転生したので反則技で魔法少女のお手伝い/敵することにした 作:絶也
酷く意識が揺れている。
誰かが傍らから何かを呼びかけるような声が聞こえるが何を言っているのか、どころかそれが男か女かということさえ判然としない。
何もかもがわからない中、五感すら頼りにならなくなっていく感覚にただ1つ『死』を理解する。
多分、俺は死んでしまうのだろう。
冷たい海に仰向けに沈んでいくような、不思議な感覚だ。
実際にそうなったことはないけれど、この感覚を形容する言葉は印象としてのそれしか思い浮かばない。
───ああ。
そんな機会、ないに越したことがないのは知っているけど。
それでも、一度くらい。
誰かを救ってみたかったな。
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……起きた。
指の先まで完全に感覚が通り、多分頭もここ最近で1番回る。
急に意識が戻ったのに自分は立ってる、って状況は気になるが、ひとまず手足も意識も問題なく動くのは確認できる。
ふむ………察するに、これは。
「さっきまでの全部夢か…」
「いえ、完全無欠に死んでますよ貴方。」
独り言のつもりで呟いた言葉に反応され、割りと心の底から驚く。
というか、実際に三歩ぐらい引いてしまった。
「天坂帝翔さん、1996年、12月24日生まれのA型…この辺どうでもいいですね。享年は23歳…間違いありませんね?」
見上げてみれば、随分な美人が当然の情報のように読み上げながらこちらを見ている。
というか髪が金色だし、顔立ちも日本人には見えないが。
…いや待て、今この人さらっと聞き流せないこと言ってなかったか?
「……すみません、今なんて言いました?」
「天坂…」
「その前です。」
「…あっ、もう一度言うのはいいですけどパニックにならないでくださいね。」
これもう確定っぽいな。
「貴方、実はもう死んでいるんです。」
………。
………………。
………………………。
「なんでパニックにならないんですか?なってくださいよ。」
「なんでならなかったのに責められてるんだ俺…?」
なに、悪いの?なるなって言ったのそっちだろフリなの?
「いえ、パニックにならないならスムーズに説明できて助かるんですけど、なんか物足りないというか…死んでる自覚足りてます?冷静すぎません?もう生きてないんですよ?」
「死んでる自覚ってなんだよ。…いや、死んだのに生きてる、みたいなこの状況に困惑してるってのが正直なところだよ。」
表情に出にくいだけでな。と付け加えながら周りに目を配る。
質の悪い誘拐かとも思ったが、俺を誘拐してもしょうがないし、何よりこの場所が何かおかしい。
真っ暗な世界に電気もないのに俺とこの女の人の居るところだけやけに明るい。不自然さしかないが、現世でないと言うなら納得もするというものだ。
が、流石に訳がわからない。いい加減に説明してもらうことにしよう。
「で、この状況はなんなんだ。」
「急に態度変わりましたね……」
取り繕う必要がなさそうだったからな。
「えー…現世の創作では広く知られているものだそうですが、異世界転生って知ってますか?」
「ああ………」
なんか、その一言で全てに合点が行った。
これが夢ではないかすぐにでも確認したいところだが、多分それに意味はないんだろう。
「…てことはなんだ。チートで楽々異世界ライフでもするのか。」
「ああいえ、そういうのではないんですよ。」
入った否定に少し眉をひそめてしまう。そういうのじゃない?
「そもそも自分の意思で転生の仕方を選べる人自体、条件があるんですね。本来なら色んな死後の世界を経て、その人の生前の行いなどを加味してどういう転生をするのかが決まりますから。」
返答は広く知られるような輪廻転生の成り立ちだった。
だからこそ、大きな違和感がある。そんな中で異世界転生なんか有り得るものなのか?
「ですが、死んだ人の中には強い未練や願いを持つ人が居ます。それが死後に出来ないものだった場合、そういう人は意識的であれ無意識的であれ、現世にまで影響を及ぼす何かになる可能性があるんです。」
「……ああ、そういうことか。」
「そういう人は危険があるので、一度それを発散してから改めて通常の転生のプロセスに入ろう、ということです。ですが、それは今いる現世で出来なかったからそうなっているので。」
「その人間が望む所に転生させてやろう、と……」
「理解が早くて助かります。」
「けど、望む所、なんてそんなこと出来るのか?並行世界とかそういうあれなんか学者だってよくわかってないだろう。」
「あ、アニメだとかそういうのでもいいですよ。」
ほら出たそういうの。
「………尚のこと無理だろ、そんなの。」
「人間が思い描ける程度のものは、大抵本当に存在しますよ。それをアンテナみたいなので感じ取ってるのかも、なんて仮説もあるくらいで。」
そう言われれば納得できなくもないが……
「さて。次があるので、あまり時間もありません。早く済ませちゃいましょう。」
「(何の世界でもいい、ってことは……)」
「誰かの為になってみたい、誰かを救いたいのが、貴方の願いでしょう?なら、それを叶える為の世界への道と、力を与えましょう。勿論、その世界を崩さない程度に、ですが。」
…憧れてたものに手が届く機会でもある訳だ。だとすると、色々ともう決まってるな。
「では…行きたい世界はお決まりですか?」
口にするのは正直恥ずかしいが、死んでいるというならこの際流してしまおう。
俺だって、大の男がこんな名前大真面目な顔して言っていたら笑わない自信はちょっとない。
それでも、行けると言うなら行きたいんだから仕方ない。
「魔法少女リリカルなのは。」
これからリリカルマジカル頑張っていく。