転生したので反則技で魔法少女のお手伝い/敵することにした   作:絶也

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大体1話を半分に分ける感じでいこうと思った


2話 不思議な出会いを見ることにした 前

他愛もない雑談を聞き、時折混ざったりしながら職員室に案内してもらい、3人と分かれる。転校生の俺が教室に入るのは授業…というより始業のチャイムが鳴ってからだ。そこまで付き合ってもらうのは普通に不可能だからな。

 

そんな感じで、見覚えがあるような、ないような、そんな先生と少し話をして、教室に案内される。今の俺に対しては当たり前ではあるのだが、子供に接するような…いや、比喩表現じゃなく本当に子どもに接する時の態度が少し気に障るが、転生前でも先生より年下だったと思えばそれも収まる。

 

そもそもそうなるような条件を選んだのは俺なのだから、そこに腹を立てるのは筋が通らない。

 

そんなどうでもいいことをつらつらと考えながら相槌を打っていると教室に着いたらしい。少し待っているように指示され、先生が先に教室に入る。

 

……懐かしい。

転校の経験はないが、小学校の雰囲気とか、そういうのが懐かしく感じる。

子どもの時には抱くこともなかった気持ちなんかを思うと、相手はみんな小学生だというのに緊張してきた。

なのは達ならともかく、そうでない相手にまでとは情けない。

 

そして、小学校の景色が懐かしくて浸っているうちにドアが開いた。

どうやら呼ばれてることに気づいてなかったようだ。

軽く先生に謝ってから、教室に入る。

小さな子供たちの視線が集中してるが、いざ前に立って一望してみると相手が子どもだとよくわかり、緊張が薄れてきた。

 

「…天坂帝翔です、よろしくお願いします。」

 

それでも、不自然がないようにちゃんと挨拶はする。これで地味な印象を持ってくれればなのはの方に行きやすくなるので儲けものだが…そうもいかなそうだ。

なのはとアリサ、すずかなんかはもう話したからそうでもないが、それ以外の子は転校生という響きと未知の相手に目を輝かせている。

疲れか緊張がほぐれたからか、何から来てるのか自分でも判別し難い息を小さく吐き、拍手に囲まれつつ言われた席に向かう。

 

「みんな仲良くしてあげてくださいね?さて、それでは授業を始めます。」

 

流石に先生にそうまとめられると静かになるものの、どこかそわそわしていてこの時間は休み時間の逃げ方を考える羽目になりそうだった。

 

 

 

けっきょく、にげきれませんでした。

小学生と言っても聖祥の雰囲気となのは達の落ち着きからしてまあワイワイ来ることはないだろう、と思っていたが甘かった。

休み時間に入るとあっという間に囲まれた俺は、ろくになのは達の方に行くこともできず質問責めに遭っていた。

アニメでフェイトが囲まれてたの、美少女だからじゃなくて…いやそれもあるのか。単純に転校生、留学生っていう存在のレア度だったんだな。

 

相手は小学生だし、余裕を持って軽くいなせる、と思っていたのだがそれも甘かった。相手が子供だと思うとかえって強く出られないし、強く言わないと聞きもしない。ただ、ここで強く言うと悪い意味の方でこれから目立つ気がする。それはここに溶け込む上で枷にしかならない。

 

適当に流しながら考え、なのは達3人を見るとあっちも苦笑いして会話していた中から、アリサが溜息をするところだった。

見た覚えのある反応だ、あれは確かリリカルなのはA'sでフェイトがこういう状況に置かれてた時に助け舟を出した時だったか。

 

……つまり、あの時のアリサにとってのフェイトと変わりないくらい困ってるように見えた訳だ。ほほう。

助け舟を出してくれると言うなら確かにありがたいが、それに頼ると元とはいえ大人の男として色々終わりな気がする。

 

仕方ないので少し強引に行くことにしよう。

 

「ちょ、ちょっとごめん。少し話したい人が居るから、どいてもらっていいかな?」

 

席を立って少し前に出ながら主張する。

流石にこれなら聞いてくれるようで、諸々の話を抑えて道を開けてくれる。

丁度来ようとしてたのか、アリサが少し意外そうな顔を見せて止まっているのを見て、自分でどうにかできて良かったと再確認。

質問してきてた子達の手前、教室の外にも出づらいのでそのまま3人に近づく。

 

「天坂くん、大丈夫だった?」

 

最初に声をかけてくれたのはすずかだ。

心配されたのは俺なんだけど、いい子なんだなと他人事のような感想を抱いてしまう。

 

「うん、大丈夫だよ、ありがとう。」

 

軽く笑って手を振り、答えた…つもりだったが、自分でも今笑った時に顔が引きつったのがわかった。

しっかりすずかにも伝わってしまったようで、微妙な表情をされている。これだから俺って奴は本当に……

 

「ごめん、また上手く笑えなかったな…」

 

「あはは…」

 

苦笑いでも上手く笑えるすずかが少し羨ましく見えてしまう。

以前は諦めていたのに、転生したからどこか諦めが悪くなってしまったのかもしれない。子どもになるってそういうことなのか?

 

前は居なかったとはいえ、仲良くしたい相手にくらいは愛想良くしたい、と思ったことのないことについて悩んでいると、なんでもない調子でなのはが口を開く。

 

「んー…気にしなくてもいいんじゃないかな?だって、笑うって無理にすることじゃないでしょ?」

 

…子どもだから言えるような、単純な話。

笑ってしまいそうだが、笑えない。笑いそうになるが精々だった。

それで良いと言えるのは子供だからか、なのはの人格か…多分後者だろう。

 

「それならいいんだけどな……」

 

「そうね。それに、無理に笑おうとしてるの見たら、あたしはムカッとしちゃうし。」

 

続くアリサの言葉を聞いて、笑えはしないものの口元が緩んでしまう。

 

「うん、それは知ってる。」

 

「それどういう意味!」

 

どうも気に障ったらしい。とはいえそこまで怒ってる様子もないし、この話題を続けるには少し場所が嫌だからさっさと考えてた用件を伝えることにしよう。

 

「ごめんごめん、アリサが優しいのは俺でもわかるって意味だよ。それより、ちょっと頼みがあるんだけどいい?」

 

「なぅっ…」

 

…………。

今のはないな。自分でも引くわなんでスラッと言った。

案の定、すずかが口を覆って「わぁ…」とか言ってる。恥ずかしいが、言ってしまった以上平気な顔を取り繕っておくしかない。笑うのと違ってそっちは得意分野だ。

 

「あ、あははは…なんか凄いね、天坂くん。」

 

頼むなのは、今そういうこと言われるのほんっっっとーに辛いからやめてくれ。

 

「それで、頼みってなに?」

 

「あ、うん。もし良かったらなんだけど、なのはとアリサとすずかに、この学校の案内して欲しいと思って。」

 

「わたし達に?」

 

何かまくし立ててくるかと思って少し身構えていたのに、何故か黙り込んだアリサに代わってか、すずかが疑問を挟んでくる。

 

「ほら、まだ…というか多分これからもこうなること多いと思うんだけど、今はちゃんと話せる相手ってなのはとアリサとすずかしか居ないからさ。」

 

「うーん…放課後は塾があるから、お昼休みでいいかな?」

 

なのはの提案に、ふと思い出す。

そうか、ここで俺が放課後に案内を頼んでいたら、起きるべき出会いがなかった可能性があるのか。…本当に迂闊な行動できないな。昼休みにってのは願ったり叶ったりだ。

 

「全然オッケー。それで頼むよ。」

 

「うん、わかった。」

 

「あ、なのはちゃん、天坂くん、そろそろチャイム鳴るよ?」

 

と、最初の囲まれてたくだりで時間使い過ぎたか。一応昼休みの案内は決まったし、これ以上無理して引き伸ばすこともない。

あとなんか、なのは達と話してる現実を意識してちょっと手が震えてきたから早く座りたい。

 

「それじゃ、お昼休みに案内だね。」

 

「うん、よろしくね。」

 

時間がなくなると自然と着席する優等生が多いらしく…いや、これなんとなくそういう空気になってるからそうしたくない子もそうしてるのか?ともあれ、なのは達に軽く手を振ってから周りまで空いて戻りやすくなった自分の席に戻る。

 

「ほら、アリサちゃん、そろそろ授業始まっちゃうよ?」

 

「…はっ!」

 

そんなすずかの声を聞いて、そういえばなのはの劇中でなのは達が赤の他人に褒められてることってあんまりなかったなと思い出す。 アリサ褒められ慣れてなかったのか。俺にとってももう現実世界だし、そんな都合よくホイホイフラグは立たないだろうしまあいいか。

 

 

 

「この前みんなに調べてもらった通り、この町にはたくさんのお店がありましたね?」

 

転校初日だ知らん。

などと言う訳にもいかず、大人しく授業を受けはするものの、さすがに小学校、退屈だった。

初日から欠伸してる姿を見せるのもあまり印象は良くないだろう。子供だから、前日眠れなかっただとか、新しい環境に疲れたとか言えば笑い話にできそうではあるが、子供になっても可愛げには自信がないのでやめておく。なんせ中身がこのざまだ。

 

「みんなは将来どんなお仕事に就きたいですか?」

 

どうでもいいことから意識を戻し現実に目を向けると、先生が丁度そんなことを言っているところだった。

将来…将来か。目先のこと、直近の出来事しか考えてなかったけど、今はここが俺の現実なんだよな。

 

「今から考えてみるのも、いいかもしれませんね。」

 

一度将来という現実を受けた上で、今度はなのは達と歩く未来。

それを思うと、そんなことを考えるにはまだ早いだろうと笑う気にはなれなかった。

 

 

 

授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、昼休み。

この後案内してもらうし…という建前のもと、雑に用意していた飯を詰めただけの弁当を持ってなのはの所に行く。

本音を言うとただ単に推し、ではないが好きな美少女と一緒にご飯を食べたい。

と、なのはも同じように考えてくれたのか(絶対に同じではない)、こっちを見るところだった。

 

狭い教室なのでほぼ同じタイミングでアリサとすずかも合流する。

三人の性格を思うに拒否はされないだろうが、一応許可はもらうべきだろう。

 

「なのは、アリサすずか、折角だからお昼一緒してもいい?」

 

「うん!」

「もちろん!」

「ま、いいんじゃない?」

 

聞いておいて恐ろしくなるほど二つ返事だった。美点だと知っているしこういうところが好きなのだが、いささかまぶしい。

ほだされながら三人を見ていると、気に食わなかったかアリサがかみついてくる。

 

「なによ?」

 

若干うなっているように見えるのは気のせいだろうか。

さっきの恥ずかしい言葉をまだ引きずっているらしく、警戒を解いてもらえない。

優しい子だとは知っているが、こうなるとなんかもう番犬のように見えてきた。アリサが多くの犬を飼ってるからだろうか?

 

「いやごめん、なんでもないよ、ありがとう。」

 

ラノベ主人公とかスゲーな、こういうときに歯の浮くようなこと言ってフラグ建てるんだろ?恥ずかしすぎるぞあれ、しれっと言って平静を保つのはちょっと無理だ。

 

「ほらアリサちゃん、天坂くん、早く行こ?のんびりしてたら案内する時間なくなっちゃうよ?」

 

なだめる意味合いもあるのかもしれないが、なのはが少し急かすようにそんなことを言ってくる。

実際その通りだ、こうして話してるのも楽しいが、案内してほしいのも大マジだからな。

 

「屋上で食べるのが気持ちよくて美味しいんだよ~」

 

すずかが心なしかのんびり言っているのを見ると、なんとなく早く行きたくなる。

 

「そうなんだ、それじゃあ期待しよっかな。」

 

「うん、じゃあいこー♪」

 

なのはの元気な掛け声とともに、俺は都市伝説とまで思っていた屋上昼食デビューするのだった。

 

 

そうして3人と一緒に移動しながら、遅まきながらアニメで見た時はベンチが3人で少し広く座ってピッタリ埋まるくらいの大きさだったことを思い出す。

これが高校生とかなら、飯を食わないとか学食でおにぎりだのパンだのを買って立って食べれば済むのだが、小学生だとそうもいかない。

 

かといって案内を頼んだ手前逃げることも出来ず、仕方ないので何か良い案がないか思考を巡らせてみる。

 

①なのは達の前で床に座って食べる。

 

1番気が楽な選択肢は間違いなくこれだ。というかこれにしたい。が、ナチュラルにそういうのを嫌うなのは、1人だけそういう風になってるのを見るのが嫌であろうすずか、なんだかんだ優しいからなんなら怒るまであるアリサが相手では多分却下される。

 

②3人が広く座って、なら4人になっても詰めれば行ける。

 

無理だ。物理的ではなく、心理的に無理だ。話すだけでも長引くと少し震えてくるくらいなのに、推し(ではないが好き)と密着するとかどうなるかわからない、俺が。心臓麻痺でもしそうだ。

 

③弁当を落として昼飯に当たらない素振りをしてみる

 

いいんじゃないかと思いかけたが、Noだ。これを実行すると、ないとは思う。ないとは思うが、おかずを分けられてしまう可能性がある。それも所謂あーんの形で。死ぬぞ、俺。

 

どう考えても詰みでは……とこの世の絶望に浸りつつも気持ち悪いオタクになってるなーと俯瞰的に自分を見つめているうちに、屋上に着いてしまう。

 

「あ、あそこ空いてるね。」

 

なのはの声を聞き、ワンチャンにかけて③の選択肢を取るか、と思いながら顔を上げると、確かに椅子があった。

ただ、なんか思っていたのと違う。4人くらい余裕を持って座れそうだ。

 

ありがたい。ありがたいのだが…これくらいで何かが変わっていることはないだろうとは思いつつ、他の席を見渡す。どれも同じくらいの広さだ。

俺の記憶違いか?それとも、こんな微細で、誰にも関わらないような点にまで変化は起きるのだろうか。

 

「ほら、ボサっとしてないでさっさと座る!学校の案内してほしいんでしょ?」

 

アリサに背を叩かれ、一旦考えるのは後回しにすることにする。

当たり前だが、この世界でなのはのアニメを見たりはできない。少なくとも現時点でそれが出来てしまうと、諸々おかしくなることもあるのだ。そのせいで確認できないのが悔やまれる。

 

右からすずか、アリサ、なのはと座り、なのはが隣を空けてくれたので1番左、なのはの隣に座る。

ああヤバい、俺今からなのは達と昼ご飯食べるのか…

正直、もうこれだけでお腹いっぱいなほど言葉にし難い感動を噛み締めていると、なのは達が弁当を開いたので俺も次いで開く。

ついでなので、声も揃えて。

 

「いただきます。」

 

内心はとても落ち着いたものではないが、転生して、主人公のはずのなのは達と関わっているにしては溶け込めている方ではないかな、と今のところの自分の行動を評価してみる。

 

「…将来かぁ…」

 

少し食べたところでタコさんウインナーを持ちながら、なのはがやや遠くを見るように呟く。さっきの授業のことだろうアニメで見た。

 

「アリサちゃんとすずかちゃんは、もう結構決まってるんだよね。」

 

……3人の会話に入るな、これは。気配を殺しておこう。俺は空気俺は空気……

 

「ウチはお父さんもお母さんも会社経営だし、いっぱい勉強して、ちゃんと跡を継がなきゃ…くらいだけど?」

 

「私は機械系が好きだから──」

 

すずかが柔らかな声で言ってから、小さくはむっとご飯を食べるのが可愛らしい。ロリコンなのか精神が小学生に引っ張られてるのかどっちだろう…後者であることを願う。

 

「──工学系で専門職がいいなぁ、と思ってるけど…」

 

アリサもすずかも、明確にやりたいこと、やるべきことを見つけているのに最後に『けど』と言ってしまうのは、漠然とした不安でも抱いているのだろうか?小学校低学年でそこまで見つけているのなら、むしろ大したものなのだが。

 

「そっかぁ…2人ともすごいよねー。」

 

「でも、なのはは喫茶翠屋の2代目じゃないの?」

 

「んー…」

 

肯定するようでぼかすようななのはの返事。あまり実感が持てていないのか?

 

「それも将来のビジョンの1つではあるんだけど…やりたいことは、何かあるような気もするんだけど、まだそれがなんなのかはっきりしないんだ。」

 

当たり前だ小学生。

……思わず沈黙をやめて突っ込んでしまいそうだった。しかし、これは本当に小学三年生の会話なのだろうか、何かが違う気がしてならない。

 

「私、特技も取り柄も、特にないし…」

 

…アニメでも思ってはいたけど、やっぱりなのははどこか自分を軽く見る自罰傾向があるように思える。別に悪いことしてないのにな。

 

「ばかちん!」

 

突然の大きな声になのはが目を丸くしながら顔を上げると、その頬に薄切りレモンが叩きつけられた。

ああ、アリサさん怒ってらっしゃる。まあこれは言いたくもなるわな。同じ世界に来てようやく実感できた。

 

「自分からそういうこと言うんじゃないの!」

 

「そうだよ、なのはちゃんにしかできないこときっとあるよ?」

 

「大体あんた、理数の成績はこのあたしよりいいじゃないの!」

 

ずびし!という効果音が聞こえてきそうな勢いでアリサがなのはを指さす。…ああ、今までは普通に設定として馴染んでたけど、この3人超優等生でしたね…小学生のうちは大丈夫だと思うけど、成長しても置き去りにならないように俺もちゃんとしなくちゃいけないな。

 

「それで取り柄がないとか、どの口が言うわけ?あぁ〜?」

 

口調だけ見たらちょっと不良っぽくて面白いなこのやり取り…

でもなのはが口引っ張られて何言ってるか分からなくなってるからそろそろ会話入った方が良さそうだ。体育も苦手って辺りまでは聞き取れたけど、オロオロしてるすずかが不憫だしな。

 

「なのは、アリサ、そういうのはここじゃやめよう。目立つって。」

 

「むっ…そういえばあんたはどうなの?将来のこととか。」

 

「あぅー…口がいひゃいよ…天坂くんのお父さんとお母さん、何してるの?」

 

時空管理局に入ろうと思ってます。

馬鹿正直に答えられるはずもない。まだ何も知らないただの子供なのだ。なので当たり障りなく誤魔化しておこう。

 

「親は何してるかよく知らないけど、海外飛び回ってるよ…アリサみたいに、ではないけど、俺にして欲しいことはあるみたいだから、それでいいかなって思ってる。」

 

「へー…」

 

すずかが返事をしてくれはするものの、3人ともいまいち伝わってなさそうだ。3人に比べて具体的なことは何一つ言えなかったからだろうか。普通はこんなもんだと思う。

とはいえ、それであんまり関わらないようにしようとか思われても困るので、一応の本心は言ってみよう。

 

「ただまあ、そうだな。何をするにしたって、人の役に立って、人を助けられるなら…俺はそれでいいんだよ。」

 

ここに関しては、本当に何一つ偽りはない。それは、転生なんてしてしまうほどに引っかかっていた俺の未練であり、望みだ。

少しくらいは伝わってくれたようで、今度は納得したような声を洩らしてくれた。

 

「やっぱり、なんか色々すごいんだね、天坂くん…」

 

ある程度未来を知った上で言ってると思えば情けない気もしてきたが、そう思って貰えるならそれに越したことはない。

 

話しているうちに、もう昼食も食べ終わった。手を合わせて軽くごちそうさまを口にして、ベンチから立ち上がる。

 

「別にそんなことないよ。それより、早速で悪いんだけど、学校の案内頼んでいい?」

 

「まっかせなさい。」

 

「あはは、お昼休みが終わる前に、早く行こっか。」

 

笑って受け入れてくれる3人を騙しているようで若干の心苦しさは覚えつつも、嬉しいものは嬉しいのでそれぞれの手荷物を持ち、みんなで校内を回ってお昼休みが終わった。

あとは昼の授業を済ませて…その後からが本番だ。

 

 

 

夕暮れ時、下校時刻を過ぎ赤く染まっていく空を軽く見やる。とりあえず3人が塾に行くまでの間、一緒にいさせてもらうことにした。ここまで来ている以上、出会いは変わらないと思うし問題はないだろう。

雑談に時折混ざりつつ歩き、散歩中の犬と飼い主の女性とすれ違い、かと思えば急に方向転換して犬が甲高い声で吠えてきた。

 

「BE QUIET!」

 

振り返って躾けるというか、もはや対抗する勢いで言うアリサが少し面白い。家に多くの犬を飼ってるだけあって、犬に関しては一家言あるのかもしれない。

ここは俺も「へぇ、おもしれー女」くらいは言うべきだろうか。

 

「あ、こっちこっち!ここを通ると塾までちょっと近道なんだ。」

 

「え?そうなの?」

 

馬鹿なことを考えているうちに少し進んだようで、アリサが先行して近道を教えている。人が行けないような所ではないが、あまり率先して寄り付きたい道には見えない。なのはとすずかも同様の感想を抱いたのか、疑問の声には僅かな躊躇いを感じる。

 

「ちょっと道悪いけどね。」

 

少しフォローするようにそんなことを言いながら先行するアリサを見て、なのはとすずかも歩き出す。

 

……そろそろ、始まりの出会いだ。

横に並ぶように歩きながら、なるべく注意深くなのはを観察する。ここは重要だ。俺の存在が、あまりにも大きな影響を及ぼしてしまわないか、これでわかる。

 

アリサとすずかが前を向いて進む中、なのはは辺りを見渡している。そしてはたと何かに気づいたように立ち止まった。

確か、なのははこの先出会う相手を…ユーノを、夢で見ていたはずだ。そうして見た記憶と、今居る場所を照合しているのだろう。

 

「どうしたの?」

「なのは?」

 

急に立ち止まったなのはを不自然に思ったのか、少し前に進んでいたアリサとすずかも立ち止まって振り返る。

大体わかってはいるが、もし歴史が変わっているなら別のことの可能性もある。一応聞いておくか。

 

「なのは、何かあった?」

 

「ぁ、ううん、なんでもない!ごめんごめん。」

 

「大丈夫?」

 

「うん。」

 

なのはが短い距離の小走りで前の2人に追いついたので、なのはとすずかが話している間に追いついておく。

 

「じゃあ行こ。」

 

アリサが先導するように言って、すずかと2人で先に進む。

なのははと言えばまだ疑問に思っているのか、あさっての方向を見て呟いていた。急かされる前に言っておこう。

 

「まさかね…」

 

「なのは、置いて…かれはしないだろうけど、離れるよ?」

 

「あ、うん!」

 

少しだけ小走りで、揃ってアリサとすずかに追いつく。

それからも2人は談笑しながら歩いているが、なのはは話にも入らず物思いに耽っているようだった。

静かなのは嫌いじゃないが、話さない空間というのは少し居心地が悪い。何か適当に話を振って待った方がいいだろうか…

 

 

────助けて。

 

 

なのはがはっと気づいたように顔を上げる。俺にも聞こえた。これからのことを思うと聞こえたこと自体悟られない方がいいので公に行動はできないが、一先ず最初のターニングポイントが変わった様子はないことに一安心だ。

 

「ん、なのは?」

 

また立ち止まったなのはに談笑していた2人も足を止める。

そりゃあ疑問にも思うだろう。何も無いところで友達が2回も突然足を止めたら。

そう思われていること自体が、なのはから見た疑問の答えなのだが。

 

「今、なにか聞こえなかった?」

 

「なにか…?」

 

「なんか、声みたいな。」

 

真面目に問うなのはの質問に、アリサとすずかが顔を見合わせる。

 

「別に…」

「聞こえなかった、かな?天坂くんは聞こえた?」

 

おっと、そりゃあ今は当事者なんだから俺も聞かれるか。

聞こえてはいた。聞こえてはいたが、ここでそれを答えると後々に響く。

 

「んー…いや、ごめん。アリサとすずか以外の声は、何も。」

 

それを聞くと、返事すらせず辺りを、今度は隈無く見るとばかりに見渡し始め。

 

────助けて!

 

2度目のその声が俺の頭の中に響いた直後、誰を待つこともなく、誰に言うこともなく走り出してしまった。

…俺が同じ立場だったらもっと疑いそうなものだが、小学生特有の行動力なのかなのはの性格なのか判断がつかない。

 

「なのは!」

「なのはちゃんっ?」

 

「追いかけよう。」

 

とりあえず止めることも急かすこともできない身としては、そんなことしか言えなかった。

それに追いつくのが早すぎるのも良くない。俺のは違うが、タイムトラベルなんて、制約だらけのロクでもないものだったんだな。

 

追いついたりはしないように気をつけた上で2人の前を走りながら、なのはの背中を捉え続ける。

なんとなく足が早い印象があったのだが、そうでもないようだ。むしろあっさり追いついてしまいそうで、アリサやすずかに気づかれないようにする方が大変に思える。そういえば体育も苦手って言ってたな。なのは自身がどこか抜いてるようにも見えるけど…

 

と、考えているうちになのはが立ち止まり、屈みだした。

きっと見つけたのだろう。つまり、俺の存在はこの出会いを歪めることはまるでなかった。それだけでも個人的には上々といったところだ。

 

「どうしたのよなのは!急に走り出して…」

 

「あっ、見て?動物…怪我してるみたい」

 

「う、うん。どうしよう?」

 

こんな場面ではあるが、子どもらしい動揺を見られたことに少し安心してしまう。病院、いやいや獣医さんとてんやわんやする3人を見ていると、大丈夫なのは知っているが口を出そうという気になってしまう。今は友達だから、それでいいだろう。

 

「誰か家の人に電話かけられる?近くの獣医さんがどこか聞いてみよう。教えてくれるか、調べてもらった方が確かだ。」

 

「そ、そうね。」

 

「ちょっと待って、私電話してみる。」

 

すずかが携帯を取り出して電話をかける。何気にこういう時の行動が早い子だ。正直なのはとアリサに引っ張られる子だと思っていたから、直接目にして印象が変わった。

 

1つ目の山場は超えた。ここからのなのは達と、俺自身が何をすべきか、そうすることで何が起きるのか。今のうちに考えておこう。




つづく。
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