デジモンアドベンチャー 優しさの少女と転生デジモン 作:Zelf
第三話 漂流?冒険の島!
彼らは空から落ちてきた。俺達が投げた物と思われるデジヴァイスを身につけて。デジヴァイスが物理法則無視で遙か彼方まで飛んでいくのは何とも言えない不思議な光景すぎた。ってか、投げたっていうよりいつも通りポンポン遊んでただけなんだが。途中で重力無くなったみたいに飛んでった…で、その後八人の子供達がバラバラに落ちてきたのだ。
ちゃんと、俺のパートナー、イターーー!!マジで良かった、マジで!!これでニートとはおさらばよ!!
コロモン達が感激してそれぞれのパートナーの元に向かうのを見て、俺もパートナーと思われる原作では存在しない子が落ちたと思われる場所を目指す。特訓の成果か、俺は既にスライム体での動きに大分順応し、コロモン達と変わらないくらいのスピードで動き回れるようになった。何日も特訓した甲斐があったってもんだ。やっと言葉も片言なのが直ってきたし。
感覚で何となーく進んでいたが、すぐに彼女は見つかった。やっぱ女の子か。どうやら気絶しているらしいが…背丈から大体小学校高学年くらいか?髪は後ろで纏めていて、長さは肩甲骨の辺りまであるな。
「おい。おい、起きろ~」
「ん……ぅん…」
体全体を使って彼女の肩を揺さぶる。しかしそれでも彼女は呻き声のような声を上げるだけだ…いや、待てよ?この最初の着地で当たり所が悪かった場合はどうすれば良いんだ?アニメではあまり気にせずスルーしていたが、ここは現実。大いにあり得る。デジタルワールドで死んだら現実世界でも死ぬのだ。
「おい!生きてるなら返事しろ!おい…結衣!!」
「…ん……んん?」
名前を呼ばれたから反応したのか、彼女はうつ伏せの状態から起き上がり、微睡んだ目で俺を見つめる。その後、辺りを見回し…また俺の方を見て首を傾げた。
「今、誰かに呼ばれたような…気のせい?」
「気のせいじゃないな」
「っ!?ぬ、ぬいぐるみが…喋った?」
…ああ、デジモン知らねぇんだもんなぁ。そりゃ化け物を見たような反応するのも無理ないか。
「どうやら無事みたいだな!どっか痛い所無いよな?記憶喪失とかなってないよな??」
「…小林結衣、十一歳。お台場小学校六年生。うん、大丈夫。ちゃんと覚えてる」
ほう…何かこのガキ、小学生っぽくないな。中学生って言っても通用しそうな大人っぽさだ。小6なら当たり前かもしれんが。特に女子は成長早いって言うしな。
「それで…君は?ここ、私達がいたキャンプ場じゃないよね?というか…何者?」
「俺はチョコモン。ここはデジタルワールドって世界のファイル島だ」
「デジタル…ワールド?ファイル島…?」
「混乱するのは分かるが、そこはとりあえず流してくれ。お前は知らない場所に漂流したようなもんだ」
「漂流…そうだ、皆は!?」
結衣はそう言って、俺に詰め寄ってきた。俺を持ち上げて、自分と同じ目線にして俺を揺さぶるようにしながら。
「私の他にも子供がいたはずなの!その子達はどこ!?っていうか、ここは日本じゃ無いの!?君、なんて動物!?」
「く、お、おい!ちょ、しゃべ…!」
「え、あ…ごめん」
揺さぶられ続けて脳が揺れてろくに喋ることも出来なかった。グロッキー状態になりそうな所に気づいてくれて助かったぜ…え?脳ってどこだよって?知らん。
「ったく…揺さぶられちゃ喋れるモンも喋れねぇよ!」
「謝ってるでしょ…ごめんって」
「ったく…まず、恐らくだが他のガキ共も無事だ。俺の仲間達が探してる」
「そ、そうなんだ…ひとまず安心?」
「俺らは別に敵ってわけじゃねーぞ?」
「どうだか。そこは私が判断する」
「ああ、そうしてくれ」
「え?」
そこはお前に賛成だよ。信頼はすぐには作れないモンだからな。ちょっとずつ仲良くなれれば良い。
「まっ、すぐに俺達は敵じゃ無いってのは分かるだろ。今はとにかくお前の仲間を探そうぜ」
「わ、分かった…」
なんか怪しまれてる?別に何もしないんだが…俺、悪いスライムじゃないよ?
「あー…多分だが、あっちの方か?俺の仲間達はあっちを探してる」
「じゃあ行こう。早く合流しないと」
そう言って結衣は俺をまた持ち上げ、抱きかかえるようにして歩き始めた。
「…お、おい?」
「…いいでしょ、別に。私が運んであげるよ」
え、怪しんでたんじゃないのか?いや、そうか。こんな見知らぬ土地じゃ不安だよな。こうしてれば安心してくれるなら、俺はこのままでいるとするか。大人っぽいと思ったけど、まだ小学生には違いない。
結衣は他の子供達の名前を呼びながら、俺は野良デジモンがいたりしないかを警戒しながら森の中を進んでいく。
「…なぁ」
「…何?」
「さっきからさぁ、くすぐったいんだけど。止めて貰ってよろしいか?」
「やだ。っていうか何その喋り方…変」
何度か結衣が俺の抱き心地を楽しむようにムギュムギュと動かすので、注意したんだが…別に痛くは無いんだけどさ。なんかこう、ムズムズする。スライムを抱きしめて喜ぶ女子がいるとは…スライムで喜ぶのって男子だけじゃないの?
「…!結衣!」
「な、何?大声出したりして…」
「早く隠れろ!どっか木の陰で良いから!!」
「う、うん…分かった」
結衣はその辺の木の陰に座り込み、周囲の様子を探り始める。
少しすると、ブゥーンという羽音のような耳障りな音が聞こえる。それだけでなく、ズシーンという何か大きな物が倒れるような重たい音もしている。これはアイツに間違いない。
「な、何この音…?」
「…恐らく、クワガーモンだ」
「クワガーモン?」
「デッカくて赤いクワガタみたいなデジモンだ。成熟期だから、幼年期の俺達じゃ相手にならない」
「良く分からないけど、そのクワガーモンって奴がこの森にいるってこと?」
「ああ」
「…急がなきゃ」
「今はジッとしてやり過ごすしかない。襲われたら一溜まりもないぞ」
クワガーモンが暴れているってことは、既に太一と光子郎は奴に遭遇しているってことだ。ということは、既に選ばれし子供達は殆ど集まっているはず。クソッ…合流には間に合わなかったってことか!確か、見かけだけの木でクワガーモンをやり過ごして、その間にクワガーモンはどっか飛んでったはずだ。その後は……
「いや~~~!!」
「今のって…ミミちゃん!」
あー…一人だけはぐれていたミミがクワガーモンから逃げた先で他の奴らと合流するんだ…ってやば!もう追われてるってことか!?
「仕方ねぇ、行くぞ!」
「うん!!」
結衣が俺を抱えたまま、音のする方へと走り出す。結構速いな…意外と運動得意なのか?不安定な足場だよな、森の中って。
そのまま走り続けて、段々と音が近くなってきていた。もう目と鼻の先にいるはずだが…どこだ?
「…っ!あっちだ、結衣!」
「いた…!ミミちゃん!!」
「結衣さ~ん!!良かった~!!」
「ミミちゃん、こっちは駄目!!」
「え…いやぁ~!!」
ミミは俺達を見つけ、こっちへ駆け寄ろうとしていたが、後ろの奴がそうはさせてくれない。当然だ、クワガーモンから逃げることすらギリギリだと言うのに、奴の進行方向から真横に行こうとしても間に合うわけが無い。為す術無く、ミミはクワガーモンと反対方向に走っていく。
「…チョコモン、アイツの気をこっちに向けさせられる?」
「は!?お前、何言ってんだ!」
「お願い、このままじゃミミちゃんが!」
コイツ、正気か!?普通、あんなデカい化け物見たら逃げたり怖がったりするもんだろ!?ただの小学生が、逃げる以外に出来ることなんて…!
「お願い…チョコモン!」
俺を真っ直ぐに見つめる結衣。その目は恐怖を感じていないわけじゃない…しかし、それ以上にミミを助けたいという意志を感じる目だった。
「…チッ、どうなっても知らねぇぞ!!」
それ程の覚悟があるなら、やってやるよ…!
クワガーモンに“ダブルボブル”を放ち、足にヒットする。成熟期のデジモンに幼年期Ⅱのデジモンがダメージを与えることはないだろうが、粘着質な泡によって地面にほんの少しくっつくようになった。
「ギシャアアアアア!!!」
足に“ダブルボブル”がぶつかったのが分かったのか、こちらに振り返って奇声を発しながら直進してくるクワガーモン。結衣は俺を抱えたまま木々をかき分け、全速力で今まで通ってきた道を駆け抜けていく。対してクワガーモンは木々を薙ぎ倒しながら進んでいく。
…成る程、一度通った道ならルートが予め分かっているし、奴から姿を隠せるように木々を背後にするようにしている。当てずっぽうってわけじゃなかったようだが…クワガーモンは木々を全て薙ぎ倒しつつ進んでも結衣の全速力より若干速い。このままじゃ追いつかれちまう!”ダブルボブル”でも足止めはそんな出来ねぇし…!
仕方ねぇ…今回は俺が体張ってやるしかねぇか。正直……あんな巨大な奴に攻撃されて無事に済むのかって恐怖はあるが…パートナーの子供が覚悟決めてんだ、俺も覚悟決めねぇとな!!
「…うおおおおっ!」
「チョコモン!?」
「右!隠れてろ!!」
結衣の腕の中から飛び出し左側の木に飛び移る。結衣は俺の指示通り進行方向の右側、つまり俺のいる方と反対側の木に隠れ、俺はそれを確認しながら足下に“ダブルボブル”を出して自分とくっつける。その作業が終わった所でクワガーモンが見えてきた。
「くらえっ!」
もう一度、今度はクワガーモンの顔面に“ダブルボブル””を直撃させたことで、奴は進行方向を俺の方へと向かってきた。俺の姿を捉えたクワガーモンはその大きな顎を下から振るい上げ。
「ぐぁっ…!」
「…っ!」
俺がいた木と一緒に大きく吹っ飛ばされた。くそ、めちゃくちゃ痛ぇ……っ!!
だが、乗っていた木の枝に貼り付いていたおかげでクッションになってくれたようだ。思ったよりダメージは無い…飛ばされる方向も良い。丁度結衣の近くに落下してきた俺を、結衣は驚きながらも回収したと同時にその身をクワガーモンの死角に隠した。
よし、これで結衣の方を見ていなかったクワガーモンは、このままどっかに逃げていくだろ!
「……」
「……」
ブゥゥーン……ドォーン…と、羽音と木が倒れる音がどんどん遠のいていく。上手くいった。
「「はぁ~……」」
俺達は同時に溜息をついた。きっと逃げていた時間は精々一分も無いだろうが…消耗が半端ない。結衣も疲れ切っているな。マジ痛ぇ…
「…気は済んだか?」
「…うん。ごめんなさい」
「こういうのを無謀って言うんだ。もう止めとけよ…俺が生きてたのは奇跡とも言えるな」
「…できるだけ、そうする」
「できるだけ、かよ…ったく、頼むぜ、相棒」
…ま、他人の為に命を賭ける事が出来るその覚悟は認めてやるか。大した小学生だ、お前は。
☆☆☆
ようやく全員集合した俺達。クワガーモンもようやくどっか行ったみたいだし、ひとまず安心だな。
「よし、これで全員だな!」
「良かった、結衣先輩が無事で…」
「ありがとう。皆も無事で良かった…怪我してる子はいない?」
…コイツ、本当に心配性というか何というか。一番危険な目にあったのは俺達なんだが?クワガーモンに吹っ飛ばされたとはいえ、俺ももう殆どダメージ無くなっているんだから離してくれ…そう言うと悲しそうな顔で見てくるし抱きしめる力が強くなった。
「結衣君、君が抱えてるそれって…」
「チョコモンだ、よろしくな。そいつらの仲間だ」
「えっと、デジモンの皆。私は小林結衣。丈君と同じ六年だよ、よろしくね」
「よろしく~!」
しかし、小6となるとあんまり02とかtriには関われないかもしれないな…丈も02だと忙しくて来れずにいたみたいだしな。俺もテイルモンみたいに常時成熟期になれるように特訓しようかな?
「それで、これからどうしようか?」
「やっぱりさっきの場所まで戻って、大人達が来るのを待とう!」
と、丈が何か馬鹿なことを言ってるし…いや、クワガーモン見た時点で日本じゃ無いって気づけよ。お前ら以外人間なんてこの世界にいねぇんだって。
「おい、丈よ」
「え?ぼ、僕?」
「お前はさっきのクワガタ野郎に喰われたいのか?」
「喰われっ…!?そ、そんなわけないじゃないか!」
「だったら、この森をさっさと抜けるべきだな。今のクワガーモンは興奮してるから、いつ襲われるか分かったもんじゃ無い」
「そんなのいや~!!」
「チョコモン達、森の出口分かる?出来ればさっきみたいな、デカいのがいなさそうな安全な場所とかあったら助かるんだけど…」
「そんなとこあったか…?」
結衣の質問に答えようとしたその時だった。
ブゥゥーン!!
また嫌な羽音が聞こえてきやがった…早くこの森から抜けるべきだったか。
「ま、また!?」
「皆、逃げるぞ!」
全員で森の中を走る…が、さっきと一緒だ。クワガーモンの方が速いからすぐに…って、もうすぐそこにいるし!?
仕方ねぇ、俺が飛びだして…って、結衣のホールドが強すぎる!抜けれねぇっ!?
「伏せろ!」
ヤマトの声に従い、全員で倒れ込むように地面に伏せると、クワガーモンは俺達の真上を通り過ぎて上空へと飛んでいく。
「な、何なんだよこれは…一体ここはどういう所なんだ!?」
「また来る!」
大きく旋回したクワガーモンは、また森の中に姿を消した。上から俺達の位置を把握し、逃げ道が無くして追い詰める気か!つまり、アイツと反対方向が森の出口…どうする。まだ奴とは距離があるが…バラバラに逃げたとしても、全員がやられない保障なんて無いのだ。
「くそ、あんな奴にやられてたまるか!」
「太一、無理よ!」
「そうだ、俺達には何の武器も無いんだぞ!」
「ここは、逃げるしか!」
「くっ…」
太一はクワガーモン相手に立ち向かおうとしたが、皆の説得により渋々逃げることを承諾した。案の定、クワガーモンのいる方と反対側へと一心不乱に走る子供達。そうすることが奴の作戦だとも知らずに…いや、アイツにそんなアタマは無いか。ただの狩猟本能のままに追い詰めようとしているだけだろう。
このまま進めばあの崖に追込まれる…しかし、ここはこのまま進むしか無い。子供達は…結衣は、俺が守ってみせる。
「……」
「…チョコモン、まだ痛いの?」
「いや、大丈夫だ。それより今は逃げることに集中してくれ」
「…うん」
ホント、人のことばっか気にしやがって…足止めたら死ぬぞ?俺の覚悟を無駄にしないでくれよ?
そして、ついに森を抜け、開けた場所に出た。しかし、そこは崖…他に逃げ場は無い。太一が下を覗いているが、ここはとても小学生や幼年期のデジモンが降りられない。下は川だが、水面に叩きつけられれば場合によっては無事とは言えないだろう。
「こっちは駄目だ!別の道を探すんだ!」
「別の道って…っ!」
「皆、一旦茂みの中に…っ!」
「ギシャアアアアア!!」
結衣が全員に隠れるように指示を出そうとしたその時、とうとうクワガーモンが森から現れた。子供達は崖の方へと逃げるしか無く追い詰められてしまった。
コイツ…咄嗟の判断力にも優れているな。さっきクワガーモンから隠れてやり過ごせたからかも知れねぇが…今この場に置いて最適解と言える行動を指示しようとしていた。
っと、そんなこと考えてる場合じゃ無い!クワガーモンが森から飛んできて、Uターンして戻ってくる!
「あっ…!」
「コロモン!」
「くらえっ…!」
「プウッ!」
「キシャアアアアアアアアア!!!」
コロモンと同じタイミングで飛び出た俺は、さっきと同じように“ダブルボブル”でクワガーモンの気を逸らして方向をずらそうとしたが、逸らしきれずに奴の体当たりが直撃し吹っ飛ばされた。このままでは子供達がクワガーモンに押し潰されてしまう…そう思った時、ツノモン達残りのパートナーデジモン達が俺とコロモンと同じ行動に出た。結果も俺達二人と同じだったが…何とか方向を逸らし、奴は森の中へ突っ込んでいった…ざまぁみろ。
「馬鹿野郎、なんて無茶を!」
「だって…僕は、太一を……守らなくちゃ…」
「コロモン…」
それぞれが自分のパートナーデジモンを抱き上げていく。俺も駆け寄ってきた結衣に、震える体に力強く抱きしめられた。
「結衣…大丈夫だ。あんま締めつけないでくれ…」
「…バカ。無謀なのは君もだよ」
「こりゃ、一本取られたな……っ」
復帰してきたクワガーモンが、森の中から獲物を追い詰めるようにジワリジワリと迫ってくる。選ばれし子供達は崖の先まで追込まれてしまった。
「…おい、降ろしてくれ」
「え…?」
「ここが、正念場なんだよ!」
「だ、駄目!さっきだって吹っ飛ばされてたのに、敵うわけ無い!!」
他のデジモン達と同じように、結衣の腕の中で暴れる。結衣も必死に抑えつけようとするが、俺は無理矢理結衣の腕から飛び出た。
「あっ…!」
そして、俺はコロモン達と同じように、結衣の腕の中から飛び出してクワガーモンへと向かっていった。
この時、俺は凄く不思議な気持ちだった。
今まで他人の為に体を張るなんてしたことが無かったのに、死後…しかも会って間もない小学生のガキを守る為に怪物に立ち向かうなんて、思ってもみなかったからな。こんな体はったこともないし。
「チョコモン!!」
結衣が俺を呼ぶ。その声は悲しみに満ちていた。
パートナーになる子供がどんな奴なのかと不安だったが…優しさの紋章に相応しい子供だ。中々賢いし、性格も思いやりがある良い子だ。
結衣、任せろ。俺のテイマーとして認めたお前のためなら、俺はこんな奴に負けたりしない、俺は…どこまでだって強くなってみせる!!
そう思った、その時だった。
「え…!?」
デジヴァイスによって引き起こされた進化の光。それが俺含めたデジモン全員に降り注ぐ。
…体の内側から力が湧いてくる。まるでこの光によって俺の中の何かが反応しているみたいだ。体が作り替えられるかのような…でも、全然恐怖は感じない。どこか清々しさを感じるくらいだ。俺は自身に起こっている変化に身を任せる。
「チョコモン、進化――!!ロップモン!!」
☆☆☆
こんなの、嫌だよ。あんな怪物に敵うわけ無い。さっきは運良くあのクワガーモンって奴の攻撃から助かったけど…あんなの、チョコモンの言う通り奇跡。何度も同じ事が起きるとは…あり得ない。今、クワガーモンとチョコモン達との間には何も無い。衝撃を和らげることも、出来ないんだ。
この見知らぬ土地で目を覚まして、太一君たちがいなくて…私一人しかいないと思って絶望してしまいそうになった時、チョコモンがずっと励ましてくれていた。皆と合流できると知ることが出来て、本当に安心した。口調はその可愛らしい見た目に反していたけど、私には何となく彼(?)が優しいんだって思えた。
昔から知っていたかのような、そんな不思議な感じ…最初こそ警戒したけど、それも最初だけだった。あの子は、私のことを体を張ってまで助けてくれた。私の頼みを聞いてくれた。
…だからなのかな。チョコモンがクワガーモンと戦う為に今、コロモン達と一緒に飛び出して…凄く、胸がギュッて締めつけられるような気がするのは。
もうチョコモンは、私にとっては友達の一人だった。いや…友達というよりも……そうだ。さっきチョコモンが言ってた。私のことを、相棒って。その言葉が何となく、しっくりきた。
私はただ見ていることしか出来なくて…嫌だよ、チョコモン。勝手に、いなくならないでよ…!もう、
「チョコモン!!」
皆がそれぞれデジモン達の名前を叫んだ。その時、突然辺りが暗くなったように感じた。空から七色の光が八つ、デジモン達に降り注いで――
「コロモン、進化――!!アグモン!!」
「ピョコモン、進化――!!ピヨモン!!」
「モチモン、進化――!!テントモン!!」
「ツノモン、進化――!!ガブモン!!」
「トコモン、進化――!!パタモン!!」
「プカモン、進化――!!ゴマモン!!」
「タネモン、進化――!!パルモン!!」
「チョコモン、進化――!!ロップモン!!」
デジモン達の姿が…変わった!?チョコモンも、茶色い二足歩行のロップイヤーみたいな垂れ耳のウサギっぽくなってる…!
「皆行くぞーっ!」
オレンジ色の恐竜っぽい、コロモンだった子の掛け声に従って、全員でクワガーモンに体当たりしていく中、何でか分からないけどチョコモンだった子は動かない。あれ?な、なんで?
それでも七体もいればクワガーモンが若干後ろに仰け反りそうになるくらいの威力はあった。でも、クワガーモンは右腕二本を振るって弾き飛ばしてしまう。
「ああ…!」
「これくらい大丈夫!」
コロモンだった子の言う通り、ダメージはそれ程大きくないようで、全員が体勢を立て直していた。さっきまであんなに小さな子達だったのに…凄い!姿が変わって、体が強くなったみたい…
「“ポイズンアイビー”!」
クワガーモンが背中にある羽を広げ飛び立とうとしたその時、頭に大きな花があるタネモンだった子が両手の爪のような物を伸ばしてクワガーモンの足に巻き付ける。クワガーモンは空中で動きを止めてしまった。
「“エアショット”!」
トコモンだった子が、頭の辺りにある一対の翼を羽ばたかせ、クワガーモンの頭上に何かを当てた…んだと思う。私には何を飛ばしたのか見えなかった。クワガーモンの頭部から衝撃音だけが聞こえた。
「“プチサンダー”!」
テントウムシみたいな、モチモンだった子がクワガーモンの頭に…電撃?みたいな何かを当てて怯ませる。
既に片足をタネモンだった子によって地面に降ろされていたクワガーモンがもう片足を地面につけようとしたその時、プカモンだった白い毛の子が丁度クワガーモンの足と地面の間に勢いよく転がり込み、クワガーモンはバランスを崩し片膝をついてしまった。
「皆、離れろ!“ベビーフレイム”!」
「“プチファイアー”!」
「“マジカルファイアー”!」
コロモンだったオレンジ色の恐竜みたいな子、ツノモンだった毛皮を着たツノの生えた子、ピョコモンだったピンクの鳥みたいな子が放った攻撃で、クワガーモンの体が徐々に着火。今ので所々燃え始めている。完全にこっちが優勢みたい…あんな巨大な敵相手に、凄い…!
それにしても…チョコモンだったあの子が最初の位置から未だに動いていない。何か、その小さな手の平を閉じたり開いたり、ピョンピョンと軽くジャンプしたり…体の調子を確かめているような動きしかしていない。
そうこうしている間に他の子達はチョコモンだった子の近くに集まっていて、クワガーモンが奇声を上げながら所々燃えていた体を振り回して消火してしまう。ああ、このまま倒せると思ったのに…!
「よーし、もう一度だ!!」
全員でさっきと同じ攻撃をしようとしたその時だった。チョコモンだった子は跳躍し、グルグルと全身を使ってコマのように回り始めた。
「“プチツイスター”!」
チョコモンが出した竜巻が、他の子達の攻撃によって燃えてしまっていたクワガーモンに少し遅れてヒット。竜巻が炎を纏って、さらに火力が上がる。元々上半身が燃えていたクワガーモンは、竜巻によって全身が燃えてしまった。
そして遂に、クワガーモンはそのまま後ろへと蹈鞴を踏み、森の中へと後ろ向きに倒れ込んだ。クワガーモンの姿は、森の木々の中に消えていったんだ。
「やった…!」
「太一~!!」
デジモン達が私達の所に帰ってくる。勿論、あの子も私の所にテクテクと歩いてきてくれた。
色々驚いたけど…その雰囲気というか、この子がチョコモンのままなんだって分かって。私はその子を思いっきり抱きしめちゃった。
「…あー、よしよし。怖かったか?」
「ううん……ありがとう」
「どういたしまして…って、苦しいっての!」
私達を守ってくれた…そして、無事に戻って来てくれた。その事が、本当に嬉しい。
でも、安心していたその時だった。
「…!チッ、やっぱりか」
「どうしたの、チョコモン?」
「太一!!」
チョコモンが不機嫌そうな顔をして、空ちゃんが太一君を大声で呼んだ。私達は、一番森に近かった太一君を見た瞬間、背筋が凍り付くような寒気がしたんだ…だって、森の中から赤い二本の、巨大なハサミのようなものが見えていたから。
森の中から一歩ずつゆっくりと近づくクワガーモン。ゆっくりといってもその重量のせいで足音は隠し切れていなかったから、太一君達はすぐに気づいて私達の方へと走る。クワガーモンはもう疲れ切っているような動きしてるけど…崖に追込まれた私達は、ここから逃げることが出来ない。
「ど、どうしたら…」
「クソッ…――!」
クワガーモンがその巨大なハサミを地面に突き刺し、私達は巨大な岩ごと崖から落とされることになってしまった。