転生したので反則技で魔法少女のお手伝い/敵することにした 作:絶也
前回投稿は2ヶ月前だけどこれ書き始めたのはその直後です。そろそろ亀に抜かされる頃。兎は泣き寝入りするのです。なんという自業自得。
ではかなり久しぶりですがお楽しみ頂ければ幸いです。
憂鬱なんだよ。
俺がリリカルなのはの世界に転生してからもうそこそこに時間が過ぎた。週末になる度なのは達に遊びに誘われる生活にも馴染んできてさあ今週も月曜日。
今日ほど月曜日が憂鬱になったことはない。いや言い過ぎた。日曜日が明ける度にこんなんだった気がする。何せ俺自身が暗い。そりゃあ日よりは月ってタイプだ。『月が綺麗ですね』ではなく『月は綺麗ですね』って言われるタイプの陰の者である。これ好きな子に言われたりしたら泣くな。
だが、これまでにないは言い過ぎでも人生で三本の指に入るくらいには憂鬱な月曜日であることは確かだ。窓の外に見える晴れ渡る青空が気分に合わなすぎてやや腹が立ってくるほど。
俺にとってももはや定例となりつつあった週末の遊び。昨日は月村家に遊びに行っていた。
俺は知っていたが、そこでジュエルシードを巡る戦いが起きた。それは、高町なのはが今まで体験したことのない、人間同士での争い。もう1人の魔法少女、フェイト・テスタロッサとの戦いである。どんな結末を辿るかまで含め、全部知っている俺は何かをするつもりはなかった。実際、する必要もなかっただろう。
だというのに飛び出してしまった。馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、ここまでとなると自分に感心するまである。しないな、後悔はしてないがそれはそれとして昨日の自分を殴りたい。
その結果、明らかに早いタイミングで俺は正体…ではないな。魔法使いであることを、なのはとユーノに知られてしまった。
そして、昨日の今日だ。当然ながら、魔法という戦う手段を持ち、なのはの昨日までの戦いを全て知っているのにそれら全てを静観していた俺には、この説明をする義務がある。バカ正直に「ボク実は1回死んで転生して来たんだ!これからのこと全部知ってるからよろしく!」などと言えるはずもない。もし俺がそんなこと言ってる奴と会ったらコイツ頭おかしいだろと思うし、証拠を見せられたらコイツ全部知ってるとか気持ち悪…と思う。
だからお茶を濁す感じで答えはするのだが、そもそもこの話をする時のなのはは、きっと明るい表情を見せてはくれない。
そんな顔を見ること自体が本意でないのだから、気分も沈む。
怒られるだろうか?ひょっとすると嫌われるかもしれない。そう思ったところで、俺はもう随分となのは達を好いているんだなと気づく。気づいたところで沈む一方だが。
転生してから今まで、無遅刻無欠席、授業もちゃんと受ける優等生やってきたが、初めて心の底から学校行きたくないと思った。最も、そもそも学校自体好きではない俺がそう思うのに数週間も掛かったというのだから、よくぞここまでもったと自分を褒めてやりたいくらいだ。
そんな気分じゃないけど。
「………行くか…」
だが嘆くのもタダじゃない。時間を無為に過ごす代価がある。暇してる時ならいいが登校前となるとそうはいかない。そもそも自業自得である。無理やりに気分を上げ、朝食を終え、弁当…は今日は昼までだからいらないんだよな。身だしなみを軽く整えて登校準備を整え家を出たところで隣の家からここ数週間でもう聞き慣れてきた、しかしいつもよりやや元気のない少女の声が聞こえる。
「いってきます。……あ」
明るい茶髪を白いリボンで小さなツインテールに結び、清廉な印象を与える白い制服をまとった女の子。
友達であり、俺の憂鬱の原因…いや、遠因である高町なのはは、同じように家から出てきた俺と目が合うと、やはり浮かない顔をしていた。ここは肩でも組みながら「ヘいガール、調子はどうだい?」なんて気の利いた言葉の1つでも言うべきだろうか?俺がなのはの立場ならぶん殴ってるなそんな奴。
上手く笑えないのは元々として、心中でふざけてみても重くなる足取りがマシになっているとは思えない。せめてなのはにそれが伝わっていないといいのだが。
「…おはよ、帝翔君。」
「………ん、おはようなのは。」
学校に行くのだから、その肩にも鞄にもユーノは居ない。とはいえなのはとユーノは離れていても頭の中ですぐに会話出来る上、基本的にそれは人に聞こえないと言う携帯電話もビックリな魔法があるから一緒に居るようなものなんだけどな。
「…………」
「…………」
示し合わせた訳でもないのに、俺となのははよく登校時間が被る。そのお陰かそのせいか、近いから一緒に行こうとか、そういう約束をしたことはない。しかし、今ばかりはそれが少しだけ恨めしかった。顔を突合せても、並んで歩いてもお互いにどう話を切り出していいかわからなくて起きる沈黙が、お互いの思いを雄弁に伝えている。それも悪い方向にばかり。
でも、このままで良いはずもない。こればっかりは、俺から切り出すべき話だ。
「「あの」」
…………………。
なんで話しかけるタイミングまで被るんだよ。登校時間だけで間に合ってるよお腹いっぱいだよ。
偶然に心の中で愚痴りつつ、一瞬の気まずい雰囲気をやり過ごす。
「「あのさ(ね)、なのは(帝翔君)」」
…………………………………。
気づけば挙手していた。
なんとなく雰囲気で伝わったのか、まるで教師が生徒を指名するようになのはが俺を呼んでくる。
「はい、帝翔君?」
言わなきゃいけないことも、聞かれるだろうことも結構ある。それに、知られた今は俺にとって言った方がいいこともあるだろう。全てを話すことは出来なくても、話せることはあるのならそれは話しておくべきだ。
だから、何から話したものかと少し迷って、迷っている間も待っているなのはの顔を見て、何を言うか決めて口を開く。
そう。
とりあえず。
「ごめんなのは、この話放課後にしない?」
朝のバスで出来る話ではないよな。
おはよー、という挨拶がそこかしこから聞こえてくる。それは廊下からのものであったり、教室内であったりと様々だ。男女問わず皆一様に同じ言葉を交わし挨拶する様は、秩序と混沌が混ざるようだった。
大仰に説明してみても、俺達もそれは例外じゃない。
なのはとあまり話すことも出来ず、距離だけは無駄に近い気まずいバス時間をやり過ごし、足並み揃えず、しかし頭は揃えて自分たちのクラスに歩く。
到着すると小学生たちは大体みんな仲良い友達に合流しては雑談に花を咲かせて笑っている。それにならえでいつもと変わらず当たりをつけると、中でも際立つ(友達としての主観も混じってるだろうか?)金髪と、落ち着いた明るめな黒っぽい紫の髪を見つける。
ご存知、アリサ=バニングスと月村すずか。高町なのはの親友である。
「アリサちゃんすずかちゃん、おはよー」
「あ、なのはおはよう。」
「ふふっ、おはようなのはちゃん。」
仲良いなぁ…見ててホッコリするわ。大人の姿だったら通報されてた。そんなこと考えてる時点で今でも通報されるまである。
「おはよう2人とも。」
「ん、帝翔もおはよ。」
「うん、おはよう天坂くん。」
挨拶する度に俺は幸せ者かと思うのが割と毎日の事なのだが、今日ばかりはそうでもない。放課後のことを思うと既に今から若干憂鬱である。
が、そういう気分はあまり隠せるものではないらしく、
「どうしたの帝翔?なんか元気ないけど。」
「何かあった?」
とアリサとすずかに声を掛けられた。おい嘘だろ。表情が変わりにくいのは俺の数多い欠点の1つ。そこまで行けば当然悪いのも顔に出にくい。ここまでくると長所、というかもはやこれ以外長所がないまである。少なくともなのはほどわかりやすくないだろなんでわかったんだ。
「うーん…なんだか目が変だよね?」
「疲れてるとか?あたしはそういうのないからわかんないけど…」
………ははぁ、なるほどな?
さては俺、憂鬱で目が腐ってたんだな?俺の馬鹿野郎。
「いつもこんな感じだと思うけどな…心配してくれてありがとう。」
「べっつに心配とかしてないわよ」
ツンデレの様式美のように腕を組んでフイっと顔を逸らしたアリサは、しかし直ぐにその腕とともに端正な顔に暗い陰を落とす。そうかそうか、心配させたのは心苦しい。
「ただ…なのははここのところなんか疲れてるみたいだったし、あんたまでそうなったらどうしようって思っただけ。」
続いて吐き出されたそんな言葉に思わず身体が強張る。多分なのはも同じだ。でも、その理由は同じじゃない。
なのはは気づかれてることにだろうが、それは知ってた。俺のことまで気にかけてくれたことには感動さえ覚えている。が、
「(早すぎるだろ…)」
気づいてはいても、アリサがそのことに触れるのはしばらく先だったはずだ。そして、アリサはその性格上一度言ったらきっと爆発してしまう。正直早いか遅いかの問題な気もするが。
「そ、そうかなぁ…あはは……」
俺が見ても1発でわかるくらい明らかに、誤魔化すように笑うなのは。そこにはやはり疲れが見える。
そして、そんな様子は見せるのに一向に何も話そうとしないどころか、未だにその疲れすらも隠そうとするなのはにアリサが怒りを表しそうになる。これはダメな流れだ。
「なのっ──!」
「ストップアリサ。」
ので、大声で怒ろうとしそうなアリサの口を手で塞いで止める。
というか、なのはのなの…まで言いかけたせいか教室がやや静まって俺たちの方を注目してる。
………つまり俺今女子小学生の口を塞いで黙らせてるのを注視されてる訳だな?そろそろ本当に逮捕される覚悟を決めた方がいいかもしれない。
一方で、注目を浴びてアリサも少しだけ冷静になったのか、多分怒りか突然注目された恥ずかしさで顔を赤くしている。なんなら俺が睨みつけられてる。これ俺が悪いのか?いやそもそもの遠因俺だから俺が悪いのか。
そんな強気な視線から逃れる意味も込めてなのはとすずかを見やる。意図を汲んでくれたのか、あるいは初めからそうするつもりだったのか2人はすぐに行動に移してくれた。
「ごめんごめん、なんでもないの。」
「うん、そうそう、ちょっとおしゃべりしてただけで…」
2人が周囲の子たちを適当に流してるうちに、と。
「……アリサ、授業まであとちょっとだから、少しだけ廊下で話そう。」
「…………ん。」
この場はとりあえずそれで抑えて欲しい、という要求でもあったのだが、そこまで伝わったかは流石に知らない。しかしまあ、とりあえずそれで納得してくれたようなのでなのはとすずかに少し出るとジェスチャーで伝えてから、2人して廊下に出る。時計を見れば授業まであと10分。本当に少ししか話せなそうだ。
「で?」
「で?って?」
「帝翔が連れ出したんでしょ…それで、なのはのこと何か知ってるの?」
《知ってる》
《知らない》
《俺のせいだ》
みたいな選択肢が目に浮かぶようだ。ゲームならアリサルートにでも突っ込んでいるのかもしれないが、残念ながら現実なのでしらばっくれるしかない。
「いや、知らない。そもそも親友のアリサがわからないなら、俺が知ってるようなこともないって。」
こういう時、真顔で言いきれる俺の顔は役に立つ。ジッとほんまか?みたいに見つめてくるアリサに内心冷や汗ダラダラだけど。
「…じゃあ、なんで庇うのよ。なのははほっといたら絶対無茶するのに。」
目が点になった。
…いや、これは心底驚いた。本当に何も知らないんだよな?と思ったくらいだ。だって、何も知らないのになのはは無茶するなんて言い切ったんだから。日夜戦いに勤しんでることなんて知らないだろうに。知らないよな?
「なに。」
不機嫌そうにそんな俺を見てるアリサに取り繕う。
「いや…なんか、見てきたように言うなって思って…」
「そりゃあまあ、あたしもすずかも親友だし?…でも、だからなんにも話してくれないのはちょっとムカッとしちゃう。ちょっとくらい、相談してくれてもいいのに…」
ちょっと自慢げになったかと思えば今度は不満そうに唇を尖らせ、最後には憂うような表情さえ見せるアリサ。あと6年ほど先だったら惚れてたかもしれない。
そんなことを考えているのも知らず、アリサがピッと俺を指さす。
「だから、今は帝翔もなーんかムカつくのよね。」
「ずっとじゃん。」
ほぼ反射的に返したらめっちゃ怒られそうな形相になったので頭を下げて抑えてもらい。
「でなんで?ここ最近でアリサに怒られるようなことしてないと思うんだけど……」
もしやコイツ小学生じゃないだろと常々思ってるのがバレてるのだろうか。
「最近じゃなくて今。なんか、なんだろ…なのはとおんなじような顔してた。」
嘘つき、隠し事をしているようだと言われているような気がして、思わず背筋が伸びる。
でも多分、アリサが言っているのはそういうことじゃない。優しいアリサのことだ、多分何かを隠しているというのは合ってるが、その先に心配だから話して欲しい、相談して欲しいというのが続いてる。気持ちはわかる、とは言えないけど。
「……そーだなぁ…でもアリサ。」
「なに?」
「話したくても話せないことって、多分あるんだよ。」
それを聞いても、それが何なのかと癇癪を起こしたり問い詰めようとはしない。黙り込み、考え込む。本当に心底賢い子だと思い知らされる。
「だから、もう少し待ってあげてくれないか?」
多分そのうち話してくれるから、とは続けられなかった。
それがタイミング悪くチャイムが鳴ってしまったからなのかは、俺自身がよくわかっている。
「…ん、席戻んないと。行こ帝翔?」
「…わかっ」
た、とまで言えなかった。
が、今度はチャイムが原因じゃない。見えたからだ。聖祥の制服のスカートと長い黒髪を翻し、階段を駆け上がる前に1度だけ立ち止まってこっちを見ていた少女を。
「フォーミュラの女…!」
「帝翔!?チャイム鳴ってるってば!」
そんな事は知っている、その上で無視してるんだ。
と言う余裕はなかった。せめてどこのクラスかだけでも確かめようと思って走る。
そして階段に差し掛かる角に入ったところで、
「うわっ!」
「っ!?」
先生にぶつかりかけ、足を止められる。
思わず顔を確認すると担任の先生だった。当然、階段を見てもあの少女の姿はとうにない。
「天坂君、どこに行くんですか?もうチャイムは鳴ってますよ?」
そんな事は知っている。その上で無視してるんだ。
とはとても言えなかった。呼び出されるわ。
結局止められてから教室に連れ戻される。先生に連れ添うように戻ってきた俺を見たアリサの何やってんの馬鹿、みたいな視線が痛かった。
結局、朝見た少女で頭がいっぱいになり、授業は全く頭に入ってこないまま4時間目が終わり、全員が下校の準備に入る。
速攻で用意して階段で待ち伏せれば、あの女を見つけられるかもしれない。そう思った俺もまたご多分にもれずせっせと下校の準備をしていると。
「帝翔くんっ」
「帝翔ー」
と、なのはとアリサに同時に声を掛けられた。ハモった2人が顔を見合わせている。
何だこれ?何だこの…俺がモテ男みたいなシチュエーション。嫌いじゃない。このままめくるめくラブストーリーに入るというなら全力前進するぞ。
「朝言ってたことなんだけど…」
「朝の話のつづき…」
またしても似たようなことでハモる2人だが、今度は現実を思い出した。どっちも少なくとも気分が盛り上がるような話ではない。もはや後ろで首を傾げてるすずかが1番の癒しまである。
そうそう、悲しいけどこれ現実なのよね。現実なので美少女にモテモテとかハーレムとかない。ある奴は散ればいい、粉々に。
だが、そんな馬鹿な現実逃避してもこの気まずい空間はやり過ごせないのだ。よって渋々ピントを現実に合わせる。多分朝のことがある以上、向こうはすぐ帰ってると思うから今から追いかけても間に合わない。ので大人しく2人とお話ししよう。
「…えー、何?なのは、アリサ。」
「ん、なのははいいの?」
「あ、うーん…わたしは後ででもいいかも。」
最悪念話があるし、という副音声を聞いた気がした。とはいえろくでなしの俺でもこういうことは直接話すべき、くらいの意識は持ち合わせているので、出来ればそうはしたくないところだ。
「ふーん…?じゃああたしの話先にするわよ?」
「いやまぁ、どっちの話もするけどとりあえず帰りながらにしないか?」
そんな感じで忘れ物がないかを確認して教室を出た俺たちは、前になのはとすずか、後ろに俺とアリサという2列状態で歩く。横に広がると通行の邪魔だからしょうがないな。
というのは建前で、俺がアリサに後ろに来てもらった。
「でもアリサ、朝の話なら俺一応区切ったと思うんだけど。」
しかも我ながらそこそこいい感じで。正直あれ以上何を言えばいいのかわからない。
「ん、まあ、そっちはそうなんだけど、帝翔ってばあの後すぐ授業なのに飛び出してったじゃない。なんで?」
「あー……それかー…」
殺されかけた相手を学校で見かけたから追いかけました、なんて説明はしづらいが、不幸中の幸いと言うべきか。アリサはフォーミュラを使って直接的に殺しに来たのと別で、俺があの女に殺されかけたのを知っている。もっとも、アリサは姿を知らないのだが。
「まぁただんまりするつもり?」
ともかく、だ。この件についてはアリサに対して隠す必要がない。普通に説明しよう。
「いや、女が居たから…」
「…はぁ?」
いかん、必要な部分を端折ったらしい。
「え、何それ…あたし帝翔が何考えてるのか全くわからなくなっちゃった……」
結果ドン引きされてるが、果たしてこの引き方は10歳にも満たない少女の引き方なのだろうか?俺が小さい時の周りの女子はもうちょい頭パッパラパーだった気がしないでもない。いや、アリサが賢いってだけならいいんだけど。
「や、違う違う。ほら、例の事故の時の…」
「……あぁ、そういえばうちの制服着てたって言ってたもんね。」
「とっ捕まえてやろうと思って、思わずさ。」
「ふーん…」
事故の時の、と言ってからは真剣に話を聞いてくれる。この話についてはアリサも無関係じゃなくなる以上、適当ではいられないんだろう。…いや嘘だな、アリサがこういう時真面目な顔するのは、大体いつも友達の為だ。つまり俺だ。
嬉しさで涙のひとつも出そうだが、そうも言っていられない。
「アリサ、その子階段登っていってたんだけど、俺たちの上の階ってどの学年が使ってたっけ?」
「んー、そうねぇ…4年生から5年生、あと、そのもう1つ上に6年生ね。」
「範囲広いな…」
背格好から特定、といきたいところだが、小学生でまして相手は転生者。どんな見た目だろうとどの学年に居ても不自然はない。なのはから手を引け、って言ってたから、何なら同学年だと思ってたくらいだが、それは先週調べた時点で違うとはわかってた。そもそも本当に学校が同じだとわかったのも今日なくらいだ。
「…同じ学校ってわかっただけでも良し、ってことにするかぁ……」
「そうじゃないとうちの制服なんて持ってないでしょ。」
オタクを舐めてはいけないぞアリサ。下手すると衣装は自作するし、推しと同じ所に居るのがおこがましいってタイプのオタクなら制服だけ持ってるけど通ってる学校は別、なんてことも有り得るんだ。
なんて説明したら変なの扱いを受けるのは俺な気がしたので曖昧に返事をして受け流しておく。
「…ま、あたしの話はそれだけ。話したくないことの方はしばらく待つわね。」
「ごめんアリサ、そのうちちゃんと説明する。具体的には1年後くらいに。」
「何それ。」
笑って流されたが、至極真面目だ。1年後なら露呈してもいいと思ってるからな。
「なのはと話さないの?」
「ん、まあ、家隣だしこの後でいいよ。」
とは言ったものの、どちらかと言えばこのままアリサと話していたい気分だった。なのはとの話の方は、基本全面的に俺が悪いので憂鬱でしかない。…いや、そんなこと言う資格ないわな。隠し事を知られてて、その上その相手が友達で、魔法も使えるのに手伝わなかったって知ったなのはの方が多分キツいと思う。
ともあれ、暗い気分の時の時間が遅くすぎて欲しい、なんて体感時間を最大限に高めるこれ以上ないくらいのコンボだ。気づけばあっという間にすずかとアリサは別々の帰路に着き、お隣さんの俺となのはだけが一緒に歩いていた。
「………」
「………」
朝と同じ、気まずい沈黙が俺となのはの間に流れる。
いつまでも黙っている訳にもいかないが、話を切り出しにくい。それで朝の焼き直しになっては本末転倒だが、朝のように切り出しで被ったらどうしようと思ってしまう。
結果、互いに何も話せない悪循環。そのままなのはの家の前まで着いてしまった。
そのくせ話は何一つとして進んでいない。このまま帰るのもなんか…というようになのはも家の前で止まってるし、俺もそれに応じるように止まってしまっている。
…まあ、仕方ないか。
「……なのは。」
「う、うん?」
「とりあえずここで話すようなことじゃないし、公園でも行かない?」
「…うん、いいよ。」
「じゃあなんか…とりあえず、ユーノ連れてきてくれる?」
「うん、わかった。」
やっぱりこの話になってる間、なのはは笑顔を見せない。当然ではあるが、原因としては心が痛むばかりだ。
ユーノを連れてくる為に一度家に入るなのはを見送りつつ、話の切り出し方とどう話すかを考えることにする。我ながら小癪な気がするが、それはこの際言いっ子なしだ。
──と。
そんな時、肌を突くような感覚が迸る。敢えて言葉にするのなら、悪寒と言うのが1番近いだろう。ジュエルシードの感覚だ。
ジュエルシードの感覚なのだが…はっきり言って、全く見た覚えがない。今過ごしているのは、なんでもない日常の一幕だ。
つまり、
「…本編外、下手すると今まで本編で出たこともないやつだな……」
完全なアドリブ。歴史(アニメ)になかった展開だ。それも状況的には俺の存在が必ず折り込まれる。
「帝翔君!」
そう呼びながら出てきたなのはは腕にユーノを抱えており、言外に気づいているかと問うている。
そしてこうなった以上誤魔化すのは無駄、というか悪いくらいだ。
だからもう、この際諦めて一緒に戦おう。
「なのは、今度は俺も戦う。行こう!」
「うん!」
秘密を共有出来る部外者が見つかってか、あるいは初めて誰かと一緒に戦えることか…胸中を推し量るのは俺には出来そうもないが、昨日から──体感的には、ずっと前から見られていなかったような気がする嬉しそうななのはの顔を見て、どうでも良くなってしまった。
そうだな、俺なら未来を全部知ってる奴は気持ち悪いと思うんだもんな。それで気持ち悪がられたくないなら、未来を俺の知らないものに切り替えればいいだけだ。
最初っからずっと怖がってたことだけど、なのはの笑顔に比べたら安いもの。
これから戦いに赴くと言うのに並んで走るなのはの顔は、まだ何も言ってなくともどこか晴れやかだった。
アリサとすずかのキャラは、特にアリサは常になんか違うんじゃないかと思いながら書いてる。
あ、一応生存はしてます。
文章にしたいけど無粋だから書けない、みたいなことが大分多くて『書きたいから書いてるのに書きたいものが書けない…オタクとは一体…ウボァー』とかずっと言ってます。