デジモンアドベンチャー 優しさの少女と転生デジモン 作:Zelf
タイトルから察しの方多いと思いますが、そういうことです!
「グオォォォーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
耳をぶっ壊されそうな雄叫びに、つい足を止めそうになるが、何とか我慢して速度を落とさずに声の主の元へ走る。
正直、勝てる見込みなんてこれっぽっちも無いが…気を引くくらいは出来るだろ。かろうじて、周りに他のデジモンがいるのは聴こえた。これがプレイリモンの群れの連中だ。助ける奴らの場所さえ分かれば、何処に誘導すれば良いかくらいは分かる。これでも、ある程度戦ってきたつもりだからな。
「…!」
見えたのは、俺より何倍もデカい巨竜だった。暗いから色は殆ど分からないが、姿形は何となく分かった。どうやら俺が予想していた奴で間違いないらしい。特徴的なのは、何と言っても四つ足で歩く本体の背から伸びている一対の巨大な腕だ。前世じゃゲームで良く使っていたからすぐにピンときた。
「グルルルル…」
…見た所、相当気が立ってるな。理性も無くただ暴れているだけって感じだ。コイツの生態を考えても、こういう地底で暮らしているのは別段おかしくない。大方、コイツが縄張りを変えてプレイリモン達の住処に入ったって所か。
「聞け!!俺はプレイリモンに頼まれてやって来た!!まだこの場にいる者達は、何とかして逃げろ!!近くにプレイリモンもいる!!」
「グオォォォーーーーーー!!!」
「ッ…うるせぇっつの!悪いが、少しだけ俺の相手をしてもらうぜ…グラウンドラモン!!」
俺と同じ兎型のプレイリモン達なら、あれくらい大声で叫べば聞こえるだろ。後は、俺がグラウンドラモンの注意を引いて、プレイリモン達が逃げやすいように誘導してやるだけだ。
まずは先手。俺はグラウンドラモンに真っ直ぐに駆け出す…ように見せかけ、すぐに急停止した。その直後、巨大な腕が目の前に振り下ろされた。
やべぇ…思っていたよりも攻撃速度が速ぇ。これじゃ、迂闊に近づけねぇ。
「グオオォッ!!」
「うおっ…!ったく、お前はいちいち叫ぶなっつの!!」
徐々にグラウンドラモンがこっちに近づきながら、二本の巨腕を振り回す。ギリギリ躱せる距離を保ちながら、徐々に後ろに下がりつつ回避に専念する。近づけないが、相手から近づいてくれるなら誘導はしやすい。ただ逃げる方向さえ気をつけておけば何とかなる!
「よっ…こっちだ、ついてこい!」
「グルルルッ…!グオォォォーーーーーーーッ!!」
手をクイクイっとやって挑発したら、随分ご立腹な表情で俺を追いかけるグラウンドラモン。俺はただひたすらに回避しながら後ろに下がる。自分より弱い奴が煽りながら逃げて、自分の攻撃が全部当たらないとか…相手からすれば、これ相当ストレス溜まるだろうな…俺でもキレる。
周囲の壁の穴の中から一体、また一体とプレイリモンが出てくると、器用に壁を降りて逃げていく。群れの最後と思われるプレイリモンが逃げていくのが見えた俺は、ふと後ろを見て思わず悪態をついた。
「……チッ、どうすっかな」
背水の陣ってのは、こういうことを言うんだろう。後ろに下がりすぎて壁際まで追い詰められていた。だが、勿論こうなることを考えていなかったわけじゃない。俺は両手を地につけ、クラウチングスタートの構えをとる。そしてグラウンドラモンが背中の巨腕を振り上げ、勢いよく振り下ろそうとしたそのタイミングを見計らって飛び出し。
「オラァッ!!」
グラウンドラモンの目の前まで近づき、顎を掬い上げるようにアッパーを繰り出した。大したダメージは入っていないが、視線さえ外せればそれで良い。強制的に上を見ることになったグラウンドラモンが顔を下ろした時には、俺は既にグラウンドラモンの横をすり抜けていた。
「ふぅ…さて、こっからは第二ラウンドだ」
「トゥルイエモン!!」
これからは時間をかけて、チクチクとヒットアンドアウェイで攻撃し、隙を見て撤退するつもりだった。後ろから、結衣の声が聞こえてくるまでは。
「結衣…何しに来た!?」
「私も戦うっ…私は貴方のパートナーなんでしょ!だったらちゃんと…一緒に戦おうよ!!」
「戦うって…!」
「グオォォォーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「くそっ、結衣!!」
グラウンドラモンが、好機と見たのか俺と結衣を同時に攻撃してくる。結衣を抱き上げ、何とか奴の攻撃を紙一重で躱すことは出来たが…俺一人でも躱すのが精一杯だったのに、結衣を背負ったままじゃ…結衣が危ない。
「…見たろ、結衣。今の俺じゃコイツに敵わねぇ…一人でも躱すので精一杯だ。言いたいこと、分かるよな?」
「……でも、紋章があれば」
「何?」
「紋章があれば、完全体になれるんでしょ…?完全体に進化出来れば、アイツにだって…!」
結衣は、反応が強くなっているタグを俺の目の前に見せつけた。
今の結衣を見て…俺の中ではある人物とその姿が重なった。俺達がよく知っている、けどこの世界じゃ見たことが無いアイツの姿に。
「……結衣」
「こっち…こっちに強く反応してる。トゥルイエモン、何とかあのデジモンから距離をとって、上手くいけば紋章を――」
「…今のお前じゃ、進化は出来ねぇよ」
「……え?」
「今のお前は、太一に似てるよ。アグモンを暴走させたアイツにな」
「っ…!!」
表情を悲しみに歪ませた結衣を、俺は強く抱きしめる。戦闘中で、回避に徹する必要があるから、万が一にも結衣に攻撃が当たらないように。力強く、それでいて傷つけないように。
俺はさっき、結衣を追い詰めちまった。コイツはただ俺の忠告通りに動いてくれていただけ。なのに、俺は単に、さっきのグラウンドラモンを倒すって、あの結衣が言ったことに驚いた。らしくないって、そう感じて…
忘れていたが、結衣はただの小学六年生だ。誰にでも優しくて、相手の気持ちを真っ先に考えることが出来るような、賢い子供だ。そんな優等生のような小学生が、大人の言うことを聞くなんて当たり前だ。
なのに、その大人が矛盾したことを言い出したらどうなる?さっきはこうしろ、今はああしろと全く別のことを言い始めたら?簡単だ、子供はわけが分からずに苦しめられる。俺がやったのもそういうことだ…以前、結衣に敵を倒すのに躊躇するなと言った。けどさっき、俺は敵を倒そうと提案するのはらしくないって言ったんだから。
そんな苦しんでる時に、俺は結衣を置いて、こうして戦いの場に来た。結衣にとって、今頼れるのは俺だけだったってのに…一番辛い時に傍にいないなんて、パートナー失格だな。
……だが、俺が今やるべきなのは後悔じゃない。今もなお苦しんでる結衣を支えることだ。
「…結衣!こんな時だが、聞いてくれ!」
「トゥルイエモン…?」
「お前は、何も、間違ってない…!間違っていたのは…俺だった!」
「……なに、言って…?」
「どんな奴でも傷つけたくない、仲間達を助けたい、どっちもお前の気持ちだ!お前の思いを叶えてやれない…俺が、弱いからだ!」
「そんな…そんな、こと……っ!」
話している最中に、急に辺りが明るくなった。殆ど真っ暗の中で、突如光り出したそれに俺は目を細める。やっと暗闇に慣れてきた目には、少し眩しすぎた。それは
「これは…!?」
「地面が…」
俺と結衣がいる地面が、赤紫色に光を放つ。地面の光がどんどん縮小していき、やがてその光は俺の掌よりも小さいサイズにまで小さくなった。それは意志を持つかのように、俺達の周りを飛び、結衣の首にぶら下がっているタグへと収まった。
「紋章が…!」
「…っ!トゥルイエモン、危ないっ!!」
結衣の声に反応した時にはもう遅かった。グラウンドラモンには接近を許していないが、目の前には俺の身の丈くらいある岩が迫っていた。
「くっ…そぉっ!」
「トゥルイエモンっ!!」
咄嗟に結衣を背負い投げのように投げ飛ばす。その直後、俺は意識を失った。
☆☆☆
私達がグラウンドラモンと遭遇してから、何日経ったんだろう。未だに地上には出ることも出来ず、プレイリモン達と一緒にグラウンドラモンから逃げるだけ。
とは言っても、グラウンドラモンはあの場所からあまり動こうとはしていない。いや、動けないと言った方が正しいかもしれない。グラウンドラモンの体躯じゃ通れない場所も沢山あるから、そこを通ってグラウンドラモンから何とか逃げることが出来た。代わりに、グラウンドラモンが暴れて、所々崩れたりするけど。
「ユイ、今日の分だ。ロップモンの分もな」
「うん…いつもありがとう、プレイリモン」
「早く良くなると良いな」
「早く元気になって、アイツをやっつけてくれよ!」
「う、うん…」
プレイリモン達から食料をもらって、ロップモンが寝ている洞穴に向かう。プレイリモン達が蓄えていた食料を分けて貰って、申し訳ないけど…プレイリモン達は私達を巻き込んでしまったことを申し訳なく思っているみたいで、結局は私が押し切られる形で食料を渡される。
しかも優しさの紋章を手に入れたことで、プレイリモン達から選ばれし子供なら助けてくれる、といった期待の視線を浴びることも多くなった…何とかしてあげたいとは、思うんだけど。今の私には何も言い返すことは出来なかった。
洞穴に入ると、ロップモンが起き上がっていた。昨日や一昨日は痛みで寝たきりの状態だったけど…
「ロップモン、調子はどう?」
「おー…動けるようにはなったが、全身痛ぇわ」
グラウンドラモンが岩を投げ、私を庇ったトゥルイエモンにその攻撃が直撃しロップモンに退化してしまったあの時。グラウンドラモンは何故か私達を見逃した。理由は分からない…けど、グラウンドラモンと目が合った時、何だか変な感じがした。あれは…
「ま、動けさえすれば何とかなるさ。リベンジ、行くか」
「…………」
ロップモンは目が覚めてからずっとこの調子…多分、私が早く皆の所に帰ろうと急いでいる気持ちを察してくれてるんだと思う。でも…私も、この前よりは頭が冷えた。
「ロップモン、ちゃんと休んで。まだ動いたらダメ」
「…でもよ、早く皆に合流するんだろ?」
「それなんだけど…皆、バラバラになっちゃっても大丈夫なんだよね?太一君も無事だって、前に言ってたでしょ?」
「そりゃ、そうなんだが…それでも太一を探すし、ヤマト達もバラバラにさせないって意気込んでたじゃねぇか」
「…うん。でもこうなっちゃったらしょうがないよ。私達は目の前のことに集中した方が良いよ」
それに、いくら待っても皆が助けに来ないってことは、残念ながら光子郎君達が私達のいた場所に戻れなかったということだ。きっと、グラウンドラモンが暴れた時の地響きか何かで、あの洞穴が崩れちゃった、とかかな。そうなると、ここに辿り着くのは難しいと思う。
一回、落ち着いて考えて分かったのは…私とロップモンが戻るには、あのグラウンドラモンをどうにかしないといけないということ。というのも、グラウンドラモンが暴れる度に、この辺の地形が変わってしまうのが原因。もしプレイリモンに頼んで地上まで穴を掘って貰っても、移動している最中に生き埋めになる可能性が高い。それ程に、ここら辺の地盤は脆い。
皆が来てくれたとしても…成熟期のデジモン達は大体大きいし力も強いから、戦いの最中、攻撃の余波なんかでここは崩れてしまうと思う。
「とは言ってもよ、それでどうするんだ?」
「どうするって?」
「結局、グラウンドラモンをどうにかしないと俺達は戻れねぇぞ?何か作戦、あるか?」
「…ううん」
それも、ずっと考えてるけど…トゥルイエモンだけでグラウンドラモンに勝つ方法が、全然思いつかない。圧倒的な力、こっちの攻撃を物ともしない頑強さ。トゥルイエモンにとって、最も相性が悪いと言える相手だと思う。それなのに、ロップモンはまだ戦おうとしてくれてる…
「でも…今の私じゃ、トゥルイエモンは進化出来ないんでしょ?」
「ああ、あれはあの時の結衣だったらって意味さ」
「あの時の?」
「あの時のお前だったら絶対無理だった。ただ焦って暴走してたからな…今のお前なら、気持ち次第で進化出来るかもしれねぇ」
「気持ち次第…」
確か、紋章は持ち主の心の力を増幅させるものだっけ…私の紋章の意味は、優しさ。つまり、優しさの気持ちを強くイメージすれば良い…?優しさの気持ちって…何?そもそも優しさって…戦いの最中に考えることなの?
「…おーい、大丈夫か?」
「なんか、余計こんがらがってきたかも…」
「変に考えない方が良いぞ。お前は…ただ、自分の気持ちに正直にいれば良いんだ」
自分の気持ちに正直に…そういえば、紋章を手に入れる直前にも何か、大事っぽいことを言おうとしていたような…あれ、何だったんだろう。
「ねぇ、ロップモン。あの時なんて言おうとしてたの?」
「あの時?」
「紋章を手に入れる前に、何か言おうとしてたでしょ?」
「あれか…そう、だな。ちゃんと言った方が良いな」
ロップモンは少し顔を背けて、その後に真っ直ぐこっちを見た。
「お前はあの時、俺のせいで混乱しちまってただろ?」
「それは…」
「変に気を遣わなくて良い。俺自身、矛盾したことを言っちまった自覚はある…ごめんな」
ロップモンは私に深々と頭を下げた。その時少しバランスを崩して、私が慌てて体を支えようとしたけど、ロップモンが耳で静止したので動けず…ロップモンは膝をついたけど、すぐに立ち上がる。やっぱり、無理してるんだ…
「…私の方こそ、ごめんね。変に取り乱しちゃったけど、ロップモンは私のことを思って言ってくれているのに」
「戦う時に躊躇すると、足を掬われることもある。俺はそういう意味で躊躇するなって言ったが…そもそも、俺は間違ってたんだって気づいた」
「間違ってたって…何が?」
「お前に、躊躇するなって言ったことが間違ってたんだ」
「え…?」
戦う時に敵を助けたいって思ってしまっている自覚は…正直あった。だから、ロップモンが言っていることも理解出来た。戦う度にそう思っていたら、敵に思わぬ攻撃をお見舞いされるかもしれない。例えば、ナノモンみたいな狡賢い相手だったら…不利と分かった瞬間に命乞いをして、隙を見て攻撃してきたりするんじゃないかと思う。
そういう甘さで、自分だけじゃなくて皆も危険に晒してしまう…そんなことにならないようにって、ロップモンは私の為にそう言ってくれていた。なのに、今はそのロップモンがそれが間違いだって言ってる。
「お前らしくないことをさせること自体が間違っていた…だから、もう俺の言うことは気にすんな!どれだけ無茶なこと言われようと、俺が何とかしてやる!」
「気にするなって…そんなこと出来ないよ。そんなロップモンの意見を蔑ろにするようなこと…」
「蔑ろにするってことじゃなくてだな…」
ロップモンが耳を器用に使って、頭を掻くような仕草をする。その後、何か思いついたようにこっちを見た。
「結衣、お前は思ったこと、やりたいことをして良いんだ。俺はお前の為なら…命を賭ける覚悟くらいある。だから、お前が望んでいることを出来るだけ叶えてやる!」
「やりたいこと…」
「そうだ、もっと正直になれば良い!」
やりたいことに…正直に………?
「もし…もしも、私が敵を傷つけたくないって言ったらどうするの?」
「そうだな…俺は、出来るだけ相手を傷つけないようにするよ。最低限の攻撃で敵を行動不能にしてやる!」
「…もし私が、間違ってたら?」
「その時は俺が止めてやるさ。まぁお前なら、そういうことは殆ど無いような気がするけどな」
笑いながらそう言うロップモン。ロップモンが言っているのは、多分理想論。そんなことできっこない。夢物語に過ぎない、口から出任せ。きっと、そう。
だけど…これだけの覚悟を決めてくれているロップモンを、信じてあげたいと思った。それだけのことを言ってくれるロップモンを、私も信頼で答えてあげたい。信頼し合う関係になりたい。それがきっと、私達二人の望んでいることだと思うから。
「…!」
「結衣?」
「……ううん、何でも無い。ねぇ、ロップモン」
「なんだ?」
「だったら、ちゃんと証明して」
「証明?」
「そう。私がどんな我が儘言っても、それを叶えるって言ったよね?」
「我が儘って…おい?」
「分かってる、冗談だよ。証明して欲しいのはホントだけど…それじゃ、行こう」
「行くって…」
「グラウンドラモンの所。私、思いついたんだ…良い作戦」
「そうなのか…?それは良いんだが…何か感じ変わってないか?」
「そんなことないって。ほら、早く」
「あ、おい!作戦の内容くらい教えろよ!」
今のロップモンは戦える状態じゃない…だけど、二人でなら何とかなる。そう思えるくらいの
プレイリモン達には隠れて貰って、私とロップモンはまたグラウンドラモンがいる場所までやって来た。数日前にも来たのに、地形が変わっているような気がしたけど…どうやら、グラウンドラモンが暴れ続けたことで岩壁が崩れているらしい。グラウンドラモンの周りには岩がいくつも転がっていた。
「グルルルル……」
「トゥルイエモン、下ろして」
「…ああ」
ここに来るまでに、作戦はもうトゥルイエモンに伝えてある。どうして欲しいかも、もう伝えた。後は…私が、行動に移すだけ。
「…ねぇ、君は何で悲しんでいるの?」
私はグラウンドラモンの攻撃範囲に入らないように気をつけながら、グラウンドラモンに話しかける。この子だってデジモン…私の話だって通じるはず。
「私は、君のことを知りたい。どこから来たのかとか、何で暴れているのかとか…何で、そんな悲しそうな目をしているのかを」
「グ…グオォォォーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
「結衣!!」
グラウンドラモンが雄叫びをあげ、私はすぐ後ろにいたトゥルイエモンに身を預けて、トゥルイエモンが大きく後ろに跳んで着地した。
「…やっぱこうなったか」
「…トゥルイエモン」
「大丈夫だ…俺はお前を信じてる。だからお前も…俺を信じろ!」
「うん…私はもう迷わない。君の気持ちに、私も…応えたい!」
私の身につけていたタグと紋章、そして私のデジヴァイス。それぞれが赤みがかった淡い紫色に輝く。それと同時にトゥルイエモンが光に包まれた。
☆☆☆
結衣の考えた作戦とは、俺を完全体に進化させるっていう作戦だった。
最初に聞いた時は耳を疑ったが…さっきの会話中に、紋章が光ったらしい。タグと紋章は普段服の内側に入れているから俺は気づかなかったが、見せてもらったらホントに光っていたから驚いた。
しかも、結衣は何で紋章が光ったのか、何となく理由が分かったらしい。何でも、相手のことを正しく思いやることが重要だとか。勿論、確証は無い話だけど…賭けてみるには十分な話だと俺は思った。
だから結衣と俺は、お互いに信じて欲しいと思い、そして心から信じるようにした。戦闘中にいつでも思いやるには、俺と結衣…パートナー同士で信頼し合うのが一番だと思ったからだ。
口で言うのは簡単だが…俺は少し不安だった。この前のようなことがあったし、俺は結衣に信頼されているんだろうかって…けど、そんなのは俺の杞憂だったらしい。
「トゥルイエモン、超、進化ーーーーーっ!!」
結衣のデジヴァイスから放たれた進化の光が、紋章を通して天に昇る。進化の光を受けた優しさの紋章が弾け、俺の中に流れ込む。俺の体が、変化していくのを実感した。人型に近い体だったトゥルイエモンの形から、さらに巨大で、強い体に造り替えられていく。
「――アンティラモン!!」
デジモンテイマーズで出てきた、完全体のデジモン。四聖獣デジモンに仕えるデーヴァの一体。グレイモン達にも負けない巨大な体に、強靱な脚力から生み出されるスピード。パワーもスピードも、トゥルイエモンの時より段違いに上がっている。
「これが…アンティラモン」
「…ありがとう、結衣。お前のおかげで、俺はこうして強くなれた」
「うん…!行こう、アンティラモン!」
「ああ!」
結衣を肩に乗せ、俺はグラウンドラモンにゆっくり近づいていく。グラウンドラモンはこちらに警戒を強め、俺が奴の攻撃範囲に入った瞬間、その巨大な二本の腕を叩きつける。
「アンティラモン…!」
「問題ない」
俺は両腕でグラウンドラモンの攻撃を受け止めた。少しヒリヒリするが、その程度。防御力も格段に上がっているな。
受け止めた腕を弾き飛ばし、グラウンドラモンの懐に入る。だがグラウンドラモンは弾き飛ばした腕をまた勢いよく振り下ろした。だがそれは俺じゃなく、地面に叩きつけられ…次の瞬間にはグラウンドラモンが高速で回転していた。
「グオォォォーッ!!!」
巨大に発達したその二本の腕の力も使って回転し、尻尾についている鉄球で回転の勢いを乗せた重い一撃を俺に振り下ろす。両腕でガードした俺だが、さっきの攻撃より何倍も威力が増した攻撃で後ろに飛ばされる。両足でストッパーをかけたことで地面に電車道が出来た。
「くっ……!」
「アンティラモン…」
「ああ…パワーでは奴が上だ」
「グオォォォーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
咆哮を上げ、背中の二本の腕を横に広げながらこっちに突っ込んでくるグラウンドラモン。どうやら、必殺技を使うつもりらしい。
両腕を挟み込むようにして放たれた、グラウンドラモンの必殺技、“スクラップレスクロー”。さっきの尻尾の鉄球で殴り倒す“メガトンハマークラッシュ”より強い一撃が、俺に向かって放たれる。
勿論、それを黙って受ける必要は無いがな。
「…!」
「“マントラチャント”!!」
さっきのグラウンドラモンの跳躍よりも遥かに高く跳び、
事の発端は、コアドラモンがグラウンドラモンに進化したことから始まった。
元々、地上で生活していたコアドラモンが、何年もかけて戦い、つい先日グラウンドラモンへと進化した。そこまでは良かったが…進化したばかりのグラウンドラモンは、自分の力を理解していなかった。
試しとばかりに両腕を力一杯、適当に的に定めた巨大な岩に振り下ろしてみた。その結果、岩が砕け散ったのは勿論、その衝撃で地面まで砕けた。脆くなった足場がグラウンドラモンの重量に耐えきれず、グラウンドラモンはこの地下に落ちた。
地上を目指し何日も彷徨って、グラウンドラモンはプレイリモン達の集落に辿り着き…そこから先は、プレイリモン達が言っていた話に繋がるわけだ。
「じゃあ、グラウンドラモンが暴れていたのは…」
「大方、地上に戻ろうと穴を掘ろうとしたんじゃないか?それかプレイリモン達が蓄えていた食料を探していたとかな」
「グオォ…」
俺の言葉に頷くグラウンドラモン。一度気絶し、目が覚めたらこれまでの暴れっぷりが嘘のように大人しくなった。ちなみに、今はプレイリモン達と一緒に飯を食っている。
「大変だったんだね…よしよし」
「それで、プレイリモン達に頼みがあるんだが」
「なんだい?」
「コイツと俺達を、地上に繋がる道まで案内してくれねぇか?」
「私達も地上に帰るつもりだったし、グラウンドラモンも一緒に連れて行ってあげたいの」
「分かった!君たちは僕らの恩人だからな、任せてくれ!」
「数日もあれば、ここから帰れる道を掘ってやるよ!」
こうして、プレイリモン達の協力のおかげで、数日後に俺達は地上まで帰ってくることが出来た。グラウンドラモン、プレイリモン達と別れを告げて、俺達はひとまず適当に歩いてみることにしたんだが…
「ここ、どこだろ…」
「知らない地形っぽいな…そうだ、デジヴァイスに何か反応があるんじゃないか?」
「あ、そっか。えーと…」
森の中に出たみたいだが、サーバ大陸に来てから森なんて、コロモンの村近くにあった森以来だからな…少し遠くに岩山もあるが、それも見覚えが無い。そうなると、後の頼りはデジヴァイスのみになる。
「あ、あっちに反応があるよ!」
「どれどれ…」
デジヴァイスを見せて貰うと、どうやらあの岩山の方に反応が一つ。その岩山の反応に近づいている反応が二つある。ということは…
「あっちに行けば、誰か三人には会えそうだね」
「多分、光子郎がこれで…近づいている二つがヤマトとタケルだと思うぞ」
「でも、ここからじゃかなり遠いみたい…ねぇ、一つ試してみたいんだけど良い?」
「何だ?」
「ちゃんと、いつでも完全体になれるのか確かめたいなーって」
「お前…この姿の俺にそんなこと言うか!」
完全体に進化した影響で、俺は今チョコモンまで退化している。アンティラモンになれたのは良いが、反動で幼年期になるのがな…退化した直後は腹が減ってしょうがないし、アンティラモンに進化するのは現状いざという時だけにしたい。
「ごめんごめん、冗談だよ!これくらいなら、急いで行けば私の足でも間に合うだろうし!」
「ったく…よっ」
俺が結衣に飛びつき、結衣が俺を受け止めた。結衣が少し驚いたような顔をしていたが、俺はすぐに顔を逸らし、進行方向に向き直る。
「よし、それじゃ出発!」
「ふふ…しゅっぱーつ!」
そんな子供じみたやり取りをしてから進む。数時間後、ヤマト達と合流するまで、他愛ない会話は続いた。
いつでも完全体になれるのか…それは、俺達には既に分かりきっていることだった。
一番最初の予定ではここで完全体になる予定は無かったんですが、悩みに悩んだ結果こうなりました。
次回は原作で言うとガルダモン進化回からになりますのでよろしくお願いします!
また、ここから先はアニメ感想コーナーやりますので、いつものようにネタバレが嫌と言う方はブラウザバックをお願いします!ここまで読んでいただきありがとうございました!
それでは、約二ヶ月ぶりのアニメ感想です!
といっても、二ヶ月分を一話一話感想言っていったらキリがないので、出来るだけ簡潔にお話出来るようにしたいと思います。
一番語りたいのは、やはりあのミレニアモンの回ですね!自分は昔のデジモンのゲームをやったことが殆ど無く、ミレニアモンも存在しか知らなかったんですが、滅茶苦茶デカくてビックリしました…ウォーグレイモンでさえ原作より巨大だと思いましたが、あれはデカすぎですよね。
そしてその後のゴッドドラモンとホーリードラモンもデカすぎ!でもあの頂上決戦はバトルに力入っていましたね~!ホーリードラモンのアポカリプスとかカッコ良すぎでした。最後のウォーグレイモンの元気玉にはちょっと笑ってしまいましたが、まあ元々そんなモーションですからね…でも紋章が一杯出てきた時、ウォーグレイモンがマーシフルモードになるのかと思いましたw
正直ミレニアモン戦で終わるのかと思う程でしたが、そんなことはありませんでしたね。ようやく紋章について触れてくれると…しかも、ここからは他の子供達のデジモンが究極体になっていくっぽいですよね!そこはワクワクしてます!
ただ、正直に言うならグダってる感がまた出てきてしまっているような気がしなくもありません。紋章も出来ればミレニアモン戦の前に触れて欲しかったです。本当に最終回にしてもおかしくない回だったので、どうしても全員が究極体になれるようになった後でミレニアモン(ラスボス)と戦って欲しかったなと思ってしまいます。
皆さんは今後出てくるラスボスはどんなデジモンだと思いますか?自分が思い浮かぶのは、ルーチェモンとかデーモンとか、七大魔王が出てきてしまうんですが…そこも少し楽しみではありますかね。
と、少し長くなってしまいましたが、ここで感想は終わりにしたいと思います!ここまでお付き合い下さった方々、本当にありがとうございます!来月もよろしくお願いします!