転生したので反則技で魔法少女のお手伝い/敵することにした   作:絶也

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頭の中ではエースまでいってます。敗北者ではありません。多分。


ここ海鳴は湯の町らしい・前

日本国内は全体的に連休を迎えていた。

サービス業に休日はない、というのが残念ながら通説であり、高町家が経営する喫茶店【翠屋】も例外ではない。

しかし、当の高町一家はというと店を他の店員に任せていた。

さてそんな高町さんのお家がそんな連休に何をしているのかというと。

 

 

その日はサンサンと輝く太陽が青空に眩しく、翳り(かげり)などないというほどに光が照らす日だった。

雲ひとつない青空の下、2台の車がエンジンの音を鳴らし他に車の通っていない道路を走る。

そこに乗っているのは高町家一同、月村家からすずかに忍さん、メイドのノエルとファリン。それにアリサと、ユーノ、俺こと天坂帝翔である。

と言ってもユーノは籠に入れられて俺の膝の上なんだけどな。女の子じゃなくて悪い。

 

昨今の車は静かに走るもので、かなり裕福な家である友達の家はそういう車ではないかとも思ったりはしたが、よく考えるに日本の技術進歩は1年単位でどんどん進歩する中、ここは俺が居た時代よりそこそこ前だということに気づいて思い直した。裕福だろうがんなもん持ってないのが普通なのだった。果たしてこの友人達とその家族が普通であるかと聞かれれば首を傾げるが、まあ普通なのだろう。

 

ところで日本語の擬音語である、太陽が照り輝くことを示すところのサンサンというのは英語のSunから来るものなのだろうか。あるいはそもそも英語でSunと言うのが大昔の人が太陽にサンサンとしたイメージを持った結果生まれたものなのだろうか。こんな誰にでも思いつきそうなことはもう明らかになっているのかもしれないが、残念ながら学のない俺にはさっぱりわからない。

 

そんな益体もないことをこの十数分、ずっと考えていた。

 

物事には理由があるものだ。よってこんな思考自体に意味はなくとも理由はある。1人で延々と思考をこねくり回すことになった方に。

 

聡明なる第三者が居たならきっとわかるのだろうが、ここ最近の週末俺は大体いつもなのは達に遊びに誘われてはホイホイ乗っかっていた。

この休日もそんな例に漏れず、普通に遊ぶものだと思いお呼ばれした訳だ。アニメで明確な日付なんかがほぼ言及されてないのが災いした。「外でお泊まりだからお着替えも持ってきてね」なんて言われてもまだ気づいてなかった(しかもテンション上がってウッキウキで準備した)今朝の俺に説教してやりたいところだ。というか小学生にそう言われたら気づいても良さそうなものだが…外泊な上になのは達と遊ぶなら夜は一人だとテンションが上がってしまったのだった。陰キャは1人の自由時間が好きなのだ。

 

いや、強がりではなく本当に別段困ったことはない。ここはエロゲじゃなければ(とらいあんぐるハートではない)ラブコメ時空でもない(ToLOVEるでもない)ので、一緒にお風呂とかそんな都合のいいことは起きないのだ。そんなことが許されるのは動物になってるユーノだけである。動物に生まれ変わりたいなぁ…

 

さておき、そんな感じで困ることはないのだが、さしあたっての問題は今乗ってる車の席順がなのは達の1つ前、美由紀の隣であることだ。座席の順番で言えば運転席になのはのお父さんこと士郎さん、助手席に同じくなのはのお母さんこと桃子さん。次いでその後ろの席、運転席の後ろの席が美由紀。助手席の後ろが俺で、最後尾になのは、すずか、アリサの仲良し3人組といった具合だ。ちなみに恭弥は月村家の車の方。席順なんかは見ると忍さんと恭弥のイチャコラを見て「リア充爆発しろ」と思うのが目に見えてるので見ていない。リア充爆発しろ。

 

ともあれ、美由紀も気をつかってくれてちょくちょく話は振ってくってくるのだが、年下なのに年上、しかも友達の姉という何とも言えない相手にどういう接し方をすべきか持て余している、というのが実際の所だった。有り体に言うと話しかけにくいし反応しにくいしで気まずい。俺って人間はどこまでもクソザコミュニケーション能力のようだ。

 

これは伝わる人にしか伝わりにくい感覚かもしれないが、車というのはなんとなーく隣の相手以外には話しかけにくい。それが簡単に出来るのは修学旅行のバスで後ろに仲良い友達が居る時くらいのものだ。ちなみに俺はそういう時大概いつもそれらしい友達が居ないので1人で寝てた。なんだそれ地獄か?

 

という訳で振られた話に相槌を打つくらいのことしかできず、結果話さなくなってきた時間を潰す為にどうでもいいことを延々と考えている。いや、なのは達に話を振る形で助けを求めればそれで住んだのかもしれないが、女の子が三人よれば文殊の知恵より姦しいのは当然であり、そこに男が入れば(なぶ)られるのは世の常であり、突っ込まぬが吉なのは自明の理だった。端的に言うと談笑してるのに割り込めない。いわゆる最悪の選択肢というやつではなかろうか。

 

 

高町家はこういう連休の時、家族で2泊の旅行に行くそうだ。恭弥の彼女である月村忍さんが来るのもそうおかしな話じゃないだろう。だから、ここですずかが家族ぐるみで(親は抜きにしても)来ていることはおかしくも何ともない。彼女と温泉旅行とか爆ぜろと思わなくもないが、それは一旦置いておく。

アリサは連れも居ないが、なのはの親友だ。月村家、即ちすずかが来るとなれば呼ばれるのは自然なことだろう。

そのメンバーで2泊の旅行、というのが高町家のいつもの旅行プランなのだとなのはが嬉しそうに話していた。

 

めっちゃ気まずい。

 

女子親友同士、恋人関係もある家族で一緒に旅行に行くのはおかしくない。

俺が呼ばれたことについても、訳が分からないということはない。魔法を使えることを隠さなくなった今、ジュエルシード回収の競合相手、金髪の魔法少女フェイト・テスタロッサや未だ名前も知らないままのフォーミュラ女、あいつに警戒する意味も込めて同行することになるのは何らおかしいことではない。関係性が友達である以上、誘われることにも不自然はない。

 

しかし、それはそれというか…なのは達が話してることに気をつかってくれて美由紀が話しかけてくれ、それを見てか(あるいは元々そんなつもりがないのかはわからないが)なのは達もわざわざ前の座席の俺に話しかけては来ない。

結果、あんまり話すこともできず気まずい空間が出来上がっていた。美由紀に申し訳ない。

 

(───どうかした?)

 

ふと、頭の中に声が響く。ユーノの声だ。

俺が魔法を使えることを隠さなくなったから、ユーノもまた俺には念話をするようになった。

 

(いや、なんとなく気まずくてさ。そもそも旅行なんてあんました事ないし、何してたらいいかわからないんだ。)

 

(ああ…うん、女の子しかいないと、どう過ごしてたらいいのかちょっと困っちゃうときあるよね。)

 

流石俺の転生がなければこの時点では事実上唯一といってよかった男手(姿はフェレットだけど)、説得力が違う。そしてまさしくその通り。

とはいえ、なのはの気遣いを無碍にはできない。美由紀の話を繋げなかった時点で割と無碍になってる気もするが、だから割り切っていいという話でもない。なのはの日常に警戒しなければいけない物事を持ち込んだ責任もあるし、せめてしっかり楽しんでいると見せないと。

 

「ねね、帝翔君。」

 

そうして意識を戻した傍から美由紀に話しかけられた。

まずはちゃんとコミュニケーションを取るところから始めなければ。転生してるのに人生経験周回遅れになってる気がするのは目を逸らしておこう。

 

「学校でのなのは、ってどんな感じ?」

 

こういう連休の時にこうして外泊に行くのが恒例行事になっているのなら、そういうのはアリサやすずかに聞いていてもいいものだと思う。

いや、違うか。

これ質問の前に「天坂帝翔から見た」って前置きが挟まってるんだな。そうなれば俺にしか答えられない質問だ、よしきたお任せあれ。

 

「んー…」

 

雰囲気が柔らかくて、明るくて、人当たりが良くて、問題らしい問題もなく成績も良い、強いて言えば運動神経がちょっとダメな方かもしれない…?改めて並べたら凄いな、なんだこの完璧美少女。

 

「たぶん、家っていうか…普段と何にも変わらないですよ?」

 

「ふーん…?」

 

・・・・・・。

圧倒的雑魚…ッ!

求められてたのこういう答えじゃないのわかってただろそんな当たり障りない答えは求められてないんだよ。大喜利した方がまだマシだったぞ。

 

「じゃあさ、普段のなのはは、どう見える?」

 

ほらそれ、そういうの聞かれてたんだよな。気を遣わせてばかりな上に同じ質問を二度させてしまって本当にすまない。

普段のなのは、だよな。普段のなのは…

 

「…青空みたいです。澄んでいて、温かくて、明るくて、優しくて、でもたまに青空ではないかも?って思わせてくれるようなちょっと困ったり自信なさげな所が逆に素敵だったりして、凄く………」

 

なんか後ろ静かじゃないか?

思うままに口を開いてすぐにふと冷静になった。さっきまで姦しく話していた後部座席の3人の声が聞こえない。

心なしか首がちょっと硬くなる。体感的にはギ、ギ、ギという音が鳴っているような有様で後ろを見た。

 

「あ、あはは…」

「ふーん…」

「わぁ…」

 

仲良し3人組が三者三様の反応を見せていた。なのはは自分のことを人から聞くのを慣れてないのか顔が赤いし、アリサはその、何?その顔マジで何わかってるじゃんとわかってないわコイツみたいな微妙な顔してるし、すずかは逆にニコニコしてる。

 

うわ、なんだこれ、別に何がどうって訳じゃないけどなんかこう、急に死にたくなってきた。

 

「へー、なのはのことよく見てるんだね?」

 

やめろやめてくれ美由紀今そんなこと言うな変態みたいだろ。

そしてなのははむしろなんか言ってくれ。

 

「そういえばなのはも最近ちょっと元気戻ってきたわよね?」

「ふぇっ!?」

「ああ、うん確かに。なのはちゃん、ちょっと前まで元気なかったけど、この1週間くらい。」

「すずかちゃんまで…」

 

秘密話せる相手出来たからちょっと軽くなったんだよ絶対説明できないけど…!

まずい、この流れは非常にまずい。事情を知っていればなんてことはないのに、その事情が全く説明できない。

そうなると何が起きるかって?

弄られるんだよ。

 

「俺もう着くまで話すのやめる……」

 

お喋りボイコットだお喋りボイコット。もう知らん。気まずいとか知らん。

 

「えー、もっと聞かせてよ色々とさー。お姉ちゃん的には可愛い妹がどんな風に過ごしてるのかなーって気になるんだよ?」

「お、お姉ちゃん…」

 

相手が相手なだけになのはが強く出られなくて困ってる。ていうか内容が内容なだけに誰にも強く出られない。

でも内情があれなだけに俺も強く出られる訳じゃないから全力の会話拒否を通させてもらう。ごめんなのは、頑張れ。

 

 

俺にとってかなのはにとってか、あるいは俺たち2人にとって幸いな事に、この数分後には今回の旅行先である海鳴温泉に着いた。

正直苦しそうではあったものの、なんとかそっちに話題をシフトさせてなのはは乗り切っていた。

いやほんと、なのはに申し訳ないので今度お詫びになんかしよう。

 

 

高町家はこういった連休の日に旅行に行くのはいつものことらしい、というのは先程も挙げた通り。

そしてその行き先が温泉なのも、ゆっくり温かいお湯に浸かり日頃の疲れを癒そうという高町家のいつものプランなのだそうだ。家族団欒で聞いてて見てて幸せになる。

 

そんな感じで緑豊かな山の中。

【旅館 山の宿】と看板にある旅館に入り決められた部屋に荷物を置くと、まずはちょっとした自由時間と相成った。

 

「あ、なのは、帝翔。アタシとすずかはちょっとここを見て回るけど、あんた達はどうする?」

 

「うーん、なのははお外出てこようかなぁ。すっごく暖かくて気持ちよさそうだったし。」

 

「なんか別行動珍しいな。じゃあ俺もなのはと日向ぼっこしてこようかな、実は俺も気持ちよさそうだなと思ってた。」

 

「オッケー、じゃあまた後で!」

 

興奮冷めやらぬ、といった調子で談笑しながらすずかと歩いていくアリサの背中を見送りつつ、俺も俺でなのはと一緒に緑の中へ歩くことに。

 

 

 

「ん〜〜…お日様が気持ちいい♪」

「そうだなぁ、ポカポカする。」

 

言葉の通りに気持ちよさそうに頬を緩め、両手の指を絡め伸びをするなのは…あれ?

 

「なのは、ユーノは?」

「今はお母さんとお姉ちゃんと一緒。お母さん、ユーノ君好きだから…」

 

あはは、と苦笑いするなのはを見てなんとなくわかる。メロメロなんだな、あの人。

 

「そういえばなのは、今回の旅行誘ってくれたのは嬉しいんだけど、なんでわざわざ?アリサとすずかは親友だし、いつも通りだろうけど。」

 

「え?帝翔君もお友達だからなんだけど、迷惑だった?」

 

そんな心底意外な質問されたみたいな顔されてもこっちも困る。なんか俺だけなのは達とそこまで仲良くないと思ってるみたいじゃん。いや距離感的に考えて俺が思ってるくらいの仲良し度となのは達の思う仲良し度に乖離があるかもしれないのはそうだけど。

 

「いや、言ったばっかりだけど、嬉しいよ。誘ってくれてありがとうなのは。」

 

「うんっ♪」

 

ザザ…と風に揺られる木々の音が温かな日差しと相まって心地いい。自然の良い所だ。確かにのんびりと羽を伸ばすにはピッタリな所だろう。

 

「なのは、この2日間くらいは魔法のこととか忘れてのんびりしよう。」

 

「うん、年相応に遊んじゃおう!」

 

「年相応にってなんだ。いや、確かに普段やってる事年相応ではないしな…」

 

でも魔法少女なんだから小学生は年相応であると言われればそうな気もする。

というか年相応じゃない事してる自覚、あったんだな…

 

 

とは言うものの、ここは温泉旅館。

遊ぶも何も、何はなくともまずは温泉ということになった。

通り道がてら、先に近い女湯の方になのは達が行くのを見届ける、はずだったが。

 

「じゃあまた後でー」

 

その腕にすっぽり入ったユーノはなんだキサマ。

そうだな、そうだったな。元々ここユーノはなのは達と一緒に入ることになってたもんな。

クッッッッソ羨ましい…

ロリだとか対象年齢だとか関係なく、所謂『そういうのわからない年齢or動物だから一緒に入っても大丈夫だよね☆』枠で美少女と温泉に入るっていう行為そのものが歯ぎしりするほど羨ましい。

のでそうはさせんぞ。

 

「待ってなのは、ユーノはこっちで入れるよ。」

 

アニメはなのは視点で進むから良かったけど、今は俺にとっては現実なんだ。なのは達の様子を見られない以上ユーノだけ役得は許さん。誰得の男湯に付き合ってもらう。

 

「えー」

 

だよななのははまだ魔法のフェレットだと思ってるもんなペット枠だもんな。

だが、ここは至極単純な方法でユーノをこっちに連れてくることができる。何故なら、

 

 

(ユーノ、ユーノも男湯の方がいいよな?)

 

(あ、うん。そうだね。)

 

ユーノ本人がそもそも男湯の方に行きたがってるからだ。針のむしろだもんな、俺がユーノの立場なら絶対女湯の方行くけど。

 

(えー?ユーノ君もこっちで一緒に入りたいよね?)

 

(え、あ、う、ううーん…)

 

俺にはわかるぞ、倫理的に男湯の方に来たいけど普通に考えて男としてそっちに行きたくないわけがないから嘘つかずには肯定も否定もしにくいんだよな。よく最初にうんって言ったなお任せあれ、言質取れた以上俺が強引に連れていこうじゃないか。

 

 

「どうしたんだ天坂くん、急に止まって。入らないのかー?」

 

士郎さんが急に戻ってきた。

えっ。えなんで?マジでわからない。なのはと話してるように見えて、なのはが入れなくなってたから?

 

「なのはも皆をあまり待たせるもんじゃないぞ?」

 

「はーい。いこっかユーノくん♪」

 

えっ、というユーノの断末魔が頭の中で響いた気がした。

 

「いやちょっ……」

 

言い訳させてもらいたい。

俺はなんとか止めようとしたんだ。言質も取れてたからユーノを連れていこうとした。

しかし、《婦人の湯》。

プレートに書かれたその文字と、女湯というその存在の圧。

ズモモモモ…というオーラが目に見えるかのようだった。

無理だろコレ。

 

「天坂くんも行こう、折角の温泉なんだから、長く浸からないと勿体ないぞ?」

 

「はい………」

 

この時の俺は羨ましさと脱力感で、恐らくここ最近で1番沈んだ声を出していたと思う。しかしそんなものは、これから始まる試練には及ぶべくもなかったのだとすぐに知った。

 

 

即ち。

女友達の父親と風呂で裸の付き合い、という試練に比べればッ…!

やべぇ。やべぇこれ。

連れられて入ったにも関わらず温泉に入ってから流されるまま士郎さんの隣に浸かってるのにもう10分くらい士郎さん何も喋ってくれない。

何ならもう1つ向こう側に居る恭弥も澄ました顔してるばっかりで喋らない。マジで顔いいなコイツ腹立ってきた…

 

「うん、うん…やはり、聞いておくべきか……しかし…」

 

なんか士郎さんがうんうん唸っていて、部分的に聞こえる小学生という言葉が引っ掛かった。

俺になんか聞きたいことあるのか?ていうかこれ俺から聞くべきか?小学生こういう時自分から聞くのか?

色々考えた結果、俺も士郎さんの隣でうんうん唸る羽目になってしまった。

小さな息を吐き、恭弥が口を挟んでくる。

 

「父さん、天坂くんに何か聞きたいんだろ。天坂くんも困ってるよ。」

 

「う、うむ。いやしかし、母さんにも心配性と言われたばかりでな…」

 

何?心配性になるようなことを聞こうとしてたの?

一瞬そうは思ったものの、ある種当然と言えば当然かもしれない。今のところ高町家に行ったのは俺が無理な魔法の使い方したせいでぶっ倒れた時ないしそれに近しい状態の時だ。何かしているのかと思うのは当たり前の疑問だろう。あるいは度を越して病弱なのか、とか。

でもそれについては有耶無耶って言うとあれだけど、何となく大丈夫みたいな伝え方したつもりだったんだけどな。

 

「えっと…なんですか?」

 

「ああうん…君は、なんというか、いわゆるそう…なのはのことが好きなのかい?」

 

好きですけど。

ほとんど即答で答えかけていた。むしろ好きのすまでは言っていた。

 

「す……きとかはまだあんまり…わからないです。」

 

「わからない、か。じゃあ、なのはのことを可愛いとか…」

 

「父さん。」

 

頼れる長男恭弥が短く(いさ)め、呻きのような声を漏らして士郎さんが黙り込む。傍目に見てもちょっと反省してるっぽいのが見て取れる。その隙に顔を見られない、というか口が滑らないように口まで浸かる。

 

いや、まあ、わかるよ。可愛い娘、それも末っ子に初めて出来た家に入れるほどの男友達(同年代)。心配にもなるよな。共通の秘密があるから二人だけで仲良くしてる風にも見えたろう。親の気持ち、ってやつは親になったことがないからわからないが、可愛い娘に手を出す男殺す、みたいになってる漫画を見ることも多い。訂正、多かった。

 

なのはくらいいい子だとそれはそれは心配だろう。

しかし申し訳ない、士郎さん。流石にここを正直には答えられない。

なのはは好きだ。嫌いなわけがない。普通と答える者あらば我が右ストレートで沈めてやる。

なのはは可愛い。可愛くないわけがない。あれで可愛くなければ何を可愛いと言うのか。

だがそんなことをその相手より先に父親に面と向かって言える奴は勇気があるというよりヤバい奴なのだ。

 

ここは小学3年生として、知らぬ存ぜぬで切り抜けるしかない…!

 

「しかしな恭弥、なのはももう3年生で」

 

「まだ3年生だよ、父さん。」

 

それにしても、ユーノは今頃なのは達とお風呂か。いいなぁ、テレビの向こうでは見れたのに現実になった今見れないもんなぁ…

面と向かって言うのは憚られて言えたことはないけど、なのはは可愛い。今日の服も可愛かった。一回くらいちゃんと言いたいな。

 

「まだ子供なんだから、そうやって詰めるのはよくないよ。」

 

「そ、それはわかってるんだが…」

 

今頃なのはもお風呂、みんなでお風呂…アリサやすずか、ファリン達も一緒だっけ。

せめて妄想しなければ男の名折れ。

ほわんほわん、って妄想…できない……

 

「?父さん、天坂君が」

「お…ぉ!?天坂君!?」

 

なんで慌ててんだこの人たち。つか、なんだ、考えが、まとまら……

 

 

ポチャッという軽い音とともに、馬鹿の意識が落ちた。




顔がいい腹立つとかほざいてますが帝翔はアッシュ系の髪色でAPP14〜15くらいはあります。非常に殴りたいですね。
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