デジモンアドベンチャー 優しさの少女と転生デジモン   作:Zelf

17 / 26
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します!

そして今回ですが、ちょっと重要な回になっています。オリ展開ですので、本編とはちょっと違う形になりました。




第十七話  妖精!ピッコロモン

 コカトリモンを撃退し、ミミの紋章も回収することが出来た俺たちは、砂漠を進み続けている。あとどれだけ進めばこの砂漠の旅も終わるのか…暑すぎて敵わねぇ。エテモンを倒した後も、太一以外はしばらく砂漠を進んでいたからな…この砂漠、どんだけ広いんだよ。

 

 エテモンを倒す、か…もし、エテモンを倒す時にメタルグレイモンに進化しなかったら。もし進化したとして、太一だけ元の世界に戻るあの空間の歪み…あれを防ぐことは出来るのか?そんなことをずっと考えているんだが…答えは出ないままだ。あの現象、イマイチよく分かってないんだよな…あれは、何が原因で現実世界へ通じる道が出来たんだ?エテモンがあの時取り込まれていた、気持ち悪いうねうねした球体のせいなのか?

 

「紋章は手に入ったけど…」

 

「使い方が分からないんじゃなぁ…」

 

「正しい育て方って言われてもねぇ…」

 

「でも、まだ全部の紋章が集まったわけじゃないんだ」

 

「そうですね。まず紋章を全部集めて、それから考えることにしましょうよ」

 

「おーい、何やってんだよーっ!」

 

「早く早くーっ!」

 

 いつの間にか足を止めて話し込む子供たち。先頭を歩いていた太一とアグモンだけがかなり先行していた。

 

 俺は太一達が離れ始めた段階で、既に周囲に気を配っていた。出来るだけ耳を澄ませて、奴がどこにいるのかを確かめるように。だが、ハッキリ言うと良く分からん。確か、砂の中にいるはずなんだが…

 

「今ねー、デジモンについてのとっても大事な重要会議してるの!すぐ行くからちょっと待ってねーっ!」

 

「ねーっ!」

 

 タケル…それだと重要ってことしか伝わらないぞ。…っていうか、そうか。奴に太一達が狙われるなら、太一達を呼び戻せば良いんじゃないか?はぐれていたのを狙われたんだろうし。流石に近くまで来れば聞こえるだろ。

 

「お前らも話に参加しろーっ!紋章持ってるの、お前もだろーっ!」

 

「だって、太一」

 

「仕方ない、戻るか…ってうわぁ!」

 

 

 

 太一とアグモンがこっちに来ようとした瞬間、二人が地面に沈んだ。やべ、遅かったか!?つーか、マジで音聞こえなかったぞ?どうなってんだ?

 

「な、なんだぁ!?」

 

「ロップモン!」

 

「悪い、聞こえなかった!俺も分からん!」

 

「太一君、アグモン!」

 

 二人がいた場所、砂の中から現れたのは、真っ赤な体をした巨大な昆虫型デジモン。そう、俺たちが最初に戦った、クワガーモンだ。奴が砂の中から出てきて、奴のハサミには太一とアグモンがしがみついている。

 

「「うわぁーっ!?」」

 

 二人はクワガーモンが顎を大きく振ったことによって、太一は明後日の方向に、アグモンはクワガーモンの目の前の地面に突き刺さった。まあ地面は砂だから、二人とも埋まってるだけで怪我はないはずだが…あ、アグモンが深く突き刺さったのか、下半身だけ砂から出してジタバタしてる。

 

「キシャアアッ!!」

 

「く、クワガーモンです!」

 

「結衣、行くぞ!」

 

「うん…!」

 

 俺と結衣が一番先頭にいるし、一番手っ取り早いのは俺が進化してクワガーモンを倒すことだ。そう思ったんだが…待っていても進化しない。結衣の方を見ると、手に持っていたデジヴァイスが光っていなかった。いや、よく見たら光っていないわけじゃなく、弱い。小さな光だった。

 

「…結衣?」

 

「結衣君、どうしたんだ!?」

 

「あ、あれ…?ちょ、ちょっと待って」

 

「“ベビーフレイム”!…うわっ!」

 

 体制を立て直したアグモンが、クワガーモンに攻撃する。しかし、クワガーモンは何食わぬ顔ですぐにハサミで反撃してきた。アグモンは尻餅をついてしまったが、結果的に回避することが出来た。

 

「こ、こいつ…ファイル島の奴より全然強いや!」

 

「アグモン!進化だ!」

 

「あ…ロップモン!」

 

「よし、行くぞ!」

 

 太一が叫んだのと、結衣のデジヴァイスが光を強くしたのはほとんど同じタイミングだった。何だったんだ?いや、今は敵だな。

 

「アグモン、進化――っ!!グレイモン!!」

 

「ロップモン、進化――っ!!トゥルイエモン!!」

 

 スカルグレイモンへの進化が無かったアグモンは、トラウマを持ってないからな。普通にグレイモンに進化して、クワガーモンと取っ組み合いを始める。俺は猛スピードでクワガーモンに近づき、がら空きになってるクワガーモンの横っ腹に狙いを定めた。

 

「“巖兎烈斗”!!」

 

「キシャアアッ!!」

 

「ぐっ…!」

 

「なっ!?」

 

 両手の“兎角鉄爪(とかくてっそう)”で抉れるような一撃を入れたはずなんだが…実際に傷は出来ている。しかしクワガーモンはダメージを受けていないかのように、グレイモンを俺の方に倒してきた。何とか躱せたが…コイツ、痛みを感じていないっていうのか?

 

「トゥルイエモン…!」

 

「グレイモン、俺が隙を作る!チャンスだと思ったら、思いっきりぶちかませ!」

 

「おう!!」

 

 作戦を変えて、止めは俺より攻撃力があるグレイモンに任せて、俺はクワガーモンの体、ダメージが入りそうな関節や柔らかそうな腹に攻撃。出来るだけつかず離れずでクワガーモンに満足に攻撃させないようにする。動きづらそうに、イライラしているのだろう。時々怒りのままに攻撃してこようとするが、俺にうまく攻撃できずにいた。

 

 頃合いを見て、俺はクワガーモンから少し離れ、丁度ハサミで攻撃できそうな位置に立つ。

 

「キシャアアアアアッ!!!」

 

「キレても怖くねぇ…よっ!」

 

 クワガーモンが激昂して、ハサミで攻撃しようとした所に、俺はまたクワガーモンの懐に飛び込み、顎に思いっきりアッパーを食らわせてやった。その衝撃でクワガーモンは上を見上げて腹を見せる姿になる。俺は着地と同時に、大きくジャンプして退散。

 

 好機を見逃さないグレイモンは、俺がいなくなったのを確認して、口に溜め込んだ炎を解き放った。

 

「“メガフレイム”!!」

 

「キシャアアァァ…!」

 

 大ダメージを受けたクワガーモンは、そのままひっくり返った。それでも消滅しないあたり、こいつどんだけ堅いんだ…?流石、カブテリモンのライバルの昆虫デジモンなだけはあるな。ファイル島の奴も、成長期の俺達の攻撃が効いてはいたが、かなりしぶとかったっぽいしな…

 

「どうする、トゥルイエモン?」

 

「そうだな…止めを刺しとくか。見逃して後々恨まれて襲われても厄介だしな」

 

「……トゥルイエモン」

 

「結衣?」

 

 俺を呼ぶ結衣の声に振り向くと、結衣がこっちに歩いてきていた。いやいや、何やってんだよ…殆ど決着がついたとはいえ、まだ戦闘中なんだが。

 

「結衣、あんま近づくな」

 

「あ、ごめん…その、クワガーモンなんだけど…見逃してあげてほしいの」

 

「は?何でだよ?先に仕掛けてきたのはコイツだぞ?」

 

「でも、これじゃ弱いものいじめしてるみたいで、見てられなくて…」

 

 ……まさか、まだ戦いに慣れていないのか…?結構、戦いばかりの日々だから太一達と同じように慣れてきていると思っていたんだが…

 

「…結衣、あのな——」

 

「…っ、危ない!」

 

 グレイモンの声の切羽詰まった声に、反射的に結衣の盾になるように、結衣の方を向いたまま両手を広げて守る。直後、背中に強い衝撃を受けた。

 

「がっ…!」

 

「トゥルイエモン!?」

 

「はぁっ!」

 

「キキッ…キシャアアッ!!」

 

 宙に浮く感覚を覚え、何とか空中でバランスを整えて着地に成功。どうやら吹っ飛ばされたのは俺だけ、結衣はまだ取っ組み合いをしているグレイモンとクワガーモンの傍にいた。ハサミで掬い上げ攻撃を食らったらしいが…やっぱ、クワガーモンはもう既に虫の息だ。力が入っていないのが分かる一撃だった。

 

 

 

 と、その時だった。俺の耳がある声を捉えた。

 

 

 

「——“ピットボム”!」

 

「っ!?グレイモン、結衣!伏せろっ!!」

 

 猛ダッシュでさっきいた場所まで戻り、結衣をその場で押し倒す。グレイモンも俺の指示通りにその場で姿勢を低くした。そして数秒後。

 

 想像していたような爆発音は全くしなかった。砂が巻き上げられるようなザザザーッという音はしたが、それだけだった。その巻き上げられた砂が俺たちに降りかかって、俺や結衣は砂に埋もれてしまう…口に砂が入っちまった。

 

「ペっ、ぺっ!…グレイモン、結衣、大丈夫か?」

 

「ああ…」

 

「うん……何、今の?」

 

「ピッピッピッピ…」

 

 俺たちの目の前を、小さなピンク色の体をした丸っこいデジモンが堂々と歩いていた。その背中には真っ白な翼、手には槍を持っている。やっぱり…あの必殺技の声を聞いた時から、コイツがいるのは分かっていた。

 

「グレイモン!大丈夫か?」

 

「太一…ああ、何ともない」

 

「結衣先輩も、無事で良かったです!」

 

「クワガーモンは?」

 

「何あれ…変なヤツ!」

 

「ピッピッピッピ…ピーッ!この未熟者!」

 

「あーっ!あなた、ピッコロモンね?」

 

「可愛い!」

 

 こんな小さな姿でも、立派な完全体のデジモン。俺達の味方のデジモンだ…味方、のはずなんだが。コイツ、さっき俺達がすぐ近くにいるのにも関わらず必殺技使いやがったな。もし食らってたら、俺もグレイモンもただじゃ済んでないぞ…?

 

「クワガーモンをやっつけたのは、ピッコロモンだったのね?」

 

「ピッピッピーっ!私の魔法の威力、見たかーッピ!全く君達、選ばれし子供なんでしょ?危なっかしくて見てられないッピ!そんなんじゃせっかく紋章とタグを手に入れても宝の持ち腐れだッピ!」

 

「…可愛くない、このデジモン」

 

 ピッコロモンを拾い上げていたミミがそう呟いた。気持ちは分かるぞ…こんな見た目でも、中身は老人みたいなこと言うからな、ピッコロモンって。俺も人のこと言えないかもしれないが、見た目と中身が合ってない。

 

「デジモン達もデジモン達だッピ!君たち皆たるんでるッピ!努力が足りないッピ!根性が無いッピ!」

 

「ピッピッピッピ、うるさい奴だな…」

 

 珍しくヤマトがぼやいてる…というか、これ俺も入ってるんだよな?そこまで言われるとイラっと来るな…いや、今は我慢だ我慢。

 

「アタシ、努力って嫌い…」

 

「どうせオイラは根性無いよ…」

 

「よって君たち皆、今日から私の元で修行するッピ!」

 

「修行?」

 

「何ですの?それ」

 

「特にそこの君!」

 

「わ、私…?」

 

「君とそこのトゥルイエモンは重症だッピ!スペシャルメニューで猛特訓だッピ!」

 

「何だと!?」

 

 なんか原作と全く同じ流れで太一とアグモンの代わりに指名されたんだが!?何でだ、俺達そこまで言われる程じゃないと思うぞ!

 

「さぁ、ついて来るッピ!ピッピッピッピ…」

 

 ピッコロモンが歩いていくのを無視して、俺たちは集まって話し合いを始めた。

 

「どうする?」

 

「信用できるのかな?あのデジモン」

 

「どうなんだ?ガブモン」

 

「口うるさいけど悪いデジモンじゃないよ」

 

「黒い歯車も、ケーブルもついてないみたいだし…」

 

「いいじゃない、デジモン達の正しい進化が分からないのは事実なんだし。それに皆で合宿すると思えば、楽しいわよきっと」

 

「歩くよりのんびり出来そうかな?」

 

「太一はどうなんだ?」

 

「行ってみようぜ!面白そうじゃんか」

 

「結衣さん達は良いんですか?スペシャルメニューって言ってましたけど」

 

「…うん、行こう。ちょっと怖いけど、必要なことなんだと思うし」

 

「決まりだね!」

 

「何をぐずぐずしてる!早く来るッピーっ!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ピッコロモンについていくことになって暫く、さっきまでと同じように砂漠を歩き続ける私達。

 

「ねぇ、まだ~!?」

 

「もう少しだッピ!」

 

「もう少し、もう少しって…さっきからそればっかり~」

 

「着いたッピ!ここだッピ」

 

「ここって…何もないじゃない!」

 

「ピーッ!ウホルパラホルパシリカッピ、トルカラトルカラシタカッピ~!」

 

 ピッコロモンが手に持つ槍をクルクルと回しながら呪文?を唱えると、ピッコロモンの目の前の景色が、森になった。ううん、森になったというかピッコロモンの目の前の見えない扉が開いたみたいな…そう、空間が割れたみたいな感じ。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「驚くことはないッピ、私の結界の中だッピ。さっ、ついてくるッピ!」

 

 その空間の割れ目に入ってみると、中は木々が生い茂っていて、砂漠の中とは思えない。ピッコロモンが結界って言ってたけど…どうなってるんだろ?たまに木々の隙間から見えるのは砂漠地帯なのに…完全に魔法だよね、これ。

 

「…!この音は…」

 

「ロップモン、どうしたの?」

 

「あ!皆、見て!」

 

 空ちゃんが指差したのは、木々の先の砂漠を走っている…何だろう、あれ。列車?みたいなのを引っ張っている黒い鎧を身に纏っているデジモン。どこかで見たような…そうだ、モノクロモン。ファイル島で縄張り争いをしてた子だ。

 

「今度は何だ?」

 

「あれはエテモンのトレーラーだッピ」

 

「えぇ!?」

 

「でも心配することはないッピ、向こうからは結界の中は見えないッピ」

 

 あぁ、あれってトレーラーって言うんだ。車体の側面に笑天門って書いてるけど…あ、エテモンってことね。それにしても、結構近くを走ってる…ピッコロモンに会ってなかったら、エテモンに襲われてたかもしれない。

 

 

 

 しばらく歩いて、見えてきたのは岩山。長い長い階段があって、その上にはいくつか、和風の建物が見える。

 

「この上が私の家だッピ」

 

「この上って…えぇ?」

 

「何よ、これ!信じられない~!」

 

「これを登るんですか!?」

 

「何段あるのかな…」

 

「数えるだけ無駄だ」

 

「ちょっと、修行はもう始まってるってわけ?」

 

「そういうことッピ!」

 

 全員ががっくりと肩を落とす…これ、登るだけでどれくらい時間かかるんだろ…ふと横を見たら、一人だけ落ち込んでいない宙に浮かぶ赤いのが見えた。

 

「へへ、こんなん楽勝やがな…何でならわて――」

 

「言っとくけど今後の修行中は、空は飛ばないで欲しいッピ」

 

「んなアホなぁ…」

 

「楽することばっかり考えないで、ピッピと登るッピ!」

 

「仕方ないよ、皆…行こう?」

 

〈はぁーい……〉

 

 

 

 そうして登り始めること数時間。階段があるだけまだマシって思っていたんだけど…ゴール地点と思われる建物が見えてきたのは夕暮れだった。思っていたより…キツい。足が棒みたいだよ…

 

「これくらいでバテるとは情けないッピ。さっ、あれが私の家だッピ」

 

「気味悪いな…」

 

「食事の用意も出来てるッピ」

 

「ん!?飯!!」

 

「……誰が用意してるんだろ…?」

 

 ピッコロモンの他にも誰か住んでるのかな…それとも魔法的な何かでポンっと出せるみたいな?

 

 それにしてもこの建物、他の和風建築とは違うというか…あまり見ない建築だと思う。上手く例えられないけど…バウムクーヘンみたいに中央が吹き抜けになってて、生地の部分が廊下になってるって感じ…お菓子で例えても分かりにくいよね……

 

 というか…あの吹き抜けになってる中央に巨大なピッコロモンの石像があるのは何でだろ。自分の石像がある場所って、暮らしにくそう…あんまりリラックス出来ない気がする。

 

「ねぇ…飯は?」

 

「その前に、次の修行だッピ!」

 

「そんなことだと思った…」

 

 折角元気になっていたのに…特に一番ご飯と聞いて張り切っていたゴマモンが可哀想…と、ピッコロモンはまた例の呪文を唱えて、今度は大量の水入りバケツと雑巾を出した…え、まさか…?

 

「全員でこの廊下を、雑巾がけだッピ~」

 

「ぞ、雑巾がけ…!?」

 

「えぇ!?この廊下、全部でっか!?」

 

「嘘ぉ~!?何なのよ、もう!!」

 

「君たちはスペシャルメニューだッピ、私についてくるッピ!」

 

「あ、あはは…皆、頑張ってね…」

 

「何で俺達なんだよ……」

 

 私達がピッコロモンについていった先は、建物から出てすぐの所にある洞窟だった。中は暗くて、殆ど何も見えない…こんな所で何をするんだろ?

 

「ねぇ、ピッコロモン。ここで何を…わっ!」

 

「結衣!おい、ピッコロモン!」

 

「無事に帰ってくる。それが君たちの試練だッピ!」

 

 そう言って、洞窟から飛んでいったピッコロモン。私達は洞窟の地面が沈み、どんどん深みに落ちていく…何これ?沼…じゃない?服も汚れてないし、濡れてない。というか、地面に触れない…すり抜ける!?

 

私達は、脱出することも出来ず…程なくして、洞窟の地面に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

「…ねぇ、ロップモン」

 

「何だ?」

 

「ここ、どこ?」

 

「さぁ…俺も分かんねぇ」

 

 目が覚めたら、何故か小舟の上だった。何でか明るくて、オールも付いているけど漕いでも方向も変えられない。為す術も無く流されるしかない…船の下も、ちゃんと水だし、何で洞窟の下にこんな景色が広がってるの?地底湖か何か?

 

「分かんないって…」

 

「ここが何処なのかは俺も知らないんだよ。多分だが、ピッコロモンが作った幻覚か何かじゃないか?」

 

「幻覚…これ、全部?」

 

「俺らが入った洞窟もな…」

 

 洞窟ごと全部幻覚って…ピッコロモンってそんなこと出来るの?一人でこんな大規模な…そういえば、あの広い森や岩山も含めて結界で覆ってたんだっけ…完全体のデジモンって凄い。

 

「で、これはどうやったら戻れるの?」

 

「分からん…本当は太一とアグモンがここに来るんだが。何で俺らなんだ?」

 

「太一君達が…何で?」

 

「ほら、前に話したスカルグレイモンの一件で、アグモンが進化するのにトラウマ持っててな。それを見たピッコロモンがここで太一とアグモンのトラウマを克服させたんだ。挑戦することが大事だということを思い出させてな」

 

「そんなことが…じゃあ、私達がここに連れてこられたのは?」

 

「そこが分かんねぇんだよな…俺達は別にトラウマ無いし」

 

「トラウマ……」

 

 …もしかして、クワガーモンと戦った時にすぐにロップモンを進化させられなかったことかな。あの時は何ですぐ進化させられなかったのか分からなかったんだけど…あれって、私の問題なんじゃ…?

 

 正直…思い当たることは、無いわけじゃ無い。

 

「そうだ、丁度良いから今の内に色々話しておきたいんだが、良いか?」

 

「あ、うん。私もこれからのこと、聞いておきたかったんだ」

 

流され続ける間、私はロップモンから色々な話を聞きながら過ごした。エテモンの話とか、これから先の話。長かったけど、ある程度は話したとロップモンは言った。言ったけど…ある程度は、っていうのが気になる。要するに、まだ全部じゃないんじゃ?

 

「ねぇ、少し気になることがあるんだけど」

 

「ん?」

 

「一回、私達の世界に戻れるんだよね?」

 

「ああ、たった数日だけどな…すぐこっちに戻ってくることになる。それがどうしたんだ?」

 

「その時にさ、ノートにさっきの話を書いてほしいの。まだ話してないこと、あるんでしょ?」

 

「なるほど…分かった。確かに、02とかの話もあるしな…」

 

「ゼロツーって?」

 

「いや、気にしなくて良い。とにかく了解だ、日本語も俺は書けるしな」

 

 そっか、こっちの世界って基本は独自の言語なんだよね。ロップモンは元人間だから書けるってことね。

 

 次第に、話はここから出る方法のことになる。ふと周りを見てみると、海しかないのに見覚えのある建物が見えては消えてを繰り返していた。

 

「ビッグサイト…東京タワー……あれは、アパートか?」

 

「あれは…私が住んでたアパートだよ」

 

「住んでた…引っ越したのか?」

 

「うん。あれは光が丘に住んでいた時のアパート」

 

 

 

 そうして、最後に見えてきたのは…病院だった。

 

 いつの間にか景色はその病院の中。一般の入り口じゃなくて、緊急搬送口の中、そこを通る数人の医療従事者と、患者。その患者に寄り添っていた、二人の少女。

 

 

 

「あれは…?」

 

『お母さん、お母さん!』

 

『由恵…結衣を、頼むわね……』

 

『お母さん…ごめんなさい、ごめんなさい……!』

 

『結衣…貴方は、良い子よ……人の為に、行動するのは、良いこと……良いことは、自分に、返ってくる…から……』

 

『小林さん、安静にして!』

 

 これは、あの時の……

 

 

 

「結衣…これって」

 

「うん……昔、実際にあったこと」

 

『結衣!!』

 

 また景色が変わって、今度は小さな私が、ひっぱたかれていた。すぐ近くにいた私より大きい女の子…お姉ちゃんがすぐに私に駆け寄った。

 

『何するの、お父さん!』

 

『お前が…お前があんなことをしたから、お母さんがこんなことになったんだぞ!分かっているのか!?』

 

『違うの、お父さん!結衣は…』

 

『由恵、お前は黙っていなさい!お前は、お母さんを傷つけたんだ!!』

 

 私はいつの間にか目を瞑っていた。両手で耳を覆って、しゃがみ込む。

 

「止めろ!!」

 

「…!」

 

『な、何だお前は!?』

 

「え…?」

 

 隣で叫び声がしたと思ったら、ロップモンが怒った表情でお父さんを睨んでた。お父さんはロップモンに今気づいたみたいに、驚いた表情でロップモンを見ていた。

 

「“ブレイジングアイス”!!」

 

『な――』

 

 ロップモンが攻撃したら、お父さんもお姉ちゃんも私も、全部消えた。これは、本当に幻覚だったっていうことなんだと思う。

 

「悪いな、結衣。我慢出来なかった」

 

「う、ううん…別に良いけど」

 

「…でも、お前のことは少し分かった。お前が戦うことを嫌う理由も、何となく分かったよ」

 

「……そう」

 

 

 

 ロップモンが私の方を見て、笑った。穏やかな笑顔で、私を見ていた。

 

「確かに、人を傷つけるのは良いこととは言えない。でも、デジタルワールドでは基本弱肉強食だ…敵は基本的に、俺達が見逃しても襲ってくる」

 

「…頭では分かってるの。でも…」

 

「良いんだ。だけど、一つだけ言っておく。エテモンみたいな、この先の敵を放っておけば、いずれお前の家族も危険になる。それを食い止めるために、俺達は戦うしかないんだ」

 

「…皆、傷つく……」

 

「敵が可哀想とか、そういうのは考えないようにしてくれ。その躊躇で、お前たちが死んだら…」

 

「……そう、だよね。そんなことになったら、私は……!」

 

 もう、私は立ち直れなくなる。私が今やらなくちゃいけないのは、太一君達と全員で、無事に家族の元に帰ること。それが最年長としての責務で、私が望んでいることなんだ。だったら…どうするべきか。

 

「私、もう迷わない…絶対に、全員で帰る為に……戦うことを迷わないよ」

 

「…ああ。今はそれで良い。戻るぞ、結衣!」

 

「うん!」

 

 さっきまで乗っていた小舟に乗って、流れに逆らってオールを漕ぎ続ける。さっきよりも流れが弱まっているように感じる…これなら、元の場所に戻れる!

 

 ロップモンも手と耳を使って、一緒に漕いでくれて…見えてきたのは、さっきの薄暗い洞窟。聞こえてきたのは、皆の悲鳴だった。もう戦ってるんだ…急がなきゃ!

 

「ロップモン!!」

 

「おう!ロップモン、進化――っ!!トゥルイエモン!!」

 

 出口に近づいて、ロップモンが進化して私を背負う。大きく跳躍すると、さっきまでいた洞窟の中に出た。そこからさらに跳んで洞窟から出ると、悲鳴が聞こえるのは森の方だった。トゥルイエモンは森の方へ向けて駆け抜けていく。ここからでも既に、大きな赤い竜が見えた。

 

「トゥルイエモン、あれがティラノモン?」

 

「ああ!俺はアイツの背中の黒いケーブルを狙う!」

 

「トゥルイエモン、下ろして!先に先行して!」

 

「分かった、お前も気をつけろよ!」

 

 私を下ろしたトゥルイエモンが、さらにスピードを上げてティラノモン目がけて進んでいく。そして、この聞こえてくる変な歌がエテモンの技…これで、成熟期への進化が防がれてしまうし、少しするとトゥルイエモンもロップモンに戻っちゃう。これは、時間との闘いでもある。

 

 私も走ってティラノモンのいる場所まで向かっていると、ティラノモンが吐く炎攻撃の先に、太一君達がいた。ピッコロモンが結界で守ってくれているけど、早く助けないと!

 

「グオオオォッ!?」

 

「トゥルイエモンだ!」

 

「皆ーっ!」

 

「結衣さん!」

 

「おらぁ!」

 

 ティラノモンが苦しみ始めた…きっと、トゥルイエモンが背中のケーブルを切ったせいだ。一本、また一本と切る度にティラノモンが苦しんでいる…

 

 でも、皆を守る為には……やるしかないんだ。

 

「トゥルイエモン!!」

 

「“巖兎烈斗”!!」

 

「グォォ……!」

 

 短い悲鳴を上げて、ティラノモンは粒子となって消滅していった。

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方、私達は旅を再開することになった。この場所はもうエテモンにバレてしまっているから、ピッコロモンも別の場所に逃げるらしい。

 

 そして、私とロップモンがいない間に、ヤマト君と光子郎君が紋章を手に入れていた。この近くの井戸にあったらしいけど…結界の外にあったから、それでティラノモンに見つかって襲われたみたい。大体ロップモンから聞いた話と一緒みたい。

 

「ピッコロモン、ありがとうございました!」

 

〈ありがとうございました!〉

 

「これからも日々精進だッピ!この世界を救えるのは、君たちしかいないッピ…頑張れ、選ばれし子供達…ッピ」

 

 ピッコロモンの激励を受けて私達は旅を再開した。

 

 

 

 





というわけで、結衣の過去が少し判明。ヴァンデモン編になったらもっと分かる…はずです。

では、この後はアニメの感想コーナーです。ネタバレありですので、ここでブラウザバックの方、ありがとうございました!来月もお願い致します!


























































はい、というわけでアニメ感想コーナーです!といっても、年末年始だったので一話分しかありませんので短めですが。

まず…ロップモンが、喋ったーーーーーっ!!!ちょっと予想していた声優さん(テイマーズのロッテリアの声優さん)と違いましたが、クロスウォーズでロップモンの声優さんだった方でしたね!

ロップモンが色々不思議な力を使っていましたね。浮くのが普通になっているし、アニメでちゃんと善のケルビモンが出たのってあまり覚えが無いので嬉しかった!

だがしかし!何で聖なるデジモンが二体なんだ…!?何で三大天使であるケルビモンが省かれてるんだ!そして何でその省かれたロップモンがそんな説明をしているんだ……!?可哀想だろ、結衣を追加しろ!(錯乱)

そして、今回の光ちゃんのパートナー、テイルモンの究極体はオファニモンっぽいですね~…ホーリードラモンもオファニモンも好きだから良いけど、それより早くテイルモンを出してほしいな…何度も言いすぎてくどくてすみません。

そしてそして、最後に気になったのはスカルナイトモンの腹にいたムーンミレニアモン…自分は、ミレニアモンについては殆ど知りません。初めてやったデジモンのゲームはストーリー無印なんですよね…ミレニアモンが出てくる秋山リョウ君が出てくる話は殆ど知りません。なのでこの小説でもリョウ君は出てこないと思います。


ちょっと話は逸れましたが、以上で感想コーナー終了です!ここまで付き合ってくれた方、ありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。