デジモンアドベンチャー 優しさの少女と転生デジモン 作:Zelf
今回、かなり展開に悩んでしまい…いざ書いてみたものの、長過ぎるのでいっそ前編後編的な感じに分けて投稿することにしました。
というわけで、今回はオリジナル展開です。
第二十話 結衣の心
エテモンとの決戦から、時空の歪みに飲み込まれてしまった太一とアグモンを探して、俺達は何も無い砂漠地帯を歩き回った。
あの二人は一時的に人間界に帰ってるから、俺達は特に何も心配することはなく、寧ろこれからどうするべきなのかを考えなければならないのは、俺達の方だった。エテモンがいなくなってから、明確な敵という敵が現れない。今までデビモンにエテモンという強敵がずっといて、倒すべき目標がハッキリしていた。
しかし、今はただ漠然と二人を探すだけの日々が続いた。結衣にも以前話したんだが、俺の話を聞いても結衣は太一達の捜索を止める気は無いらしい。選ばれし子供達の中で、唯一紋章が見つかっていないのが結衣なんだが…探し回っている間、紋章探しは後回しだ。まあ、反応すること自体無かったから探しようが無いんだが。
優しさの紋章に関しては、俺も全く知らないからな…初登場も確か、デジモンカイザーこと一乗寺賢が要塞の暗黒の力を制御する為に使ってたんじゃなかったか?とにかく、賢が手に入れた場所に関しては明記されていなかったはずだ。唯一の手がかりになりそうなのは、賢の初めての冒険が砂漠っぽい場所ってことだけか…?
「結衣さん、紋章は探さなくて良いんですか?」
太一捜索から一週間くらい経った日の夜。光子郎が結衣にそんな質問をしてきた。
「あ、うん…今はそんなに強い敵もいないみたいだし、急ぐ必要は無いかなって」
「確かにな…エテモンがいなくなってから、殆ど戦うことも無かったし」
「太一さん…どこに行っちゃったんだろ」
「アグモンもいるんだ、心配はいらないよ!」
タケルが不安そうにしているのを、ガブモンがフォローを入れる。ガブモンのやつ…タケルの扱いが上手くなってきてるな。
「私のことより…空ちゃん、大丈夫?」
「あ、はい…大丈夫です。でも……これだけ探しても見つからないなんて…」
「あの時…エテモンをメタルグレイモンが倒したあの時、何処かに吸い込まれたように見えましたが…」
「ああ、俺もそう見えた。けど、一体何処に…」
「…あの黒いのと同化したエテモンは、空間を歪ませるような力を持ってた。山とか、スフィンクスとか」
「あの姿、気持ち悪かったぁ…」
ミミのその言葉には同意するが、今はそういう話じゃない。
「つまり結衣さんは、太一さんとメタルグレイモンは空間の歪みに吸い込まれたと思っているんですね?」
「うん」
「それって…もしかすると、すっごく遠くに飛ばされちゃったってことなんじゃないか?」
「…確証はないが、だったら砂漠だけを探すのは非効率かもしれないな」
そういえば、この時のヤマト達って砂漠をずっと彷徨ってたんだろうか?原作じゃ、砂漠にしかいなかったようだったが…太一がこっちに戻ってくるのに二ヶ月くらいかかってたはず。砂漠をくまなく探していたんだったら、それくらいかかる、か…?
「危険が無いんだったら、手分けして探すのも良いかもしれませんね。合流する場所と時間を決めるとかどうでしょう?」
「そうだな…」
「でも、私達はこのサーバ大陸を全部知ってるわけじゃない。もしかすると、エテモンよりも強い敵だっているかも…」
「…結衣さん、そんなこと言ったら何も出来ない。今こうやって太一を探し回るのも危険ってことになるじゃないか」
「…ごめん。私が言いたいのは、危機感を忘れない方が良いってこと。油断して、痛い目に遭ったら遅いから…」
「ヤマト、言い過ぎよ。結衣さんの言ってること、分かるでしょ?」
「…ああ。結衣さん、悪かった…」
「ううん、大丈夫。気にしないで」
それにしてもずっと思っていたが、太一とアグモンがいなくなってから子供達に活気が無い。話し合いにも身が入っていないし…これじゃ、離ればなれになってしまうのも頷けるな…特にヤマトは今の状況に苛立ってきているみたいだ。
話し合いの結果、今後は朝から二手に分かれて行動し、夕方に決まった場所に合流するということになった。
☆☆☆
皆で話し合いをしてから、一ヶ月くらい経った。太一君はともかく、私の紋章も見つけられず、しばらく探索するだけの日々が続いて…皆の危機感もかなり薄れてしまっていると思う。このままだと…ロップモンが言っていた通り、皆離ればなれになってしまうこともあり得る。私は、出来ることならそれを阻止したい。何とか皆をまとめなきゃ…
「今日はこの辺りを探そう」
「では、夕方にまたここで合流ですね」
ここ最近は、探索のチーム分けも固定化してる。私は光子郎君とミミちゃんの三人で行動することが殆ど。こういう組み分けになったのにはちゃんといくつか理由があって、一つ目は機動力を考慮して空ちゃんと光子郎君が別々に。二つ目は私の紋章を探すということを考えて、もしかしたら光子郎君のパソコンの力が必要になるかもしれないということで、私と光子郎君が一緒に。三つ目は…丈君とミミちゃんの意見だけど、年長者は別れた方が良いということと本人の希望で、私と丈君は別々に、ミミちゃんは私と一緒になった。
合流地点を決めた私達は、二手に分かれてそれぞれ別々に行動を開始した。カブテリモンに乗せて貰って、上空から探索をしていた時のこと。
「結衣、タグはどうだ?」
「うーん…ダメ、反応無し」
「ねぇ光子郎君?パソコンで紋章の場所が分かったりしないの?」
「周囲の様子を探ったりは、しているんですが…」
「ミミちゃん、無理言ったらダメだよ」
「皆はん、下を見てもらえまっか?」
カブテリモンの声を聞いて、私達は下の景色を見てみると、そこには砂漠の中にポツンと見える一つの茶色い何か…どうやら、デジモンが倒れているみたい。放っておけないと思った私はカブテリモンにお願いして、その茶色いデジモンの近くに降りて近づいてみることにした。
倒れていたのは、茶色い兎のようなデジモンだった。大きさは、私よりも少し大きいくらい。両手が鋭く尖っていて、鉄製のグローブをつけてるみたい。よく観察すると、垂れているその耳の先も鉄のように尖っていた。見た目可愛らしいのに、所々危ない印象を受ける。デジモンならではの物騒な感じがした。
「コイツは…!?」
「プレイリモンやな。普段は地中で暮らしてるデジモンや」
「モグラみたいね」
「それより、怪我してる…」
プレイリモンはボロボロで、戦った後みたいだった。皆で相談して、近くにあった洞穴…多分、プレイリモンが掘ったものだと思われるその中に運んで、水で傷口を洗ったりとか、簡単に手当をして、プレイリモンが目覚めるのを少し待ってみる。私達はその間、この後どうするかを話し合うことにした。
「それにしても、何でこんな何もない場所で倒れていたんでしょう?」
「うーん…」
「…この穴、奥が何処かに繋がってるみたいだな。風の音が微かに聞こえる」
「じゃあ、プレイリモンはそこから来たってこと?」
「きっとそうよ!行ってみましょ!」
「…待って。光子郎君とテントモンには、ヤマト君達を呼んできて欲しい。もしかするとプレイリモンがこんな怪我をした原因のデジモンがいるかもしれない」
「そうですね…分かりました」
「あとは、一度この辺をもう一度探索した方が良いと思う。他にも怪我してる子がいるかも…」
「あ!じゃあ、私とパルモンで見回ってきまーす!」
ピン!と手を伸ばしてそう言ってくれたミミちゃん。助かるけど、ミミちゃんにはここでプレイリモンの看病しててもらうつもりだった。もし探索中に敵に遭遇したら大変だから。やる気満々なミミちゃんをどうにか説得しようとしたけど、ミミちゃんは元気よく走って行ってしまった。光子郎君とテントモンも少し遅れて洞穴から出ていく。
「丁度良い、伝えておくことがある」
「何?」
「俺はプレイリモンを見たのは
二人きりの時に話すっていうことは…ロップモンの知識では見たことが無いって、そういうこと…だよね?でもプレイリモンを見たことが無いからって、特に不思議でもない気がするけど。
「ロップモンが見たこと無いデジモンがいても不思議じゃないと思うけど」
「そりゃそうなんだが、コイツは少し特殊なデジモンなんだよ。プレイリモンはアーマー体に分類されるデジモンでな…進化に特殊な条件が必要なんだ」
「勿体ぶるね…つまり?」
「プレイリモンに進化する条件は、優しさのデジメンタルっていうアイテムが必要なんだ。まあ、自然に進化する場合もあるらしいんだが、俺はコイツの住処とかの近くに、結衣の紋章の手がかりがあると思ってる」
「それって…!」
「……うぅ」
その時、横になっていたプレイリモンが呻き声を上げた。
「あ、起きた?」
「ひっ…!き、君たちは……?」
目を覚ましたプレイリモンは、私達の顔を見た途端に体をガタガタと震わせて縮こまってしまった…やっぱり、何かあったんだ。こんなに怯えてしまうような何かが。
「落ち着け。俺達はお前が行き倒れてたから助けてやったんだよ」
「ひっ…!」
「ロップモン、そんな言い方じゃ信じて貰えないよ」
「む……あー、何かすまん」
ロップモンって初対面でも高圧的な喋り方するんだよね…私も初めて会った時はビックリした。
「ごめんね、悪気はないから許してあげてね。私は結衣。こっちがロップモン」
「………ぼ、僕はプレイリモン。助けてくれてありがとう…」
プレイリモンはそうお礼を言ってくれた。少し落ち着いてくれたみたいなので、本題を聞いてみる。
「ねぇ、プレイリモンは何で砂漠で倒れてたの?それに酷い怪我もしてたし…」
「そ、それが……僕達は元々、地中に暮らしていたんだ。けど、突然アイツがやって来て…」
「アイツ?」
「…要するに、お前は他のデジモンに襲われて、この砂漠まで逃げた所で力尽きたわけか」
「あ、ああ…ここら辺では見ないやつだったよ……」
そう言いながら震えるプレイリモン。よほど恐ろしいデジモンだったのかな…アーマー体っていうのは、成熟期のデジモンくらいの強さって思っていて良いのかな?だとすると、そのプレイリモンの群れを襲った敵っていうのは、完全体くらい…?だとしたら、私達だけだと力不足かもしれない。光子郎君にヤマト君達を呼びに行って貰って正解だった。
「ロップモン、良い?」
「ああ」
「ありがと。プレイリモン、私達で良かったら力になるよ」
「や、止めた方が良い!君たちじゃ、あんな強い奴に勝てない…僕達が群れで束になっても勝てなかったんだ!」
「大丈夫、私達には仲間がいるんだ。皆と協力すれば、何とか出来るよ!」
「とりあえず俺達は先に偵察に行ってみるか。この洞穴、お前が掘ったんだよな?住処はこの先で良いのか?」
「そ、そうだけど…いや、しかし…」
「よし…それと、確認しておきたいことがあるんだが」
「な、何だ…?」
「こんな感じの模様、見たことはねぇか?俺ら、これを探してんだ」
ロップモンが手で地面の砂に、円とか三日月とか、見たことが無い模様を描く。これが、私の紋章…優しさの紋章、だっけ。
「これは…」
「見覚え、あんのか!?」
「こらっ、そんな詰め寄ったらダメ。ごめんね」
「い、いや……これは、僕達が住んでいる地下渓谷の底にある石碑によく似てるよ」
「成る程…だったら、尚更行かないわけにはいかねぇな」
ロップモンの言葉に頷き、ロップモンもまた力強く頷く。そんな私達のことを、プレイリモンがキョロキョロと見回している。
「もしかして、君は選ばれし子供なのか?」
「あ、うん。そうらしいよ」
「そうか…分かった。君たちがどうしてこの模様を探しているのかは分からないが、こっちとしても君たちに来てもらえるのはありがたい。どうか、僕達を助けてはくれないだろうか?」
「勿論!」
「よし、それじゃ決まりだ。プレイリモンはここで休んでろ。俺達で先にコイツの住処とやらに行ってみようぜ」
「え、でも皆を待ってからの方が…」
「後で合流できるし、慎重に探れば問題ねぇって。それとも俺だけで先に見てくるか?」
「…それはダメ。一緒に行こ?」
「おう」
確かに、この洞穴一本道みたいだし…先に行ってても問題ないよね。何かあればすぐに引き返せば良いし。
ロップモンが洞穴の奥へとズンズン進んでいく。私もその後に続いて進んでいくけど、段々暗くなっていくから殆ど何も見えなくなってくる。穴の大きさはそれ程狭く無いから、進みやすくはあるんだけど、ちょっと怖い。
「ろ、ロップモン、ちょっと待って…」
「ああ、悪い。ほれ」
へっぴり腰で進む私を見て、ロップモンが見かねて耳をこっちに伸ばしてくれたらしい。声のする方に手を伸ばすと、もふもふした何かを掴んだ。あぁ…片手だけでも癒やされる……
「ユイ、ロップモン、待ってくれ!」
「ひゃっ…!」
「お前…休んでて良いんだぞ?」
後ろから声をかけられて、変な声出た…ロップモンは何事もないように、プレイリモンにそう返事した。プレイリモン…だと思うけど、ほぼ真っ暗で見えない。
「そういうわけにもいかないだろう、僕達の問題なのに…」
「でも、まだ怪我が…」
「これくらい、大丈夫。心配してくれてありがとう。ここからは僕が先に行くよ」
そこからはプレイリモンが先頭を行って、私とロップモンがその後ろに続く。進んでいる最中に、私はあることを思い出した。
「あ…どうしよう、皆に何も言わずに来ちゃった」
「光子郎がいれば大丈夫じゃないか?洞穴を見つけさえすれば何とか…」
と、その時。
ドーーーーーン!!!
「な、何…!?」
「まずい!」
突然、浮遊感が体を襲った。今まで体を預けていた足下や壁が突然崩れ、私達は今…落ちていた。
「ロップモン、進化――っ!!トゥルイエモン!!」
「…っ!」
進化したトゥルイエモンが私を抱え、私は歯を食いしばって目を瞑る。何処までも続くかと思えた落下は、ボフンッ!という衝撃と共に終わりを告げた。
「あ、ありがとう…」
「ああ…ったく、何だったんだ、今のは?」
「あれ…プレイリモンは?」
見渡しても…って、暗くて何も見えないから、トゥルイエモンの聴覚を頼るしかない。今は手持ちに灯りになりそうなものは無い。懐中電灯?そんなもの、一ヶ月以上デジタルワールドにいれば電池は既に切れてしまった。あとはチャッカマンくらい?
「ちょっと待て…砂やら石やらがうるさくて分かりづらいんだ………見つけた!」
耳を澄ませたトゥルイエモンが、近くの砂地に歩いて行き、砂の中に手を入れる。そして勢いよく引っ張ると、片足を掴まれてるプレイリモンが出てきた。
「…う、うーん……」
「気絶してるね…」
試しに顔を軽く叩いてみるけど、起きる気配はない。さっきのこと、聞きたかったんだけどな…
「案内役のコイツがこれじゃ、どこ行けばいいのか分かんねぇな…どうする?」
「うーん…トゥルイエモン、周りの音を聞いて何か分かる?」
「ん……さっきの轟音の原因かは分からんが、あっちの方から何か聞こえてくるぞ。何の音かは良く分からんが」
「他は?」
「特に聞こえねぇ」
「じゃあ、そっちに行ってみよっか。慎重にね」
「おう」
他に行く当てもないし、元来た道にも戻れないし…まあ、何となく何かあるのは間違いないんだけど。下手をすると例のプレイリモンの群れを襲ったデジモンに会っちゃうかもしれないから、ホント慎重に行かなきゃ…トゥルイエモンがいてくれて良かった。
それにしても…どうしよう。私達が皆の所に帰るまで、どれくらいかかるだろう?まさか、このまま皆の所に帰るまで何日もかかったりすれば、皆がバラバラになっちゃう…急がなきゃ。
それからしばらく、渓谷みたいになった道を進んでいく。段々と、私の耳にもさっきの轟音のような音が聞こえてくる。たまに雄叫びのような声も聞こえてくるから、進んでいる方向は間違っていないはず。
「う、うぅ…あれ、ここは……?」
「目が覚めたんだね、プレイリモン」
「起きたんなら下ろすぞ」
プレイリモンを背負っていたトゥルイエモンが、ゆっくりと姿勢を低くする。プレイリモンが地面に足を下ろして、トゥルイエモンは先を進んでいく。その後に、私とプレイリモンが続く。
「さて、そろそろ話を聞かせて貰おうか?さっきのドーンって音は何だったんだ?」
「音…そう、それだ!あれは奴が壁を殴った音だよ!」
殴った音…?え、どんな怪力なの?というか、殴るだけでそんな爆発したみたいな音が鳴るの…?
「その奴ってどんなデジモンなんだよ?もう少し詳しく教えろ」
「あ、ああ…奴は緑色で、腕が四本ある。力が凄く強くて、僕らの攻撃じゃ傷一つ付けられないくらい固いんだ…」
説明しているうちに段々と弱々しくなっていくプレイリモン。でも今の説明だと…私には肌が緑色で四本腕の怪人にしか思えないんだけど…何か、想像してて気持ち悪いなと思っちゃった…
でも、トゥルイエモンは何か分かったらしい。目を少し見開いて、その後すぐに考え込むように顎に手を当てている。
と、その時。真っ暗だった視界が、突然光った。暗闇に慣れたせいか、それ程強く無い光なのに思わず目を覆った。
「これは…!」
「私の、タグ…?」
「紋章が近いみたいだな……ってことは、だ。その奴ってのと戦う可能性があるってことか…」
「トゥルイエモン…?」
私の声に返事はせずに、額に手を当てるトゥルイエモン。その後、大きく首を振って、両手で自分の頬をパァン!と叩いた。
「…結衣、言っておく。敵が俺の思っている通りの奴だとしたら、十中八九負ける。ヤマト達に協力してもらったとしてもだ」
「…完全体?」
「そうだ。今の俺達じゃ…少なくとも、俺の攻撃はソイツには通らないだろうな」
苦々しい表情を浮かべるトゥルイエモン。確かに、トゥルイエモンの攻撃力はグレイモン達と比べると低い方だと思う。大きさも一番小さいし、トゥルイエモンの戦い方は素早さを活かして攪乱して、隙を突いて攻撃するスタイルだから…せめて、大きさがエンジェモン以上あれば力も強くなりそうだけど。
「とにかく…どうするのか、慎重に考えてくれ」
「うん…トゥルイエモンはどう思ってるの?」
「……正直言えば、逃げるべきだと思っている。まあ、聴いた感じ逃げ道が分からないが」
先頭を行くトゥルイエモンが足を止めた。私も足を止めたのに、さっきまでよりタグの反応が強くなっている気がする。それだけ紋章の場所に近づいたってこと…?
「…これ以上は、不味いな」
「近いの…?」
「ああ…音か何かで気づかれたらヤバい」
「や、やっぱり君たちは逃げた方が良い…怪我を手当てしてくれただけで十分だ。僕が地上まで掘り進むから…」
「…………」
私は、今逃げるのは嫌だ。助けられるかもしれないのに、最初から諦めるのは違うんじゃないかと思ってる。それに、こっちには敵のことを知り尽くしているであろうトゥルイエモンがいる。だったら、弱点を狙うことも出来るはずだ。
「…トゥルイエモン。私は、プレイリモンの仲間を助けたい。もし敵が完全体だとしても…倒せないとは限らないでしょ」
聞いた感じ、力と守りは凄そうだけど、スピードならまだトゥルイエモンの方が素早いんじゃないかと思ってる。それに、ここは元々プレイリモンの住処。地形に関しては彼らに聞けば利用することも出来る。
作戦を立てて、上手くいけば完全体が相手でも勝てる…と思う。プレイリモン達を助けるには、これしかない…私にはここで時間を取られてる暇は無い。急いで皆の所に戻らないと。
「…そう、か。プレイリモン、お前の仲間は何処にいるんだ?」
「分からない…もしかすると、まだこの近くにいるかもしれないけど…」
「そんな…!」
「…おい、プレイリモン!ここで結衣を守れ!」
「え…トゥルイエモンは?」
「俺が一人で行ってくる。お前らはここで見てろ」
「何、言ってるの…?ちゃんと作戦を立てないと、勝てるものも勝てないよ!ただでさえ、敵は強いんじゃないの!?」
「……結衣。お前、変わったな」
「は…?」
私が、変わった…?何を言っているのか理解が出来ない。何故か、胸の中で何かが痛んだ気がした。
「俺の知ってるお前はこう言うはずだ…戦わずに助ける方法を探そうってな」
「…そんな、こと……!」
私は、そんなことを言ってられないって理解しただけ…この世界にはそんな甘さは通用しない。敵は、倒さなきゃ…倒さないと、他の誰かが傷つくんだ。
「結衣、お前ならまずプレイリモン達の安否を確認すると思ってたんだが…どうしたんだ?」
トゥルイエモンのその言葉に、何故か怒りを覚えた。つい我慢しきれずに、私は感情のままに声を荒げる。
「どうしたって、何言ってるの…!?君が言ったんだよ、敵を倒さなきゃ、皆が傷つくって!だから、私は…私は……っ!」
「……結衣、俺は」
初めてトゥルイエモンに怒鳴ったと思う。でも、声を荒げずにはいられなかった。私に冷酷さを求めたのは、他ならない君だったはずなのに。何でその君が理解してくれていないの?君は、あの時の…ピッコロモンの試練で言ってた躊躇するなっていうのはどういうつもりで言っていたの…?
私の方を見て、口を動かすけど言葉に表せずにいるトゥルイエモン。プレイリモンはただオロオロしているけど、そんなことを気に掛ける余裕は無かった。私も、ただトゥルイエモンを睨み付ける。今までに無かったくらい、沈黙が続いた。
「グオォォォーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
沈黙を破ったのは、周囲に轟く咆哮だった。近づく途中も聞こえてきた声。その声と同時に地面が大きく揺れ始める。
「チッ…いいか、お前らはここで隠れてろ!!」
「ちょ…トゥルイエモン!」
「だ、ダメだユイ!今近づくのは危険だ!」
「良いからっ…離して!!」
トゥルイエモンが、行ってしまう。たった一人で、敵うかどうかも分からない相手と戦いに、私を置いていく。トゥルイエモンにとって私は足手まといなんだって言われているみたいな気がした。
そんなこと、認めたくない。私は、私は…私だって、戦える。力になれるはずなんだ。
「あっ…ユイ!?」
プレイリモンの拘束から強引に抜け出して、トゥルイエモンを追う。
まだ何も話せてない。何を言えば良いのか、何を聞けばいいのか全然分からないけど…体はただひたすらに、走り続けることしか出来なかった。
ちょっと短いと思った方いますか?これ、本来の想定していた半分くらいなんですよ?作者の頭おかしいと思いませんか?
えー、テンションがややおかしくなりましたが、今回はやや歯切れの悪い形になりました。
今回はアニメ感想はお休みします。ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!