デジモンアドベンチャー 優しさの少女と転生デジモン 作:Zelf
それと、ラスエボ見ました!感想は後書きにて。
「どうしたら…」
クワガーモンがその巨大なハサミを地面に突き刺そうとする直前、俺は出来るだけ大声で叫んだ。
「クソッ…おい、ゴマモン!!飛び降りてくれ!!」
「ちょ…えっ!?何言って…」
「オッケー、任せて!」
「うわぁっ!!」
ゴマモンが川に飛び込むのと、クワガーモンによって崖の先端が崩されるのは同時だった。これで川に落ちる前に魚達が何とかしてくれるだろう。
「空っ!」
「光子郎っ!」
「タケルーっ!」
空を飛べるピヨモン、テントモン、パタモンはそれぞれのパートナーを助けようとしたが、成長期のデジモンではパワー不足…すぐに力尽きて落ち始めた。
「えいっ!」
今度はパルモンが手の触手を伸ばして岩に掴まるが、ここら辺の岩壁は脆いらしい。掴んだ部分がすぐに崩れる。
「ぐ…ぬぬっ!」
「チョコモン、下は水だから落ちても大丈夫だよ!だから――」
「うるせぇ、黙ってろ!」
俺も耳を使って滑空を試みているわけだが…やはり子供一人でも持てるわけが無い。他の子供達より落下が少しばかり遅くなっただけだった。ゴマモン、早くしてくれぇ…!
「“マーチングフィッシーズ”!」
ゴマモンを中心にカラフルな魚達が集まり始め、子供達は次々とその魚達の上へと着地。全員が着地し終わり、俺はすぐに崖の上へと視線を向ける。
「おい、あれ!」
「ゴマモン、逃げれるか!?」
「急げーっ!!」
さっきのが最後の力を振り絞った攻撃だったのかクワガーモンも川へと降ってくる。ゴマモンの尽力によって押しつぶされることは何とか回避することが出来た。そこで皆が安堵の溜息を漏らす中、結衣はまだ顔を引きつらせていた。
「ふぃ~、やっと一息つけるな!…結衣?どうした?」
「ね、ねぇ…まだ安心は出来ないと思うんだけど」
『え?』
「あっ!」
クワガーモンが落ちたことによって、一時的に川の水位が上昇する。それに流されるように、俺達も近くの陸地まで流されることになった。
何とか濡れるのは回避できないかと思ったんだが…やっぱそう簡単にはいかねぇよな…
☆☆☆
何とか全員無事に近くの陸地に着岸し、ようやく落ち着くことが出来た私達。ずぶ濡れ…気持ち悪い。お風呂入りたいけど、そうも言ってられない。
「…やっと、本当に助かったみたいだな」
「何だったんだ、さっきの魚は…?」
「あれはね、“マーチングフィッシーズ”さ!」
「へ…?」
「オイラ、魚を自由に操ることが出来るんだ!」
「そうか、お前のおかげだったのか!ありがとうプカモン、じゃなくて…えっと、その」
「ゴマモンだよ」
「ゴマモン?」
ゴマモン…そういえば、さっきチョコモンもそう言ってた。姿が変わったから、名前も変わったってこと?
「どうなっちゃったの、トコモンは?」
「今はパタモンだよ!」
「僕達、進化したんだ!」
「進化?なんだ、進化って?」
「普通は、ある生物の種全体がより高度な種に進化することですけど…」
…光子郎君、凄い。四年生でそんな完璧な答え方出来る子、他にはいないと思う。私もそんな的確な答え方出来ないよ?
「そうですわ、その進化!わいはモチモンからテントモンに!」
「アタシはピョコモンからピヨモンに!」
「俺はツノモンからガブモンに…」
「私はタネモンからパルモンに!」
「そして僕は、コロモンからアグモンになったんだ」
「ふぅん、とにかく前より強くなったみたいだな。その、進化してもデジタルモンスターなのか?」
「そうだよ、太一と会えて良かったよ!」
「は?なんで?」
「僕は自分だけだと進化出来なかったんだ。きっと太一と会ったおかげで進化出来たんだよ!」
成る程…もしかして、ここにいる子達は皆、私達と会えたから進化出来たってこと?じゃあ、チョコモンだったこの子も…って、自己紹介してないじゃん、この子だけ。
「ね、君は今なんて名前なの?」
「ん?俺は、チョコモンからロップモンになった」
「ロップモン…もうチョコモンにはならないの?今も可愛いけど、チョコモンも――」
「止めろ、可愛いって言うな。しばらくはこのままだっ」
「ごめんごめん、怒らないでよ」
「怒ってねぇ!」
本気で怒ってないのは分かってるけどね。しばらくはこのまま、か…ってことは、またチョコモンになる時もあるんだ。でも、しばらくって…ロップモンでいることが普通になるってこと、だよね?じゃあなんでチョコモンになる時があるんだろ?えっと、チョコモンがロップモンになるのが進化で、その逆だから…退化?する時もあるってこと、かな?
「それより、これからどうする?」
「元の場所に戻ろう。大人達が助けに来るのを待つんだ」
「…ハァ」
ロップモンが溜息を漏らした。丈君、さっきロップモンになんて言われたか忘れちゃったみたい。あんな非常事態だったから、いちいち気にしてられなかっただろうけどね。
「戻るって言ってもな…」
「随分流されちゃったし…」
「崖の上にまで戻るのは、簡単じゃなさそうだぜ」
「じゃあどうしたら良いんだ?どこか道を探して…」
「…丈君、多分ここ、日本じゃないと思うよ」
「えぇ!?」
「確かに…少なくとも、キャンプ場の近くじゃ無いのは間違いないな」
「そうですね…植物がまるで亜熱帯みたいだ」
「ホンマや!」
「え、分かるの!?」
「いんや」
テントモン、なんで適当に返事したんだろ…?会話に混ざりたかったのかな。光子郎君は呆れたような反応をしてるけど、可愛らしいなって私は思った。でも確かに、全然見たことが無いような花ばっかり…パルモンの頭の花に似てる?
「でも降りてきたんだから、戻る道もあるはずだ!」
「そうね、とにかく戻ってみればどうしてこんな所に来たのか、何か手がかりがあるかも」
「えぇ~、でもさっきみたいなのが他にもいるんじゃ無い?」
「いるわよ」
「ほらぁ…」
「危険は犯したくないな…」
「他の人間は?」
「人間?太一みたいな?見たこと無いよ、ここはデジモンしかいないんだ」
「デジモンしかいないって言っても…お前ら結構色んな格好してるよなぁ」
「…うん、やっぱりここは日本じゃ無い。クワガーモンみたいな生き物なんて、普通はあり得ないもん。どういうわけか、私達はここに来ちゃったってことだよ」
「確か…ファイル島、でしたっけ」
「本当に島なのか?」
「聞いたこと無い島ですね」
「日本じゃ無いのか…」
「とにかく行こうぜ!ここでジッとしててもしょうがないよ!」
そう言って、太一君はどこかへと歩き出そうとしている。それを、ヤマト君が呼び止める。
「おい、どこへ行く気だ!」
「さっき、海が見えたんだよ!」
「海?」
「そう、だから行ってみようぜ!」
…もしここが本当に島で、海が近くにあるんだったら、砂浜にSOSを書いておけばヘリとか飛行機から見てくれるかも知れない。危険で戻るのにも難しいなら、そっちの方が良いかも。っていうか、明らかに東京ではないのは確か。だったらSOS書く意味も無いかも…それは言うべきじゃ無い。希望が無くなっちゃう…
「皆、行ってみよう。海に行けば何か分かるかも知れないし」
「そうですね」
次々と太一君の後についていく皆。でも、一人だけまだ立ち止まっている人がいた。
「こういう時は、出来るだけジッとして、大人の助けが来るのを待つんだ。その為にも、本当は元いた場所へ――」
「丈~!早くおいでよ~!」
「えっ?お、おーいっ!」
結局、丈君もしっかりついてきていた。
森の脇道を、全員が小話しながら歩いて行く…訂正、ゴマモンだけは川の中を泳いで進んでる。私はロップモンを抱きしめながら、最後尾を歩いていた。さっきもチョコモンだった時に抵抗しようとしていたけど、ロップモンは私がこうするだろうって予測していたのか最初だけしか抵抗はしなかった。
皆に聞こえないように、小声でロップモンに話しかける。
「ね、ロップモン。君なら何か知ってることもあるんじゃないの?」
「何でそう思うんだ?」
「だって、最初に会った時…君は、私達がこの世界に漂流したって言ってなかった?それにデジタルワールドがどうとか…ここって日本っていうか、地球じゃないの?」
「…何でそれ、さっき言わなかったんだ?」
「…言えるわけないよ。皆パニックになっちゃうだろうし。荒唐無稽過ぎて信じてもらえないかも知れないしね」
「なるほどな…お前らしい」
ロップモンが何か考え込むような仕草をした後、私の顔を見上げた。
「…本当に知りたいか?」
「…うん。君が嫌だって言うなら、無理には聞かないけど。でも、出来るだけ情報が欲しいの」
「…分かった。だが、今は駄目だ。今夜なら…まあ何とか」
「…ありがとう、ロップモン」
やっぱり、この子は口が悪いだけで根は優しいんだ。
「おう…って、おい!?」
「どうしたの?」
「どうしたって、お前がどうした!?止めろ、顔を埋めるなっ」
だって、ずっとこうしてみたかったんだもん!あぁ、すっごい柔らかくてフワフワしてて気持ち良い…チョコモンの時も思っていたけど、ロップモンになってから抱き心地が凄く良いんだよね。私が持ってる中で一番抱き心地が良いぬいぐるみのメメたんよりも良いかも。特にこの耳が良いよね、やっぱりウサギって言えばピョンって尖った耳が代表的かも知れないけど、ロップイヤーって凄く可愛らしいからいつか触ってみたいって思ってたんだ。あ、でもロップモンってウサギなのかな?ウサギだよね!だってこんなに可愛らしくて、目もクリクリしてて可愛らしいんだもん!
「えーい、鬱陶しい!離せって…言ってんだろっ!」
「あっ…そういえば、ロップモンって飛べるの?さっきちょっと浮いてた気がするけど?」
「ただ耳で滑空してるだけだ!飛行は出来ねぇよ!」
どうやら飛べるわけじゃなくて、耳で空気抵抗を大きくしてるだけみたいだね。それにしても、飛んでる所も可愛らしいかったな…カメラ、持ってくれば良かった。またやってくれないかな?
「お!見えたよ、海だーい!」
そんな感じで私達がスキンシップ(?)を取っていたら、川を泳いでいたゴマモンがそんな声を上げた。
☆☆☆
海に近づいてきた俺達。足を止めると、どこからか電話の音が聞こえてきた。全員で駆け足で向かっていくと、砂浜の上に立つ複数の電話ボックス。すっげぇ不自然な場所に立っていて、結構な音量で「prrrrr」という音が鳴り続けている。これ、公衆電話のくせに電話がかかってくるってどうなのよ?
太一が真っ先に鳴り続けている電話ボックスの扉を開けた途端、音が止んだ。何か、おちょくられてる気がするんだが。ムカつくな、これ。ピンポンダッシュされたらこんな気持ちになるだろうな。
「こんな所に電話ボックスなんて…」
「不合理です」
「でも、これはいつも見る電話ボックスだな、普通の」
「あたしん家の傍にもあるわ」
「ということは、ここは…ここはまだ日本なんだ!」
「日本?丈、何だそれ?」
「…やっぱり違うかも」
お前はいい加減気づけ。デジモンなんていたらテレビに取り上げられるくらいのビッグニュースだろ、絶対。見たことが無い生物しかいない時点で日本じゃ無いって分かれ。
「光子郎、十円貸してくれよ!」
「え、何するんですか?」
「決まってんだろ、電話かけるんだよ家に」
太一のその発言が切欠で、それぞれ自宅に電話をかけてみることにしたらしい。だが、結衣は何か考え込むように両手を組んでボーッとしている。
「お前はかけないのか?」
「…そうだね。やってみる」
そう言って結衣も電話ボックスの中に入って、受話器を取る。それにしてもこの電話ボックス、なんで電気が通ってんだ?明らかにそんなケーブルも見当たらないし、そもそもどうやって建てた、これ。砂浜に建てるなんて、普通無理じゃね?
「…繋がった、けど」
「けど?」
結衣の肩に乗って、受話器に耳を近づける。聞こえてくるのは…やっぱりか。良く聞く電話サービスに似てるけど、わけ分からんこと言ってやがる。
「結衣さん、どうでした?」
「変な所に繋がっただけだったよ。皆も同じみたいだね」
「ええ。でも、丈さんが…」
「丈君?」
「駄目か…よし、じゃあこれなら!」
うわ…色んな所にかけまくってやがる。金の無駄じゃね?意外と破産するタイプか?
「結構しつこい性格してるんですね」
「丈らしいよ」
「どこにかけても聞こえてくるのは、デタラメな情報ばかりか…」
「もう諦めて移動しようぜ」
「ちょっと待て!こっちからかけられなくても、向こうからかかってくることもあるんじゃないか?さっきみたいに」
「ここでジッとしてても、時間の無駄だよ」
「しばらく様子を見たらどうだと言ってるんだ!皆疲れてるんだぞ!」
これは…ヤマトが正しいな。太一や空はとにかく、ミミやタケルにはたった一日で移動するには厳しい距離だ。休憩がてら、しばらく待つべきだと俺も思う。運動得意じゃ無い奴もいるってことだ。
「太一君、少し休んだ方が良いよ。ヤマト君の言う通りだと思う」
「お腹も減ってきましたね…」
「そうだな、お昼もまだだったもんな…よし、休憩だ、休憩!」
「誰か食べる物持ってる?私が持ってるのはこの…あら?これって…あの時空から降ってきた…」
空が腰に取り付けられていたデジヴァイスを手に取る。何だ、皆気づいてなかったのか。結衣も今気がついたらしく、鞄に取り付けられたのを取り外して見ていた。
「おい、食べ物の話はどうなったんだ?」
俺の一言で、話の流れは持ち物の話に戻る。正直お前らの持ち物なんて細かに覚えてはいないからな。ここで確認させて貰おう。
えーっと?太一が単眼鏡だけで、ヤマトはハーモニカくらいだろ?空は携帯医療キット、光子郎はパソコン、デジカメ、携帯電話。ミミと結衣は一番役立つな、本格的なサバイバル用品も入ってる。で、タケルはリュックに一杯になるまで入っているお菓子か。後の食料はミミと結衣が持っていた非常用の缶詰、そして丈が持っている非常食の入ったバッグくらいだ。っていうか丈、お前自分の荷物はどうした?向こうに忘れてきたのか?
ようやく電話ボックスから離れた丈も加わって、非常食を全員で分ける。俺達デジモンの分は割り振られていないが、そこはどうでも良い。結構食料豊富だからな。後々子供達も食料調達していくことになるんだが…ヤバい、久しぶりの調理された飯に目を奪われる。少し離れておくか。つーか、先に木の実でも探しに行かねぇと後々不味い。
「ロップモン?」
「気にしなくて良いから、とっとと食っちまえよ。俺はその辺に食いもんねぇか探してくる」
「ちょ、ちょっと待って」
おい、止めろ。なぜ捕まえる。生殺しに近いから、食いもん持って近づかないで欲しいんだが…意外と力強ぇな、コイツ。
「…いいよ、食べて」
「は?」
「私の分、半分こにしよ?食べたいんでしょ?」
「…サンキュ」
ホント、良く見てるな。ただ食料を少し長く見てただけだってのに…小学生の観察力じゃなくね?まあ、正直助かったがな…この後の展開を考えれば。
結衣から食べ物を貰い、口に含む。他の子供達には見えないよう、上手く隠している。太一とアグモンが堂々と食べていたことで視線がそっちに言ったのもあるが。
そして、子供達の食事が終わった頃になって…とうとう奴が襲ってきた。
「うわぁっ!?」
「な、なんだ!?」
電話ボックスが、次々と間欠泉のように噴き出した水流によって吹っ飛ばされる。それを見た俺達は、咄嗟に海とは反対側へと逃げた。
砂の中から現れたのは、巨大な貝。天辺の部分が高速で回転し、砂を巻き上げている。
「シェルモンや!」
「シェルモン!?」
「この辺はアイツの縄張りやったんか!」
貝全体が見え、その貝からピンク色の本体部分が出てくる。どうやら、縄張りに入ったことで怒ったらしいな。
「皆、こっちへ!」
俺達の後ろは岩壁か…不味いな。それ程高くはないとはいえ、登るのには時間がかかる。そして何より…
「シェルゥッ!!」
「う、うわぁぁっ!?」
「丈!うわっ!?」
シェルモンの頭頂部から出た水流攻撃。直接的な威力は低いようだが、丈みたく落とされるのが関の山だ。海を泳いでいたゴマモンも水流攻撃で吹っ飛ばされる。
「皆、行くぞ!“ベビーフレイム”!」
「プチファイアー…あれ?」
「マジカルファイアー…え?」
「プチサンダー…あ、あ?」
「どうしたんです!?」
「技が全然出てない!」
最初の“ベビーフレイム”だけがヒットした後、他のデジモン達の追撃は不発に終わる。その隙をついてシェルモンがまた水流攻撃で俺達を吹っ飛ばそうとする…が、俺は難なく回避。この攻撃、そこまで威力は無さそうだな…吹っ飛ばすことは出来てもあまりダメージにはならない。ガブモン達は攻撃しようとした隙を突かれたみたいだが。
「エアショット!…あれ?うわっ!」
「ポイズンアイビー!…あら?きゃあ!」
パタモンとパルモンもやられ、残るは水流攻撃から復帰したアグモンと俺だけ。水系の成熟期にどれだけ効くか分からないが…やれるだけやってみるしかねぇ!
「“ベビーフレイム”!」
「“プチツイスター”!」
クワガーモンにも効いた、あの竜巻で火力を上げた一撃がシェルモンの顔面にヒット。露骨に嫌そうな顔してるから、火は苦手らしい。水は火に強いんじゃねぇのか。携帯獣はそうだぞ?
「いいぞ、アグモン!」
「なぜアグモンとロップモンだけが!?」
「すんまへん、腹減って…」
「え?」
「力が出ない~…」
「そうか、アグモンはさっきご飯食べたから!」
「でも、ロップモンは…まさか結衣さん?」
「あ、あはは…さっき分けちゃった」
「成る程…」
「じゃあ、他のデジモンに戦う力は無いってのか!」
俺も全快ってわけじゃないけどな。何も食べてないよりはマシだ。俺が戦えるようになったことで、アグモンの進化フラグが変わっちまうかもと思ったんだが…やっぱ、黙ってみてるわけにはいかねぇ。実際、さっき結衣が飯持ってこなきゃこっそり森に行って適当に漁ってくるつもりだったんだ。
「…アグモン!俺達だけで何とかするぞ!」
「分かった、太一!」
「待って!太一君、ここは連携しないと!ロップモン、アグモンに合わせて!」
「おう、やってやるよ!」
太一と結衣がシェルモンの左右に同時に走り出す。それによってシェルモンはキョロキョロとし始め、その隙に俺とアグモンは懐へと入り込んだ。
「“ベビーフレイム”!」
「“プチツイスター”!」
二度目の高火力攻撃。顎の下辺りを焼かれ、シェルモンも水流攻撃は出来ない。水流攻撃は頭の上から出してるから、懐には出せないようだ。前足を使って俺達を攻撃するが、横っ飛びして難なく回避。スピードも遅いし、上手くやればノーダメージで奴を退けるくらいは出来るはずだ!
その時、加勢しようとしてるのか、太一が電話ボックスの残骸から棒状の部品を手に取って突撃しようとしているのが見えた。進化フラグだし、止めないべきか…いや、流石に危険すぎるな。原作通りに行く保障は無いんだ、どうにかして止めねぇと。
「太一君、待って!私達じゃ攻撃しても殆ど効かないよ!」
「じゃあ、どうしろって言うんだよ!」
「落ち着いて!相手を良く見て、アグモンに指示を出して!サッカーと一緒だよ!」
「サッカーと一緒?」
…ま、原作通りに行かないのは当たり前だな。俺達がいるんだから。俺が動く前に結衣が止めてくれて助かった。ナイスだ結衣。
「ロップモン、上!その後は右に飛んで!」
「おう!“ブレイジングアイス”!」
「氷…?いや、冷気?」
結衣の指示で、シェルモンの頭の触手が来ているのを確認した俺は口から冷気の塊を出して凍り付かせながら粉砕してみせる。続いて前足による踏みつけ攻撃も、指示通りに動いて紙一重で躱す。足下がろくに見えていないんだ、俺達の場所を完全に把握できているわけじゃない。俺も頭上のコイツの行動が完全に把握できないが、結衣のサポートもあって簡単に躱すことが出来る。
その後もシェルモンの動きを伝えることで、俺のサポートをする結衣。相手が鈍重なこともあって、一撃も食らうことは無い。攻撃が当たらず苛ついているのか、シェルモンは俺に集中して攻撃してくる。
「よし…アグモン!アイツの顔に攻撃だ!」
「分かった!“ベビーフレイム”!」
太一が指示を出し、アグモンの火球がシェルモンの顔面にヒット。やっぱ俺よりアグモンの方がパワーは上だな。相性の問題なのかもしれんが、奴は炎の方が嫌がっているように見える。太一も、結衣が言ったサッカーと一緒という意味が分かったみたいだな。ただ攻撃する場所言っただけだが。
サッカーでも司令塔という存在が必要で、チームの状態に合わせて指示を出す役割が存在する。まあ、太一はどちらかというとシュートを決めるフォワードだと思うんだが…司令塔じゃないからといってチームの状況が分からないというわけでは無い。自己中心的なのとリーダーシップは違うってことだな。
「いいぞ、もう一発行け!」
「“ベビーフレイム”!」
「ロップモン!」
「任せろ!“プチツイスター”!」
正面から繰り出した”ベビーフレイム”に合わせて、俺はシェルモンの横側に飛んで高速で回転、三度小さな竜巻で火力を上昇させる。
「シェルゥゥッ…!」
今の攻撃で、シェルモンの頭の上にある触手はかなりボロボロだ。顔や前足も所々火傷している。
「す、凄い…!」
「皆、今のうちに荷物の所に急げ!」
「ええ、ピヨモン達にご飯をあげましょう!」
他の奴らも、シェルモン出現時に放置された自分達の荷物の元へ向かったようだ。シェルモンのタゲは俺達四人に集中しているから、このまま戦えればガブモン達も参戦、一気に形勢逆転出来る!
アグモンの進化は、ひとまず考えないことにする。紋章を使った初進化なら難しいが、成熟期への進化ならまだ機会はいくらでもあるはずだ。つーか、正直そこまで考えてたらやられる気がする。
「アグモン、後ろに回って攻撃だ!」
「分かった!」
「は?後ろって貝…っておい!」
「ロップモン、正面から水が来る!」
「チッ…!」
結衣の指示でギリギリ水流攻撃を回避できたが…アグモンの奴、本当にシェルモンの後ろの貝殻部分に回ってやがる!太一の奴、何考えてんだ!?絶対効かねぇだろ!アグモンも何素直に聞いてんの!?絶対効果はいまひとつ…ってか効果は無いだろ!
「“ベビーフレイム”!」
貝殻部分に攻撃するアグモン。しかし貝殻には罅も入らず、シェルモンはそれを好機と見たのか、本体が貝殻の中へと引っ込んでしまう。
「シェルゥゥッ!!」
「うわぁっ!」
「くっ…!?」
最初に砂の中から出てきたときにやっていた、貝殻の上部分を高速回転させて砂を巻き上げ、貝殻の近くにいたアグモンは大きく吹き飛ばされる。俺もシェルモンに近づこうとするも風で後ろに下げられる…クソッ、今だけはデカい耳が邪魔に思える。風の抵抗ハンパネェ。前世でムーンウォークなんか出来なかった俺が今出来るように…ってそうじゃねぇ。というかこれはウォークっていうよりランだ。ダッシュだ、これ。
これ、どうすりゃ良いんだ…?俺の技じゃこの砂嵐を突破なんか出来ねぇし。アグモンと合わせ技しても火力が足りねぇ。まあアグモンだけがシェルモンの背後の方に行っちまったからアイツだけ孤立してんだよな…もうさ、コイツ放置して良くね?今のシェルモンは砂嵐を起こすのに集中しているんだ、あの貝殻に引きこもってる間は周囲が見えてねぇはずだろ?
「アグモン、一旦離れるぞ!結衣、太一!お前らもだ!」
「わ、分かった…!」
「ここまで来て逃げるのかよ!」
「馬鹿野郎!!誰のせいでこんなことになったと思ってやがる!」
「なっ…なんだと!?」
「お前の出した指示で、アグモンが無駄な攻撃したんだろうが!そのせいで奴にこんな攻撃させる隙を作った!アグモン、お前も考えなしに言うこと聞いてるからこうなってんだぞ!」
「無駄な、攻撃だと…!?」
「ご、ごめん…」
「ちょっと、今は言い争いしてる場合じゃ…!?」
こんな言い争いを…いや、俺がカッとなっていなければ気づけたのかも知れない。シェルモンの回転がゆっくりになっていることに。貝殻の中から、触手が何本も伸びてきていたことに。
「なっ…うわっ!?」
「太一っ!」
「何っ!?」
太一が触手に絡め取られていくのを見て、ようやく俺はシェルモンの変化に気づく。シェルモンは太一を捕らえたことで優位に立ったと思ったのか、本体が姿を現す。クソッ、やらかした!結局捕らえられちまった…!
「チッ!」
「ベビー…うわぁっ!」
「ロップモン、アグモンが!」
「アイツもかよっ…!」
アグモンも太一を助けようとして近距離で必殺技を使おうとしたが、シェルモンの前足によって抑えつけられる。これじゃ俺達が一緒に戦った意味ねぇじゃんか!
どうする…いや、落ち着け。成長期の俺じゃ、シェルモンを怯ませるのが精一杯だ。アグモンを助け出すにはシェルモンの体勢を崩させる必要がある。つまり――
「ロップモン、触手を凍らせるしか無い!太一君を助けて!」
「!…おう!」
結衣も俺と同じ考えか。まあそれしか出来ることがねぇんだが。アイツの体勢を崩すにはパワーが足りてないなら、触手を凍らせて太一を助けることに集中する。そうすればシェルモンもこっちに気をとられてアグモンの拘束を緩めるかもしれん。
「シェルゥゥッ!!」
「なっ…結衣、危ねぇ!」
「きゃっ…!」
俺がシェルモンに飛びかかろうとしたその時、シェルモンは頭から水流を横薙ぎに放った。咄嗟に結衣を庇い水流から守るも、二人まとめて後方まで吹っ飛ばされてしまう。
押し倒したつもりだったんだが…軽すぎて無理だったか。また耳が余計に空気抵抗を受けちまった…
「うわぁっ!」
「きゃぁっ!」
「うぅっ!」
俺達以外の、加勢をしようとしていた他の奴らも今の薙ぎ払いで吹っ飛ばされた。俺達が戦っている間に飯は多少食って回復したみたいだが、このまま遠距離で水流ぶっ放されたら近寄れねぇ…!
「み、皆っ…うわぁっ!」
シェルモンが触手の力を強くし、捕らえた太一をさらに締め上げる。
「た、太一ぃっ…!」
「アグモン…っ」
突然、太一の腰にあるデジヴァイスが光り出した。同じようにアグモンの体も光り始める。これは、原作と同じ…!
「アグモン、進化――!!グレイモン!!」
シェルモンが、踏みつけていたアグモンがグレイモンに進化したことによって体勢を崩し、触手で捕らえていた太一を離す。
「”プチツイスター“!」
「うわ…っと!」
太一を竜巻で安全に着地させ、俺はグレイモンとシェルモンの方へ目を向ける。二体のデジモンは力と力のぶつかり合いをしていた。シェルモンは打開策として頭部からの水流攻撃を放つがグレイモンは紙一重で躱し、口から炎攻撃をぶつける。
水流攻撃が止んだ瞬間、グレイモンは自身の頭をシェルモンの体の下に入れ、掬い上げるようにシェルモンを高らかに吹っ飛ばす。そしてあの必殺技が放たれようとしていた。
「“メガフレイム”!!」
巨大な炎弾をその身に受け、シェルモンは海の遙か彼方へと吹っ飛ばされていった。
す、すげぇ…これが、成熟期の力か…!
「アグモン!戻ったんだ、大丈夫か、アグモン!?」
「たいちぃ…腹、減った~…」
グレイモンはアグモンへと退化し、こうしてシェルモンの脅威は去った。
☆☆☆
「もしもし、もしもし!」
丈の奴…壊れた電話ボックスに何で話しかけてるんだ。人工物を見て期待を持ってしまったからなのか…?
「ここにいる理由はなくなったな」
「ああ…」
「シェルモンも、完全に倒したわけではありません。また襲ってくる前に、ここから離れた方が良いと思います」
「確かにな」
「だったら、やっぱりあの森に戻ろうよ!僕らが最初にやって来た森だよ、あそこで助けを待とう!」
まだ諦めて無かったのか…丈って結構堅物だからな。この冒険を通じて柔軟な発想も出来るようになったんだっけ。
「前にも言ったけど、私達は崖から落ちて川を下ったのよ?そう簡単には戻れないわ!」
「クワガーモンは嫌!!」
「ここに電話があったってことは、誰か設置した人間がいるはずです!その人間を探した方が良いかもしれません」
「な、なるほど…」
「私もその意見に賛成」
「よし、それで行こう!」
「僕は太一の行く所だったら、どこにでも行くよ!」
「ありがとよアグモン!」
「あ、ごめん皆。もう少し待って」
「結衣君?どうしたんだい?」
そういやさっきから結衣が黙々と何かやってるな。あれは…成る程、砂浜にSOSね。普通の無人島での遭難だったらそれで正解なんだろうが…
「結衣…」
「成る程、救難信号か!これなら僕らに誰か気づいてくれるかもしれない!」
「うん。これから向かう場所にこうして残しておこうと思ってね。これで良し、っと」
「それじゃ、出発しようぜ!」
俺を抱えて、結衣は太一達の後に続く。その手は、僅かにだがまだ震えていたような気がした。
ここから下は映画の感想メインです。ネタバレは避けますが(予告で流れていた内容は触れます)、それでも読みたくない方はブラウザバックお願いします。
では、感想を。正直言いますと、泣きました。それも三回くらいは。
Tri.から五年後のお話ということで、やっぱり子供達の成長した姿に感慨深いシーンがあったり。もう大人だから当たり前なんだけれども、序盤でそれを実感。で、話が進むにつれて、もう…涙堪えるのに必死。それでも決壊した。無印、特に逆襲見たことある人はこの気持ち分かってくれると思う。いい大人がって思う人もいるだろうけど、涙腺が脆くなった証でしょうかね?登場キャラに感情移入しちゃって…気づいたら涙が頬を伝ってました(笑)
とにかく、映画は見に行って本当に良かった。Tri.の二の舞だったらって不安も強かったけど、そんなの映画始まって数分で払拭されると思う。不満だった点も多少あるけれども、それ以上に上手くまとめられた作品だった。
以上、個人的な感想でした。まだ見に行かれていない方、是非行って欲しい。ただしYouTubeに公開されている前日譚も見てからでお願いします。
来月は多分新作アニメの感想も話すと思います(笑)