転生したので反則技で魔法少女のお手伝い/敵することにした   作:絶也

18 / 18
士郎さんの性格口調その他諸々の書き方わかんねえんだよぉ!!!!!!!!(PCをぶん投げる音)
あとテスト的に念話の形式を「(────)」にしました。


ここ海鳴は湯の町らしい・中

そこには、明かりが少なかった。

上を向いて歩いたりはしなかった。だから、そこが何故暗いのか俺にはわからない。

だけどその瞬間まで、下だけは見ていた。この道のように、暗い人間だったんだろう。

キキーッ!!という甲高い音が静かな世界に響く。手を伸ばして、俺は─────

 

 

 

のぼせてぶっ倒れた。

起きがけに士郎さんにそう聞いて、思わず自分に笑ってしまった。コイツどこでも倒れてんな。多分急に長考したからじゃないだろかと俯瞰する。ばーっかじゃなかろうか。

冷たい水を取ってくれてる士郎さんの背中を見てながら、さっき見た夢について考える。

 

どこにでもありそうな道だったが、そこには痛烈な既視感があった。それに、どこかで聞いたような音。

思い出そうとしてみるが、何せ夢だ。曖昧でもうほとんど忘れてる。

 

「大丈夫かい、天坂君。まだクラクラするかな?」

 

ウンウン唸る俺に冷えた水を差し出してくれる士郎さん。

ありがたい、喉がカラカラだ。

 

「ありがとうございます、士郎さん。」

 

我ながら少し声がかすれてしまってるのがわかる。雑魚だな俺。

乾いた喉に冷えた水を流し込む中、申し訳なさそうに、しかしちょっと茶化すように話しかけてくる。

 

「ごめんな、緊張させたんだろう。」

 

「いえ、そんな…」

 

緊張はしたけど。

めっちゃドキドキしたんだからな、あの尋問(?)

 

「恭弥と美由紀は、正直なところもうあまり心配してないんだが…なのははまだまだ、でね。」

 

「あ、はい…俺が言うのもなんですけれど、小学生ですしそれでいいと思います。」

 

「しっかりしているなぁ、君は。…少し話、いいかい?」

 

「もちろん、まだあんまり動けないですし」

 

苦笑いし(たつもり)ながら答えると、士郎さんはニコリと笑ってから決めていた言葉を滑らせ始めた。

 

「なのはと君は、何か2人で隠していることがあるんじゃないか?」

 

心臓が止まるかと思った。

そんな俺を知ってか知らずか、言葉を続ける。

 

「そうは見えないけど、天坂君は体が弱いのかな?」

 

ああうん、短期間の間にこれ合わせてもう3回はぶっ倒れるかそれに近い状態になってるもんなそう思うよな…

栄養不足の貧血とか何とか適当ぶっこくのは簡単だけど、そういう言い訳だと多分高町家に伝わりそうなんだよな。でも今はそれどころじゃない。

 

「いや、体が弱いんだとしても別にそれを責めたりはしないんだ。当たり前だけど、天坂君が悪いわけじゃない。…ただそうでなくて、少し思ったんだよ。もしかしたら何か無茶をすることがあって、そのせいでよくああいう風になるんじゃないか、とね。」

 

ああいう風、というのは気絶してたりだの顔色ヤバかったりだの、という風のことだろう。

けど、そんなことはどうでもいい。今の言葉で、のぼせてたらしい頭は冷水を浴びせられたように完全に冷えていた。

気づいてる?

そんなはずはない、と信じたいが、なのはじゃなく俺からなら気づいてもおかしくはない。でもそれは流石に、色々変わりすぎるぞ。

 

「なんとなく、最近なのはの様子が変だとは思ってて…天坂君と出会ってからだから、もしかしたらそのことで何か思い詰めることがあったんじゃないかと思っていた。」

 

俺と出会ってから?…そうか、士郎さんから見ればユーノはあくまでもフェレット、俺っていう具体的な人物の切っ掛けがあればなのはの変化に気づいてもおかしくない。そしてそれで気づいたなら、まるでなのはの変化は俺の影響みたいに映るのか。

 

「かと思えば最近のなのははまた明るくなって、だからあんな質問をしたんだ。驚かせてすまなかった。」

 

「あ、いえ…」

 

「そして、無茶をすることがあるなら言ってもらいたい。今、なのはが何かに打ち込んでいるらしいことはわかる。だけどそれが危ないことなら、なのはの父親として止めなきゃいけない。」

 

………至極ごもっともで。

やや飛躍した発想な気もするが、士郎さんなら俺の体が強いか弱いかくらいはわかっててもおかしくないし、そこから考えるに危ないことをしてると思ってもまあおかしくない。

 

返す言葉も見当たらないが、かと言って本当のことを言えるわけもない。それは、ちゃんとそれを知った後で、なのはの口から伝えられるべきことだ。俺が言うことじゃないし、絶対に今ではない。

 

だから、俺に言えることは…

 

「……士郎さん。なのはを心配する気持ちとか、親じゃなく友達としてですけど…わかります。」

 

お陰様で頭が冷えたので、貰った水を傍に置いて正座で士郎さんと向かい合う。

 

「でも、ごめんなさい。言えないです。心配する気持ちは最もだし、まだ親の気持ちとかちゃんとわかるって言えないけど…きっと、父親として止めなきゃいけないってこともあるのはわかります。」

 

「…………。」

 

士郎さんは口を挟むことなく聞いてくれている。

覚悟していたわけじゃないから、多分自分で思っているよりも言葉から言葉の間隔は長かったと思う。それでも、士郎さんは俺の言葉を聞き届けてくれる。

 

「まだ友達になって長くはないけど、『これ』はなのはにとって多分凄く大事で…上手く言えないけど、まだ話せることでもないと思います。勿論、本当に危ないと思ったら止めるつもりです。」

 

言った瞬間、士郎さんの目が鋭く、真剣に、俺の目を覗き込むのがわかる。

嘘はつけない。今嘘をついたら、きっとこれから信じて貰えることは無い。

 

「今なのはは、やりたいと…やらなきゃと思えることをしてます。それは自分の為だけじゃなくて、困ってる人の助けにもなることで…だから、お願いします。もう少しの間……話せる時が来るまで、見守っていてあげてくれませんか?」

 

真剣な士郎さんの目に、俺にできる限りの誠意を込めたつもりで見つめ返してから、頭を下げる。

随分な無茶を言ってると思う。まだ10歳にも満たない娘が、危なくなるかもしれないことをしていることを事実として聞き、その上で何も聞かずに見逃してくれなどと。

 

それも、まだ付き合いの浅いただの友達の言葉だ。

だけど、俺にはこれくらいのことしか言えない。

 

その全てを聞いて、少しの沈黙が流れる。

頭を下げているから顔は見えないけど、士郎さんは瞑目してるのだろうとなんとなく思う。

 

「……なんというか…天坂君、君は本当に小学3年生とは思えない顔をするな。」

 

こんな時になんだが、なのはやアリサを見てると割りと小学3年生ってそんなもんじゃなかろうかと最近思う。

 

「わかった。とりあえずは君を信じよう。」

 

「!本当ですか?」

 

「ああ。第一、本当にすぐにでも話すべきことなら、なのははもう話してるだろうからね。君が真剣にそう言ってくれているのを見て、少し安心した。」

 

そうなんだろうか…魔法のことを言ってないのはなのは自身の判断な気もするが…それはまあいいか。

 

「いやぁ、ごめんなさっきから。(おど)かすつもりはなかったんだよ。」

 

ともあれ、そうして朗らかに笑う士郎さんを見て、こっちも肩の力が抜ける。正直今目の前に居なかったらクソ長い溜め息が漏れ出てたかもしれないくらいだ。

 

「よし、じゃあー…今度はゆっくりのんびり風呂に入るか!」

 

「いや、あの、流石にもーちょっと湯冷めしてからにさせてください…」

 

一日に2回ものぼせるとかマジ勘弁。さっきは多分軽い知恵熱みたいなのだったから軽度だったけど、本当はもう入らない方がいいくらいじゃないだろうか。

 

「はっはっは。…こんなこと言うのも妙な話だが…あの子は賢いけど、変なところで前しか見えなくなる時があるから、なのはをよろしくな?」

 

その台詞、重くないか?

でもさっきの今じゃ、返す言葉は頑張りますとかじゃ足りないわな。

 

「…任せてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は高町なのはが天坂帝翔とお風呂前で分かれた所まで遡る。

ユーノ・スクライアは魔法使いである。

 

自分が発掘したせいで散乱した危険な宝石、ロストロギア・ジュエルシードを回収するべく高町なのはらの住む海鳴市へとやってきた。

 

ロストロギアとは何ぞや、という話についてはここでは省く。

 

しかし、彼自身もジュエルシードを回収する身から、決して弱くはない。

 

ピンチに陥り、偶然か必然か。高町なのはと出会い、彼女を魔法の道へと導いた。

 

 

 

そんな魔法使い(フェレット)、ユーノ・スクライア。

 

現在彼は、海鳴に来て再びのピンチを迎えていた。

 

何が、などとは聞くべくもない。彼が直面する事態を見れば、そんなことは一目瞭然なのである。

 

即ち。

 

「(────ユーノ君、温泉入ったことある?)」

 

男1人、女湯に放り込まれるという(羨ましすぎる)修羅場…‼

いっそそこで振り切れる感性があったならまさしくこの世の天国だっただろうが、ユーノ・スクライアはそこまでの感性の持ち主ではなかった。

 

ガッチガチに緊張して震えながら全力で後ろを向いて見ない見ないとしている。

だが、今の彼にとってその楽園は待つものではない。手を伸ばしてくるものだ。

 

「(────あ、うんそのー…公衆浴場なら入ったことあるけど……)」

 

「(────えへへへー、温泉はいいよ〜)」

 

「(────本当?)」

 

間延びし、楽しみにしているのが聞いてるだけで(ユーノにしか聞こえてない)わかるような弾んだ声で話しながら脱いだ服を籠に入れていく。

楽しむのが礼儀だろうか。そんなことを考え、恐る恐ると振り返る。

 

然して、そこに広がる光景は至極当然に桃源郷である。

 

あるいは月村忍。歳の頃もあり、発育が良いと断ずることのできるその身体は既に大人の魅力を発揮している。

 

あるいは月村すずか。姉の忍とよく似ているが、幼い体は発展途上。隣の忍を見る限り、今はもちろん将来的な期待値も高まる。

 

あるいは高町美由紀。忍より歳が下なことを踏まえると、やや出るところが出過ぎてる気もするが、今はそれよりも鍛えられたスレンダーボディが目を引く。

 

あるいはアリサ・バニングス。紫、茶色、黒寄りとダークカラーの多い髪のこの中では特に目を引く輝くばかりの金の髪。身体の全てからその将来性をヒシヒシと感じる。

 

 

 

アリサと美由紀は互いを脱がせ、一糸まとわぬ姿にさせ合ってたりもするのだが、もちろんユーノ・スクライアにそれをまじまじと見ることは出来なかった。

そして、誰に何を言うことも出来ないフェレットの行き先は1人に絞られる。

 

「(──な、なのは!僕はやっぱり─っ)」

 

「ほぇ」

 

慌てるユーノの声に振り返る高町なのはも、やはり髪のリボンを除いて何も着ていない。直視できるはずもないフェレットはそれを目の当たりにして、硬直した挙句倒れそうだった。

 

「(──その、僕はやっぱり、恭弥さんや士郎さんと男湯の方に──)」

 

「(────えー、いいじゃない。一緒に入ろうよー。)」

 

絞り出したその言葉と共にぐったり伸びたユーノの提案は、無慈悲にも不満げななのはにあっさりと棄却された。

ピクピクと時折跳ねながら倒れるフェレットに、もはや抗う気力は残っておらず。

海鳴に来て2度目のピンチは、魔法使いを逃がしてはくれなかった。

 

 

 

 

士郎さんとの対話を終え、2度目のお風呂はなんとか夜にして今は頭を冷やさせてくださいということで手を打った天坂帝翔。

つまり俺は、これでジュースでも買っておいでと渡された千円札を握りしめて廊下で立ち尽くしていた。

申し訳ない気持ちでいっぱいだったとか、別にそういうわけではない。いやその気持ちは確かにあるけど、それで立ち尽くしてた訳じゃない。

 

視線の先、いつもの仲良し3人組。なのは、アリサ、すずかが(ついでにユーノも)3人並んで歩きながら談笑している。アリサが真ん中で少し前に出ているのが関係性というか性格が出ているなーと冷静な思考が回ってるのを自覚してと。

 

一言で言って、浴衣だった。

そして髪を下ろしていた。普段ツインテールに結んでるなのはが。

破壊力やべー…かわい…人が死ぬわこんなん……

 

「…んっ?……帝翔?何してるのうずくまって。」

 

悶え死にかけてた俺にアリサが声をかけてくる。ダメだ、実在する相手になってもこういうのが抜けない。

だがしかし、そこは表情が変わりにくいことが数少ない長所(数多い短所)のこの俺。切り替えればなんということはない。

 

「いや、なんでもない。ちょっと足の指ぶつけた。」

 

「あー、痛いわよね、あれ。」

 

「帝翔君、さっきお兄ちゃんにのぼせてたって聞いたけど…」

 

苦々しい表情でうんうん頷くアリサをよそに、なのはが心配そうに見てくれる。

さっきまでなのはの話を父親としていただけに、一瞬どんな顔をすればいいか困る。

 

「平気なの?」

 

でも、心配させる顔だけは違うな、と思った。表情変わりにくいのにな。

 

「うん、もう大丈夫。ちょっと暑いから、飲み物買ってこようと思ってたとこ。」

 

「あ、じゃあ帝翔くんも一緒にいかない?今3人でここ探検してるんだ。」

 

ノリノリだなすずか、ちょっと意外かも。アリサに埋もれがちだけど、意外とアクティブだよな。

断る理由もなければジュース買いに行く道すがら、

 

「んん、それじゃあぜひともご一緒させていただきましょう。」

 

「ノエルさんみたい」

 

アリサのなにそれ顔が多分正解の反応だ。本職のメイドさんであるノエルさんに失礼な気がしてしょうがない。

それはそれとして快く了承してもらえたので、なんとなくいつもの前にアリサとすずか、後ろに俺となのはの2列になる。

 

「ところでなのは、心なしかユーノちょっと疲れてない?」

 

心なしどころか普通にぐったりしてるように見える。

 

「うん、一緒にお風呂入ってる時にね?アリサちゃんが洗ってくれて、疲れちゃったみたい。」

 

「あたしの洗いフェレットテクニックに参っちゃったのよね!なんて、ほんとは洗うの犬なんだけど。」

 

…忘れてたわ。ユーノさっきまでなのは達と風呂入ってたんだよな。ほほう、なるほど?アリサに?ほほう?その体を?隅から隅まで?ほほうほうほう?洗ってもらったと?

 

「(────帝翔、なんだか寒気を感じるんだけど…)」

 

「(────コノウラミ、ハラサデオクベキカ。)」

 

「(────えっ!?本当に何!?)」

 

「?どうしたのユーノ君。」

 

ビクゥ!と飛び起きた肩のユーノに、疑問顔のなのは、逆恨み以外の何物でもないことを知りつつ渾身のサムズアップをする俺。

中身はどうあれ気の抜けてる4人(5人)に、話しかけてくる声があった。

 

「はぁ〜い、おチビちゃん達。」

 

陽気で高い、傍から聞けばテンションが高いように聞こえるような声。

しかし、そう言うにはどこか冷めた表情を浮かべるグラマラスな美女。八重歯が口から少し出ていて、何より額に宝石のようなものがあるように思える彼女は、呆けるアリサ達を無視して歩いてくる。

 

あんな風に声を掛けられると逃しそうになるが、わかる。その声に潜んでいるのは敵意、悪意、ないしそれに類するものだ。

だから、俺は3人より1歩前に出ておく。

 

「ふんふん…君たちかね、うちの子をアレしてくれちゃってるのは。」

 

値踏みするように俺となのはを視界に捉え、屈んでじっと見据えてくる。

 

「え、えぇ…」

 

「あんま賢そうでも強そうでもないし、ただのガキんちょに見えるんだけどなー…」

 

なのはは完全に困惑しきっていて、何も言えなくなっている。

 

「なのは、帝翔、お知り合い?」

 

後ろでアリサが警戒し、友達としてなのはを守る為に聞いているのを聞く。

 

「う、ううん…」

 

「知らない。」

 

知ってる。でも知識としてだし、実際会うのはこれが初めてだ。だから、知ってるとか言えるわけない。

 

「だから聞くとこ。誰かとお間違いじゃないですか?」

 

「2人ともあなたを知らないって言ってますけど、どちら様ですか。」

 

間違いであるはずもないって知ってるのにな。

一緒に前に出て聞くアリサの語気もいつもより強い。相手を拒み、遠ざける声色だ。

それを知ってか知らずか…否、確実に知った上で腰を上げた目の前の彼女は冷たく俺たちを見ている。

 

「…ふふ、あーっははははは!あははははは!ごめんごめん、人違いだったかな?知ってる子によく似てたからさぁ」

 

やがて大きな笑い声を上げ、一転してやはり陽気に態度を軟化させる。少なくとも、表面上は。

 

「ああ、なんだ、そうだったんですか…」

 

安心したように小さな息を吐いたのがわかる。不審者だとしか思えない相手が単なる間違いだったなら、安心するのも無理はない。だが、今回ばかりはなのはの肩で未だ気を張ってるユーノの方が正しい。

 

「あっははは、可愛いフェレットだねぇ。」

 

「あ、はいっ」

 

「よしよし、なでなで〜…」

 

ユーノを撫でるお姉さんに、なのはは既に警戒心を解いてしまっている。確かにこの場では害はないけど、それはそれとして。

 

「(───なのは、ダメだ、その人は…)」

 

「え?」

 

 

「(───今のところは、挨拶だけね。)」

 

 

いつもする念話に入る異物。

そのお姉さんの声を頭の中に直接聞いた瞬間、目の色が変わり気が引き締まったのが見て取れた。

 

「(───忠告しとくよ。子供はいい子にして、お家で遊んでなさいね。おいたが過ぎるとガブッと行くわよ。)」

 

初めての対人戦とはまた違う。目的の為の無機質な行動ではなく、明確な悪意に晒され、なのはが少し怖がってしまっている。

 

「……すみませんお姉さん。俺たち、行く所あるのでこれで失礼します。行こう、3人とも。」

 

「んー?あー、はいはい。じゃあねー。」

 

歩いて通り過ぎる瞬間まで、鋭い視線を向けてきた。それこそ文字通りに、釘を刺すように。

苛立ちを隠そうともせず腕を組んで唸るアリサをどうどうと宥め、反対側へ歩いていくその人を歩きながらしっかり見送る。

言っておきたい言葉の1つや2つなくはないが、それは言ってもしょうがないというやつだ。

 

今はおいたが過ぎるとガブッとくる獣より、怒りで顔が赤くなってるこっちの可愛い獣を宥めた方が良さそうだ。

 

「…んぬぬぬ、なぁーにぃー!あれ!!」

 

「あはは、変わった人だったね…」

 

「昼間っから酔っ払ってんじゃないの!?気分悪!」

 

ちゃんと居なくなったのを確認してから溜まった怒りが爆発したアリサ、ほんといい子だなー。あと怒りの挙動が多い。全身で表現してる。

 

「ま、こうして他人に迷惑かけるのはご法度だけど、基本的にここはやすらぎの湯な訳だし昼から酒飲む人も居るんじゃないかな。」

 

「あはは…そうそう、くつろぎ空間だし、色んな人がいるよ…」

 

「だからといって、節度ってもんがあるでしょ節度ってもんが!」

 

怒る気持ちはよくわかる。実際目の前にしてあんな絡み方されると、原作キャラだひゃっほいってテンション上がるよりまずムカついた。元からそうではあったけど、実在する友達になると、なのはの辛そうな顔や悲しそうな顔を見るのはしんどい。原因が見えているとそれこそ噛みつきたくなるくらいに。

 

「まあまあ、ジュースちょっと分けるから頭冷やそう?」

 

そのジュースを買うお金は士郎さんがくれたものだけど。マジで申し訳ない。

 

「むむむむ……」

 

不服げなアリサは、イラつき放出フェイズから自分納得フェイズに入りつつあったのでなのはの方に念話を飛ばす。

 

「(────なのは、大丈夫?)」

 

「(────うん、平気…)」

 

念話ながらも沈んだ声で返事をするなのはの表情は、やはり沈んでいた。

 

 

 

 

その夜のこと。

 

小学生と言えども一応男の子と女の子。天坂帝翔こと俺は、男性陣と一緒に寝ることになってなのは達とは別で寝ることになる。

 

もの、だと、思ってたんだけどなー……

 

男性陣…というか中学生以上組はもう少し遅くまで起きているので、小学生の俺に付き合わせる訳にはいかない、との事で小学生組としてまとめられ、川の字で寝る(アリサ、なのは、すずかの順番である)3人の上に横向きで配置されたのだった。

 

本を読み聞かせた後、俺たちが寝たことを確認したファリンが様子を見ていたのを気配と襖越しの話し声で察知しつつ、寝てない俺は目を開く。

とは言ったものの、ファリンが部屋を抜けてすぐ、桃子さんが襖を開いて確認しに来たりはしたのだが。

 

ともあれ、寝たフリでそれをやり過ごしてからの話だ。

 

アリサとすずかにとっては、昼間のあれはマナーの悪い他の客に絡まれた、程度のことでしかなく、一眠りすれば記憶から薄れていくような出来事であるに違いない。

 

だけど、なのはに…なのはとユーノ、それに俺にとっては違う。大きな意味を持っている。

あんなことがあった後で、「それじゃあ今日も楽しかったね!明日も楽しく過ごそうね!おやすみなさーい!」とはいかない。

多分俺と同じに目を開いているだろうなのはから、頭の中に声が響く。

 

 

「(───ユーノ君、帝翔君、起きてる?)」

 

「(───うん。)」

 

「(───起きてる…というか、流石に寝れない、かな。なのはもそうでしょ?)」

 

「(───それは…うん。)」

 

 

尚、頭の中で返事をしているユーノの現在地はアリサの手の中である。片手で握られている。哀れな…

 

ユーノがその手からスルッと抜け出し、なのはの元に来るのを横目で見ていると、なのはも体を起こした。寝たフリというか、寝転ぶのは落ち着かないのかもしれない。なんとなく釣られて俺も起き、3人…2人と1匹?で話すことに。

 

 

「(───昼間の人、こないだの子の関係者かな。)」 

 

「(───うん、多分ね。)」 

 

「(───また、こないだみたいなことになっちゃうのかな…)」 

 

「(───多分……)」

 

 

会話というより思考に近しい感覚で話す2人に特に横槍を入れることもなく聞いていると、ふとユーノが目を伏せる。

…フェレットの表情はよくわからないけど、今のユーノが考えていることくらいなら、大体想像がつく。

 

でも、だからこそ口は出さない。なのはとユーノはお互いの気持ちを共有しておくべき、というのは勿論だけど、何よりも俺自身が今のなのはの気持ちをちゃんと聞いておきたい。

 

 

「(───ねえなのは。あれから色々考えたんだけど…ここからは、やっぱり僕が…)」

 

「(──ストップ!…そこから先言ったら、怒るよ?)」

 

 

話を止められ、少し目を丸くするユーノの頭に手を乗せるなのはは、そのまま撫でながらユーノの言葉を引き継ぐ。

茶化す訳でもないが、正直この言葉は一言一句違わなかったんじゃないかと思う。 

 

「(───ここからは、やっぱり僕が一人でやるよ。これ以上なのはを巻き込めないから……とか、言うつもりだったでしょ。)」

 

「(───うん。)」

 

「(───……ジュエルシード集め、最初はユーノ君のお手伝いだったけど…今はもう違う。…私が、自分でやりたいって思ってることだから。)」

 

 

…なのはは、自分のことを割りと名前で呼ぶ時がある。一人称は普通に私だったりするのに。

 

その基準がわからなかったけど、今こうして話を聞いていると思う。何も他人事じゃない時…どう表現するのが正解なのかはよくわからないが、自分で受け止めなきゃならないことの時に、一人称が私になるんじゃないだろうか。なのははこういう性格だから、それが多くて自然と一人称も落ち着いていっただけで。

 

思いの丈を伝えながら、微笑んで小さなフェレットの体を抱き上げ、なのはは言葉を紡ぐ。もちろん、口ではないけれど。

 

 

「(───私を置いて、一人でやりたいなんて言ったら…怒るよ。)」

 

「(───うん。)」 

 

「(───というかユーノには悪いけど、ユーノがそう言っても俺はこれからはジュエルシード集め、手伝うよ。)」 

 

「(───えっ…もし一人でやるって言っても…って事、だよね?)」

 

「(───うん。今聞いてて改めて思ったけど、もしそう言われたら、今度はなのは、魔法も持たないのに自分からユーノを探して巻き込まれると思うんだ。)」

 

 

ほら2人して目を逸らす。なんとなく自分たちでもわかってるじゃないか。 

 

 

「(───今はもう、2人だけの秘密じゃないし…1人でさせるつもりもない。そのどっちになっても、なのはが暗い顔することあるからさ。)」 

 

「(───う…私、そんなに顔に出てるかなぁ?)」 

 

「(───あはは…ど、どうだろうね…)」 

 

「(───なのはがジュエルシード集めがやりたいことになったみたいに、俺も今は、黙って見てるなんてできないし、したくない。)」

 

 

そうすることは、約束を破ることだからな。

他でもないなのはのお父さんが、なのはと俺を信用して、今はこれでいいと認めて任せてくれた。

だから。 

 

「(───ユーノも、巻き込みたくないって思ってるんなら、もう諦めた方が賢いと思うよ?)」

 

「(───うん。じゃあ…そうさせて、もらおうかな。)」 

 

「(───あははっ…うん。2人とも、少し眠っとこう?今夜にも、何かあるかもしれないから。)」

 

 

なのはも、ユーノも、俺自身も、言いたいこと、確認しておきたいことをちゃんと言葉にして交わして…多分、隠し事とか心配事とか、たくさん増えてきた最近では凄くスッキリした気分で、また布団に入れたと思う。

 

だけどやっぱり、今夜はあまり眠れそうになかった。




ここまでお付き合いくださってる皆さんには
なぁーにぃー!(Cv.釘宮理恵)の後に
やっちまったな!
が自動再生されるバフを掛けておきます。良かったですね。せやろか。そもそも通じるか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。