュンリールもようやく、米国に対して降伏する決心がつくこととなった。

 

 




 
解説
・通常弾頭型トライデント
MIRV型SLBMのトライデントの通常弾頭型。『迅速なグローバル打撃構想』のもとに考案された兵器で、炸薬無しのタイプと、数千本のタングステン製のロッドを詰め込んだタイプの二種類がある。

・メンヒル要塞
ア皇が有する本作オリジナルの巨大要塞。元は魔帝が作ったものだったが、これを1万年間運用してきたという超古代遺跡でもある。パルキマイラなど多数の航空機を格納している。バンカーバスターの直撃には耐えてきたが、トライデントの直撃には耐えられなかった。

・パルキマイラ
魔帝製空中戦艦。本作では空を飛ぶことすら許されなかった。

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なんか宇宙兵器を予想してた人が多かったみたいで、期待を裏切った形になっちゃったかもしれません。
でもそんな早く宇宙兵器なんて作れるわけないでしょ!(←2話でオリオン級とかいう超兵器出してる件
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