デジモンアドベンチャー 優しさの少女と転生デジモン   作:Zelf

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今回は毎週日曜更新、一週目です!




エテモン編
第十三話  出航・新大陸へ!


 ココモンを抱きしめながら、どれくらい泣いたんだろ…冷静になると、年下の子達が皆見ていたのに、恥ずかしい……!目が腫れてる気がするし…夕方じゃなかったら、顔が真っ赤になってるって指摘もされてそう。ホント、こういう所が子供っぽいってお姉ちゃんにからかわれるんだよ、私。

 

 ムゲンマウンテンの山頂付近に来たら急に暗くなったから、おかしいなって思ってたけど…それもデビモンが原因だったみたい。デビモンを倒したら、また空が赤く染まった。

 

「皆……今の、忘れて」

 

「え?」

 

「あとしばらく私の顔については触れないで下さい…」

 

「結衣さん、どうしたんだ?」

 

「太一、止めろ!」

 

「女子には色々あるんですーっ!」

 

 ヤマト君とミミちゃんが庇ってくれた。二人の好意に甘えて、しばらく隅っこで大人しくしてよっと。

 

 顔を手で隠してしゃがみ込んでいると、腕の中にいたココモンが私の腕の中から出て、器用に頭の上まで登って来た。潰されるかもって思ったのかな…別に良いんだけど、何でずっと跳ねてるの?何か見えるの?

 

「ポヨモーンっ!」

 

「ポヨ~!」

 

 タケル君がポヨモンに頬ずりして、ポヨモンも嬉しそう…可愛い。後でポヨモンも撫でてみたいな…

 

「あ、見て!島が戻ってくる!」

 

「この島を覆っていた暗黒の力が、無くなったんです!」

 

 空ちゃんの言葉で遠くを見てみると、分裂していた島々が全てこっちに流れてきているのが見えた。デビモンの暗黒の力っていうのが消えたんだと…あのデビモンを倒せたんだって実感が今更だけど出てきた気がする。

 

「けど、海の向こうにも強力な暗黒の力を持つデジモンがいるって言ってたな」

 

「元の世界に戻れるかと思ったのに…」

 

「まだ戦わなきゃいけないの?もう嫌ぁ…」

 

「だけど、やるしかないんだ。どんな相手だろうと――」

 

 と、その時、太一君達のいる地面が罅割れた。そして何かが地表から姿を現す。咄嗟に構えたけど…デジモン、じゃない…?丸い金属の円盤みたいなものが…何これ?もしかして、デジモンの体の一部とか…

 

「な、何だ!?」

 

「皆、離れて!」

 

『ほう…これが、選ばれし子供達か』

 

 その円盤みたいなものの中心から、上に向かって光が立ち上る…そしてその光の中から、お爺さんが現れた。今喋ったの、このお爺さんの声?…っていうか、人間!?この人、私達の世界にもいそうな老人に見える!

 

『デビモンを倒したとは、なかなかやるのぉ』

 

「お前は、誰だ!」

 

「デビモンの仲間か?」

 

『心配せんで良い、儂はお前たちの味方じゃ』

 

「私達の他にも、この世界に人間がいたなんて…」

 

『じゃが儂は人間であって人間でない』

 

「お化けなの?」

 

 ミミちゃんの一言にムッとした表情をするお爺さん。でも、人間であって人間でないって…どういうことだろ。

 

『儂の名はゲンナイ。今までデビモンの妨害があってなかなか通信出来んかったが、やっと会えたのぉ』

 

「通信って…どこからしてるの?」

 

『ここ、ファイル島から遠く離れた海の向こう、サーバ大陸からじゃ』

 

 あ、成る程。この人って私達を呼んだ人ってことかな?で、本来なら私達がこっちの世界に来た時点で、通信で詳しい事情を教えてくれるはずだったのかも。だけど、デビモンの力が強くて通信を妨害されていた…ってこと?

 

「ゲンナイさんは、いつからそこにいるの?」

 

『儂は最初からこの世界におる』

 

「お爺さんがアタシ達をここに呼んだの?」

 

『儂じゃない』

 

「じゃあ誰が?」

 

『それは…知らん!』

 

 …予想がいきなり外れちゃった。呼んだのはゲンナイさんじゃない…でも、ゲンナイさんは私達の存在に気づいて通信をしようとしてたってこと。タイミング的に考えて、暗黒の力で通信妨害されてたっていうのは嘘じゃなさそう…あれ?でもゲンナイさんがいる大陸にいるデジモンの方が暗黒の力が強いってデビモンが言ってたような…だったら、暗黒の力が強いのに通信が出来てるのって何で?

 

「じゃあ僕達、どうすれば元の世界に帰れるのか知ってる?」

 

『それも…知らん』

 

「何だよ、頼りにならねぇ爺さんだな!」

 

「太一君!お年寄りにそんな口聞いちゃ…」

 

『良い良い、しかし儂はお前達を頼りにしておるぞ。サーバ大陸に来て敵を倒してくれ、選ばれし子供達なら出来るはずじゃ』

 

「来いと言われても、場所が分かりません!」

 

『それもそうじゃな、今お前のパソコンに地図を送ってやろう』

 

「えぇ!?」

 

 アドレス知らないんじゃ…って思ったけど、デジタルワールドなら出来るのかな?とんでもないハッキングの腕前とか…いや、無いか。

 

「でも、デビモンより強い敵を倒すだなんて出来るはずないよ…」

 

『いや、お前達のデジモンがもう一段階進化すれば、それも可能じゃ』

 

「僕達がもっと進化する?」

 

『その為にはこれが必要じゃ…』

 

 ゲンナイさんが消えて、代わりに映ったのは何かの道具。これは…何?金色の何かと、その中央に丁度収まりそうな、台形の何か。

 

『タグに紋章を嵌め込めば、デジモンは更なる進化が出来るのじゃ』

 

「そのタグと紋章はどこにあるんです?」

 

『さぁ…紋章はサーバ大陸のあちこちにばらまかれてしまったのじゃ。それにタグは、デビモンがまとめてどっかに封印……エッ、アッ、イカン!…妨害ガ……アァ―――』

 

「何だって!?」

 

 またゲンナイさんが姿を現して話していたら、突然光が消えかかり始めた。声も何を言っているか聞き取れなくなって、最後には円盤から光が出なくなってしまった。

 

「消えた!」

 

「何だったの?今の…」

 

「…地図は、無事届いたみたいです」

 

「これからどうする?」

 

「うーん…とりあえず山を下りよう!まず、何か食って決めるのはそれからだ!」

 

 こうして私達は、ひとまず下山することにした。

 

 

 

 

 

 

下山した私達は、ひとまず晩ご飯の準備を始めた。その際、私とタケル君は殆どついて行くだけだった。皆も疲れているはずなのに、凄い気遣われちゃった…特に空ちゃんとミミちゃんはずっと傍にいてくれてた。ヤマト君もずっとタケル君の傍にいて…って、それはいつも通りか。

 

 それぞれ採取してきた魚や木の実を簡単に調理して、皆で食べ始める。デジモン達はいつもより食べる量が多い。ポヨモンとココモンは、小さいからか食べるスピードが遅いし、何だか食べづらそうだったから、出来るだけ柔らかいものを食べさせてあげるようにした。

 

「はい。ポヨモン!あーん」

 

「ココモンもポヨモンも可愛い~!ココモンはずっとそのままで良いかも~」

 

「こうしてると、本当に赤ちゃんみたいですね」

 

「まあ実際赤ちゃんだし…あ、こら。逃げないで」

 

 ポヨモンはタケル君に嬉しそうに食べさせてもらってるのに、ココモンはどういうわけか食べさせて貰うのを拒否しようとしてた。まあ、無理矢理にでも抱えて食べさせたけどね。地面に置いて食べるなんて許しません。

 

 

 

 全員が食べ終わって、ようやく一息入れる余裕が出来た。

 

「ふぅ~、食った食った!」

 

「やっと落ち着いたわね~」

 

「腹ぁ一杯になったら眠ぅなって来ましたな」

 

「さって、飯も食ったし、これからのこと決めようぜ!」

 

「ゲンナイさんはサーバ大陸に来いって言ってたけど…」

 

「この地図が正しいとすれば、ここからかなり離れてるはずです」

 

 光子郎君が見ているパソコンの画面を見させて貰うと、イタリアみたいな形の大陸の地図が映されていた。右下に小さく表示されているのがファイル島だとして…この地図、ファイル島からサーバ大陸までの距離、分かりづらいな。でも、ファイル島がこの消しゴムくらいの大きさだとすると…かなり長い船旅になる気がする。

 

「アタシ、25メートルも泳げないんだもん。そんなの無理!」

 

「…行かなきゃいけないのか?この島からデビモンはいなくなった。黒い歯車も消えた。ほぼ一周したから、どんな場所も大体分かる。水も食べ物も困らない」

 

「…どういう意味?」

 

「だって、ゲンナイとかいう奴のこと簡単に信じて良いのか?本当にサーバ大陸なんてあるのか?」

 

「おい、何だよ!ここにいても元の世界には戻れないんだぞ?」

 

「デビモンを倒すのも大変だった。でも、さらに強い敵が待ち受けているのよね…」

 

「それに、海の向こうの大陸にどうやって行くんです?」

 

「変なデジモンだっているかもしれないし…」

 

「…もう少し、ここで様子を見ても良いかもな」

 

「何だよ皆!」

 

 皆、デビモンとの激戦の後で悲観的になってる。確かにこれまでは、ここがデジタルワールドなんて考えて無かったから大人を探そうって頑張ってたけど…これからは違う。自分達で、デビモンみたいなデジモン達を倒して…元の世界に帰れるまで長い旅をしなきゃいけない。

 

 丈君が言ったように、まだゲンナイさんがどんな人かも分からない。敵かもしれない…けど、敵だからといってこの島に残り続けるっていうのは…ただ帰れるまでの日数が延びるだけ、だと思う。だって、他に手がかりはないんだから。

 

 …だけど、私はまだ、怖い。今回は何とか…本当にギリギリで、誰も死ななくて済んだけど……もっと強い敵なのに、今度も大丈夫なんて保障はどこにもない。また、ココモンを失いそうになったら…!

 

「行こうよ!」

 

「タケル…」

 

「どんな敵が待っているか分からないけど、やってみようよ!」

 

「ポヨ!」

 

「ほら、ポヨモンもそう言ってる!だから、僕…!」

 

「僕達も行くよ!タグと紋章があればさらに進化出来るんでしょ?そしたらきっと、太一達を守ることが出来ると思う!」

 

「アグモン…」

 

 タケル君とアグモンの一言で、全員が明るくなった。タケル君、強いな…私と同じ経験をしてるのに、真っ直ぐな目をしてる。

 

「…!…!!」

 

「ココモン…」

 

 元気良く跳ねてるココモン。その姿は、私のことを、精一杯励ましているように見えた。

 

 そうだ…私達は何も一人で戦ってるわけじゃない。皆が一緒だったから、これまで何とかなったんだよね。だから、あれだけ強大なデビモンも倒せたんだ。

 

「ヤマト、行こうよ!」

 

「…行こう!」

 

「うん、行きましょう!」

 

「分かったよ、僕も行く!」

 

「皆が行くなら、アタシも行く!」

 

「新大陸ですか!」

 

「皆でなら…きっと、何とかなるよね!」

 

「よーし、決まったな!サーバ大陸に行こう!!」

 

〈おおーっ!!〉

 

 こうして、私達はサーバ大陸への旅立ちを決めた。

 

 

 

「それで、どうやって行くんですか?」

 

〈…………〉

 

 盛り上がってた皆が、光子郎君の一言で時が止まる。

 

「光子郎~!せっかく皆でやるぞーっ!ってなってたのにさ~」

 

「あ…すみません」

 

「まあまあ。光子郎君、さっきの地図見せてもらえる?」

 

「あ、はい」

 

「何するんだい?結衣君」

 

「皆も見て。大切なことだから」

 

 光子郎君のパソコンを全員で覗き込む。少し狭いけど、この人数じゃしょうがない。

 

「これが多分ファイル島だよね?出来るだけアップに出来る?」

 

「はい。…これが最大です」

 

「ありがと。皆でこの島の地図を見れば、少なくともこの地図が合ってるかくらいは分かると思うんだ」

 

「成る程」

 

 まずやることは、ゲンナイさんがくれたこの地図がちゃんと正しいものなのかどうか。確かめるには、このファイル島の部分がどれだけ正確なのかを皆で照らし合わせていくしかない。細かい場所が分からなくても、何もしないよりはずっと安心出来る。

 

「どれどれ…この氷っぽい場所、ユキダルモン達がいたとこか?」

 

「ああ、多分な」

 

「丈先輩、ここって墓地ですよね?」

 

「そうだ!僕達ここで食べられそうに…」

 

「僕達がカブテリモンに乗せて貰った時に見た景色を考えると…ここがケンタルモンの遺跡ですね」

 

「どこどこ~?」

 

 デビモンに一回散り散りにされたことで、行けてなかった場所をそれぞれが訪れることが出来たみたい。これでより地図が正しいかが分かるはず…

 

「光子郎君とミミちゃん、島が分裂した時の位置分かる?今空から見たって言ってたけど…」

 

「確かめてみます」

 

「あ、私もバードラモンに乗って見たから多少は」

 

「やっぱ空飛べるって便利だな~」

 

「ごめんね飛べなくて!」

 

「だから拗ねんなって!」

 

 光子郎君、空ちゃん、ミミちゃんの三人で話し合って、どんどん正確な位置が分かっていく。そこにこれまで歩いたルート、最初の森からムゲンマウンテンまでのルートを照らし合わせると…

 

「これまでの情報を合わせると…この地図は正しいと思います」

 

「ってことは、ゲンナイさんは味方で合ってるってこと?」

 

「本人はそう言ってたわね」

 

「少なくとも、地図は正しいんだから、サーバ大陸もちゃんとあるってことだよ!」

 

「一応、この島のデジモン達にも聞いてみた方が良いかもね…皆は分からないの?サーバ大陸の噂とか」

 

「聞いたことないよ~」

 

「オイラ達、ファイル島からは出たことないんだよ」

 

「まあ…会った時小さかったしな、お前ら」

 

 とにかく、これでこの地図の信憑性が増したと思う。で、この地図が正しいことが分かれば次は、どうやって行くか。

 

「木を切って、筏を作れば良いんだよ!」

 

「そうはいっても、この地図を見た感じかなり遠いぞ…何日かかるか分からない」

 

「海は荒れやすいって聞きますしね…」

 

「食料とか水も出来るだけ乗せないとだから…」

 

「それも何日も持つかしら?」

 

 皆で話し合いながら、明日からの予定を決めていく。最終的に、明日からは筏を作る為の材料を確保することになった。

 

 筏かぁ…船を作れたら良いんだけど、どこかに船を作れるデジモンとかいないかな…

 

 

 

 

 

 

 翌日。皆でサーバ大陸に面している海岸まで移動して、その近くの森の木を伐採して木材を確保することになった。

 

「“ベビーフレイム”!」

 

「倒れるぞ!」

 

「木を切るだけで、随分かかりそうですね」

 

「焦っても仕方ないわ、ゆっくりやりましょ。…ん?」

 

 

 アグモン達が技を使って一本ずつ木を倒して、その木を運んで…これだけでもかなり時間がかかる。進化して貰えば早いかもしれないけど、体力を消耗させてしまうだけだろうし、こればっかりは地道にやっていくしかない。

 

 そう思っていた私達だったけど、心強い助っ人が沢山来てくれた。

 

「レオモン!?」

 

「無事だったんだね、レオモン!」

 

 レオモンとは昨日の戦い以来、オーガモンの攻撃で吹っ飛ばされてそれきりだったけど…何ともなさそうで良かった。

 

「まあな。それよりも、サーバ大陸へ行くそうだな?」

 

「なんでそれを?」

 

「噂好きなデジモン達もいるんだ。何か手伝えることはないか、とな」

 

「ホントに手伝ってくれるの!?」

 

「頭数なら沢山いるぜ」

 

 来てくれたのは、これまで出会ったデジモン達。エレキモン、ケンタルモン、メラモン…本当に沢山のデジモン達が手伝いにきてくれた。

 

 数日はかかると思っていた筏作りだけど、大勢のデジモン達の力を借りて、何と数時間足らずで完成。ロープや帆なんかの材料ももらえたことで、思っていたよりも立派な筏が完成した。

 

「出来た!!」

 

「バランスも良いみたいですね!」

 

「こんなんで大丈夫なのか?」

 

「ちょっと不安だね…」

 

「決めたんだ。行くしかない!」

 

「お前たちなら、こんな海くらいきっと越えられる」

 

「ありがとうレオモン、君たちのおかげだ!」

 

 餞別としてもらった食料も出来るだけ詰め込んで、私達は皆に見送られながら、このファイル島を後にした。

 

 

 

 

 

 

 出発してからしばらく、運良く追い風が吹いているからか思っていたよりもスピードが出ている。その分揺れるけど…あ、光子郎君とミミちゃんがダウンしてる。

 

「何にも見えないな」

 

「流石に見えてこないんじゃないかな?まだ出発したばっかりだし」

 

「あとどれくらいかかるんだろ…水も食料も、切り詰めても半月しか持たない」

 

「その時は、魚でも釣るさ!」

 

「あとは、天気が崩れないのを祈るだけね」

 

 よく半月分の食料を集めれたなって私は思うけどね。皆が手伝いに来てくれてなかったら、あと数日は筏作りに苦戦してたと思う。出来れば船を作りたかったけど…流石に八人と八匹を乗せられる程の船を作れるデジモンはいなかった。小舟ならレオモンが作れるらしいけど、流石にそこまでの知識は持ってないから無理だって。

 

「こら、ポヨモン!気をつけろよ!」

 

「ポヨ?」

 

「落ちたら大変だからね」

 

「ポヨ!」

 

 ポヨモン、凄く可愛い…癒やされるなぁ。ポヨモンと遊んでるタケル君も、可愛いと思っちゃう。私もココモンと遊んでみたい…どういうわけかココモンは遊んだりしないみたいだし。今も腕の中で寝てるし…寝顔も可愛いけどね。

 

「…?」

 

「あ、起きた?」

 

「……??」

 

「どうしたの?キョロキョロして」

 

 ココモンが起きたと思ったら、周りを見渡し始めながら疑問符を浮かべたような顔をした。何だろ…周りには海しかないけど。

 

 と、その時だった。私達の近くまで大きな波が押し寄せて来た。幸い、飲み込まれることはなかったけど、波に流されて筏がさらに揺れる。

 

「急にどうしたんだ!?」

 

「風がないのに波が!」

 

「近くを船でも通ったのかな…」

 

「船なんていねぇよ!」

 

 光子郎君の言う通り、今の波はおかしい。突然近くで波が出来たように見えたし、そもそも今、風は止まってた。少なくとも、波を起こせる程の強風じゃない。

 

 もしかして、ココモンが周囲を気にし始めたのって…?

 

「皆、気をつけて!もしかしたらデジモンが近くにいるかも!」

 

「何だって!?」

 

「あ、あれ!」

 

 

 

 さっきの波とは反対側に、海から巨大な何かが浮かび上がって来た。それは茶色い、丸みを帯びた何か。とにかく巨大で、私達が乗ってる筏の何十倍はありそう。

 

「島だ!」

 

「違うわ!これは、島なんかじゃない!!」

 

その島らしきものが私達の後ろへと進んでいく。さらに見えたのは、大きな青い尾びれだった。そして、その島らしきものは海からその巨大な姿を現した。

 

「鯨!?」

 

「な、何でだ!?」

 

「ホエーモンは獰猛なモンスターやけど、いつもは海の底にいるはずや!」

 

 ガブモンやテントモンが慌ててる中、ホエーモンはまた頭を出した。そして、今度はその大きな口を開ける…これって、まさか!

 

「イヤ~、食べないで~!!」

 

「逃げれないのか!」

 

「ダメ、間に合わない!」

 

 海水ごと、私達は口の中に飲み込まれていく。完全に口の中に入ってしまい、ホエーモンはその口を閉じてしまった。

 

 ホントに食べられちゃった…!光が入ってこないから、殆ど真っ暗で何も見えないけど、筏がどんどんどこかに流されてるのだけは分かる。

 

「きっとこれは、ホエーモンの食道です!もちろん、レストランという意味の食堂ではありません!」

 

「そんなこと分かってるよ!」

 

「やっぱ食べられたんじゃん!」

 

「どこまで行けば出口なの?」

 

「出口は、お尻でしょう!」

 

「そんなところから出るのなんてイヤだ!」

 

「…ウンチみたい」

 

「言わないで!」

 

 と、その時。私達の近くでボチャン!っと音を立てて、何かが落ちた。今の、誰か落ちた!?

 

 そう思ったけど、次々と同じ音がそこら中で聞こえる。目も、段々暗闇に慣れてきたのか見えるようになって…これ、何?スライム?

 

「何コレ!?」

 

「もしかして、ホエーモンの白血球みたいな…?」

 

「白血球とは違うと思うけど…っ!」

 

「何で襲ってくるんだよ!」

 

「僕達のこと、バイ菌か何かだと思っているのかも知れません!」

 

 特に被害も出ずに、私達は開けた場所に流されて来た。半ば落ちたようなものだったけど…とりあえず、ここは光が差し込んでるみたいで、中の様子が見える。

 

「広い所に出たわね…」

 

「ここは、どこ?」

 

「食道の先は、胃だと思うけど…」

 

「胃って、食べ物を消化するところだよね?」

 

「ああ…」

 

「そもそも、何でここ明るいんだろ…」

 

「さあ…」

 

 そんなことを話していたら、壁際の水から、何かが流されているのが見えた。

 

「胃液だ!」

 

「いえき?」

 

「胃に入ったものを溶かす、消化液のことです!」

 

「皆、絶対に落ちないで!」

 

「早くここを通り過ぎないと危ない!」

 

 下手したら、私達ここで死んじゃうんじゃ…?ココモンが、何かをジーッと見つめてる。何処を見て…あ!

 

「あっ!太一、あれ!」

 

「黒い歯車だ!」

 

「だからホエーモンは暴れてたんだ!」

 

「何とかしてあげようよ!」

 

「どうやって…」

 

「アタシに掴まって登れば…!」

 

「ちょ、ちょっと待って!それは流石に危なすぎるから!」

 

 パルモンが手の触手を伸ばそうとしていたけど、それを登って黒い歯車を攻撃するなんて危険すぎる。あれだけ深く食い込んでるってなると、引き抜くことも出来ないと思うし…

 

「ねぇ、多少怪我させちゃうかもしれないけど…皆で一斉攻撃すれば壊せるんじゃないかな」

 

「そうしましょう!ピヨモン、お願い!」

 

 アグモン、ガブモン、ピヨモン、テントモンが全員で黒い歯車を攻撃。すると黒い歯車に罅が入った。そして、最後には粉々になるように消えて無くなった。

 

「よし、やったぞ!」

 

 黒い歯車が消えた途端、壁が急に白くなって…私達を謎の浮遊感が襲う。すると、急にどこかへと移動し始めた。え、これどうなってるの!?

 

「ど、どこ行くんだ!?」

 

 次に私達が感じたのは、落ちている感覚。そして水の中に落ちたということだけが分かった。今の衝撃でバラバラになった筏の木片を掴み、身を預ける。

 

 私達、ホエーモンの頭の上に行ったんだ…さっきのはホエーモンが潮を噴いて、私達はその水に乗って吹っ飛ばされたと。結構な高さから落ちたみたいだったし、筏がバラバラになるのも頷ける。あ、ホエーモンの中が明るかったのって、頭…背中?の穴から光が差し込んでたから、とかなのかな?

 

 そうだ、皆は…!

 

「皆、大丈夫!?」

 

「何とか…」

 

「ポヨモン、大丈夫だった?」

 

「ポヨ…」

 

 …うん、全員ちゃんといるね。ココモンもちゃんと抱いていたから手放さなくて済んで良かった。ココモンは丸太の上で体をブルブルと震わせて、びしょ濡れの体の水気を取っていた。

 

 ホエーモンは…落ち着いてくれた、と思うけど、どうなんだろ。表情があまり掴めない…

 

「イヤ、来ないでーっ!!」

 

『すみません、乱暴なことをして…』

 

 これって、テレパシー?ホエーモン、喋れたんだ…

 

「ホエーモンが悪いんじゃないわ!」

 

「黒い歯車のせいだったのよ」

 

「きっとあれが、最後の一個だったんだよ!」

 

「ホントに最後か!?」

 

『おかげでやっとスッキリしました』

 

「ホエーモン、サーバ大陸ってここからどれくらいかかるか知ってる?」

 

『はい。私でも五日はかかります』

 

 え…ホエーモンでも五日……?そんな距離を筏でだったら、半月じゃ足りなかったんじゃ?ゲンナイさん、もうちょっと移動手段のことを考えて欲しかったなぁ…

 

「かなり遠いってことか…」

 

「困ったね、筏壊れちゃった」

 

『サーバ大陸に向かうのですか?』

 

「うん、そうだよ」

 

『黒い歯車を取り除いて下さったお礼に、私がお送りしましょう』

 

「ホント!?」

 

「ラッキー!!」

 

 やった!これこそ、渡りに船ってやつだね。今日は何だか、良いデジモンにばっかり会えてる気がする。

 

 

 

 

 

 

 ホエーモンの好意に甘えさせて貰うことになり、ホエーモンの上で潮風を楽しむ私達。筏より安定感も抜群だし、揺れも問題無さそう。

 

「気持ち良い~!」

 

「筏に乗って行くより、よっぽど快適ですね!」

 

「これなら船酔いしない!」

 

「あとは、デビモンが封印したっていうタグと紋章を見つければな!」

 

『デビモンですって?』

 

「何か知ってるのか?」

 

『タグと紋章というのはよく分かりませんが…前にデビモンが、海の中のある場所に、何かを置いていったとか…』

 

「それって…!」

 

「その場所は?」

 

『サーバ大陸へ向かう途中にあります。皆さん、また暫く私の体の中に入って頂けますか』

 

 成る程…海底だったら行けるデジモンも少ないし、海上を進むだけだったら見つかりっこない。ホエーモンに会えて、本当に良かった…確か、紋章がサーバ大陸のあちこちに隠されたってゲンナイさんが言ってたから、そこにあるのはタグだと思う。

 

 ホエーモンの中に入って暫く待っていると、やがてホエーモンから声がかかった。もう着いたらしいけど、いわゆる海底洞窟というものらしく、ホエーモンにはこれ以上進めないらしい。空気はあるので、私達で探すことになった。

 

『私はここでお待ちしております』

 

「ありがとう!」

 

 ホエーモンに待っててもらい、奥へ進んでいく。すると見えてきたのは、何処にでもありそうなコンビニだった。洞窟の中にコンビニ…異様すぎる光景だなぁ…今更だった。というかこの異様な光景に慣れつつある自分がいる。

 

 でも、デビモンだったら…この洞窟に門番みたいなデジモンを配置していたとしてもおかしくない気が――

 

「コンビニだ!」

 

「…!…!」

 

「…ココモン?」

 

 またココモンが体を震わせてる…何で声出さないんだろ。ポヨモンは一応、鳴き声くらいは出してるのに。まあ、それは置いといて…もしかしてココモン、デジモンが現れるタイミングを教えてくれてる?ホエーモンの時もそうだったし…

 

 その予想を裏付けるように、コンビニまでの通路の地面が突然崩れて、かなり大きな穴が出来た。そこから姿を現したのは、紫と肌色の、頭にドリルをつけたデジモンだった。モグラ…かな?その背中には、またしても黒い歯車が。

 

「な、なんだ!?」

 

「ドリモゲモンだ!」

 

「あっ…黒い歯車だわ!」

 

「やっぱりまだあったんじゃないか!」

 

「デビモン様の命により、ここには誰も立ち入らせん!出て行け!」

 

「太一、ここは僕達に任せてタグを探して!」

 

「分かった!」

 

「へん、そんなドリルなんて怖かないやい!」

 

 

 

 ドリモゲモンがドリルを突き出し、それに対してゴマモンが一歩前に出てそう言い放った。ゴマモンの体が、光に包まれる。

 

「ゴマモン、進化――っ!!イッカクモン!!」

 

「“ドリルスピン”!」

 

「皆、今の内だ!」

 

 イッカクモンが角でドリモゲモンのドリルを受け止め、その間に私達はコンビニの中へと駆け込んでいく。中も普通のコンビニだ…!?

 

「イッカクモン、手加減してやってくれよ!」

 

 どうやらイッカクモンがドリモゲモンを吹っ飛ばしたらしく、コンビニのガラス部分に叩きつけられた。それを見て丈君がそう呟くけど…どうやら、手遅れみたい。イッカクモンが角をドリモゲモンに向けているのが見えた。

 

「皆、伏せて!」

 

「“ハープーンバルカン”!」

 

〈わあぁっ!〉

 

 イッカクモンもこっちに当てないようにはしていたみたいだけど…さっきのドリモゲモンの激突で野晒しになっていた店内に、着弾の余波がこっちにもあった。店内の棚は次々と倒れ、私はココモンを抱えたまま身を丸めた。

 

「わてにもやらせてぇな!」

 

 コンビニを飛び出して行ったテントモン。二体が相手すれば、あっちは問題ないはず、それよりも今は店内だ。

 

「危ねぇ~!」

 

「皆さん、無事ですか?」

 

「ええ、大丈夫!」

 

「ポヨモン!どこにいるの!?」

 

 皆無事みたいだけど、ポヨモンがはぐれたみたい…色々倒れた衝撃で埃が舞い上がって視界が悪い。下敷きになったりしてないよね?

 

 と、棚と棚の間で何かが動いたのが見えた。

 

「タケル君!こっち!」

 

「え?あ、ポヨモン!そんなとこ入っちゃダメだよ!」

 

「ポヨ…ポヨ?」

 

「何それ?」

 

「タケル、ちょっと貸してくれ」

 

 ポヨモンが出てきたと思ったら、ポヨモンは小さな箱にくっついたまま出てきた。ヤマト君がその箱を受け取って、中を確認してみる。

 

「タグだ」

 

「ゲンナイさんが映し出したのと、同じです」

 

「キレ~イ!」

 

 

 

 タグを回収した私達は、再びホエーモンに頼んで海上へ。そのままサーバ大陸へと進む。ちゃんと八人分のタグが入っていたみたいだし、あとは紋章か…

 

「……」

 

「気になる?」

 

 ココモンはさっきから、ずっと私の首にかけられたタグを見つめてる。

 

 …もしかして、ココモンは…七つしかタグが入ってなかった、とか考えてるのかな。確か、私はココモンのおかげでいるから、ココモンがいない世界線だといないんだよね。だったら、ここまでは七人で旅しているはずだし、タグも七つしかなかったはず。

 

 ココモンが、何だっけ。神様?に頼んだことで、選ばれし子供達が私含めた八人(・・)になっているっていうだけなのか、それとも何か別の理由があったりするのかな。前者だと仮定して…そうなると、私の紋章はどこにあるんだろ?

 

 どちらにせよ、全員分の紋章が手に入るのはかなり先になりそうな気がする。この五日間の船旅…鯨旅?はリラックス出来るように過ごすことにしよう。

 

 不安は多少あるけど…私達はこれから向かう新しい大陸に思いを馳せながら、夕日に染まる海を眺めていた。

 

 

 

 





ココモンが喋らないのは仕様です。鳴き声発さずにボディランゲージを頑張ってると思って下さいw

それと、今月のアニメ感想コーナーは毎回やります。まとめてじゃないのでより詳しく書いたりする回もあるかも。では、ネタバレありなのでイヤな方はブラウザバックで!読んで下さりありがとうございました!





































はい、ではアニメ感想のコーナーです!

前回は確かデビモンを倒した後、クラウド大陸落下の後の感想を忘れていたような気がするので、そこから今日のエンジェモン進化の回までの感想を書いていこうと思います。

フォルダ大陸のデジモン達の弱肉強食ぶりが強調される描写が多くなってきていますが、そういえばそういう世界観だったなーと再確認。先週の合流の回を見た時は、あれ?もしかして海なのはデジモン図鑑に追加されたデジモンを出す為…?とか思っていたんですが、予告で違うなと確信w

クラウド大陸から落ちてから、マメモンとかシードラモンとかトータモンとか…やたらと群れで襲われるパターンが多い気がしますね。

そして、待望の光ちゃんが合流!何話かかってるんだよ!テイルモンはいつになったら姿を現すんだ…!今回のテイルモン、個人的にはオファニモンになるのではと予想してますが、どうでしょう?ヴァロドゥルモンの神殿で三大天使とか映ってる描写あった気がするので、フロンティア的な展開でアリかな?と思ってます。

あと気になる点としたら、レオモン達の行方かな…完全に死亡フラグっぽいこと言っていなくなったから…頼むから、レオモンは死なないでほしい。というか、レオモンと一緒にいるスパーダモンとファルコモン、もう少し喋れ。そしてお前らの雷を防いだあの謎の力はなんだ。ただ受け止めてるだけなのか?

最後に笑った部分で一つ。パタモンの進化シーン、もうちょっと何とかならなかったのか…パタモンにエンジェモンの翼がつくだけだと、どうしても笑ってしまうのですが…w

と、思いついたままに書きましたが今回はこの辺で終わりにしたいと思います。次回は来週、13日に更新します!また次回もよろしくお願い致します!


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