転生したので反則技で魔法少女のお手伝い/敵することにした 作:絶也
ではなく。
3人目です。誰がなんと言おうと3人目です。主人公だろうと1話から出てようと3人目です。1人目はなのは2人目フェイトは絶対。
3人目なので三人称視点チャレンジ。
高町なのはは魔法少女である。
魔法少女、と言われれば多くの人は何をイメージするだろうか?
少女が不思議なステッキを使い、フリルの多いファンシーな衣装に変身した姿だろうか。あるいは、衣装どころか髪や背丈さえも変わる印象がある者もいるだろうか。
高町なのはの場合は前者と考えて差し支えない。些か魔法少女と呼ばれるには露出が少ないと思う者も居るかもしれないが、そういう輩にはスケベの称号を授けるので悪しからず。
悩み多き、と呼ぶにはまだ幼いものの、だからといってそれは悩みがないと
例えば、ユーノ・スクライア。
彼の助けになることに迷いはなく、またそれに対して後悔もしていない。毒づいたことさえも。
だが、魔法少女となって戦い回る日々に貯まる疲労や新たに発見した自分の可能性に自分が進む道を迷うことはある。
例えば、もう1人の魔法少女。
2つに結んだ金色の髪をした自分と同じくらいの少女が見せる表情に、何とも思わない訳じゃない。
しかし、最初に迷わず武力行使を行った少女に対してどう接するのか、まだ答えは出ていない。
例えば、アリサ・バニングスと月村すずか。
2人の親友の心配をよそに、秘密を明かすことができないことが心苦しい。
それでも、その秘密を明かすことは出来ない。そう思っているからこそ、心遣いが尚のこと胸に刺さる。
例えば、天坂帝翔。
数週間…もう1ヶ月になるだろうか。新たに増えた友達は、自分の秘密と戦いを知っていて、全て見逃してきた魔法使いだった。
助けて欲しかった訳じゃない。彼に危険な目に遭って欲しいとは言えないから。だけど、何も言ってくれなかったことが、心を直接握られたような痛みを与えている。
いいや、与えていた。
喜ばしくも高町なのはの悩み事の1つは、たった一日で解決の芽を見ていた。
隣で並び走る少年の顔を見て、何かを話す決心をつけたのだと。
そして、一緒に戦ってくれる友達ができたことが曇り空のようになっていた心を晴らす喜びをくれる。
ただ1つ心配事があるとすれば、
「帝翔君っ」
「何なのはっ、走ってるから短く頼む!」
「当たり前なんだけど、戦ったら危ないよ!?」
戦ったら怪我をするかもしれない。
危険かもしれない、のような曖昧な可能性の話ではない。もっと直接的に危ないのだと、そんな簡単な話を、ちゃんとわからないままであったなら友達に戦わせてしまう訳にはいかないと。
己のことを棚に上げ、そんな葛藤を胸に抱いていた。
「…そうだよ。戦ったら危ないんだ。それを知ってて、なのはがそれに入っていくのをずっと見逃してた。最初の1回から、止めもせず、知ってるとも、俺も戦えるとも言わずにさ。」
立ち止まり、表情に影を落とした少年になのはの足も止まる。
「違うよ、私は自分で───」
「違わないよ。なのはは、俺がやったら心配するようなことをやってたんだ。」
閉口する少女に、帝翔はだから、と結び続ける。
秘密にしていたが為に、誰も言わなかったことを。
「俺も戦うんだ。なのはが少しでも多く笑えるように。」
「……帝翔君…」
感動が表情と瞳に現れ、目頭が少し熱くなるなのはを見て誤魔化すように咳払いし、気恥しさを覚えた彼は軽口を叩いて流すことにした。
「それに、全部知ってた上に黙って見てたとか…もしバレたらアリサが怖い。俺はホラーが苦手でさ。」
「…あははっ!そっか!」
ほとんど変わらず、映えもしない表情から放たれるそんな言葉が、そして何故かそんな絵面がありありと頭に浮かんで思わず笑い出すなのはと、屈託のない笑顔を見て口元が緩む帝翔。2人でほんの少しの間笑い合う。
「…さぁ行こうなのは、一緒に出掛けるなら楽しいことの方がいい。危ないことはさっさと終わらせて、」
「うん、街の人も守らないとね!」
頷き合い、魔力を感じた元へと走る。
「(…ぼくも居るんだけどなぁ……)」
尚、これはなのはの腕に抱かれほとんどぬいぐるみと化していたユーノの思考だと記載しておく。
魔力を辿り、2人が走った末に辿り着いたのは八束神社。
妙に長い階段が疲れと共に印象を植え付ける少し広い神社だ。それを上ることに対する悪感情はあるが…
「(人が居たら危ないし、なのはの手前めんどくさがってもられないな…)」
「また神社…」
「ああ、そういえば俺が事故に遭った時の…」
「え?」
「え?…あっいやなんでもない!またって?」
マヌケが隠し事を晒しそうになったので慌てて階段を駆け登り、追いかけるように無垢な少女もまた登り出す。
そうしながらも、高町なのはは至って冷静で、合理的だった。
「ユーノ君!この上で間違いない!?」
「う、うん!間違いないはず!」
「帝翔君っ、それなら飛んだ方が早いんじゃないかな!?」
「もしかしてなのはって天才だったりする?」
とまぁ、そんな具合にアホが気づき、2人して自らの相棒とも呼ぶべき名を叫ぶ。
「レイジングハート!お願い!」
「クロッカス、セットアップ!」
応えるように少女と少年の掲げた宝石たちが自らの色彩を示すように輝いた。まばゆいほどに紅い光が、あるいは鈍重な闇のような紫紺の光が二人を包む。
実際に過ぎた時間は一秒にも満たなかっただろう。
だが、そこに小学校の制服をまとった少年少女はもういない。
高町なのはは制服から大きくはかけ離れていない、無垢な白を身にまとい。
天坂帝翔は白い制服とは打って変わって暗雲のようなダークカラーに変わる。その腕にある大きな爪のような装備を見て、ひいき目抜きに味方と判断する人間は恐らくいない。
だが、高町なのははそれが友達だと知っている。
「…そういえば帝翔君、セットアップって?私もあんまり考えずに言ってたんだけど…」
「あー…なんか魔法使いっぽくない?雰囲気作りとか…やる気スイッチ的なのだよ、多分。」
そういえばアニメで言ってたのいつからだっけ、と思う少年の心境など高町なのはが知るはずもなく、そんな他愛ない会話を交わすと二人の魔法使いは互いに顔を合わせ、短く頷き駆け上がる。階段ではなく、空を。
まるで滑るように飛行する2人はすぐに神社にたどり着いた。
だが、そこに居たのはジュエルシードに願いを叶えられた者ではなかった。正確にはそれも居たが、それは重要ではなかった。
ヘルメットを被った妙な奴が、弱り切った大きなカラスのような生き物の頭部を掴んでいたからだ。
それも、明らかに一般的とはほど遠い装いで。
予定調和のように(多分)二人のほうに目を向けてくるそいつを見て、予想だにしなかった人間の存在に揃って面食らってしまう。ただし、驚き方はそれぞれ違っている。
より具体的に言えば。
「だ、誰…ですか?」
「(フォーミュラ女…!?もう俺を潰すのに手段選ばなくなりやがったのか!?)」
そう、少年は…いや、この場合は男と言うべきか。彼は彼女を知っている。
なにせ一度本気で殺されかかった仲だ。とうに正気など失せたような環境で生きない限り、忘れたくとも忘れられないだろう。
何も知らない少女の疑問に答える声はない。その人間は雑にカラスを放り投げると、地に落ちるより先に槍のような蹴りを因縁ある男へと放つ。
「うぐっ!?」
「帝翔君!」
「こっちはいい!なのはっ、ジュエルシードを回収するんだ!」
「…わかった!」
それを間一髪、手に持ったイルカの頭に似た形状の先端を持つ杖で防ぎ、勢いを乗せ地を蹴れば、落ちることなく空へと飛び立つ。今や重力に反することは、この場の全員にとって当たり前となっていた。
それは当然、彼女にとっても。
「やっぱ追ってくるよな…!」
「気でも効かせたか?」
顔を隠そうとしていたそいつは、空に飛ぶなり…否、高町なのはから距離を取るなりあっさりと被っていたヘルメットを脱ぎ捨てた。
当然の如く2人は顔見知りだ。ことここに至り、人違いなど有り得なかった。
「空のドライブにもヘルメットって要んの?もしそうなら俺もなのはも逮捕案件だな。」
「…お前はなのはだけじゃなく、フェイトにも早々に関わろうとしている。もう少し様子を見てようかと思ったけど、見過ごせない。」
皮肉げな笑みをあっさりと無視し、その女は真っ直ぐに突きつけてくる。剣と、明確な殺意を。
本当に現代人か、とは男も今更口にしない。そんなことは以前戦った時から思っている。
だから、返礼は言葉ではなくその手の武器を突きつけ返すことで行う。ついでに挑発も兼ねて。
「──でもアンタさ、前俺に負けたじゃん。」
そこから先に返答はなかった。それよりも速く、鋭く、接近してきた少女の剣が振るわれる。
迫り来るその一撃を眺めながらも、天坂帝翔は場違いな感想を抱いていた。
「(……コイツ、黒髪じゃないじゃん。)」
薄い紫色、だ。それもどこか、無理やりに飾ったような。その髪色はサイバースーツの色とあまり合わないんじゃないか、と。
ガッギィイン!
金属がぶつかり合うような鈍い音が鳴り響く。実際のところ、それが何で出来ているかなど、普通の地球出身の所持者達にわかるはずもない。
だが、その恩恵は確かに活かされていた。
あるいは、目の前の男を殺す為に奮われた剣として。
あるいは、目の前の女を止める為に受け止めた杖として。
鍔迫り合いを不利と見たか女は即座にそれを切り上げると、何ら躊躇うことなく宣言する。
「──アクセラレイター・オルタ!」
「何!?」
天坂帝翔が驚いたのも無理はなかった。
それは、ほんの少し前に使い、そして他でもない天坂帝翔本人に破られた力だったのだから。
しかし、驚いている暇などない。発光し、男の視界から消失した彼女が空からの一閃でその身を2つに裂こうとする最中、彼女は聞いた。
《Anticipation》
と。
今度は逃すことのない、自らのとっておきを打ち砕いたらしい、その声を。
なんかダメでしたね。
女視点に続きます。