デジモンアドベンチャー 優しさの少女と転生デジモン   作:Zelf

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第一話も同時投稿ですので、先にそちらをご覧下さい。


第二話 優しさに選ばれた少女

「結衣~、早く起きなさーい!」

 

「もう起きてるよーっ!」

 

 今日は特別な日。お台場小学校の生徒達がサマーキャンプに参加する日だ。きっと私のように、何日もろくに眠ることも出来ない程に楽しみにしている子供は多いはずだ。

 

 昨晩用意していた服に着替える。白の袖無しワンピース、下は紺色のボトムス。必要は無さそうだったけど、家族二人の助言によって淡い紫色のアウターを羽織る。荷物は整容道具と、チャッカマンとかサバイバルナイフ等のキャンプ用品とか、水筒もバッグに入れて持っていく。あ、絆創膏とかお薬セットも持っていかなきゃ。最後に後ろ髪をお気に入りの紺と白のチェック柄のリボンで低い位置で纏めて…うん、準備オッケー。

 

 居間に向かうと、案の定いつも通りお爺ちゃんがテレビでニュースを見てて、お姉ちゃんが朝ご飯を並べている所だった。

 

「おはよう、お姉ちゃん、お爺ちゃん」

 

「ん、お早う」

 

「おはよう、結衣。やっぱり今日の気合いの入りようは違うね!」

 

「まあね…ずっと楽しみにしてたの、知ってるでしょ?」

 

「最初は面倒くさがっていたのにのぅ…」

 

「…お爺ちゃん、余計なこと言わないでよ。それにだらしない大人ってお爺ちゃんでしょ」

 

「な、何じゃと!儂はただ事実を言っただけじゃと言うのに…」

 

「文句があるならパチンコ止めてからにして」

 

「なら結衣はゲームを止めねばならんぞ?」

 

「はいはい、二人とも早く席について!あ、結衣!キャンプだからってあまりはしゃぎ過ぎちゃダメだからね?もう六年生なんだから、下の子達の面倒も見ないとね」

 

「それも分かってるよ…頂きます」

 

 食卓テーブルに並べられたトーストを食べて、牛乳を一口。うん、やっぱり朝はこのセットが良いな。お爺ちゃんには日本人なんだからご飯を食べなさいって言われるけど、ご飯が重たく感じるんだよね。

 

「そういえば結衣や、どうやら寒くなるらしいから気をつけるんじゃぞ」

 

「…?もう八月だよ?」

 

「ああ、例の異常気象ね。外国もそうなんでしょ?暑かったり寒かったり」

 

 サマーキャンプなんだから蚊に刺されるよってお姉ちゃんがお爺ちゃんと一緒にこのアウターを買ってくれたけど、お爺ちゃんとしてはこっちが理由らしい。ホント、最近の異常気象はおかしいよね。雨が降らなくて水田が枯れるだとか、大雨で洪水が発生だとか…アメリカでも記録的な冷夏ってさっきニュースで言ってた。

 

「二人とも、新しい服買ってくれてありがとう」

 

「どういたしまして!これを機に結衣ももっと可愛い服を着てくれると嬉しいかな~」

 

「儂も同感じゃな。もっと女の子らしくしても良いと思うぞ」

 

「それは…考えとく」

 

 あんなヒラヒラした服、あんまり着たくない。動きづらいし、なんか変な感じがするし…お姉ちゃんの頼みだから着てあげてるだけだもん。女の子らしい服なんて、私には分からないしそもそも似合わないと思う。

 

 ふと時計を見ると、少し時間が危ない。急ぎ気味に残っている朝食を食べて、牛乳を飲み干す。整容もバッチリして、昨日の夜に作っておいたお握りも持ったし…まあ、お昼ご飯ってわけじゃないんだけどね。これはこれで使いようがあるんだ。というか同じ班の子と約束しちゃったからね。

 

「それじゃ行ってきます」

 

「気をつけて行きなさい」

 

「お粗末様!色々大変かも知れないけど、頑張ってね!」

 

「うん、ありがと」

 

 確かに、キャンプの準備とか大変だろうな…あまり体力使いたくないし、男子達に任せよう。

 

 

☆☆☆

 

 バスに乗って暫くして、目的地に到着した。班に分かれてそれぞれテントを張ったりご飯の準備をしたり。私は予定通り男子達にテントを張るのを任せることに成功して、キャンプ地を見て回っている。男子達がやる気出してたからテント作業はすぐ終わった。手作りのおにぎりを分けてあげる代わりにテント作業は俺達がやる!って約束させられたというか…私が楽過ぎてどうかと思うんだけど。

 

「すぅー、はぁー…」

 

 自然の中の空気を大きく吸い込み、そのまま吐き出す。それだけでかなりリラックス出来た。やっぱり勉強ばっかりしていたら体が鈍っちゃって駄目になる。たまにはこうして気分転換をすることも大事だよね。やっぱり来て良かった。

 

 さて、そろそろ戻ろうかな。後で班の皆も一緒に来よう。

 

「…?あれは…」

 

 石畳の階段の前で、一人の少年がいた…っていうか、同じクラスだから誰かはすぐ分かった。

 

「丈君、どうしたの?」

 

「あ、結衣君。ちょっと四年生の太刀川ミミ君に用事があってね」

 

「あー、成る程…確かミミちゃんなら上で見たよ」

 

「本当かい!?ありがとう、すぐに行かなきゃ」

 

 確か丈君は食料当番じゃなかったはずなのに、荷物が非常食なのは変だなって思っていたけど、そういうこと。大方、ミミちゃんがサボったんだね。それで担当の先生にでも頼まれたか…いや、丈君のことだから自分から引き受けたって所かな。

 

「あれ…?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、今何か…冷たっ」

 

「これ…雪?」

 

 今、私の手と丈君の頬に降ってきた物は…間違いない、雪だ。でも、夏に雪って…あり得ない。そういえば…お爺ちゃんが寒くなるって言ってたっけ。

 

 段々と雪がどんどん降り始め、視界が白く覆われていく。

 

「さ、寒い…!早く大人達の所に行かないと…!」

 

「待って、ここからだと上にあった祠の方が近いよ!そっちに行こう!」

 

「わ、分かった!」

 

 階段を駆け上がり、祠の中へと駆け込む私達。中には、見覚えのある赤っぽい茶髪の男の子がいた。

 

「あ、丈さん!結衣さんも!」

 

「光子郎、君も来てたのか!」

 

「まだ外に人が来るかも知れないね…近くに誰かいないか見てくる!」

 

「え!?駄目だよ、風邪引いたら大変だ!」

 

「大丈夫だよ、私アウター着てるから。近くに誰もいなさそうだったらすぐ帰ってくるから!」

 

 祠から出た私は、まずこっちに向かって走っている子達がいるのを見つけた。それと、少し離れた所にも何人かいるみたい。

 

「太一君、空ちゃん、こっち!」

 

「結衣さん!」

 

「結衣先輩、ありがとうございます!」

 

「中に丈君と光子郎君がいるから!」

 

 少し離れた所にいるのは…ヤマト君かな。ミミちゃんもいる。もう一人低学年っぽい子もいるけど…誰だろう?私は知らない子だ。

 

「おーい!ヤマト君、ミミちゃーん!」

 

 大きく手を振りながら呼ぶと、ミミちゃんが手を振って返してくれた。どうやら聞こえたみたいだね。後他には…うん、誰もいないかな。流石に雪が強くなってきたから、もうちょっと辺りを探したら私も祠に戻ろう。

 

「結衣さん」

 

「ヤマト君、早く祠に向かって。太一君達もいるから」

 

「…俺達がいた方には誰もいないですよ。あっち側は分からないですけど」

 

「ホント?あっち側…あ、階段の方は私達が来た所だから大丈夫だね。ありがとう、ヤマト君」

 

「いえ」

 

 じゃあ私も早く中に入ろう。それにしても、夏なのにこんな吹雪になるなんて…お姉ちゃんとお爺ちゃんにアウター用意して貰って正解だった。

 

 

 

 

 

 

 暫く待っていると、風の音が弱まって聞こえなくなった。太一君が扉を開けると、さっきまで見えていた地面が全て真っ白に染まり、そこら辺にある木々にも雪が乗っかっていた。

 

「やっと止んだみたいだな」

 

「うわぁ、雪だ~!凄―い!」

 

「おいタケル!気をつけろ!」

 

「うぅ…寒いわね。夏とは思えない」

 

「早く大人がいる所に戻ろう。ここにいつまでもいると…「きゃ~、キレーイ!」」

 

 皆夏服なのに、寒いって言いながら何で外に出るんだろう…風邪引いちゃうよ?

 

「光子郎君、どうしたの?」

 

「いえ…吹雪が止んだから、電話とかも使えるかと思ったんですが、繋がらないみたいで」

 

「そっか…でも、この辺は山奥だから元々電波が届かないのかもね」

 

「光子郎―っ!早く来いよーっ!」

 

「結衣せんぱーい!早く早くーっ!」

 

 外から太一君とミミちゃんの声が聞こえ、私達も外に出た。そして、上空に見える幻想的な光景に、他の子達と同じように目を奪われてしまう。

 

「キレーイ、ロマンチック…!」

 

「あ、あれは…」

 

「オーロラよ!」

 

「初めて見たぜ!」

 

「凄いよね!」

 

 皆感極まっているようだけど…やっぱり変。オーロラって元々、日本じゃ見ることは出来ないはず。そもそも、オーロラが見えるくらい寒いようには感じられないし、精々冬なのかと思うくらい。これも、例の異常気象と関係が…?

 

「そんな、変ですよ!日本でオーロラなんて!」

 

「…そうなんだよね」

 

「は、早く大人達がいるキャンプ場に戻らなきゃ!」

 

「そうだな…風邪引いちゃつまんねぇしな」

 

「…?おい、あれ!」

 

 太一君が何かを見つけたようで、彼の目線の先を追うと何か…大きな穴のような何かが見えた。あんなの、普通じゃない…私には、どうしてもそれが超常的な何かであるような気がしたんだ。

 

 その予感が的中しているのか、その穴の中で何かが光ったように見えた。やがてそれらはどんどん大きくなって…こっちに向かってきてる!?

 

「皆、伏せてっ!!」

 

 私の叫びの直後、光の塊が次々と私達の周囲に降り注ぐ。着弾する度に雪が舞い上がり、目の前が真っ白になる。

 

「皆、怪我は無い!?」

 

「…何とかな」

 

「び、ビックリしたぁ…」

 

「い、一体…」

 

「今の、隕石でしょうか…?」

 

「光子郎君、下手に近づかない方が…え?」

 

 光子郎君が、光の塊が着弾したと思われる穴をのぞき込もうとしたその時、その穴から光が溢れ出す。しかも、彼の傍の物だけでなく私達の近くにある八つ(・・)全ての穴が。そしてその穴からは、光の光源と思われる小さな何かがフヨフヨと浮かび上がってきた。私達は咄嗟に、それを掴み取った。

 

「何、これ…」

 

「ポケベルでも、ケータイでもないし…」

 

「あれ、今…?」

 

 掴み取ったそれを観察していると、その機械の真ん中の液晶画面のような部分が微かに光った。

 

『!?』

 

 何故か、山の中なのに大きな高波が現れ…それは既に私達を呑み込まんとしていた。

 

 

 

『うわぁぁぁっ!!?』

 

 

 

 

 

 

 これが、私達の長い長い冒険の旅の始まりだったんだ。

 

 

 




今回はプロローグなので二話連続更新しましたが、基本は月一でも更新出来ればくらいのスタンスです。

なので次回は二月更新にします。因みに投稿時現段階で第五話まで出来てます(もう一つの方を進めずにやる愚行)

さらに因みにオリキャラをイメージしやすくする為に補足。結衣のモデルはハカメモのエリカです。声優さんも同じだと思って呼んで下さい笑

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